ミズノの新作「M.CRAFTシティシリーズ」パターは、前作から大きく方向性を変えたモデルだ。2025年の「M.CRAFT X」は、ソールウェイトで前後パーツを結合するモジュラー構造を採用し、現代的な設計アプローチを強く打ち出していた。
一方で2026年モデルとなる「M.CRAFTシティシリーズ」は、その流れとは対照的に、より伝統的な構造へと舵を切っている。モジュラー構造を廃し、「1025E軟鉄鍛造」や素材設計、精密な形状加工といった、ミズノが長年培ってきた金属加工技術をベースに再構築された。
この変更は単なる設計の違いではない。構造をシンプルにすることでインパクト時の挙動が安定し、距離感や打点の再現性を高める方向にシフトしている点が重要だ。
さらに今回のシリーズでは、日本の金属加工技術へのルーツを反映すると同時に、モデル名に日本の都市名を採用。従来の数字ベースのネーミングから変更し、それぞれのパターに明確なキャラクターを持たせている。
全体としてはクラシックな外観が強調されているが、設計の裏側では最新のCAD技術が使われており、形状や重量配分は細部まで最適化されている。見た目は伝統的でも、実際のパフォーマンスは現代基準で設計されたパターと言える。
鍛造構造と多層素材がもたらす打感と再現性
ミズノのパターづくりの出発点となるのが「鍛造」だ。新しい「M.CRAFTシティシリーズ」は、アイアンと同様に「1025E軟鉄鍛造」を採用している。
鍛造によって金属内部の密度が均一になることで、インパクト時のエネルギー伝達にばらつきが生じにくくなる。結果として、打点が多少ズレた場合でもボール初速や転がりの再現性が安定し、距離感のズレを抑えやすいのが特徴だ。
もちろん、鋳造パターでもツアー優勝は数多く達成されている。ただし、ここで重要なのは製法の優劣ではなく、「どれだけ一貫した結果を生み出せるか」という点にある。
さらに「M.CRAFTシティシリーズ」は、単なる鍛造構造にとどまらない。軟鉄のコアの上に銅の層を配置し、その外側をクロームで仕上げた多層構造を採用している。
銅層はインパクト時の振動を吸収し、打感をよりマイルドに整える役割を持つ。これにより、特にショートパットにおいてインパクトが強くなりすぎるミスを抑えやすくなる。
このように、「1025E軟鉄鍛造」による一貫性と、銅によるフィーリング調整を組み合わせることで、距離感と打感の両方を安定させる構造となっている。
可変ウェイトがもたらすフィッティング精度

精密ミルドフェースを採用した名古屋モデル
「M.CRAFTシティシリーズ」には、ヘッド重量を調整できる『可変ウェイト』が引き続き搭載されている。前作のように構造を固定する役割ではなく、今回はフィッティング精度を高めるための要素として機能している。
約20gの調整幅を持つこのウェイト機能によって、ゴルファーは自分のストロークテンポや距離感に合ったヘッド重量を選ぶことができる。ヘッド重量が適正になることで、ストロークの再現性が安定し、距離のばらつきを抑えやすくなる。
また、ウェイトの変更は単に重さだけでなく、スイングバランス(振ったときに感じるヘッドの重さ)や重心位置にも影響する。これにより、ストローク中のヘッドの動き方やインパクトの安定性も変化するため、フィッティング時には重要な調整ポイントとなる。
今回のモデルでは、ウェイト調整に一般的なトルクスレンチを採用している。専用アダプターが不要となったことで調整の手間が減り、実際のプレー環境でも扱いやすい仕様となっている。
形状設計と重心最適化によるインパクトの安定
「M.CRAFTシティシリーズ」は、伝統的な外観を持ちながらも、設計段階では最新のCAD技術が活用されている。鍛造加工に入る前に、形状のわずかな違いが重心位置に与える影響を細かく解析し、最適化が行われている。
アドレス時にヒール側とトゥ側を見比べると、トゥ側がわずかに大きく設計されていることが分かる。この非対称設計により、重心位置をインパクトポイントに近づけている。
重心が打点に近づくことで、フェースの芯でボールを捉えやすくなり、インパクト時のエネルギー伝達が安定する。結果として、方向性と距離感のばらつきを抑えやすくなる。
また、トップラインにある細いラインを目安に構えることで、自然と適正な打点でインパクトしやすい設計となっている。
さらにソールは同形状のパターと比べてやや厚めに設計されている。この厚みがヘッド剛性を高め、インパクト時の打音と打感のばらつきを抑える効果につながっている。
ディープミルドフェースによる距離感のコントロール

精密ミーリング加工のフェース
「M.CRAFTシティシリーズ」では、打感の調整も重要な設計要素として位置付けられている。「1025E軟鉄鍛造」に加え、銅層を組み合わせた構造の上に、4モデルすべてにディープミルドフェースが採用されている。
ディープミルドフェースは、インパクト時にボールと接触する金属の面積を減らす構造だ。接触面積が少なくなることで、インパクトの衝撃が抑えられ、ボールの初速が出過ぎるのを防ぎやすくなる。
その結果、特にショートパットや速いグリーンにおいて、距離感を合わせやすくなる。強くヒットしてしまうミスを抑えやすく、タッチを出しやすい点が特徴だ。
フェースの溝の間隔が広くなるほど接触する金属量は減り、打感はより抑えられたフィーリングになる。フラットなフェースと比較すると、インパクト時のエネルギー伝達が穏やかになり、距離のばらつきを抑える方向に作用する。
仕上げとネック形状によるフィッティングの最適化
「M.CRAFTシティシリーズ」は、仕上げとしてニッケルとグレーイオンの2種類を用意している。見た目の違いだけでなく、アドレス時の視認性や構えやすさの好みに応じて選択できる点も特徴だ。
さらに、すべてのモデルでネック形状を選択できる仕様となっている。ブレードタイプの「京都」と「大阪」はプランバーネックとスラントネック、マレットタイプの「名古屋」と「東京」はスラントネックとダブルベントネックが用意されている。
ネック形状の違いは、ストローク中のフェースの向きの変化や操作性に影響する。自分のストロークタイプに合ったネックを選ぶことで、インパクト時のフェース向きを安定させやすくなり、方向性のばらつきを抑えることにつながる。
このように「M.CRAFTシティシリーズ」は、ウェイト機能とネック選択の両面からフィッティングの幅を広げている。自分に合った仕様を選ぶことで、距離感と方向性の再現性をより高めやすい構成となっている。
ここまで見てきた通り、「M.CRAFTシティシリーズ」は伝統的な構造と現代的な設計を組み合わせたパターだ。それでは次に、各モデルの特徴を見ていこう。
ブレードタイプ|M.CRAFTシティシリーズ

京都モデルと大阪モデルのデザイン比較
⛳ 京都|伝統的な形状で打点と距離感を正確に伝える
「M.CRAFTシティシリーズ」のブレードモデルのひとつである「京都」は、日本の古都・京都の名を冠したモデルだ。長い歴史の中で培われた職人技と普遍的な美しさを反映したデザインとなっている。
形状はクラシックなアンサー型を採用しており、多くのゴルファーにとって馴染みのある構えやすい外観が特徴だ。近年はマレット型の人気が高まっているが、この形状は今でも基準となるモデルのひとつと言える。
このモデルには過度な補助機能は搭載されていない。あくまでシンプルな構造により、インパクトの情報をそのまま伝える設計となっている。
インパクト時の打感は安定しており、打点のズレも明確にフィードバックされる。ミスヒットを補正するタイプではないが、その分だけ自分のストロークの精度を把握しやすい。
打点のズレや距離の誤差を自分でコントロールしたいゴルファーにとって、「京都」は一貫したフィードバックを得られるモデルと言える。
⛳ 大阪|ブレードの操作性に安定性を加えたワイド形状
「M.CRAFTシティシリーズ」の「大阪」は、日本有数の商業都市・大阪の活気をイメージしたモデルだ。ブレードタイプに分類されながらも、一般的なブレードよりも前後に厚みを持たせたワイドブレード形状を採用している。
この形状により、見た目はブレードのまま操作性を維持しつつ、ヘッド後方の重量配分によって安定性が向上している。マレットほど大きくはないが、ミスヒット時のばらつきを抑えやすい点が特徴だ。

ブレード型パターのアライメントと構えやすさ
打感は「京都」と同様に安定しており、インパクト時の情報も明確に伝わる。一方で、ヘッド後方のボリュームによって視線が自然とヘッド全体に向きやすく、構えた際の見え方に違いが生まれる。
この視覚的な違いにより、ターゲットラインだけでなくヘッド全体を使って方向を合わせる感覚が得られる。結果として、ストローク中のフェース向きを安定させやすくなる。
ブレードの操作性を維持しながら、もう少し安定性を求めたいゴルファーにとって、「大阪」は移行しやすい選択肢となるモデルだ。
ミズノ「M.CRAFTシティシリーズ」マレットパター

東京モデルと名古屋モデルの形状と設計の違い
⛳ 名古屋|安定性と構えやすさを高めたミッドマレット
「M.CRAFTシティシリーズ」の「名古屋」は、伝統と現代性が交差する都市をイメージしたミッドマレットモデルだ。ブレードの要素を残しつつ、安定性を高めた中間的な形状となっている。
ヘッド形状は中央がやや低く、外周に向かって高さを持たせた独特のデザインを採用している。この構造により、ヘッド外周に重量を配分しやすくなり、ストローク中の安定性を高めている。
さらにキャビティ後方に十分なボリュームを確保することで、ソールの厚みを維持しながらヘッド剛性も高めている。これにより、インパクト時の打音と打感のばらつきを抑えやすくなっている。
また、この曲線的な形状は振動の伝わり方にも影響し、インパクト時の音や感触が安定する設計となっている。

マレット型パターのアライメントと構えやすさ
実際の使用感としては、ターゲットに対して構えやすく、ストローク中のヘッド挙動も安定しやすい。方向性を重視しながら、安心感のあるストロークを求めるゴルファーに適したモデルだ。
なお、ヘッド後方のボリュームが大きいため、ボールを拾い上げる動作はやや行いにくい点には注意したい。
⛳ 東京|高い安定性を追求したファング型マレット
「M.CRAFTシティシリーズ」の「東京」は、日本の技術力と革新性を体現したモデルだ。シリーズの中でも最も安定性を重視した設計となっている。
形状はファング型マレットをベースとしているが、後方のウイング(ファング)には独自のチャンネル構造が採用されている。この構造により、ヘッド外周への重量配分を維持しながら、ソールの厚みを確保している。
さらに、このチャンネル構造はインパクト時の振動の伝わり方にも影響し、打音と打感のばらつきを抑える効果につながっている。

東京モデルのアライメントと構えやすさ
高い慣性モーメントにより、ストローク中のヘッド挙動は安定しやすく、ミスヒット時でも方向性のばらつきを抑えやすい。シリーズの中では最も寛容性を重視したモデルと言える。
一方で、この独特な形状は従来のパターと比べて見た目の印象が大きく異なるため、構えた際の好みは分かれる可能性がある。見た目のフィーリングも含めて、自分に合うかどうかを確認したいモデルだ。
伝統回帰がもたらす実戦性能と選択肢
今回の「M.CRAFTシティシリーズ」は、前作のモジュラー構造から一転し、より伝統的な構造へと回帰したモデルだ。この方向転換は単なるデザインの違いではなく、インパクトの安定性や距離感の再現性を重視した設計へのシフトと捉えることができる。
「1025E軟鉄鍛造」をベースとした素材構成や、形状ごとの重心設計の最適化など、ミズノが長年培ってきた金属加工技術は、ショットのばらつきを抑えるという形でコース上の結果に直結している。
これらのテクノロジーはストロークのすべてを補正するものではないが、距離感や方向性の再現性を高めるサポートにはつながる。最終的にパットを決めるのはゴルファー自身だが、その精度を引き出すための要素はしっかりと備えられている。
また、価格設定も特徴的だ。近年は400ドルを超えるパターも珍しくない中、「M.CRAFTシティシリーズ」は299.99ドル(約45,000円前後)に設定されている。前作よりも構造をシンプルにしながら、価格も抑えられている点は注目に値する。
伝統的な構造と現代的な設計を組み合わせた「M.CRAFTシティシリーズ」は、自分のストロークに合った1本を選びたいゴルファーにとって、有力な選択肢となるだろう。
※本記事で紹介している「M.CRAFTシティシリーズ」は北米ミズノが展開するモデルであり、現時点では日本国内での発売は予定されていない。ただし、ミズノのグローバル展開を踏まえると、今後の動向には注目したい。
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