松山英樹はウェッジを「約2カ月」で交換している
松山英樹が使っているクリーブランド「RTX4 Forged」は、登場から約8年が経つモデルだ。
しかし、松山が同じウェッジを8年間使い続けているわけではない。
クリーブランド(Cleveland)は現在も松山のためにこのモデルを製作しており、本人が信頼する設計はそのままに、約2カ月ごとに新しいウェッジへ交換している。
ここは大きな違いだ。
PGAツアー選手のクラブセッティングを見て、何年も前のウェッジが入っていたとしても、その一本が何千球もの練習を耐え抜いてきたとは限らない。実際には、同じモデルの新しいウェッジへ定期的に交換しているケースがある。
では、私たち一般ゴルファーはどうだろう。
プロが頻繁にウェッジを交換していると聞くと、「自分のウェッジもそろそろ替えた方がいいのでは?」と思うかもしれない。
とはいえ、2カ月ごとに新品へ交換するのは現実的ではない。 数シーズン同じウェッジを使っているゴルファーも珍しくないだろう。
では、プロほど頻繁に交換する必要はないとしても、私たちは逆にウェッジを長く使いすぎているのだろうか?
アマチュアゴルファーにとって、本当の「替え時」はいつなのか。
その答えは、意外なものかもしれない。

ツアープロはどのくらいの頻度でウェッジを交換する?
まず知っておきたいのは、トッププロでもウェッジの交換頻度に共通の正解があるわけではないということだ。
選手によって違うだけでなく、同じ選手でも番手によって交換するタイミングは変わる。
たとえば、アダム・スコットは年4回、すべてのウェッジを交換すると説明している。そのタイミングはメジャー大会に合わせており、大舞台を新しい溝のウェッジで迎えるためだ。
スケジュールによっては、交換してからわずか1カ月ほどで次の新品に替えることもある。
ジョーダン・スピースは、60度のウェッジを数大会ごとに交換する一方、それ以外のウェッジは数カ月使う。
つまり、すべてのウェッジを同じタイミングで交換する必要があるとは限らないということだ。
さらにジャスティン・トーマスの場合は、交換頻度が番手ごとにはっきり分かれている。
年間の交換本数は、おおよそピッチングウェッジ1本、ギャップウェッジ2本、サンドウェッジ3本、ロブウェッジ4本以上。
ボーケイ(Vokey)の担当者アーロン・ディルは、これを「1-2-3-4方式」と呼んでいる。
こうして比べると、世界トップクラスの選手たちの間でも、ウェッジの交換頻度はかなり違うことが分かる。
そして、彼らの交換頻度を一般ゴルファーがそのまま真似する必要もない。
ツアープロは、バンカーショットを含めて大量の練習をこなす。ウェッジのフェースが受ける負担も大きい。さらに用具メーカーからのサポートを受けられるため、私たちのようにクラブの価格を考えて交換時期を延ばす必要もない。
彼らが頻繁にウェッジを交換するのは、それだけ使い込んでいることと、高いレベルのコントロール性能を求めていることの表れでもある。
では、週末にゴルフを楽しむ一般ゴルファーの場合はどうなのか。
ツアープロほど頻繁ではないとしても、ウェッジには性能が落ち始める「替え時」があるのだろうか?
実際にウェッジを使い込むと、性能はどう変わる?
MyGolfSpyが行った最新のウェッジの溝の摩耗テストでは、テストディレクターのフィリップ・ビショップが新品の56度ボーケイ「SM10」を使用し、まず基準となるデータを計測した。
その後、同じウェッジでバンカーショットを繰り返し、300回後、さらに500回後に再び性能を測定した。
今回の摩耗テストでは、タイトリストが提示したシミュレーションをもとに、500回のバンカーショットを約75ラウンド相当としている。ただし、これはすべてのゴルファーに共通する交換時期を意味するものではない。
実際の性能測定では、バンカーから打ったわけではなく、芝の上から50ヤード先のターゲットに向かってショットし、新品の状態から性能がどう変化するのかを比較した。
500回のバンカーショットで、性能はここまで変わった
結果はかなり大きなものだった。
| 測定項目 | 新品 | バンカーショット500回後 |
|---|---|---|
| 平均バックスピン量 | 7,021rpm | 3,737rpm |
| 平均打ち出し角 | 27度 | 35度 |
| キャリー距離の標準偏差 | 3ヤード弱 | 約6ヤード |
最も目を引くのはスピン量だ。
新品では平均7,021rpmだったバックスピンが、500回のバンカーショット後には3,737rpmまで低下。約47%減っている。
しかし、注目したいのはスピン量だけではない。
平均打ち出し角は27度から35度へ上昇。さらに、キャリー距離のばらつきの大きさを示す「標準偏差」は、3ヤード弱から約6ヤードへと大きくなった。
ウェッジの摩耗というと、「溝が減ってスピンがかからなくなる」という部分に目が向きやすい。新しい溝と聞けば、アプローチでボールをきれいに捉え、グリーン上で2バウンドしてピタッと止まるようなショットをイメージするゴルファーも多いだろう。
実際には、今回のテストで打ち出し角が高くなり、キャリーのばらつきも大きくなった。
つまり、ウェッジの状態を考えるうえでは、ボールが止まるかどうかだけでなく、狙った距離を安定して打てるか、打ち出し角が安定しているかも重要になる。
「75ラウンド」で交換すべきなのか?
では、今回のテストで使われた「約75ラウンド」を、ウェッジ交換の目安にすればいいのだろうか?
そう単純ではない。
今回行ったのは、1本のウェッジに短期間で負荷をかけた加速摩耗テストだ。500回のバンカーショットを約75ラウンド相当としているが、すべてのゴルファーのウェッジが75ラウンド目で同じ状態になると予測したものではない。
実際の摩耗の進み方は、練習量やプレーする環境、ウェッジの構造などによっても変わる。
年間20ラウンドのゴルファーと100ラウンドするゴルファーでは、ウェッジの使用量は大きく違う。ラウンド以外で頻繁に練習するのか、ほとんど練習しないのかでも変わってくる。
だから見るべきなのは、「何ラウンド使ったか」だけではなく、「どれくらい使っていて、性能に変化が出ているか」だ。
溝を研ぎ直せば、新品に交換しなくてもいい?
「摩耗したなら、溝を研ぎ直せばいいのでは?」と思うかもしれない。
ここでまず区別しておきたいのが、ウェッジの溝を掃除することと、溝そのものを研ぐことはまったく違うという点だ。
ウェッジを掃除するのは、すでにある溝に詰まった土や芝などを取り除く作業だ。これはショットの前後など、できるだけこまめに行った方がいい。実際、溝をきれいに保つことには意味がある。
一方、溝を研ぐ作業では、金属を削ることで溝のエッジや形状そのものに手を加える。
しかし、削れてしまった金属を元に戻せるわけではない。また、溝の内側を削ったからといって、新品時に施されていたフェース全体のミーリングや表面の状態まで元通りになるわけでもない。
つまり、溝研ぎは新品の状態へ戻す作業ではなく、あくまで摩耗したウェッジを修復しようとする方法のひとつだ。
MyGolfSpyが行った溝研ぎのテストでも、その効果は安定していなかった。研いだことでスピン量が増えるケースもあれば、逆に減るケースもあった。
新品のウェッジなら、新しい溝とフェース表面に加え、ソールやリーディングエッジも摩耗していない。さらに交換するタイミングで、自分に合ったロフト、バウンス、グラインドを改めて確認する機会にもなる。
もうひとつ注意したいのがルールだ。
ゴルフクラブの溝には、寸法やエッジの鋭さについて規定がある。溝を広く、深く、あるいは鋭く削りすぎれば、それまでルールに適合していたウェッジが不適合になる可能性もある。
つまり、「溝は鋭ければ鋭いほどいい」というわけではない。
摩耗がかなり進んだウェッジなら、ハンドツール(ウェッジの溝を削るための手工具)で溝を研いで性能を取り戻そうとするより、新品へ交換する方が、性能を判断するうえでは予測しやすい出発点になる。
結局、ウェッジはいつ交換すればいい?
タイトリストは、約75ラウンドを目安に溝の性能を確認し、ウェッジ自体の状態についてはそれ以前からチェックすることを推奨している。
「以前より性能が落ちているかもしれない」と感じたら、現在使っているウェッジと、できるだけ近いスペックの新品を打ち比べてみよう。
その際は、できれば同じボールを使い、同じようなショットで比較する。そして、打ち出し角、スピン量、キャリーの安定性、落ちてからの転がりに違いがないかを見る。
過去に自分のウェッジで計測したデータが残っているなら、それも比較材料になる。
そして、すべてのウェッジを一度に交換する必要もない。
まず確認したいのは、自分が最もよく使うウェッジだ。
グリーン周りではいつも56度を使うのか。それとも、状況によって複数のウェッジを使い分けるのか。
使い方によって、それぞれのウェッジが受ける摩耗も変わってくる。サンドウェッジやロブウェッジは交換した方がよくても、ギャップウェッジはまだ十分な性能を保っているかもしれない。
また、新しい溝が欲しいからといって、必ずしも最新モデルを買う必要はない。
未使用の旧モデルなら、最新モデルより出費を抑えながら、摩耗していないフェースと溝のウェッジを手に入れられる場合もある。冒頭で紹介した松山英樹のクラブ選びは、その好例だ。
ツアープロの交換頻度と今回の摩耗テストから分かるのは、ウェッジの「替え時」は、何年使ったかだけでは決められないということだ。
プロのように2カ月ごとに交換する必要はないし、約75ラウンドを迎えたからといって、すぐに新品へ替える必要もない。
ラウンド数は「交換期限」ではなく、ウェッジの状態を確認するきっかけと考えよう。
まずは最もよく使うウェッジから新品と打ち比べて、打ち出し角やスピン量、キャリーの安定性、落ちてからの転がりに明らかな変化が出ているなら、それが交換を検討するサインだ。



