テレビのゴルフ解説者は、プレーの状況を伝えるだけではない。ときには、スイングやショットの打ち方まで解説する。
「手をどう使ったのか」「スイングがどう変わったのか」「なぜアプローチでボールに完璧なスピンがかかったのか」「どうやってバウンスがミスを防いだのか」。
そんな説明を耳にすることも多いだろう。
しかし、ここにはあまり語られていない問題がある。
実は、ゴルフ解説には驚くほど多くの間違いがある
ツアープロが次にどんなショットを打つのか、解説者が自信満々に予測した直後、まったく逆のことが起きる。そんな場面を見るのが面白い。
例えば、「ここはバウンスをうまく使って打つでしょう」と解説したとする。
ところが実際には、選手はシャフトを目標方向へ傾け、ボールをしっかりとらえ、バウンスを余分に使うことなく、強烈なスピンのかかったアプローチを打ってみせる。
では、解説者が悪いのだろうか? そうではない。
解説者の仕事は、放送中の会話を途切れさせず、さまざまなエピソードを交えながら、一般の視聴者にプレーの状況を分かりやすく伝えることだ。
しかし、解説者がスイングについて語ることを、すべて正しいレッスンだと受け取っていたらどうだろう?
それこそが、アプローチの打点が安定せず、ダフリやトップが出たり、結果がまったく予測できなくなったりする原因かもしれない。
問題は、実際の動きではなく、プロの「感覚」やテレビ解説を真似していること
ジャスティン・ローズのショートゲームコーチ、ジェームズ・リドヤードが出演した、Alex Elliott Golfの最近の動画は、その典型的な例だ。
リドヤードは、いくつかの重要な事実を指摘している。
▪ グリーン周りではハンドファーストが悪いと思われがちだが、リドヤードが指導する一流のアプローチ巧者は、インパクト時にしっかりとハンドファースト(手元がクラブヘッドよりも目標方向に出ている状態)になっている。 通常のアプローチでも、シャフトが目標方向へ10〜15度ほど傾いていることが多い。
▪ ツアープロ自身は「ハンドファーストを弱めている」「バウンスをもっと使っている」と感じていても、実際に計測すると、依然としてシャフトは目標方向へ傾き、クラブも比較的鋭角に入っている。
▪ 一般のゴルファーは、解説を聞いて実際のクラブの動きではなく、プロが語る「感覚」を真似してしまう。その結果、次のような問題が起こる。
- ロフトを増やしすぎる
- バウンスを過度に使う構えになる
- スイングのたびに最下点が変わってしまう
動画の中では、エリオット自身も、テレビ中継やYouTubeで見聞きした情報をもとに、何年もの間「ハンドファーストをなくそう」としていたことを認めている。
柔らかく、ふわりとボールを上げるような「バウンスを使う」感覚を追い求めるほど、ボールのとらえ方は悪くなり、スピンも安定しなくなっていったという。
もし理想のアプローチのイメージが、不正確な解説やツアープロ自身の感覚だけで作られているなら、いくら練習を重ねても安定したインパクトにはつながらない。
※動画は英語での解説となる。YouTubeの設定(歯車マーク)から「字幕」→「自動翻訳」→「日本語」を選択すると、日本語字幕で視聴できる場合がある。また、話す速度が速いと感じる場合は、「再生速度」を0.75倍にすると字幕を追いやすくなる。なお、自動翻訳のため、一部の表現が正確に訳されないことがある。
このショートゲームレッスンから学べる3つのポイント
ここからは、リドヤードのレッスンで紹介された、実際のアプローチに取り入れられる3つのポイントを見ていこう。

1. ハンドファーストを無理になくさない(適度なシャフトの前傾は必要)
リドヤードによると、アプローチが上手なゴルファーは、インパクト時にある程度のハンドファーストになっているという。
シャフトの前傾角度は、小さい場合で約5度、一般的には約10度、大きい場合には15度ほど。スピンの効いた、しっかりとボールをとらえる通常のアプローチで、シャフトが完全に垂直になっていることはほとんどない。
実践するポイント
- アドレスでは、グリップエンドがベルトのバックルと左腰の間を指すように構える。
- 手元はボールの真上ではなく、やや目標方向に出すイメージを持つ。
- インパクトでもその感覚を保ち、バウンスを使おうとして手首を早くほどきすぎない。
シャフトを無理に目標方向へ押し出す必要はない。
適度なハンドファーストは、安定したインパクトを繰り返すために必要な要素の一つだと覚えておこう。
2. 少し直立して、ボールの近くに立つ
リドヤードがエリオットのアプローチを改善する際、大きく変えたのがアドレスだ。
上体を少し起こしてボールに近づき、シャフトがより立つように構えさせている。
ダフリやトップが出るなど、スイングの最下点が安定しないゴルファーにとって、この構えは改善のきっかけになるかもしれない。
なぜ効果があるのか?
- 少し直立してボールに近づくと、クラブが体の周りを大きく回るのではなく、より縦方向に動きやすくなる。
- クラブが比較的鋭角に、体の正面で動くことで、ボールを先にとらえやすくなり、手前の地面を早くこすりすぎるミスを防ぎやすくなる。
- スイングの最下点もコントロールしやすくなり、ボールの手前にヘッドが落ちてしまうミスを減らせる。
重要なのは、クラブを無理に鋭角に振り下ろすことではなく、最下点を安定させやすい構えを作ることだ。
3. 左足に少し多めに体重をかける(ただし、やりすぎない)
動画の中でリドヤードが勧めているのは、左足に体重の90%を乗せるような極端な構えではない。
まずは、誰でも再現しやすい基本的な体重配分から始める。
- 左足60%・右足40%を基本の目安にする。
このわずかな体重配分の違いが、アプローチにいくつもの効果をもたらす。
- スイングの最下点をボールより目標方向に移動させやすくなる。
- 先ほど説明した適度なハンドファーストを保ちやすくなる。
- アプローチが上手なゴルファーに多く見られる、5〜10度程度の入射角につながりやすくなる。
実際に試すときは、胸の中心をボールより少し目標方向に置き、上体が右足側に残らないように意識しよう。
そのままインパクトまで左足への荷重を保つことで、クラブのロフトを生かしてボールを上げられるという安心感も生まれるはずだ。
ボールを無理にすくい上げなくても、適切な構えとクラブのロフトがあれば、ボールは自然に上がる。
まとめ:テレビの解説をそのまま真似する前に
テレビのゴルフ解説で耳にした「バウンスを使う動き」を、何となく真似しようとしていたなら、今回のレッスンはその考え方を変えるきっかけになるはずだ。
- 適度なハンドファーストは、決して悪いものではない。
- 少し直立してボールの近くに立つことで、クリーンなインパクトがしやすくなる。
- フェースをスクエアに保ち、左足に少し多めに体重をかけることで、スピンとコントロールを得やすくなる。
ジャスティン・ローズのような選手が実践している技術には、確かな説得力がある。
そして何より大切なのは、ゴルフ中継を見るときに、解説者が何を伝えようとしているのかを、もう少し意識して聞くことだ。
解説の中には、放送を盛り上げ、視聴者を楽しませるための表現もある。
それをそのまま自分のスイングやアプローチに取り入れることが、必ずしも正しいとは限らない。




