MyGolfSpy の『Ball Lab(ボールラボ)』では、市場に出回るゴルフボールの「品質」と「一貫性」の調査、数値化を行っており、価格に見合う最適なボール選びに役立てもらいたいと考えている。今日取り上げるのはテーラーメイド「TP5x」だ。『ラボ』で使用する機器の概要はここに掲載した。また、テストプロセスや、不良ボールの定義、独自の「True Price」測定方法については、『MyGolfSpy Ball Lab』のページにて確認できる。


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テーラーメイド「TP5x」について

テーラーメイド「TP5x」について


現在販売されている「TP5」2モデルのうち、「TP5x」はより高弾道、低スピン性能を誇るという。また、前モデルほどの硬さはないが、2モデルの中では硬い方だ。今回、新モデルの発売にあたり強調したかったのは、ゴルファーが選びやすいようにパフォーマンスに直接関係しない要素を取り除くということ。

「TP5」は、主要メーカーでは唯一の5ピースボールだ。この5ピース構造に異議を唱える競合メーカーもいるが、同社はレイヤー(層)が多いほど番手毎に適正なスピン性能を発揮しやすくなるという。

そして、製造工程はこれまでと同様一風変わっている。コアと内側のマントル層は台湾で生産され、ほぼ完成に近いボールをテーラーメイドのUSA工場に移し、そこでカバーが付けられる。

また、コアは数箇所の工場から調達するようだ。一見、品質にばらつきが出るようにも思えるが、確実にそうとも言い切れない。それを明らかにするために、私たちの測定が役に立つだろう。


テーラーメイド「TP5x」-コンプレッション(硬度)

テーラーメイド「TP5x」-コンプレッション(硬度)


私たちの測定によると、テーラーメイド「TP5x」2021年モデルのコンプレッション(硬度)は平均91だった。これは前モデルから7ポイントの減少に値する。

モデル世代ごとに大幅にコンプレッション(硬度)が変化することは稀なため、ここは注目すべきところだ。参考までに、2019年「TP5x」と2021年版のコンプレッション差は、「ProV1x」と「ProV1」の違いとほぼ同じだ。

簡単に言えば、新「TP5x」は柔らかくなった。ついでに言うと、飛距離性能はわずかに短くなる(決して飛ばないボールという意味ではない)。そのため、グリーン周りでのスピン性能が向上し、少し柔らかく感じられるのではないかと考えている。

テーラーメイドがタイトリスト「Pro V1x LeftDash」やキャロウェイ「Chrome Soft LS」などの高コンプレッションカテゴリーから離れ始めたのは、これらのモデルがより注目されつつあったことを考えると非常に興味深い。なんとなく、同社はすでに代表的なブランドが君臨するカテゴリーから離れようとしているのではないかと感じる。

もしくは、今年の後半にさらなる高コンプレッションや低スピンモデルを投入してくる可能性もある。マスマーケット(大量市場)への投入を抑え、空いたスペースに新作ボールを起爆剤として投入する。このようなことも考えられるのではないか。


テーラーメイド「TP5x」-直径サイズと重量

テーラーメイド「TP5x」-直径サイズと重量


USGAの重量制限である1.62オンスを超えるサンプルボールは確認されなかった。

同様に、すべて真円度の基準を満たしていた。実際、多少のばらつきはあるものの、顕著な重量や直径サイズの問題は見つからなかった。





テーラーメイド「TP5x」-インスペクション(検査)

テーラーメイド「TP5x」-直径サイズと重量





中心性と同心性

合計で、サンプルの6%を不良品としたが、明らかな欠陥が見つかったボールは2個のみだった。あるケースでは、深刻なレイヤー層の侵入が観察された。これらは、内側のレイヤーが完全に冷却されていないうちに、次のレイヤー層を追加したために起こる。つまり、一方のレイヤーが隣のレイヤーに溶け込むことをいう。

軽微なレイヤー侵入問題は依然として起こっており、これはテーラーメイドでも未だ見られる問題だが、前世代と比較すると、それほど深刻でもなかった。

2つ目は、内部レイヤーが大幅にずれていたことにより不良品とした。実際には、コアが中心から外れていたのだが、もっと懸念すべきはボールの一方の側と反対側のアウターレイヤーの厚さが異なることだ。


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コアの一貫性

コアにはわずかに破片が見られたが、一般的に懸念するほどではない。それよりも、そこまで重大とはいえないが、コアカラーにばらつきが見られた。ボールの大部分は、上の写真のような真っ赤なコアだが、薄い色が確認されたボールもあった。

外側のマントルの色は、淡い緑(上)からネオングリーンだ。滅多にマントルの色に変化が見られることはないのだが、基本的に私たちがボールを測定する目的は、結果(品質が)一貫しているか、していないかを明らかにすることなので詳細に渡り調査することにしている。


カバー

カバーに関しては重大な欠陥は見られなかった。軽微な問題も限定的で、ペイントする工程で残ったピンマークを除けば、特筆すべきことは何もない。


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テーラーメイド「TP5X」-一貫性

このセクションでは、テーラーメイド「TP5x」の「一貫性」について詳しく説明する。これは、これまでにテストしたすべてのモデルと比較して、サンプル内のボールが互いにどの程度一貫しているか示す目安だ。


テーラーメイド「PT5x」-一貫性


時々おかしなボールに遭遇するときはあるが、全体的に「TP5」シリーズの「品質の一貫性」は他のブランドと同じかそれ以上だといえる。新モデルでは、「直径サイズ」と「重量」の一貫性は平均範囲内で、「コンプレッションの一貫性」に限っては良い(平均以上)の評価を獲得した。


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重量の一貫性

・1箱目(BOX1)のボールはやや軽かったが、あまり重要ではない

・2箱目(BOX2)のボール1個を除いて、サンプル全体の「重量の一貫性」は平均範囲内だった


直径サイズの一貫性

・知られているように、「TP5x」のサイズは小さい。USGAの最小サイズを満たすために微調整をしているといっても過言ではないが、それでもテストしたサンプルボールは全て規定に準拠していた

・3箱目(BOX3)は平均して1目盛大きかったが、全体的な「一貫性」は確実に平均範囲内であった


コンプレッションの一貫性

・「TP5x」サンプル全体の「コンプレッションの一貫性」は平均を上回っていた(評価としては「Good(良い)」)

・全体のコンプレッション差は9ポイント。これは、今あるデータベースの平均よりも1ポイント優れている

・平均コンプレッション差(各ボールで測定した3箇所のコンプレッション差)は、平均範囲内だ。2.5ポイントを超える変動を示したボールはなかった

TRUE PRICE(真の価格)-ボールの真の価格-

「True Price」は、ゴルフボールの「品質」を独自に数値化した指標だ。これは、「優良ボール1ダース(12個)の対価として必要な金額」を表す。

「Ture Price」は常に「小売価格以上の金額」になる。「Ture Price」と「小売価格」の差が大きいほど、ボールの品質が懸念される。

テーラーメイド「TP5x」-まとめ

詳しいテストプロセスや「不良」ボールの定義、「True Price」の測定については、『MyGolfSpy Ball Lab』ページを参照いただきたい。


テーラーメイド「TP5x」-まとめ


良かった点

・主要な全測定項目において「平均」から「良い」を保っていた


悪かった点

・通常なら軽微な問題として片付けるが、レイヤーの問題は永遠に残る


最終スコア

テーラーメイド「TP5x」の総合スコアは82。

いくつか小さな問題はあったが、「TP5x」の購入を思いとどまらせるような重大な問題は確認されなかった。

テーラーメイド「TP5x」の「TRUE PRICE(真の価格)」は50.77ドル。つまり、小売価格に対してわずか6%オーバー(増加率)という結果だ。