「ビッグバーサB-21」ドライバーはスライサーのためのクラブだ。スライスしない私には必要がないとはいえ、だからといってこの発表に心躍らないわけではない。私見だが、キャロウェイは、不定期である秋のリリースのニッチ製品で最高の仕事をしていると思う。もちろん「B-21」も例外ではない。

なぜか。

メーカーのほとんどが新製品を送り出す春先においては、基本的に新作ドライバーは全てのゴルファーを対象としている。もちろんいくつかの区分はある(キャロウェイが3種類の「マーベリック」ドライバーを提供するように)ものの、最も厚い層に向けて作るということは、その枠の中での差異化にしかならず、少なからずチャンスを逃すことになる。

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秋のリリースは、何か違うことにチャレンジするだけの大胆さをもつ者のための発表の場だ。ここ最近のキャロウェイは、主流市場に製品がじゅうぶん行き渡ってからのシーズン後期を、しばしば予想外の製品を発表する機会として活用してきた。

購買が活発になるシーズンが後ろ倒しになりつつある今、少しばかり変わったもので刺激をもたらしビジネスの再活性化をはかるのも悪くないだろう。

それこそまさに、キャロウェイが「ビッグバーサB-21」ドライバーでやっていることなのだ。


キャロウェイの「ビッグバーサB-21」ドライバーへの道のり

「ビッグバーサB-21」に辿り着くまでの経過を理解するためにも、記憶の路を散策してみよう。

時は2013年。MyGolfSpyは、キャロウェイが「FTオプティフォース」をリリースしたときにその写真に透かしを入れた。

『リスクは承知だ!全速前進!』と。スピードのためだけに設計された軽くて長いドライバー。確かに、設計面ではいくつか運任せ的な要素があったが、その運が巡ってきたときの当たりは目を見張るものがあった。

自分が放ったドライブのいくつかの写真はいまでも持っている。あらゆる意味で未知の領域だった。フェアウェイキープに最適なドライバーではないかもしれないが、これほど打つのが楽しいクラブにはほとんどお目にかかったことがない。

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2016年には「ビッグバーサ フュージョン」がお目見えした。敢えて言うなら「FT-iZ」のリブートのようなもの。45.5インチと44.5インチのシャフトオプションがあり、当時、キャロウェイは史上最も寛容性の高いドライバーとしてこれを宣伝した。

短いシャフトオプションと三角っぽい形から、「フュージョン」はアベレージゴルファー向けドライバーとして分類されたが、私に言わせれば、これは最近のキャロウェイでは最も過小評価されている作品であり、私たちがこれまでにテストした中で最も素晴らしいドライバーの一つだったといえる。



2017年には「エピックスター」。正直、個人的には期待ほどではなかったが(どちらかといえば金稼ぎ部門という感じ)、ターゲット層(ヘッドスピードが遅い浪費家のゴルファー)にとっては有用性がないわけではなかった。

キャロウェイの不定期リリースとして、「ビッグバーサB-21」は、ドライバー市場最大のニーズを満たすための実用的かつ極めてユニークなアプローチという意味では、数あるモデルの中でも最高のものかもしれない。


「ビッグバーサB-21」ドライバーのターゲットゴルファー

どの新作クラブに対しても当然するべき問い。それは、これは一体誰のため?ということだ。

インパクトがオープンでフェースのあちこちに打点散らばり、上から入ったり、こすり球などの症状があるスイングなら、「ビッグバーサB-21」を考慮すべきだろう。

もし「上記すべてに当てはまる安定したスライス」の持ち主なら、今すぐにクレジットカードのご用意を。ハンク、相棒よ、お前のことだ。

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「ビッグバーサB-21」の技術的な詳細

キャロウェイのマーケティング部門は、おそらく“究極のスライスキラー”として「B-21」ドライバーを位置づけるだろうが、キャロウェイのR&D バイスプレジデント、アラン・ホックネル氏は、「B-21はスライスをなくすというよりもスピン量を低減するもの。非常に寛容性の高い、ドローバイアスのかかったスピン抑制装置です」と語る。

そんなホック博士のシンプルな説明については、語ることがたくさんある。

スライス防止ドライバー市場には、興味深い矛盾点がある。設計の多くは、スライス防止の恩恵のかなりの部分を、「ヒールに置かれたウェイト」と「アップライトなライ角」によってもたらしている。この手のドライバーの大部分は深重心で、多くの場合、中・高重心設計になりがちだ。

キャロウェイ,ビッグバーサ,B-21,ドライバー,フェアウェイウッド 前者は弾道矯正に優れるが、後者はスピン量を増加させる処方。多くのスライス防止設計において、過剰なスピンを防ぐために最低限の努力しか払わないのは何故かという議論が交わされるべきなのにだ。

キャロウェイは、「ビッグバーサB-21」でその問題をもう少し根源的に扱おうとしている。

キャロウェイが、「ビッグバーサB-21」で「ドローバイアス」かつ「アップライト気味」というスライス防止の標準的な手段を採用したのは確かだが、設計の背後にある包括的な前提は、“大幅にスピン量を減らすこと”によるスライスの抑制なのだ。


「ビッグバーサB-21」の打開策

キャロウェイが、スピンをなくすために選んだのは「低重心の浅重心」。比較の意味で、「マーベリック」を浅重心とは言えないが、「マーベリックMax」よりはかなり浅く、そのどちらよりも低重心だ。ある意味、より高い打ち出し角、より寛容性の高いスライス防止版「サブゼロ」と考えればいいだろう。

寛容性に関しては、キャロウェイのまじない的側面もある。キャロウェイは、MOIの観点で「ビッグバーサB-21」がPING「G400 MAX」やPXG「0811 XF」に及ばない可能性があることを認めている。

そして「マーベリック」と同様に、ボールスピード維持(寛容性の方程式の重要な要素)の大部分は、「B-21」のために特別設計されたAIにより生み出されたSS21チタンフェースによってもたらされる。

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そのフェースが従来のデザインよりもオフセンターヒット時のスピードを保持するため、キャロウェイは重心を浅く低く置くことが可能になり、それが低く安定したスピン量を生み出し、最終的にこれまでと全く異なる種類のスライス防止/スピン量抑制ドライバーを作ることができたというわけだ。


低スピンの恩恵

これはあくまでキャロウェイ側の話であり、我々としては未検証だが、長年にわたるMost Wantedのテストにより、低スピンのドライバーは一般的にターゲット層以外とみなされるゴルファーにもメリットをもたらすと明確に証明されている。多くの場合、テスターのかなりの割合が、より遠く、より真っ直ぐ飛ばしていることがわかっているからだ。

低スピンによる恩恵にさらに弾道矯正の技術を加え、キャロウェイはもしかしたら何かを成し遂げたのかもしれない。

その他のテクノロジー面には、『ジェイルブレイク』やAIによる『フラッシュフェーステクノロジー』、『Triaxialカーボンクラウン』構造が含まれる。キャロウェイではお馴染みの、これら全てが「ビッグバーサB-21」に搭載されているのだ。

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「ビッグバーサB-21」の美学

「ビッグバーサB-21」は少々型破りであると言ってもいいだろう。やや細長く、明らかに三角形だ。「ローグ」と「BBフュージョン」の間に出来た子に「マーベリックMax」のDNAを少々加えたと表現しても良いだろう。

この形状にすることで、従来のMOIにやや戻り、ターゲット層のゴルファーはアドレスするといわゆる「典型的な低スピンモデル」よりも少し大きく見えるようになっている。

「ビッグバーサB-21」ドライバーでは、厳密にはオフセットではないが、キャロウェイが言うところの“小さめのフェースプログレッション”が採用されている。つまり典型的なドライバーよりもオフセット度合いが大きいということだ。

見た目に関してキャロウェイは全く手を抜いていない。塗装ひとつとっても、「ビッグバーサB-21」は、「マーベリック」シリーズ(悪くはないが)のどれよりも審美的な魅力に溢れており、少なくともそのおかげで“スライス防止モデル”でありながらも「B-21」を所有する歓びを与えてくれる。

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「ビッグバーサB-21」のテスト

メーカー側から提供されたテスト結果は多少盛っているものだとはいえ、キャロウェイのデータは好奇心をかき立てるものだ。

「ビッグバーサB-21」ドライバーのテストでは、キャロウェイはハンディキャップが17以上のゴルファーに焦点を当てた。一般的なテスト参加者はバックスピン量が3,000~4,000rpm。PGAツアーでの平均は約2,600 rpmとなる。

距離を最大化したいと願う中程度から速いスイングスピードのアマチュアにとって、適正な打ち出し角と回転数2,100 rpmの組み合わせはとんでもなく良い数字ということがわかる。

3,000~4,000rpmの回転数だと、自分が望むよりはるかに球が曲がることが多い。

キャロウェイ曰く、「B-21」ドライバーを使用したテスター達は大幅にスピン量を減少させ、最大で600~700rpmも軽減させたという。

それはかなりの効果だ。

さらに重要なのは、スピン量の減少により、スライスを相殺するために敢えて左を狙うのではなく、意図したターゲットに向けて(または少なくともより近くに)狙いを定めることができたということだ。

ターゲットゴルファーへの説明は簡単だ。キャロウェイの「ビッグバーサB-21」はより真っ直ぐ飛び、過剰なスピンや曲がり幅が大きいショットによって距離が犠牲にならず、より遠くに飛ばせるのだ。

実際にあなたの飛距離が変わると断言はできないとしても、キャロウェイは市場において著しく供給が不十分な分野にユニークな製品を投入したと信じているのだ。

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「ビッグバーサB-21」純正シャフト〜戻ってきた「RCH」

キャロウェイは、伝統ある「RCH」シリーズのシャフトを復活させる機会として、「ビッグバーサB-21」シリーズを選んだ。

それはノスタルジックな側面もあるし、そもそも専用シャフトという意味合いなのだろうが、個人的にはアフターマーケットシャフトと同等ではないシャフトに同じ名前をつけるよりも(ここ数年の風潮だ)、ブランド名をつけた方が良い。

「RCH」と言われても誰も得をしたとは思わないだろうが、それが重要なことなのだ。

PINGは独自シャフトを共同開発し、メーカーロゴを配置しているが、それは問題ではない。

キャロウェイはそれに続いているだけだし別に構わないが、ただPINGだったら、シャフトが望ましい結果を出さなかったときに注目を集めてしまう危険性を避けるために、キャロウェイの鮮やかな白いシャフトラベルの色を少し抑えることを勧めるだろう。

「RCH」シャフトは大手シャフトメーカーが製造している。イオンプレーティングが施されており、それにはコストがかかることを考えると、キャロウェイは経費削減を目指しているわけではないとわかる。

ホックネル氏はシャフトについて先調子で安定性が高いと説明。設計の意図は、スイングスピードの速いプレーヤーが強振することなく楽に打てるようにするため、ダイナミックロフトを増やすことにあるようだ。

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ヒットする可能性

ゴルファーがいる限り、スライス補正ドライバーのニーズは常にあった。そして2020年現在、さらにその必要性が高まっているかもしれない。

新型コロナウイルスによって他のことをする機会が制限されているため、初めてコースを訪れるゴルファーや数年ぶりにゴルフをするゴルファーが増え、ゴルフが活況を呈している。

どちらのグループにもスライサーが多く含まれていることを考えると、キャロウェイの「ビッグバーサB-21」が完璧な時期に登場した完璧な製品であると証明できる可能性は極めて高いだろう。

今回の商品は、「マーベリック」の市場優位性を揺るがす存在になるとは言わないが、典型的なニッチ製品のスタートとしては、キャロウェイの新型コロナウイルス前の期待値を上回るパフォーマンスを発揮するのではないだろうか。


「ビッグバーサB-21」のスペック、選択肢および価格

キャロウェイの「ビッグバーサB-21」ドライバーのロフト角は9度、10.5度、12.5度。ロフト/ライ調整機能付きオプティフィットホーゼル採用。純正シャフトはキャロウェイRCH40。純正グリップはゴルフプライドのツアーベルベットソフト。

小売価格は$499.99。9月10日より発売開始だ。

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「ビッグバーサB-21」フェアウェイウッド

当然期待しているだろうが、同シリーズにはフェアウェイウッドもラインナップされている。ターゲットゴルファーはドライバーと同じ。つまり、打ち込み傾向でこすり球、インパクトでフェースオープンかつフェースのあちこちに当たるゴルファーということになる。

ドライバーではそこまで酷くなくても、フェアウェイウッドの場合、地面が邪魔をしてそれらの問題が増幅されてしまうことがある。


「B-21」フェアウェイの設計要素

ここではスピン量を減らす話はあまり出てこない。フェアウェイウッドにおいては、地面から打ったボールに高さを出すことがより重要視されるため、スピン量については難しいところなのだ。

「B-21」 フェアウェイの重要な設計要素は、大型ヘッドと低いリーディングエッジだ。その意図は、ダフることなく、フェースをボールの下に入れられるようにすること、そしてゴルファーがボールを空中に放てるようにすることだ。

それは、高ハンディのゴルファー全般とミッドハンディのゴルファーにも起こり得る共通の問題だ。

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つまり、目標は簡単で高い打ち出し角ということになる。

「B-21」フェアウェイウッドはシャローな形状だ。キャロウェイにとっては初の試みで、目に見えるほどオフセットしている。オフセットによってスライスを補いつつ、よりシャローな形がゴルファーに構えたときの安心感をもたらす。

標準的なフェアウェイウッドを踏んづけて横にちょっと拡げたようにも見えるが、決してやり過ぎてはいない。オフセットについても同様で、すぐには気づかない程度なので、プライドはさておいて、ゴルフの向上に役立つなら使ってもいいと思えるほどだ。

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ユニークな目的重視のフェース

キャロウェイのほとんどのAIフェースと同様に、設計は各ロフト毎に固有のものとなっている。3番ウッドの主要目的は打ち出し角の増加。しかしロフトが高くなるにつれ、ボールスピードの維持が主要目的となる。


短めのシャフト

「ビッグバーサB-21」フェアウェイウッドの純正シャフトの長さは、キャロウェイの従来のものよりわずかに短い。理論上それは飛距離が落ちる処方だが、現実の世界では、シャフトを短くすることによりセンターヒットしやすくなり、シャフトが期待以上の働きをしてくれる。

「B-21」または全く別のものでも、もしフェアウェイウッドで苦労しているなら、シャフトを短くすることで大幅にゴルフが向上する可能性がある。

そして、ご期待通り、『ジェイルブレイク』と『Triaxialカーボンクラウン』も搭載されている。

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スペック、価格、発売時期

キャロウェイの「ビッグバーサB-21」フェアウェイは、3番、5番、7番と9番ウッドのラインナップ。調整機能は付いていない。

純正シャフトはキャロウェイRCH。純正グリップはゴルフプライドのツアーベルベットソフト。

小売価格は$299.99。9月10日より発売開始だ。