キャロウェイが、オフセット、ハイトウ形状、フルフェース溝を復活させる。さらに、同社のウェッジ史上最大の「Spin Pocket」と、最も高い重心設計を組み合わせたのが、新しい『Full Toe SP』だ。
フルフェース溝やハイトウ形状のウェッジが市場から姿を消していたわけではない。ただ、しばらく大きな動きがなかったのも確かだ。それがここにきて、一気に活気づいている。
テーラーメイドは『Hi-Toe 5』を9月3日に発売。クリーブランドも『RTZ』シリーズの「ADAPT」グラインドにフルフェース溝を採用している。そしてその翌日の9月4日、キャロウェイも同じ199.99ドルで『Full Toe SP』を市場に投入する。
ハイトウ+フルフェースというタイプのウェッジを待っていたなら、選択肢は一気に面白くなってきた。

「Full Toe」形状はどこから来たのか
ハイトウ形状のルーツをたどれば、「すべては初代PING『Eye2』ウェッジから始まった」と言う人もいるだろう。確かに、それも間違いではない。
ただし、キャロウェイがこのカテゴリーに本格的に踏み込んだのは2015年。『Mack Daddy PM Grind』の登場が始まりだった。
設計を手がけたのはロジャー・クリーブランド(そう、あのクリーブランドだ)。さらに、キャロウェイの製品戦略担当VP、ジェイコブ・デイビッドソンの言葉を借りれば、「ある左利きのプロゴルファー」から多くの意見を取り入れて開発された。
もちろん、その人物とはフィル・ミケルソン。「PM Grind」の「PM」も彼のイニシャルだ。ただ、さまざまな事情もあり、現在のキャロウェイはその名称から距離を置いている。
さて、話を戻そう。

『PM Grind』はハイトウ形状を採用し、スコアラインをフェースの端まで配置。当時のキャロウェイ製ウェッジと比べて、溝のあるエリアは約39%広かった。そしてこのウェッジは、一部に熱狂的なファンを持つモデルになった。キャロウェイによれば、社内には今でも初代モデルを使い続けている人がいるという。
2019年には2代目の『PM Grind』が登場した。ちなみに私も、まだ1本持っている。64度のウェッジはなぜか手放せない。理由はいろいろあるが、たとえば私は、ときどきコースで無謀な判断をするからだ。
2021年になると、キャロウェイのフルトウ形状は『JAWS』シリーズに組み込まれ、『JAWS Full Toe』として登場した。形状はそれまでより穏やかになり、幅広いゴルファーが構えやすいものになった。その一方で、『PM Grind』にあった独特のクセや尖ったキャラクターは、いくらか薄れたのかもしれない。
「『JAWS』シリーズの一員にしたことで、Full Toeならではの個性が少し失われてしまった」とデイビッドソンは話す。「だから今回は独立したシリーズに戻し、その個性を生かすことにした」
ここが『Full Toe SP』を理解するうえで重要なポイントだ。
キャロウェイが単に新しいフルフェースウェッジを作った、という話ではない。『JAWS』シリーズの中でより幅広いゴルファーに受け入れられる方向へ整えるのではなく、今回はハイトウ+フルフェースというFull Toe本来の個性を、あらためて前面に出した。
つまり『Full Toe SP』は、クセをなくして誰にでも合わせようとしたウェッジではない。フェースを開いたショットや、ラフなどで打点がトウ側にずれやすい場面まで含め、フルトウ形状を積極的に使いたいゴルファーに向けて、その特徴をはっきり打ち出したウェッジなのだ。

ハイトウ+フルフェース溝は何のため?
ハイトウウェッジのメリットを理解するには、まず「どこでボールを打っているか」を考える必要がある。
グリーン周りでは、フェースを開いて打つ場面も多い。そうすると、いつもフェース中央でボールを捉えられるわけではなく、打点は上方向、そしてトウ側へと移っていく。さらにフェースを大きく開いて技巧的なショットを打とうとすれば、一般的なウェッジではスコアラインのないエリアまで打点がずれることもある。
キャロウェイのウェッジR&Dマネージャー、ブライアン・ハーは、実際にその違いをテストしている。
「芝を使ったロボットテストも行ったが、溝のないトウ側で打ったときのスピン低下は非常に大きい。ほとんどスピンが入らず、ナックルボールのような球になる」
そこで『Full Toe SP』は、スコアラインをヒールからトウまで配置した。これにより、キャロウェイの一般的な形状のウェッジと比べて、溝のあるエリアは44%広くなっている。
溝には『Opus SP』と同じ「Spin Gen 2.0」を採用。溝の角度を17度とし、溝同士の間隔も狭めることで、ボールに接触する溝のエッジを増やしている。
ただし、ここには明確な前提がある。トウ側まで溝があることの恩恵を受けるには、実際にそこへ打点がずれる必要がある。
クリーンなライからフェースをスクエアにして打ち、フェース中央で捉えているなら、トウ側まで溝があることによるメリットはほとんどない。
フルフェース溝の価値が出るのは、フェースを開いたときや、ライの影響などで打点がトウ側へずれたときだ。つまり、うまく打てたショットのスピンを無条件に増やすためのものではなく、そうした状況でも溝のあるエリアでボールを捉えられるようにするためのものと考えたほうがいい。
もちろん、性能とは別にフルフェース溝の見た目そのものを好む人もいる。一方で、あの見た目が苦手な人も少なくない。そのあたりは、結局のところ好みだ。

オフセットと丸いリーディングエッジの狙い
新しい『Full Toe SP』は、キャロウェイが直近に発売した2世代のフルトウウェッジとは見た目がかなり違う。それは意図的なものだ。
「ここ2世代で採用してきた従来のFull Toeらしい形状から少し離れて、今回はもう少しクセのある形にした」と、キャロウェイのウェッジR&Dマネージャー、ブライアン・ハーは話す。
「リーディングエッジの丸みもかなり強くしている。フェースを大きく開いたとき、この丸みがあることでリーディングエッジが浮き上がりにくいというフィードバックがある。右へシャンクするのでは、という不安も減り、安心して構えやすくなる」
さらにキャロウェイは、『Full Toe SP』にしっかりとオフセットをつけた。狙いは、打ち出し角を高め、バンカーからボールを出しやすくすることだ。
デイビッドソンは、その例としてジム・フューリックを挙げている。フューリックはウェッジに大きめのオフセットを好み、グリーン周りでも高い球を多用する選手だったという。
ただし、オフセットも万能ではない。フルフェース溝と同じように、ここには性能だけでは割り切れない「好み」の問題がある。
アドレスしたときに、オフセットによるホーゼルの張り出しが気になる人もいる。そう感じるゴルファーにとっては、打ち出し角などの理論上のメリットをいくら説明されても、見た目の違和感までは消えないだろう。

キャロウェイ史上最大の「Spin Pocket」
「Spin Pocket」は『Opus SP』で初めて採用された。簡単に振り返ると、フェース背面に設けた中空構造で、ヘッド下部の重量を減らし、その重量を上部へ再配分することで重心を高くする仕組みだ。
『Full Toe SP』はトウ側の面積が大きいため、中空化できるスペースも広い。その結果、キャロウェイがこれまで採用してきた中で最大の「Spin Pocket」となった。
具体的には、『Opus SP+』より18%、『Opus SP』より35%大きい。さらに、ウェッジとしてはキャロウェイ史上もっとも高い重心位置を実現している。
高重心にする狙いは、スクエアフェースで打ったときの弾道にある。インパクト位置が重心より下になりやすくなることで、打ち出しを抑えながらスピンを増やす設計だ。
一方、前述したオフセットには、フェースを開いたときに打ち出しを高める狙いがある。この2つを組み合わせることで、スクエアに構えれば低めに打ち出し、フェースを開けば高い球を打ちやすくする。キャロウェイは、ひとつのウェッジでこの両方に対応しようとしているわけだ。
「いわば、一本で幅広いショットに対応できるウェッジだ」とハーは話す。「スクエアに構えれば低く打ち出せるし、フェースを開けば高く上げられる」
ここまでで、『Full Toe SP』がどんな性能を狙って設計されたのかは見えてきた。では次に、その狙いを実際のコースで生かすために、どんな選択肢が用意されているのかを見ていこう。

「Jグラインド」と「JWグラインド」は何が違う?
最初に言っておくと、『Full Toe SP』のグラインド展開はそれほど多くない。ただ、このウェッジ自体が用途のはっきりしたモデルであることを考えれば、そこにあまり文句を言うつもりもない。
むしろ、限られた選択肢の中で考えるべきなのは、ウェッジ選びではソール形状が非常に重要になるということだ。
一般的に、ウェッジの「操作性」と「寛容性」は両立しにくい。
ヒール、トウ、トレーリングエッジを削ったソールは、フェースを開きやすく、ボールの下にヘッドを滑り込ませるような多彩なショットに対応しやすい。一方、ワイドでシンプルなソールは、入射角が鋭くなったときにも地面に刺さりにくく、ミスに対する助けを得やすい。
つまり、低バウンスでリリーフを大きくすれば操作性を得やすい反面、小さなミスにもシビアになりやすい。ワイドソールでバウンスを大きくすれば、その性格は逆になる。
『Full Toe SP』では、この2つの方向性に対応するため、「Jグラインド」と「JWグラインド」を用意している。

Jグラインド|フェースを開いて使いたい人向け
「Jグラインド」は従来からある形状だが、今回は細かな調整が加えられている。
大きな変更点は、ヒールからトウ方向、そしてリーディングエッジからソール後方へ向かう方向の2方向にキャンバーを設けたことだ。これによってソール全体に丸みがつき、一度に芝と接する面積が少なくなる。
「ボールの少し手前から入っても、それほどスピードを失わずに済む」とハーは説明する。「それにフェースを開いたときも、ソールの角が強く当たりにくい。多少ポジションがずれても扱いやすくなる」
特に重要なのが後者だ。フェースを開いたときにソールの角が地面へ強く当たると、リーディングエッジが浮き、グリーンを横切るようなトップ気味のミスにつながりかねない。ソールに丸みを持たせることで、そのリスクを抑えやすくしている。
ただし、フルフェース溝と同じように、この形状にも好みはある。丸みのあるソールによってリーディングエッジをボールの下に入れるイメージを出しやすいと感じる人もいる。私もその一人だ。一方で、この見え方を好まない人もいる。
「Jグラインド」は、ロフトが増えるにつれて表示バウンスが小さくなる。54度と56度は10度、58度と60度は8度、62度は6度だ。
これは、フェースを開くほど実効バウンスが大きくなることを踏まえた設定でもある。ロフトの大きなモデルほど表示バウンスを抑えることで、硬いライからフェースを開いたときにソールが跳ねすぎるのを抑えている。
そして62度で6度という設定からも、このグラインドの方向性が見えてくる。単純に「上級者向け」ということではなく、フェースを開くなど、グリーン周りでさまざまなショットを打ち分けたいゴルファーを意識した設計と考えたほうがいい。

JWグラインド|バンカーでソールの助けが欲しい人向け
「JWグラインド」は今回新たに加わった、「Jグラインド」をベースにしたワイドソール仕様だ。設定は62度のみで、バウンスは14度となっている。
「バンカーでは、正直それほど難しいことを考えなくてもいいくらいソールが広い」とハーは説明する。「フェースを開かなくても、そのまま振ればボールを出しやすい。芝の上でもスクエアに構えれば使いやすく、ダフリやトップのミスにも比較的強い」
同じ62度でも、「Jグラインド」は6度、「JWグラインド」は14度。この大きなバウンス差は、両者の性格の違いを分かりやすく表している。
フェースを開きながら、グリーン周りでさまざまなショットを打ち分けたいなら「Jグラインド」。一方、バンカーが苦手で、テクニックよりもワイドソールの助けを借りたいなら「JWグラインド」だ。
「そのうち別の打ち方を覚える」などと言っているうちにシーズンが終わりそうなら、「JWグラインド」に頼るのも悪くない――と書きながら、私もキャロウェイから届いた箱に「JWグラインド」が入っていないか確認してみた。残念ながら、入っていなかった。
ひとつ気になるのは、62度の「Jグラインド」と「JWグラインド」がどちらも右打ち用のみということだ。左打ち用の「Jグラインド」は60度まで。つまり、「JWグラインド」の助けをもっとも必要としそうな、本当にバンカーから出すのが苦手なゴルファーでも、左打ちなら選択肢がない。
キャロウェイは62度モデルでバンカー性能を強く打ち出しているが、こうしたクラブは『Full Toe SP』だけではない。PING『BunkR』も64度、実効バウンス14.5度で、同じようにバンカーからの脱出を助けることを狙ったモデルだ。
バンカーがラウンドのたびに大きな弱点になっているなら、テクニックだけで何とかしようとせず、こうしたクラブの助けを借りるという選択肢もある。

54度からの設定にした理由
『Full Toe SP』のロフトは54度から62度まで。PWやGWに相当するロフトは設定されていない。
「高ロフトのウェッジ、つまりサンドウェッジとロブウェッジの領域に限定している。もともとその用途のために設計したもので、52度、50度、48度まで広げるべきではないと考えている」とデイビッドソンは話す。
これは理にかなっている。
ギャップウェッジはフルショットで使うことが多く、その場合、基本的にはフェース中央付近でボールを捉える。対して『Full Toe SP』の特徴が生きるのは、フェースを開くなどクラブを操作し、打点がトウ側へ移るような場面だ。
ロブウェッジなら、そうしたショットは重要な役割のひとつになる。サンドウェッジでは、たとえば56度をフルショットでどれだけ使うかによって、『Full Toe SP』のメリットを感じる場面も変わってくるだろう。
少なくとも54度より下のロフトまで、この設計を広げる必要性はあまり感じない。

実際に『Full Toe SP』を打ってみると?
Ely Callaway Performance Center(ECPC)のショートゲームエリアで、『Full Toe SP』をしばらく試す機会があった。午後を過ごすには申し分のない場所だが、ここでスピン性能について断定するのは難しい。
ローンチモニターを使ったわけではないし、西海岸の芝には何かあるのか、私はいつもニューヨークで打つときよりボールを止めやすく感じる。その点は差し引いて読んでほしい。
そうした前提はあるものの、ボールは十分にスピンが効いて止まっていた。わずかな上り傾斜に向かって打ったときは、さらにしっかり止まった。
ただ、それが「Spin Pocket」の効果だとは言えない。言えるのは、『Full Toe SP』を打っていてスピン不足を感じることはなかった、ということだけだ。
私にとって引っかかるのは、むしろ見た目だ。
もともと私はハイトウ形状が好みではない。フェースの端まで溝が伸びていることもあって、『Full Toe SP』は構えたときの存在感がかなり強い。市場の多くを占める伝統的なブレード形状のウェッジというより、どちらかといえばヘッドに大きさと安心感を持たせたタイプのウェッジに近い見た目だ。
それでも、打つ球数が増えるほど、このウェッジが気に入ってきた。
もっとも、私は出来のいいショートゲーム練習場で球を打つのが好きなので、そのせいも多少あるかもしれない。

『Full Toe SP』はどんなゴルファーに向く?
『Full Toe SP』が力を発揮するのは、フェースを開いて打つことが多い人、深いラフから打つ機会が多い人、あるいはグリーンを外してピンまでの余裕がない難しい状況から寄せることが多い人だ。
キャロウェイ社内では、このウェッジを「難しい状況から脱出するための切り札」のように表現している。実際、社内テストでもそれに近い評価が得られているという。
逆に、グリーン周りではクリーンなライからフェースをスクエアにしてピッチショットを打つことが多い人には、『Full Toe SP』のメリットはそれほど大きくない。また、構えたときのウェッジの見た目にこだわりがある人や、すでに信頼できるウェッジ構成ができあがっている人にも、積極的に入れ替える理由は少ないだろう。
こうした用途のはっきりしたクラブにバッグの1枠を使う価値があるのは、自分が苦手とする特定の状況を解決してくれるときだ。それによって、ほかのショットが難しくなってしまっては意味がない。
たとえば、深いラフにボールが沈み、ピンとの間にはバンカーがある。そんな場面で「これなら迷わず打てる」と思える選択肢が欲しいなら、それこそが『Full Toe SP』が想定している使い方だ。

価格・発売日・スペック
『Full Toe SP』の米国価格は1本199.99ドル。一般販売は2026年9月4日に開始される。
「Jグラインド」は54度(バウンス10度)、56度(10度)、58度(8度)、60度(8度)、62度(6度)をラインナップ。「JWグラインド」は62度(14度)のみとなる。
54〜60度は右打ち用と左打ち用を用意するが、62度は「Jグラインド」「JWグラインド」ともに右打ち用のみだ。
標準シャフトは「Dynamic Gold S200」、グリップは「Golf Pride Tour Velvet 360」。
なお、2026年8月23日時点で、日本での発売および価格は発表されていない。



