コブラ「KING TOUR」アイアン-重要ポイント

・コブラの新「KING Tour」アイアンは、『Metal Injection Molding(MIM:金属粉末射出成形)』という製造手法を用いて作られた最初のアイアン。

・コブラによると、この製造プロセスによりプレミアムフォージド(鍛造)よりも柔らかい打感が実現できるという。

・「KING Tour」は、上級者向けキャビティバックアイアンで、従来のロフトに近い。


ゴルフ界の「イノベーション」にはさまざまな名称がつけられる。

新しいコブラ「KING Tour」アイアンには、『Thru Slot Speed Pockets(スルースロット・スピードポケット)』(テーラーメイド)や『Super Metal L-Face Inserts(スーパーメタルLフェイスインサート)』(タイトリスト)のような画期的なイノベーションはない。しかし、同時に爆発的な飛距離を約束しているわけでもない。

そして、“ビッグファイブ”の弟分であればなおさら、“イノベーション”といってもそのレベルはさまざまで、斬新さで言えば「KING Tour」は下級扱いだ。

今回の場合、どちらかと言うと「KING Tour」を作るその手法そのものがコブラの“イノベーション”であり、パフォーマンスの向上が期待できるという。

新コブラ「KING Tour」アイアンは、鍛造(フォージド)でも鋳造(キャスト)でもない。実際、『金属射出成形(MIM)テクノロジー』を使った初のフルアイアンなのだ。

つまり、イノベーションの話をするとすれば、『MIM』が今回のそれなのだ。



MIMのキング

コブラは“ビッグファイブ”より規模は小さいが、製造におけるイノベーションに関しては決して引けを取らない。

それが『金属射出成形(MIM)』であろうと『3Dメタルジェット・プリンティング』であろうと、コブラがゴルフクラブ開発に意欲的であることは間違いない。

昨年初めには、「KING MIM」ウェッジで新境地を開拓したが、今回はMIMアイアンのフルセットだ。読者の皆さん、これはもっと深く掘り下げる価値がある。

ところで、『MIM』とは?ゴルフクラブになぜ重要なのか?

『MIM』の歴史は、セラミックを成形する方法として1950年代にまで遡る。その後、1970年代にパーマテック社の創設者であるレイ・ウェイチ氏によって商品化された。ウェイチ氏は最終的にプロセスの特許を取得し、1980年代までに、『MIM』は製造業で広く使用されるようになった。

従来、『MIM』は、医療および歯科用機器、銃器、自動車および航空宇宙用途など、さまざまな産業や商業向け小型部品の製造に使用されてきた。

もしあなたが眼鏡をかけてノートパソコンでこの記事を読んでいるならば、ノートパソコンや眼鏡の「ヒンジ」が『MIM』で製造されている可能性がある。

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その規模は、80年代半ばの約900万ドルから今日の約20億ドルにまで大きく成長した。

コブラとパルマテック社はすでに「KING MIM」ウェッジの開発で協力しているため、パルマテック社の見地が関連しているのは当然だ。

両社はまた、間もなくリリースされるアイアンでも協力関係にあり、まだ明らかにはなっていないが、実際には『3D Metal Jet Printing(メタル・ジェット・プリンティング)』を使用して大量生産されている。


「KING TOUR」の場合

では、「MIMアイアン」はどうなのか?

まず粒子の細かい(10〜20ミクロン)304ステンレス鋼粉末を、高分子バインダーと混合する。これが、『MIM』の製造プロセスで「原料」となるペーストになる。次に、原料を加熱して金型に射出し、粗い鉄のヘッド部分を作成する。

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さらに、ノーメッキヘッドを再び加熱してポリマーの大部分を溶かし、金属だけを残す。これは「グリーン」パーツと呼ばれ、完成品よりも約20パーセント大きくなっている。

最後に、ヘッドを高温炉に通し、残りのバインダーをすべて除去し、粉末粒子を融合させる。このステップは「焼結」と呼ばれ、金属を1,340°C(2,444°F)の融点より低い温度まで加熱する。

これは、実際には従来の鍛造よりも高い温度なのだが。これにより、最大98%の材料密度が形成され、ヘッドは完成形のサイズまで縮小される。

打感には、この“高密度”が重要だ。ステンレス鋼の粒子が元々持つ隙間が、まさしく調理されてなくなるということだ。強いて言うなら、ミズノ「MP-20」アイアンに使用される「Grain Flow Forged HD1025E」とコンセプトが似ている。

『MIM』の製造プロセスは、非常に一貫性、再現性に優れ、従来の製造技術では再現が難しい公差の厳密な管理を可能にするのが大きな特徴である。

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『MIM』が重要な理由

これはコブラ「KING Tour」アイアンにとって何を意味するのか?

同社によると、とにかく「柔らかい打感」を生むという。

「King Tourアイアンは、市場に出回っているどの鍛造アイアンよりも柔らかい。ショートゲームではソフトな感触と一貫性が重要だが、アイアンセット全体でこれらを最適化することで、ゴルファーは多岐に渡るショットパフォーマンスを向上させることができる。」とは、コブラ研究開発部門 副社長のトム・オルサブスキー氏。

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また、新コブラ「KING Tour」アイアンは、決して一芸に終わらない。上級者向けキャビティバックアイアンであるため、上級プレイヤーに役立つと思われる特性も備えている。

1つ目は、トゥにあるタングステンで各アイアンの重心をクラブの中心付近に再配置する。

これは、「ストライクゾーン」(コブラの言葉で)ともいい。そのストライクゾーンの後ろにはTPU(熱可塑性ウレタン)インサートが搭載され、振動を抑えさらに柔らかい打感をもたらす。

他には、各クラブのグリップにはArccosセンサーを備えた標準「COBRACONNECT」が組み込まれている。「KING Tour」アイアンのセットを購入すると、ArccosCaddyの90日間の無料トライアルが利用できる。

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スペック、価格、販売予定

私たちはまだ新しい「KING Tour」アイアンを試していない。しかし、プレスリリースで幾度となく『ソフト』という言葉が使用されていたので、ピンを狙っていくゴルファーには嬉しい性能ではないかと思っている。

詳しい情報が手に入り次第、アップデートしよう。

「KING Tour」のロフトは、“伝統的なアイアンのロフト角”と“現代のアイアンのロフト角”設計の境界と言っていいだろう。

具体的には、27度の5番アイアン、34度の7番アイアン、46度のPWといった設計だ。標準セットは4番からPWで、オプションの3番アイアンとGWはカスタムオーダーで入手可能。

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KBS 「S -Taper 120」や、黒のラムキン「Crossline Connect」グリップは標準装備。もちろん、コブラのカスタムセレクションから、幅広いシャフトとグリップオプションから選ぶことができる。

レフティーには残念だが、「KING TOUR」は右利きモデルのみだ。

「KING TOUR」アイアンは、10月30日から小売店およびコブラのウェブサイトで販売されている。標準セットは1,299ドル。