新型コロナウィルスが、ゴルフ業界にも甚大な影響をもたらしている。今日は、現在ゴルフ業界で起こっていること、そして今後起こりうることについて話したいと思う。

巷からは、「ひどい状況」、「大混乱」、「最悪な状態」といった声が聞こえてくる。

新型コロナウィルスがもたらす現状に向き合うゴルフメーカーや、ゴルフメディア内部の声だ。決して大げさではない。

率直にいうと、新型コロナウィルスによるゴルフ業界への影響は残酷なものになるだろう。

すでに渦中だが、長引くほどそのインパクトは大きくなるはずだ。もう手を打っている企業もあれば、あと数週間で峠を過ぎると信じる企業もある。

ある関係者は言う。「簡単な話だ。思い切って動かなければ、終わる。」

危機を迎えているのは誰もが同じ。近いうちに状況が好転する兆しすら見えてこない。だからといって、すべて悲観的にとらえる必要もない。

この状況を脱した時、前に進み新たな未来を作れるように、ゴルフ業界全体がチーム一丸となって働いているのも現実だからだ。

今はゴルフ業界だけでなく全世界が等しく新型コロナウィルスの脅威に向き合っている。

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これまでのゴルフ業界への影響

現在、アメリカ国内の有名ゴルフショップのほとんどは一時閉店を余儀なくされている。

運営を続けるコースも一部あるが、その数は限られる(先週のNGFのレポートによると全米コースの44%は開けているが、これはNYのコースが閉まる前の数字)。外出禁止を要請する州もある。

ブランドの大小関係なく、日を追うごとに損失を積み上げているのは言うまでもない。

出だしは好調だった。テーラーメイドはドライバーカテゴリーでトップに返り咲き、ブリヂストンの新作Tour Bの売上も好調、ミズノMP-20の勢いも波に乗っていた。それが今では消滅。

・キャロウェイ-正確な数字は把握していないが、少なくとも100人以上の社員が解雇され、300人以上が一時解雇、給与カットも大幅に行った。CEOのチップ・ブリュワー氏の給与も全額カットとなった。

・タイトリスト-カリフォルニア州カークランドにある組立工場と、フェアヘイブンのボール工場は閉鎖、リモートワークが不可能なスタッフは一時解雇とされた。タイトリストの希望としては、できる限り早く全員を再雇用したいと望んでいる。

・ピン-工場は閉鎖。同様に、一時解雇が余儀なくされた。

・テーラーメイド-同社も同じくオペレーション業務は閉鎖した。一部のスタッフを一時解雇し、役員は給与カットを行っている。

・コブラ・ミズノ-大企業と比べて少数精鋭をいく中規模ブランドでは、これまで人員削減を避けてきた。これまでというのは生産を続けていた時期のことで、この状況下で全員勤務はあり得ないだろう。

各社で起きている状況も、新型コロナ終息を前にさらに悪化することもあるかもしれない。


 

今企業が取り組んでいること

多くのメーカーに未処理分の注文が残っているはずだが、これだけで損失の穴埋めは難しい。たとえ正常運転に戻っても、バックオーダーの課題は残る。

そのため、短期的に人員を十分に確保する必要が、急な人員増加や、一時解雇したスタッフを早く戻しすぎると、その後さらなる解雇を招く可能性がある。

『日常』ははるか遠くに離れている。

例えば、デザイナーや設計のような仕事はリモート(遠隔)ワークが可能だし、オンライン飲み会を通して士気を高めることもできる。

それから、今後の「プランニング」も必須だ。今は誰もがあらゆるシナリオを考えている。

・PGAツアーの再開はいつ?

・工場や本社の再開はいつ?

・Dick’sやPGA TOUR Superstoreなどの小売店はいつ開くのか?

・小さなゴルフショップや、プロショップ、フィッターは?

とにかく「いつ?」という質問が目立つが、答えはまだない。もちろん、誰もが再開の目途は立てているだろうし、楽観的に考える人もいるだろう。

2週間なのか、5月には再開できるのか、それとも6月、7月まで続くのか・・・決して、永遠に続くことではないはずだ。問題は確実なことが分からないのではなく、糸口が見つけられないのだ。

相手が新型コロナウィルスでは操作できるはずもなく、特にゴルフメーカーは考えられるあらゆる事態に備えながら、その中でベストを尽くしてやり繰りしている。そのため、今後起こり得る事態への策は、検討段階だ。

決められたシナリオや、決定的な打開策がないのはもはや仕方がない。

関係者の間では、世界的パンデミックによる大規模なシャットダウンや、急な閉鎖について3月以前に囁かれていたが、文字通り「想像すらできない」状態に近づいた。

 

コロナによる短期的な影響

私生活の混乱はもちろんだが、この業界での一番の打撃ははやり『売上』である。

ゴルフ業界はもはや存在していないに近い。最近までラウンドを楽しむゴルファーが見られたが、感染の拡大に伴い、多くの州がゴルフコースを閉鎖した。

そして、多くが再開の目途が立っていない。小売店やプロショップも同様だ。

オンラインでの注文は可能だが、タイトリストやピン、ミズノのようにアメリカ国内で組み立てを行うメーカーは、実質一時保留となっている。発注済みのカスタムオーダーも、もちろん保留のままだ。

ゴルフ業界にとって、このタイミングは最悪とも言える。気候にもよるが、通常3月から6月の間か、その前後で年間の半分近くの売上を見込むからだ。

ゴルフ業界の活力源とも言える第二四半期が、2020年は存在しないも同然となってしまった。

あらゆる予測はしているものの、現在とその後も予想される売上の損失は25-50%まで落ち込むのではないかと言われている。企業によっては、もう少し抑えられるか、これを超える会社もあるかもしれないが。

 

大量に残る在庫

そもそもビジネスにおいて供給と需要は実にシンプルで、現在のような状況に陥った理由は簡単だ。「需要がゼロにもかかわらず、在庫は大量にある」状態なのだ。

ゴルフ界のビッグ4(キャロウェイ、ピン、テーラーメイド、タイトリスト)に加え、メタルウッドでいえばコブラ、アイアンのミズノ、これらのメーカーが実質的にマーケットの90%を占めるが、第二四半期に入った現在、多くの在庫を抱えている状態だ。

これら6社は半年間の売上に相当する在庫を抱えている。

2月初旬ごろは、在庫が枯渇したら海外からの在庫補充に遅れが生じることを懸念していたにもかかわらず、数週間のうちに在庫過多の問題にすり替わってしまった。

さらに、「誰が今500ドルもするドライバーを買うのか?」という問題も囁かれている。過剰に抱えた在庫をさばく方法を誰も知りはしない。

おそらく新型コロナウィルス到来前に新作メタルウッドとアイアンラインをリリースしたキャロウェイやテーラーメイド、コブラは、豊富に在庫を抱えていることが容易に想像つく。

タイトリストも、新作アイアンとウェッジを発表したが、Tシリーズのサイクルの終わりまであと6か月以上のため、在庫の懸念は多少ましだと考えられる。

ピンも同様に、最近G710アイアンと新パターが発売されたが、G400 MAXは発売からすでに2年が経っている。

シャットダウンが発令される前に、G410 PLUSとSFTはサイクルの2年目に突入したばかりで、410LSTももうすぐ2年目を迎える。

タイトリストのように、多少幸運な状況の会社もあるが、この2社でさえも計画より多くの在庫を抱えているはずだ。幸運といっても、ベストな状況からはほど遠いとは思う。

一方の小売店では、商品にホコリがかぶっている状態で、倉庫にも膨大な在庫があり、6月1日までに売り切ることができないその商品の価値は刻々と下がっている。6月というのはあくまで希望的観測で、5月や7月もありえる。

ゴルフメーカーにとって、2020年が過去にないほどの失われた年になることは必至だろう。

 

答えのない解決策

新型コロナウィルスは、どんな防災リスクの中でも最悪なものと認識されつつある。

パンデミックによるシャットダウンは、これまでの破壊的災害のリストには載っていなかったはずだ。

地方の災害はあったが、数か月に及ぶ完全なロックダウンなど、誰も認識していなかった。たとえ認識していたとしても、何ができただろうか?

これに対する策や、絶対的な回復方法はない。いつ正常な機能を取り戻すのか、どんな「正常」が待っているのかさえ分からないのが現実だ。

最終的に決断を下さなければならないゴルフ企業のトップを含め私達にできることは、あらゆる側面を推測しながら、万一に備えて計画を進めることだけだ。

 

現状と今後のゴルフマーケット

確実に分かっていることは、正常に戻ったとき、小売店やブランドが大量に在庫を抱えた状態だということ。

一年で最も忙しい時期の半分が過ぎようとしている。消費者の消費意欲が戻るのか果たして疑問だが、解雇や不安が増す中、一番の期待は「いつゴルファーがゴルフコースに戻ってくるか」だと思う。

私ならゴルフ場に戻れるとなれば興奮を覚えるが、その興奮が“購買”につながるだろうか?そうは思えない。

最終的に正常化しても、こんな疑問が残る。

『一体誰が、500ドルのドライバーを購入するのか?』

コアなゴルファーはクラブに非常に関心があり、概して裕福だが、予見できる限りだと2020年の消費は控えめになるのでないかと思う。

正常に戻ろうが、それが5月、6月、7月だろうが、「需要」が「供給」に追いつくことは期待できない。

在庫過多によってゴルフ企業に与えられる選択は限られ、どれも理想に近いとは言い難いだろう。そして、業界全体でドミノ倒しのような連鎖反応が起こるのではないか。

経済活動が再開される時、ブランドに残された選択肢は以下の3つ。

1.待つ

2.さらに待つ

3.すぐさま行動に出る!

最初の2つは忍耐が必要だが、これまで繁忙期に我慢を強いられることがなかったことを考えると、多くがもう3つ目の選択を取るような気がする。

 

1.待つ

見方によっては、「待つ」ことはつまり新型コロナウィルスが完全に終息すると決めてかかるということに近い。正常に戻り次第、すぐにビジネスを元に戻すということ。

この場合、現状維持でも正常化が幻に終わっても、「待つ」ことでは値下げは避けられない。結局、商品サイクルの終わりには大幅な値下げを余儀なくされ、2021年には計画通りに新商品がリリースされるだろう。

終息を待つことの問題点は、小売店やメーカーが在庫を抱えることになり、年末に向けて大幅な値下げをせざるを得ない。また、値下げした大量の商品と次に発売される新作モデルとの価格競争やフロアスペース争いは避けられないだろう。

 

2.さらに待つ

もうひとつの可能性は、メーカーが「値引き」を一切せず、不可抗力として2020年を受け入れ、SpeedzoneやSIM、Marvrikモデルを2年間継続する。狂っているって?そう思われるのも当然だ。

製品サイクルを継続するのは、当面の在庫問題を緩和するには一番早道だ。名目上は、競争バランスと小売店の利益を維持できる。さらには、新作発表の混乱も招かなくて済む。もちろん、1年延長をしなければ、ペースは変わらないだろう。

2年サイクルを機能させるには、1シーズン毎に商品を切り替えるブランドは、いかに商品ストーリーを色づけし、残り18か月を目新しくさせるか考え抜かなければならない。

現時点で、新商品が待ち構えているタイトリストとピンはタイミング的には絶好だろう。

しかし、明らかな問題は短期的なキャッシュフローが得られないことだ。ゴルフメーカーも小売店もキャッシュを必要としている。終息する頃には、先6か月の販売が論点になるだろうが、彼らにとっての半年は非常に長い重たい。

 

3.すぐさま行動に出る!

爆弾的な選択に聞こえるこのオプションが、一番現実的ではないかと思う。そして、1年サイクルのメーカー2社がこの選択をする可能性は大きい。

少し前は、“焼き畑式”に在庫一掃セールをするのが一般だった。新型コロナが終息したら、メーカーは一気に値引きを加速する。

例えば、新作ドライバーが100ドルオフとか、ドライバー1本購入につきフェアウェイウッドやハイブリッドが無料といったプロモーションだ。アイアンも値引きされるだろう。

このような過激なプロモーションを行えば、効果的に在庫を売りさばくことができ、来年1月には新たなシーズンをスタートさせることができる。

“焼き畑式”が決して完璧な解決策とはいえないが、『在庫』という問題を解決しながら、『次期サイクル』を守ることができる。

まず、メーカーは小売店によってどうするか決める必要がある。小売店は薄利ビジネスだ。過去、焼き畑式で販売していた頃は、ゴルフメーカーは値引き分を次の注文で「補てん」するのが一般的だった。

しかし、よく売れる時期でも、この「補てん方式」は上手く機能しなかった。実際、小売店に商品を強要する形となり、「補てん」だけでは会社を存続できない。

現在多くのゴルフショップが大打撃を受けている中、誰もがキャッシュを必要としているため、2021年の商品発注分への「補てん」はほとんど適正な額面規模ではなくなるだろう。

あるメーカーは、この状況下で先頭を切る会社が小売店と一番いい関係を築くという。

小売店を困難な状況に置くことや、補てん方式は選択肢にはないというが、代替案があるのかは分からない。キャッシュと補てんを合わせれば全員が持ちこたえ、来年には正常なビジネスに戻れるかもしれないが。

次に、特有の価値で勝負するブランドはどうなるのか。ツアーエッジや、ウィルソン、Sub70やベン・ホーガンなどのマイナーブランドは完全に価格で差別化を図る。

これらのブランドを応援する人は常にいるが、もし7月にMavrikやSIMの価格が下がったら、彼らの価値が失われる。そのため、彼らも有名ブランドと同じように危機を感じているだろう。

メジャーブランドが『低価格』のスペースに侵入してきたら、新型コロナウィルスは小規模なブランドまで窮地に追い込んでしまうことになる。

最後に、急激なディスカウントは20年半ば~後半のリリースにも影響する。通常のサイクルなら、ピンの新作ドライバーとアイアンが夏に発売される予定だし、タイトリストからはTSシリーズの後継モデルが後に出るはずだ。

他のブランドが今年の新作モデルですでに苦戦している時に、フルプライスで競うのは難しいどころか、不可能に近い。

ピンはすでに夏のリリースを2021年に後ろ倒しすることを決めている。おそらく、タイトリストも同様の決断をするのではないかと思う。

そして、アグレッシブなディスカウントが得意なキャロウェイは、大胆な値引きに出るのではないかと予想する。大規模と中規模の間に位置するコブラもキャロウェイに続くだろう。

注目すべきは、テーラーメイドだ。私の予想では、3社の中で最も忠実に2年サイクルを守ろうとするのがテーラーメイドだと思っている。

とは言え、他社が2021年新商品に備えて、現商品を値引きする方向に舵を切るならば(ピンG410とタイトリストTSラインはパンデミック前にサイクルの終わりを迎えていたためすでにディスカウント中だった)、SIMの1年延長は現実的な選択とならないだろう。

たとえあったとしても、現時点で解決策を見出した会社は少ないだろうし、上記で述べた内容は終息後の戦略を練りながら、まさに現在ゴルフ企業内部で話されていることだと思う。

 

タイムラインが肝心

もう1点、選択が迫られる最悪のケースがある。開発チームはリモートで働き、設計チームもCADにこつこと向かっている。

アジア地域の工場のほとんどがバックアップしながら稼働しているため、2021年に予定している新商品は準備が整っているのではないかと予想できる。

しかし、オフィスが空っぽなため、海外から届く試作品のテストや検証は限られるのだ。シャットダウンが長引いた場合、メーカーが新商品をテスト・検証する基準に必ず影響が出る。

徹底したテスト・検証が難しい場合、経験値に頼るしかない。「完璧な商品の作り方は熟知している。」とある開発担当者はいう。

しかし一方で、完全にテストされていない商品の開発を進めるのもリスクだとも述べている。今後の行動計画ははっきりと決まっていないと思うが、2021年向け商品は10月までに最終段階に入る必要がある。

新型コロナウィルスが秋まで長引けば、新商品は間に合わないかもしれない。万が一、そのような事が起これば、現在のラインナップを継続させる以外方法はない。

 

確実なことは何ひとつない

今は皆が同じ状況だ。いつ何が起こるのか断言できない。ひとつ言えるのは、ゴルフ業界にいるどの企業も身を削られる思いは同じで、一時解雇したスタッフをいち早く取り戻したいと願っている。

まだ時間がかかるだろう。

唯一恩恵にあずかる者、それは「消費者」だ。おそらく、これまでに見たことのない位の値引きが見られるのでないかと思う。

在庫は多く残っており、普通に考えて正常な2021年を迎えるのは難しい。

消費者の購買意欲はわからないが、ゴルフクラブという贅沢品にお金を費やせる人にとっては、新作ドライバーを400ドルかそれ以下で手に入れられ、無料でフェアウェイウッドやゴルフボールがもらえるチャンスかもしれない。

早くゴルフを楽しみたい。そう願うゴルファーがこの嵐を乗り切れるほど存在していることを願う。

そして、世界にいる6億人のゴルファー、毎シーズン新作クラブをチェックするコアなゴルファーができるだけ早く以前のようにプレーできる日が来ることを望んでいる。

バックミラーに映る物のように、「日常」は思っているより近くにあるかもしれない。


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