ゴルフボールを替えるだけで、プレーはどれだけ変わるのか?
「ボールなんて、どれを使っても大きくは変わらない」
そう思っているゴルファーもいるかもしれない。
しかし、MYGOLFSPYのゴルフボールテストでは、モデルによって飛距離やスピン、弾道などに明確な違いがあることを繰り返し確認してきた。
そして今回、その違いを考えるうえで興味深い実例がPGAツアーにある。
キャメロン・ヤングだ。
ヤングは2025年のウィンダム選手権を前に、使用するゴルフボールを変更した。そして、その後の成績には注目すべき変化が表れている。
もちろん、「ボールを替えたから成績が良くなった」と単純に結論づけることはできない。
それでも、世界トップクラスの選手でさえ、自分のスイングや弾道特性に合ったボールを選ぶことでパフォーマンスが変わる可能性があるとすれば、これはアマチュアゴルファーにとっても無関係な話ではない。
さらに興味深いことがある。
現在ヤングが使用しているタイトリスト「Pro V1x Double Dot」は、USGAとR&Aが提案している「Overall Distance Standard(ODS/ゴルフボールの飛距離を制限するための新基準)」にも適合する可能性があると報じられている。
つまりヤングは、自分のプレーに合うボールを見つけただけでなく、将来予定されているボール規制の影響も受けにくい可能性のあるモデルを、結果的に選んでいたことになる。
では、ヤングはなぜボールを替えたのか。そして、その後何が変わったのか。
ここからデータを見ていこう。
なぜキャメロン・ヤングはボールを替えたのか?
ヤングは長年、タイトリスト「Pro V1x Left Dot」を使用していた。
「Pro V1x Left Dot」はスピン量が多めのボールだが、ヤングの場合、そこにひとつ問題があった。
もともとスピンが多いのだ。
ヤングはヘッドスピードが速く、アイアンではクラブが上から鋭く入りやすい。そのため、もともとスピン量が増えやすいタイプだ。
そこにさらにスピンの入りやすいボールを組み合わせることで、ヤングにとっては必要以上にスピンが増える方向に働いていた。
そこで転機となったのが、マサチューセッツ州にあるタイトリストのパフォーマンスセンターでのテストだった。
ヤングはそこで、通常の製品ラインにはないプロトタイプ「Pro V1x Double Dot」をテストする。
「Double Dot」は「Left Dot」よりスピンを抑えたモデルだ。
ヤングが気に入ったのは、その弾道だった。
本人によれば、自分がイメージする高さの弾道が出て、頂点でもボールがフワッと浮かず、そのまま落ちてくるように見えたという。
ヤングにとって、それは弾道の一貫性を感じられるサインだった。
そして2025年のウィンダム選手権。ヤングは開幕ラウンドのわずか48時間前に、「Pro V1x Double Dot」を実戦投入することを決めた。
結果は、2位に6打差をつけて優勝。大会のスコア記録にも並んだ。
PGAツアー94試合目。それまで7度の2位を経験していたヤングにとって、待望のツアー初優勝だった。

ボール変更後、何が変わった?
最もはっきりと変化が表れたのが、アイアンでグリーンを狙うショットだ。
ボールを変更する前の2025年シーズン、ヤングはアプローチショットで平均するとフィールドに対してスコアを落としており、「SG:アプローチ」はPGAツアーで129位だった。
ところがボール変更後、その数字はプラスへ転じ、その後も好調を維持している。
2025年のフルシーズンと2026年の現時点で、主なスタッツを比較するとその変化がよく分かる。
| スタッツ | 2025年(フルシーズン) | 2026年(現時点) |
|---|---|---|
| SG:アプローチ | -0.124(129位) | +0.486(19位) |
| パーオン率 | 64.18%(159位) | 69.14%(20位) |
| フェアウェイキープ率 | 53.85%(167位) | 61.90%(40位) |
| 平均スコア | 70.06(86位) | 69.00(4位) |
| SG:トータル | +0.802(19位) | +1.703(3位) |
特に目を引くのが「SG:アプローチ」だ。
129位から19位へ。
パーオン率も159位から20位まで上昇している。ヤングがボールを変更したあと、アイアンでグリーンを狙うショットの数字には大きな変化が表れている。
もちろん、この改善すべてをゴルフボールだけの効果と考えることはできない。
しかし、もともとスピン量が増えやすかったヤングが、よりスピンを抑えたボールへ変更した。その後、特にアプローチ関連の数字が大きく改善しているという事実は、「自分に合ったボールを選ぶことがどれだけ重要なのか」を考えるうえで興味深いデータだ。
アプローチはどう変わった? ボール変更前後を比較
では、ボール変更の前後で「SG:アプローチ」が実際にどう変化したのか、大会ごとの数字を見てみよう。
「SG:アプローチ」は、アプローチショットでフィールド平均に対してどれだけ打数を稼いだかを示す指標だ。プラスなら打数を稼ぎ、マイナスなら打数を失ったことを意味する。
以下は、ボール変更前と変更後の主な大会における「SG:アプローチ」の比較だ。
ボール変更前
| 大会 | SG:アプローチ |
|---|---|
| コグニザント・クラシック | -1.17 |
| アーノルド・パーマー招待 | -0.57 |
| バルスパー選手権 | -1.53 |
| マスターズ | -0.49 |
| RBCヘリテージ | -0.97 |
| 全英オープン | -0.52 |
ボール変更後
| 大会 | SG:アプローチ |
|---|---|
| ウィンダム選手権 🏆 | +0.77 |
| フェデックス・セントジュード選手権 | +1.14 |
| ツアー選手権 | +1.41 |
| ジェネシス招待 | +1.49 |
| アーノルド・パーマー招待 | +0.81 |
| ザ・プレーヤーズ選手権 🏆 | +2.01 |
| マスターズ | +1.02 |
| キャデラック選手権 🏆 | +0.57 |
違いは一目瞭然だ。今回取り上げた変更前の大会では「SG:アプローチ」がすべてマイナスだったのに対し、変更後はすべてプラスになっている。
結論:自分に合うボールを選ぶ意味
もちろん、キャメロン・ヤングのキャリアが好転した理由を、ゴルフボールだけに求めることはできない。
しかし、だからといって「ボールはまったく関係なかった」と言い切れるだろうか。
何度も優勝争いをしながら勝ち切れなかった実力者が、自分のスイング特性に合うボールを見つけ、その後3勝を挙げた。少なくとも、その変化を無視することはできない。
確かなのは、ヤングが自分のスイングに合わない方向に働くボールではなく、自分の特性を生かせるボールを探したということだ。そして、その直後から成績にも大きな変化が表れた。
これは、ツアープロだけの話ではない。
私たちに「Pro V1x Double Dot」のようなプロトタイプが必要なわけではない。重要なのは、自分のヘッドスピードや弾道、スピンの傾向に合ったボールを選ぶことだ。
ゴルフボールが変われば、飛距離だけでなく、弾道やスピン、アイアンショット、グリーン周りでの性能も変わり得る。
だからこそ、「どのボールが一番いいか」ではなく、「どのボールが自分に合うか」を考えることが重要なのだ。




