・フジクラは「VENTUS(べンタス)」シャフトシリーズに「TRブラック」と「TRレッド」の2本を追加

・「TR」モデルは中間部の捩れ剛性を高めている

・希望小売価格350ドル


フジクラシャフト「VENTUS(べンタス)」シリーズに、新たに「TRブラック」と「TRレッド」という2本の兄弟モデルが加わる。

これにより「VENTUS」の“親類縁者”は合計6本となった。2019年、フジクラは「VENTUSブルー」シャフトを発売、その後まもなく「VENTUSブラック」と「VENTUSレッド」を登場させている。

補足:3年間というのはフラッグシップモデルのシャフトにしてはかなりの“長期政権”だ。一般市場とツアーともに2年目のほうが、人気が高かったという事実も同じく滅多にないこと。

フジクラ「VENTUS(べンタス)」はシャフト界のヘビー級王者として君臨し続けている。派手なベルトの代わりに、おったまげるような小売販売数量とツアーでの使用統計数を誇っているのだ。

PGAツアーとPGAチャンピオンズツアーにおいて25%ものプレーヤーがドライバーに「VENTUS」を挿しているのも、もはや驚くべきことではない。

時にはフジクラ「VENTUS」が“PGAツアーの純正シャフト”と言っても良いのかもしれない。


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なんて冗談はさておき、今年初め、フジクラは「VENTUSブルー」の『VeloCore(ヴェロコア)』構造を維持しつつ、中間部に超高剛性カーボンファイバーのスプレッドトウレイヤーを追加した「VENTUSTRブルー」シャフトを導入した。

「TRブラック」と「TRレッド」でも「VENTUSブルーTR」シャフトと同じ材料を採用。フジクラによるといずれも「ゴルファーが最も必要とする箇所」の捩れ剛性を高めて打ち出し角とスピン量を下げることを目指した結果だ。

新素材の適用がうまくハマっても、その素材が他の製品でも同様の効果を発揮できるかどうかはまた別問題だ。フジクラはこれについても高らかに「当然イエスだ」と答える。


VRNTUS(べンタス)シャフト「TRブラック」と「TRレッド」

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「TRブルー」シャフトが「VENTUSブルー」と「VENTUSブラック」の間に位置するならば、「TRブラック」シャフトはさしずめ「超VENTUS」ってところ。「VENTUSブラック」が頑丈なら「TRブラック」は骨太だ。

「TRブラック」の性質はまさにフジクラの言う通り、より硬い中間部を備えた、低打ち出し角、低スピン量バージョンの「VENTUSブラック」シャフトとなる。

「TRレッド」も同じく、標準の「VENTUSレッド」シャフトを少し強化したものだ。その違いもこれまた同じく、中間部に超軽量の『Bi-axial Spread Tow material(バイ-アクシアル スプレッド トウ マテリアル)』を追加したことによるもの。

※バイ-アクシアル スプレッド トウ マテリアル:シャフトの最外層に使用される独自の開繊クロス材。中間部の捻じれと曲げ剛性を高め、球の散らばりを軽減する。

フジクラ「VENTUS」シャフトが「VENTUS」たる所以は、バイアス層(シャフト軸に対して斜めに巻かれたカーボン層)に採用されたフルレングス(シャフト全長)の『超高弾性70カーボンファイバー』にある。この隠し味が性能におけるかなりの原動力となっている。

とはいえ、『VeloCore(ヴェロコア)』テクノロジーこそが「VENTUS」の『VeloCore』モデルのシャフトを定義する素材であり、技術的特徴であることに変わりはない。

結果的に「VENTUS TR」シリーズは、初代「VENTUS」と全体的には同じフィーリングを保ちつつ、中間部の捩れ剛性が高められたモデルとなっている。


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というわけで、「VENTUS」および「VENTUS TR」シリーズそれぞれの打ち出し角/スピン特性を大まかに特徴付けるとこんな感じになる:「VENTUSレッド (高/高)」、「VENTUS TRレッド (中/高)」、「VENTUSブルー(中/中)」、「VENTUS TRブルー(中/低)」、「VENTUSブラック(低/低)」、「VENTUS TRブラック(超低/低)」。

シャフトの打ち出し角とスピン特性を語るうえで、注意すべき点を伝えておこう。まず、シャフトの特性は相対的だということ。たとえば、「VENTUSブルー」は、「VENTUS」シリーズにおいては「中打ち出し角/中スピン量」特性とされている。

しかし、そもそもフジクラの「VENTUS」シリーズは全て、多くの競合他社よりも打ち出し角とスピン量が抑えられていることを忘れてはならない。

例えるなら、同じ学校で代数Iを教える教師が2名いるとして、生徒は皆どちらのクラスがより難しいかを知っているようなものだ。加えて、製品の特性に関係なく、シャフトというものは個々のスイング特性によって異なる性能を発揮することを考慮する必要がある。

これら諸々を考えたうえで350ドル分の大間違いを避けるために、資格を持つフィッターと協力してシャフトを選ぶことをオススメする。


フジクラ「べンタス TR」シャフトの見た目

前述のとおり、「VENTUS TR」のベースカラーに変更はない。ただし、小さな黄色の“TR”エンブレムと、中間部に露出したカーボンファイバーは注目すべき変更点だろう。

視覚的にテクノロジーをアピールすることは消費者に好意的に受け入れられることが多いため、こういったさりげないアレンジは大いに評価できる。


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私見

私は過去2年間、ドライバーに「VENTUSブラック6X」を挿している。これは、私の半ば暴力的ともいえる重心移動癖と動きすぎる手元にはピッタリのマッチング。しかしなにより重要なのはその効率のよさだ。

別の言い方をすれば、自分の場合、最高でもボール初速が0.45〜0.89m/s程度速くなるだけかもしれないが、その初速を生み出す頻度の高さが魅力的なのだ。

「VENTUS TRブラック」シャフトを試す前は、「VENTUSブラック」から挿し替えるなんて全く想像もしていなかった。使い勝手に何の不満もないシャフトを替える必要なんてないからね。

ただ、興味はある。まだなんとも言えないが、最初のテストでは「VENTUS TRブラック」のほうが、わずかにスピン量が抑えられ、打ち出し角も1度ほど低くなっていた。もちろんこれはあくまで私のケースに過ぎないが。

もし高度5,000フィート(1,524m)でプレーするなら、低スピンは必ずしも良いことではない。私自身はバックスピン量が2,500~2,700rpmあたりで、14度前後の打ち出し角がしっくりくる。今使っているフジクラ「VENTUSブラック6X」の数値はちょうどその中間ぐらいだ。

「TRブラック」の利点は、高く右に出る(スライスする)球の遙かに多すぎるスピン量を少し減らしてくれること。但し、「TRブラック」のスピン傾向は理想的とは言えないかもしれない。もろもろ考慮した結果、ドライバーのロフト角を10度に上げて何が起こるか実験したいというのが今の考え。乞うご期待だ。


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また、今5番ウッドに挿している「VENTUSレッド8X」を「VENTUS TRレッド」に変えたらどうなるかにも興味をそそられる。

ドライバーのケースと同じく、「VENTUS レッド8X」は自分にとって文句ナシのシャフトだけど、必要なスピン量/打ち出し角にするために1インチほどチップ(先端)をカットする必要があった。

後継モデルをリリースする上での課題は、どうにかして初代を改善し、明らかに良いものにしなければならないということ。

「続編」のほとんどは『ボールズ・ボールズ II』止まりで『トップガン マーヴェリック』レベルにはなかなか到達しないものだ。

その煩雑な作業を考えると、フジクラ史上、最も成功したシャフトである「VENTUS」を次世代に置き換えるより、シリーズを“拡張”するほうが賢明であるのは間違いない。

結論として、「VENTUS TR」はおそらく、標準の「VENTUSブラック」や「VENTUSレッド」で打ち出し角とスピン量を微調整するために意図的に先端をカットする必要があったゴルファーにはもってこいだ。

また、3種の「VENTUS TR」シャフトはいずれも、フィッターが各プレーヤーの理想的な打ち出し角とスピン量を調整できる自由度を与えてくれるということを憶えておいて欲しい。

これから先、フジクラがどこに向かうのかが気になるところだ。シャフトの達人たちは、グラファイトデザインが大ヒットシリーズ「TOUR AD」ブランドの下、うまいことシリーズ全体を構築し、それを調整、活用することで実に13もの製品を生み出したという成功例を踏襲するかもしれない。

果たしてフジクラも「VENTUS」でその路線に進むのだろうか?


価格・発売時期

フジクラシャフト「VENTUS TRブラック」「TRレッド」は、8月下旬よりフジクラの正規販売店を通じて発売される予定。小売価格は350ドル。

※現在のところ日本では未発売となっている。