コブラ「KING」ウェッジの新作を見て、何かが消えたと感じるかもしれない。

ウェッジカテゴリーをより統一感のあるラインにするために、コブラは「SNAKEBITE(スネークバイト)」の名称を廃止した。その代わりに、全てが「KING」シリーズに統合されている。

これは、シンプルにすることでブランディングを強化し、市場での混乱を最小限に抑えることを目的としている。

もちろん、これらが意味を持つためには、ウェッジがしっかりと優れた性能を発揮することが前提だ。そして、その性能の鍵を握るのがテクノロジーだ。

そこでコブラは、新たな「KING」シリーズをレベルアップさせることで、市場での競争力を高めることを狙っている。


コブラ「KING」ウェッジのブラックモデル。バックフェースのテクスチャーが特徴的。

完全な「MIM」構造

「SNAKEBITE」シリーズ以前、コブラは「MIM」ウェッジを展開していた。今回は、ステンレススチールの代わりに「8620カーボンスチール」を採用している点が異なる。

もっとも、ゴルファーがそこまで素材を気にするとは思えない。

しかし、一部のゴルファーにとって重要かもしれないのは、この「8620カーボンスチール」を採用したことで仕上げの選択肢が広がったという点だろう。


「MIM」とはなんぞや

「MIM(Metal Injection Molding:金属射出成形)」を知らない人のために説明すると、これは一般的なゴルフクラブの製造方法とは違い、「MIM」は金属の粉末(この場合は「8620カーボンスチール」)を用いる。金属粉末に結合材を混ぜ合わせてペレット(小粒)状に成形するところから始まる。

ペレットは加熱され、金型に注入。出来上がるのは、完成品のヘッドより25パーセント大きい“グリーンパーツ”と呼ばれるものだ。

“グリーンパーツ”は高温加熱されることで結合材が溶け出す。金属粒子が結合したところで完成したヘッドは、その後メッキされ、ミーリングされて、最後にロボットによって研磨される。

「MIM」製造の利点は、より精密な製品ができあがるということ。重量、ロフト角、ライ角、その他の主要スペックの公差を鋳造製法より50%抑えることができるという。

そして「MIM」構造では、鋳造よりも滑らかな粒状構造が形成され、鍛造モデルに匹敵する打感が得られるというのがコブラの見解だ。


コブラ「KING」ウェッジのソールとグラインドオプション

「Flight Window」テクノロジー

実際のところ、『Flight Window』テクノロジー自体は、コブラが業界のトレンドに追いついたことを示しているにすぎず、革命的とは言い難い。

これは「KING」ウェッジが『プログレッシブ重心設計』を採用していることを少し斬新かつワクワクする言葉に置き換えただけだ。

つまり、ロフト角が大きくなるにつれて、重心がクラブヘッドのより高い位置に移動するということだ。

これにより、高ロフトのウェッジではスピン量が増えてフラットな軌道を描くことになる。

コブラは、狙い通りの弾道を実現するために、トップラインを従来より22パーセント厚く再設計した。

また、多くの競合他社とは違い、コブラはすべてのロフトでホーゼルの長さを一定に保ちながら重心位置を高く設定している。これは一部のゴルファーにとって興味を引くポイントかもしれない。


プログレッシブグルーブ

これは目新しいことではないが、触れておく価値はある。コブラはロフト角に応じて溝(グルーブ)の形状を変えている。

とはいえ、これは業界全体で広く採用されている設計だ。ポイントとしては、低ロフトのウェッジでは溝が狭く設計されており、高ロフトのウェッジ(56~60度)では溝が広くなるということだ。

この設計によって、低ロフトのウェッジはアイアンのような弾道を描き、スピンの最大化が必須ではないショットに適している。

一方、高ロフトウェッジでは溝を広くすることで抜けが良くなり、コントロールショットでより多くのスピンを生み出す。


再設計された「スピードノッチ」

コブラ「KING」ウェッジ ブラック仕上げの詳細。バランスの取れた重量配分と高精度ミーリング。

このノッチ(切れ込み)は、フィル・ロジャースと初代の「トラスティラスティ」にまで遡る、コブラウェッジ独自の機能だ。

ノッチをなくすことについては長年議論されてきたが、同社はこのノッチが性能上の利点をもたらすと考えている。

「KING」ウェッジの特徴の一つとして、コブラは「スピードノッチ」のサイズを大幅に拡大した。新設計では「SNAKEBITE」より67%大きく、エッジの突起もより滑らかになっている。

この新設計は、コブラのツアー担当ベン・ショーミンが同社契約プロのために行ったカスタム処理をかなり忠実に再現している。

コブラによると、ノッチ(切れ込み)を大きくすることで、芝からの抜けがさらによくなり、リーディングエッジの座りは芝と同じ高さになるという。

そしてこれが、コブラが余剰重量をクラブヘッド上部に配置できた理由のひとつでもある。


グラインドオプションの拡充

コブラ「KING」ウェッジの各グラインドモデル。グリーンのデザインが際立つソール形状。

コブラのグラインドオプションはこれまで他社に比べて限られていた。しかし、「KING」ウェッジでは従来よりも多くの選択肢を提供しており、市場のトップたちに追いつくための一歩を踏み出している。


ドロップ(D)グラインド:コブラのDグラインドは、「KING」シリーズにおいて唯一ノッチのないウェッジだ。中幅のソールでハイバウンス(12度)、トレーリングエッジの削りは最小限に留まる。

これは、通常〜ソフトなコンディションや、入射角がスティープなゴルファーに合うスペックだ。

コブラのDグラインドのラインナップは52、54、56、58、60度。


ワイドロー(W)グラインド:Wグラインドはその名の通り幅広ソールとローバウンス(8度)のモデル。

Wグラインドは、柔らかいバンカーや、その他いわゆるソフトなコンディションに適している。

ローバウンス(番手によって4〜7度)にもかかわらず寛容性も高い。入射角がニュートラルからスティープなゴルファー向け。

Wグラインドのラインナップは56、58、60度。


ヴァーサタイル(V)グラインド:過去のコブラウェッジを継承しているVグラインドは、多くのゴルファーが使いやすいと感じる万能グラインド。

ヒールとトゥが削られていることで、フェースを開きたいプレーヤーにとって使い勝手の良いモデルで、通常〜硬めのコンディションや、入射角がニュートラルからシャローなゴルファー向けとなっている。

コブラで一番人気のVグラインドは、48度から60度まで全ロフトが揃うラインナップとなっている。


ツアー(T)グラインド:『MyGolfSpy』のウェッジ記事を読んだことがあるなら、Tグラインドが何であるかは重々承知だろう。その点コブラにブレはない。

Tの解釈にあたり、コブラはリッキー・ファウラーと協力して、ヒール、トゥ、そしてトレーリングエッジを大胆に削って「スピードノッチ」に繋がるグラインドを作り上げた。

これまでのTグラインド同様、寛容性を犠牲にすることで操作性を高めたことが特徴。その点を考慮すると、通常〜硬めのコンディション、タイトなライ、シャローかつ正確なクラブ運びをするゴルファーに最適なモデルだ。

コブラ「KING」の Tグラインドラインナップは58度と60度。


朗報悲報

朗報は、コブラが主力ウェッジのラインナップを大幅に拡充したことだ。一方、残念ながら左利きのプレーヤーが使えるのは依然としてVグラインドに限られるということだ。


その他の詳細

コブラ「KING」ウェッジの3種類の仕上げ(クローム、ブラック、サテン)。仕上げによる違いを比較。

コブラ「KING」ウェッジの仕上げは、サテン、ブラックQPQ、ロー(厳密には仕上げではない)の3タイプ。

純正シャフトはダイナミックゴールド「Spinner Tour Issue」。標準グリップはラムキン「Crossline」だ。

小売価格は、サテンとブラックが169ドル。ローウェッジは189ドルとなっている。

シャフト:「ダイナミックゴールドEXツアーイシュー」/「N.S.PRO MODUS³ TOUR105」

ツアーサテン / ブラックサテン:¥27,500(税込)

ノーメッキ¥28,600 (税込)※受注生産のみ

3月7日より販売開始。


「KING X」ウェッジ

コブラ「KING X」ウェッジの2本セット。バックフェースデザインが特徴的。

コブラはこれまでと同様に、主力ラインナップに加え、より大型のスコア改善型(初・中級者向け)モデルを追加する予定だ。

主力の「KING」シリーズ同様、「KING X」ウェッジはフルMIMを採用している。キャビティバックデザインは、アンダーカットキャビティを特徴としており、余剰重量20gを周辺部に再配分することで寛容性を高めている。

打感をソフトにするため、空洞部分には「TPUインサート」が充填されている。

「KING X」は全番手に単一のグラインドを採用した万能モデルで、ヒール、トゥ、ミッドソールを削った幅広ソールを採用している。

「X」以外のウェッジとは異なり、ノッチはない。


コブラ「KING X」ウェッジの分解構造。重量配分と内部設計が見えるカットモデル。

「KING X」ウェッジに向くタイプとは?

一般的なウェッジが、基本的には高ロフトの競技志向者向け(上級者)アイアンに近いことに気づいているかもしれない。

多くの人にとってはこれで問題ないものの、スコア改善型向け(初・中級者)の中には見た目も操作性も彼らが使うアイアン寄りのウェッジを好む者もいる。

つまり、より大きくて寛容性の高いウェッジを求めるゴルファーもいるということだ。

「KING X」は、大きすぎたり不格好に見えることなく、その要望にぴたりと当てはまる。

ウェッジでダフりがちなプレーヤーなら、これは間違いなく検討に値するウェッジだろう。


スペック、発売時期、価格

コブラ「KING X」ウェッジのラインナップは48度から60度。全番手に左利き用があるが、ギャップウェッジ(48~42度)はカスタムオーダー対応となる。

純正スチールシャフトはダイナミックゴールド「Vector 90」。カーボンシャフトはKBS「PGI 75」。純正グリップはラムキン「Crossline」だ。

小売価格はスチールが169ドル、カーボンは179ドル。

3月7日より販売開始。