テーラーメイド「Qi10」ドライバーシリーズの画像が初めて世に流出してからというもの、そのモデル名について数々の憶測が飛び交っている。


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結局のところ、テーラーメイドに大きな価値のある“Quest for Inertia(慣性の探究)”と、世界で一番「寛容性」が高いドライバーを作るという同社が掲げた目標を意味している。

同様に、テーラーメイドは「Qi10」(具体的には「Qi10 MAX」だと思う)の登場で、“世界初の10Kドライバー”に名乗り出た。これは厳密に言えば正しいが、私が思うに(予告しておくけど)その地位はほんの少しの間だけに過ぎないだろう。



MOI(寛容性)が1万(10K)でもルール範囲内

ご存知の方も多いだろうが、USGAの上限MOI(慣性モーメント)は5,900だ。これに関して重要なのは、規則が一軸に適用されているということ。ほとんどの場合、ヒールからトゥまでのMOIを意味しているが、上下方向のMOIも適用することで、合計MOIを1万以上にすることは可能だ(さらにUSGAルールにも適合)。


2024年は「真っ直ぐ」な年

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他でもお伝えしたように、2024年のドライバー部門は「真っ直ぐな年」になりそうだ。何よりも初速を優先してきた歴史を持つテーラーメイドにとって、これは特に興味をそそられることだろう。

テーラーメイドが反MOI派だなんてことはないが、従来、「初速」と「寛容性」は“相反する力”だ。一方を優先すれば、通常は他の何かを諦めなければならない。

高いMOIのトレードオフとして、基本的に、エアロダイナミクス(空力特性)の効率の低下や、重心位置に起因する高スピン軽減とボール初速の低下、あるいはヘッド重量増によって起こり得るヘッドスピードの低下などが挙げられる。

今回の「Qi10 Max」はそうではない。「我々は妥協などしていない」というのはテーラーメイドのプロダクション・クリエーション・シニアディレクターのトモ・ビューステッド氏。「妥協を破壊しているのだ」。


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つまりテーラーメイドは、「初速」と「寛容性」のバランスをもたらすのではなく、これまで以上の(そして十分な)「寛容性(あるいは少なくとも高MOI)」を備えつつ、同社に期待される初速を提供しているという意味だ。

テーラーメイドでは、「SIM2」以上の改善は全てのゴルファーにおいて大切で意味のあることだと考えている。これは机上の空論ではなく、みなさんも気付くに違いないとテーラーメイドは確信しているのだ。

でも、どうやってその性能を手に入れた?

テーラーメイドには、ドライバー設計における従来の妥協点を克服するために取り組むべく領域が3つあった。


テーラーメイド「Qi10」ドライバー – 素材

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「素材」といえば、まずテーラーメイドのカーボンフェースから始める、というより続きがある。多くの点でフェースそのものは「ステルス2」から変わっていない。

『60層のカーボンファイバー』はそのままで、フェース上からこの言葉は削除されたが、『ツイストフェース』は存在している。また、テーラーメイドの『インバーテッド・コーン』テクノロジーも搭載されており、フェース全体の初速も維持されている。

根本的には、フェースそのものではなく、それを支える周辺の構造を改善することがテーマだ。

テーラーメイドが「ステルス2」でフェースが剥がれてしまう問題を抱えていたことは、それなりに知られているが、今回の新設計では、フェース周囲の金属の間に集中してかかるストレスを軽減している。

より柔軟性がある構造にフェースが連動し、オフセンターヒット時のパフォーマンスが向上するのだ。

また、フェースカラーがブルーになった。


インフィニティ・カーボンクラウン

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お次の素材はテーラーメイドの新『インフィニティ・カーボンクラウン』デザインだ。「Qi10 Max」はこれまでで最大のクラウンが特徴。前作のデザインでは、クラウンに使われているカーボン使用量は80%をやや下回る程度だったが、今回はクラブ上部の97%をカバーしている。

クラウンとフェースの設置部分には目視できる凹凸などがなく、両者が別々の素材だとは思えない程一体化して見える。

この超洗練されたラインは、アライメントの課題を引き起こすリスクがあるが、テーラーメイドはこれを防止するために、「ステルス2」のフェアウェイウッドからドライバーまで採用している白い一本線のアライメントエイドを採用した。

またいつもながら軽量化がポイントとなるが、これにより「Qi10」ドライバーシリーズに独特の「見た目」ももたらしている。

そしてクラウン自体は、カーボンの折り目模様がさりげなく見えるものの、カラーはディープブラックになっている。


新ヘッド形状

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2つ目の領域は、テーラーメイドが『イナーシャ・シェーピング』と呼ぶドライバーシャーシの再デザインにある。

「Qi10」と「Qi10 Max」は投影面積が大きい。数字上、「Qi10 Max」の方が10%大きいが、ここでもっと大切なことは、それでいて「Qi10 Max」はUSGAルールの上限サイズになっているということだ。


ウエイト(再)配分

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最後になるが、こうした素材を採用しヘッド形状にしたことでウエイトを再配置することが可能になった。その再配置する方法は色々あるが、今回はウエイトを最も端に寄せている。

「Qi10」ドライバーシリーズは、ハイトゥ部分とホーゼル部分にあるマスパッド(インターナルウエイト)が特徴。またクラブ後方には大きなウエイトが固定されている。

数年前に紹介したコブラ「RADSPEED(ラッドスピード)」を覚えている人なら、こうすることで「回転半径」が大きくなることがご理解いただけるだろう。

つまり、重心からかなりの量のウエイトを押しのけることで、モデル間での明確な「パフォーマンスの違い」を生み出すことを目的としている。

※回転半径とは:物体の回転軸を伴う同軸の円柱面の半径のことで、物体の質量全体がその表面に集中している場合、慣性モーメントと回転エネルギーは変化しない。

テーラーメイド史上最も「寛容性」が高いドライバーになったことに加え、40年以上に渡る同社ドライバー史の中で、前年比では最大となるMOI増を実現したというわけだ。


テーラーメイド「Qi10」ドライバー – 3モデル

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ここ数世代と同様、テーラーメイド「Qi10」ドライバーシリーズは3モデルある。今回はモデル間の差別化も大きく なっており、ゴルファーもどのモデルが自分に合っているのか分かりやすくなるはずだ。


テーラーメイド「Qi10 Max」ドライバー

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念の為に言っておくが、3モデルの中でMOI(慣性モーメント)が10,000を超えているのは「Qi10 Max」だけだ。

テーラーメイドの「ロフトスリーブ」以外の調整機能は搭載されていないが、固定された後部ウエイトはなんと32gある。

お伝えしている通り「Qi10」のヘッド体積は460ccだが、この「Qi10 Max」についてはUSGAのサイズ上限。

そのため課題もいくつかある。

重心が後方部にあると質量特性も変化する。これによりゴルファーのクラブの動かし方も変わってしまうので、テーラーメイドは「Qi10 Max」がインパクト時にスクエア(真っ直ぐ)になるように設計を行った。

また一般的にヘッドが大きくなるとエアロダイナミクス(空力特性)が不利に働くため、テーラーメイドも「Qi10 Max」は市場にあるドライバーと比べて一番効率的だとは言っていないが、事実、空力は「ステルス2」と同程度で全く申し分ないと言える。


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そして、高MOI設計だと重心が高くなる(スピン量も増える)が、『インフィニティ・カーボンクラウン』などによる軽量化により、「ステルス2」に比べて低重心にすることも可能となった。

ここですごく気になるのが「何のためにやるの?」ってことだろう。

テーラーメイドによると「Qi10 Max」は「ステルス2 HD」よりも「キャリー」と「トータル飛距離」が伸びるとのこと。キャリーについては、純正の「ステルス2」よりも大きいそうだ。

さらに最大の差別化は、「Qi10 Max」でこれまでのモデルから大きく向上した「バラつきの少なさ」ではかることができる。テーラーメイドは、飛距離のバラつき、つまりは最小と最大のギャップが大幅に改善(最大30%)した。


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テーラーメイド「Qi10 Max」のロフト角は9度、10.5度、12度がラインナップ。全ロフトとも右打ち用とレフティ(左打ち用)モデルがある。

また「Qi10 Max」の軽量版「HL(高くて軽量)」は、テーラーメイドのカスタム部門を通じて10.5度、12度がラインアップしている。

そして「Qi10」ドライバーは全てスペック通りだが、ウェイメンズモデルには10.5度、12度もある。

ちなみに軽量モデルのMOIは10,000以下だ。

テーラーメイド「Qi10 Max」の小売価格は599ドル。

日本での発売価格は、¥95,700(税込)となっている。


テーラーメイド「Qi10」ドライバー

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「Qi10 Max」ほどではないが、「Qi10」も十分な「寛容性」を発揮している。テーラーメイドによれば合計MOI(慣性モーメント)は8,500ほどのようだ。

これだとUSGAの規制まで、まだゆとりがあるが「ステルス2」よりもやや大きい。

また比べてみると、「ステルス2」よりもさらに易しく低スピンになっている。

そして後方のウエイトがややトゥ寄りに配置されており、よりニュートラルな弾道をもたらす。


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テーラーメイド「Qi10」のロフト角は9度、10.5度、12度がラインナップ。12度は右打ちのみとなっている。

テーラーメイド「Qi10」の小売価格は599ドル。日本での発売価格は、¥95,700 - 108,900(税込)となっている。


<シャフト別の価格>

・Diamana BLUE TM50 (S,SR)- ¥95,700

・Tour AD VF-6 (S) - ¥108,900

・SPEEDER NX BLACK 60 (S) - ¥106,700

・DiamanaWB 63 (S) - ¥106,700


テーラーメイド「Qi10 LS」ドライバー

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「Qi10 LS」はテーラーメイドで最も低スピンのドライバーだ。高い操作性で上級者向けデザインとなっている。

また、このモデルはまさに「ステルス2 Plus」の代わりとなるクラブだ。ネーミングの変更は業界の常識に沿ったもので、このドライバーがどのようなものかを分かりやすくしてくれている。

この「Qi10 LS」の最大の特徴は、昨年の「ステルス2 Plus」フェアウェイウッドに採用された『ウエイトガレージ』設計からヒントを得てウエイトシステムを見直したことにある。


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「Qi10 LS」は、テーラーメイドのこれまでの『スライディングウエイトシステム』とは異なり、固定式スクリューと端から端までスライドするウエイトを搭載したことが特徴。ぱっと見は調整範囲に制限がありそうだが、実際は違う。このガレージデザインに必要な構造も少なく、結果的に軽量化も可能にしているのだ。

そして「ステルス2 Plus」は昨年の市場において最も低スピンのドライバーだったが、テーラーメイドによれば「Qi10 LS」も低スピンとのこと。

「LS」モデルが市場で最も「寛容性」が大きいなんてことはないが、「Qi10 LS」は合計MOIが7,600程度で「ステルス2 Plus」よりもさらに易しくなっている。

テーラーメイド「Qi10 LS」の小売価格は629ドル。日本での発売価格は、¥99,000円 - 112,200(税込)


<シャフト別の価格>

・Diamana Silver TM50 (S,SR) - ¥99,000

・Tour AD VF-6 (S) - ¥112,200

・SPEEDER NX BLACK 60 (S) - ¥110,000

・DiamanaWB 63 (S) - ¥110,000


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あなたにはどの「Qi10」が合うか?

こうした質問に答えることは簡単ではない。「Qi10 Max」が一番ストレートに飛ぶと思うゴルファーもいるだろうし、一部のゴルファー(おそらく多くのゴルファー)にとっては、ストレートな弾道は飛びを犠牲にする価値があるだろう。

最適化という点では、「Qi10 Max」を出発点にそこから打ち比べることがおすすめ。「Qi10 Max」で必要な打ち出しとスピンが実現できるなら、「Qi10 Max」が合っているということになる。

一方、スピン量が多すぎるならスタンダードの「Qi10」ドライバーが最適なはずだ。


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当然、スピンを軽減することが必須で左へのミスをなくしたいなら、「Qi10 LS」が答えということになるだろう。

最善のアドバイスは、優秀なフィッターと一緒に解決するということに尽きる。


テーラーメイド「Qi10」ドライバーのデザイナーシリーズ

テーラーメイドでは、2024年から“My”プログラムを“デザイナーシリーズ”と呼ぶものに置き変える。「Qi10」のほぼ全てをカスタマイズできる代わりに、同社の工業デザイナーによる豊富なカラーリングを提供することにしたようだ。

ある種のセミカスタムと言える“デザイナーシリーズ”は、“My”シリーズに比べて納期が劇的に短縮され、またテーラーメイドも在庫をある程度キープできることから、追加料金も100ドルではなく30ドルのみとなっている。


シャフトとグリップ

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テーラーメイドでは純正シャフトの評判が良くないことを分かっているし、これはユーザー自身で解決できる(そしてすべき)ことだけど、「Qi10」シリーズに対してはシャフトラインナップに多大な努力をしていることを強調したいようだし、悪くないと感じているようだ。

「Qi10 Max」の純正シャフトはフジクラの「Speeder NX TCS 50」と三菱ケミカルの「Diamana T+ 60」。「Speeder NX TCS 50」は、テーラーメイドの新作で剛性の低いチップ部と比較的低トルクのソフトなベンドプロファイルを組み合わせたシャフトになっている。

そしてテーラーメイドは、このデザインによりフェースがスクエアになりボールがストレートに飛ぶと考えているようだ。

一方、ウィメンズの純正シャフトは40gの「Speeder NX」となっている。

「Qi10」の純正シャフトはフジクラの「Ventus TR Blue」と三菱ケミカルの「Diamana T+ 60」。「TaylorMade TR」は、『VeloCore(ベロコア)』搭載モデルほど硬くないが、以前のバージョンよりも低トルクになっている。

「Qi10 LS」の純正シャフトは三菱ケミカルの「Tensei AV Limited Blue」と「Tensei AV Limited Black」。ともにマットなコスメが特徴となっている。

純正グリップは53gのゴルフプライド「Z-Grip +2」。カスタムで44gバージョンもある。ウィメンズの純正グリップはラムキン「ST Soft(40g)」だ。


市場全体に視野を広げると

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今年、MOIを最大化したり、ストレート弾道を実現しようとしているのはテーラーメイドだけではない。市場トレンドは確かにそうなのだが、テーラーメイドは、「寛容性」に関してのみ評判が低いというだけで、独自のポジションを築いている。

今回の「Qi10」シリーズが、テーラーメイドの飛びを求めるゴルファーを魅了することは間違いないだろう。もし、「さらなる寛容性」というメッセージが、これまでテーラーメイドを検討してこなかったゴルファーの心に響き、「真っ直ぐな弾道」が試打でも約束されているなら、今年はテーラーメイドにとってビッグイヤーになる可能性はあるはずだ。

問題は、競争は激しいということと、飛距離を犠牲にすることなく弾道をストレートにし、さらにバラつきを抑えたいというゴルファーが、これまで以上に多くの選択肢を享受するということにあるのだ。


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店頭発売

テーラーメイド「Qi10 Max」、「Q10」、そして「Qi10 LS」はTaylorMade.comと店舗で先行販売中。発売は2月2日からスタートする。

日本での発売も、2月2日の予定となっている。


TONY COVEY

TONY COVEY

MyGolfSpyに新鮮で革新的なコンテンツをもたらす編集担当。編集以外でもMyGolfSpyのデータを駆使したテスト方法を開発する上で重要な役割を果たし、データを精査してゴルファーのプレー改善に役立つ方法を考案した。ポリシーは「ゴルファーは、何が真実で何が真実でないかを知る必要がある」。これはMyGolfSpyがメーカーによって作られた事実を超えて、真実を語る責任があることを意味する。ミッションは「誇大広告にとらわれず本当の性能を読者に伝え、ゴルファーに力を与えること」。





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