少し前に、読者から次のような質問をいただいた。

『ドライバーのスピンを減らすにはどうすればよいか?』

コメント欄で簡単に答えることもできたが、もう少し深く掘り下げてみたいと思う。

実際のところ、「スピン量」を減らすことは簡単ではない。だが、いくつか効果的な方法がある。

とはいえ、100%とは言い切れないが。

その話に入る前に、「スピン」を“減らす”より“増やす”ほうがはるかに簡単であるという悲しい現実をまずもって伝えておこう。

スピンを増やす方法については、今回は割愛することにする。逆に減らす方法として一番有効なのは有能なゴルフコーチに過剰なスピンの根本原因を特定してもらい、対処することだ。

とは言うものの、スピン量を減らすことだけが目的の場合スピンを減らすためにはいくつかの方法が(以下に挙げる方法が単独で機能したり、複数が一緒に機能することもある)考えられる。


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ロフトを立てる

「ロフトを立てる」ことが、スピン量を減らす最も簡単な方法だ。ドライバーのスピン量が多い場合、ロフト角を立てることでスピンを減らすことができる。

ほとんどのドライバーにロフト調節機能が備わり、レンチを回すだけで1度または2度ロフト角を立てることができる。

もし、ホーゼルの調整だけで理想に到達しない場合、より低ロフトのヘッドを選べば良い。

通常、メーカーではロフト角7.5~8.5度の範囲を提供する。お勧めはしないが、ホーゼルの調整機能を入れると6度まで下げることができるものもある。

ここでの注意点は、特に「高スピン」と「低弾道」の場合だ。打ち出し角が低くなり過ぎるリスクがある。

さらに、「精度」の低下も懸念される。

一般に、低ロフトのドライバーはスピンロフト(ダイナミックロフトとアタックアングルの差)が小さくなる。これは私たちが求めている低スピンに繋がるが、スピンロフトが低くなるとスピン軸が傾きやすくなり、それに伴いボールがより曲がりやすくなる、ということを理解しておく必要がある。

※スピンロフトは、「ダイナミックロフト(インパクトの瞬間のロフト角)」と「アタックアングル(入射角)」の間に形成される角度のこと。


重心を前方に移動させる

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ドライバーの重心が「前方」にあるほどスピン量は低くなる。

もしドライバーに前後のウエイト調整ができる場合は、最も重いウエイトを前方に配置する。

仮に、重心の位置を前方に移動させることができない場合は、テーラーメイド「ステルス2プラス」やコブラエアロジェットLS」、タイトリスト「TSR4」、またはキャロウェイ「パラダイムトリプルダイヤモンド」などのよりスピン量が少ないドライバーを検討するのもおすすめだ。

これらのドライバーは通常のドライバーよりも重心が「前方」で、平均よりも低いスピン率を生み出すはずだ。

ただし、この方法の注意点として、より前方のCG(重心)デザインは必然的に「MOI(慣性モーメント)」が低くなる。私が提案した4つのモデルはおそらく市場で最も低い「MOI」を持つドライバーだと言える。

これは、理論上では「やさしさ」が劣ること(操作性が高くなる代わりに、難しさが増える)を意味する。これは一部のゴルファーにとっては問題ではない。また、低MOI(慣性モーメント)によって失われる一部のボール初速は、前方重心に伴うスピンの一貫性の向上によって相殺されることもある。

また、MOIは「やさしさ」を語る上で外せないのは間違いないが、どのゴルファーにとってもやさしいドライバーとは、一貫して「芯」に近い位置で打てるものをいう。


フェースを閉じる

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これは、高スピンにより過度なフェード(スライスとも言う)が出てしまう人に有効だ。

開いたフェースでボールを打つと、過剰なスピンが生じる。そのため、もしスピン問題がオープンフェースに起因している場合は、フェースを正面またはわずかに閉じることでスピンを劇的に減らすことができる。

簡単な方法はレンチを使ってロフト角を調整すること。それでも解決しない場合は、わずかに閉じたフェース設計のドライバーを探してみてほしい。今思い付くのはピン「G430 SFT」だが、ゴルフショップには多くのドローバイアスのドライバーが売られている。


ティーの高さを調整する

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ボールをフェースの下部に当てると、スピン量が増える。そのため、スピン量を減らすにはインパクトをフェースの上部に移動させること(重心の上方でのインパクトはスピンを減らす効果がある)。

スピンを減らしたいゴルファーに対しては、より高くティーアップすることをおすすめする。その利点はいくつかある。

ティーを上げることで、インサイドからアウトへのクラブパス(ターゲットラインに対するヘッドの軌道)やアッパーブロー(上向き)のアタックアングル(入射角)が促進される。そして、先ほど述べたように、インパクトをフェースの上部に移動させることで、スピードのロスを最小限に抑えながらスピンを減らすことができる。

※クラブパスとは:クラブがボールに当たる瞬間の向き、インパクトを迎える直前からインパクトを通過した時のクラブの左右の軌道。

ただ一部のケースでは、ティーを高くするとインパクトがフェースの下部にくることがある。このような場合は、なぜ低い位置でインパクトしてしまうのかの原因を対処せずにティーの高さを変えても、効果が出にくい。

中にはティーの高さを下げることでスピンが減少するゴルファーもいるからだ。

絶対的な法則はないので、一貫して「芯」に近い位置、またはやや上部にインパクトを持ってこられるようなティーの高さを見つけるまで試行錯誤することが大事。

もしフェースのどの位置でボールを打っているか分からない場合は、フェースにショットマーカーをを施すと分かりやすくなる。


アタックアングル(入射角度)をアッパー軌道にする

「入射角」はティーの高さと相互作用する。ボールに対してより上向きに打てば打つほど、先ほど言及したスピンロフトの数値が減少する。スピンロフトが下がると、スピン量も下がる。

トラックマン(計測器)によれば、スピンロフト自体がコンプレッションそのものだと言われている。そのため、他の条件が同じ場合、スピンが減少するだけでなく、よりポジティブなアタックアングルはボール初速を上げることにもつながる。

アタックアングルを上げるためには、アドレス時に腰の傾斜角を少し加えるだけで済む場合もあるが、過剰なスピン量の要因を特定し解決するためにも、ゴルフコーチと一緒に取り組むことをおすすめする。


シャフトを変更する

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ここで注意したいのは、スピン量を減らしたいからといって、この「My Golf Spy」内でなどで推奨された「低スピン」シャフトをただ購入すれば良いというものではない。

そんなに単純なことではない。

どのシャフトやシャフト特性にも、低スピンを保証するものはない。

シャフトは、ダウンスイング中にクラブヘッドが曲がり、ねじれ、たわみ、閉じるという重要な役割を果たす。そのため、シャフトはダイナミックロフト(インパクト時に実際に提供されるロフト量)、インパクト時のフェース角度、クロージャレート(ヘッドがスクエアに向かって移動する速度)などに影響を与える。

ダイナミックロフトとは:インパクト時に実際にボールに与えられるロフトのこと。ボールに衝突した時のクラブフェースのロフト量を示す指標。

ゴルファーによっては、これら要素がうまく組み合わさってスピンを減らすことがあるが、うまく機能しない場合、スピン(および精度の低下)が生じることもよくある。

繰り返しになるが、絶対ということなどない。ドライバーのスピンを減らすためには、より硬いシャフト(または少なくとも先端部が硬いシャフト)を使う場合があるが、柔らかいシャフトでもスピンを減らすことができる場合もある。

シャフトの特性がゴルファーとどのように合うかは非常に複雑だ。

分かりやすく説明すると、あるゴルファーにとってはボールをフックさせるシャフトが、別のゴルファーにとってはスライスになることがある。また、別のゴルファーにとっては最適な弾道を生み出すかもしれない。

自分で試行錯誤しても良いが、知識のあるフィッターと一緒に取り組んだ方が良い。


フィッティングを受ける

これは確かに総合的な解決策だが、もし自分自身でスピンの問題を解決できず、コーチとの解決にも興味がない場合は、フィッターと一緒に取り組むことが最善かもしれない。

最適な範囲内にスピン量を減らす、または維持することができなくても、知識のあるフィッターは、スイングに合わせたドライバーを見つけるお手伝いができるはずだ。


ゴルフボールを変える

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これは最初に勧めるものではないが、ゴルフボールを変えることもドライバーのスピン量を減らす方法のひとつだ。

私たちの2021年『ボールテスト』では、ヘッドスピードが44.7m/sの場合、最もスピン量の少ないボールは平均よりも300 rpm少なかった。これはロフト角を1度立てた場合より多い数値だ。

極端な場合、最もスピン量の少ないボール(テーラーメイド「ツアーレスポンス」)は最もスピン量の多いボール(カークランド「シグネチャーV2」)よりも600 rpm少ない。これはロフト角2〜3度に相当する。

通常、スピン量の少ないボールはまっすぐ飛ぶボールと言われる(それが低コンプレッションボールがよりやさしいとされる理由)。

中には、中コンプレッションでスピン量の少ないモデルもいくつかあるが、ほとんどの場合、低コンプレッションと低スピンは密接に関連している。したがって、中~高ヘッドスピードのプレーヤーにとっては、「ボール初速」と「飛距離」が減少する可能性がある。

ただし、スピン量が減少することで得られる「飛距離」の向上によって、スピン量が過剰なプレーヤーにとっては初速の損失が完全に相殺される場合もあるのだ。

ただし、ドライバー以外でも使用するゴルフボールの変更は、アイアンやウェッジ、パターなど全体に影響を与えることを覚えておこう。

アイアンでのスピンや、グリーン周りの影響を含めて、慎重に考慮する必要がある。


もし効果がなければ、他の方法を試してみよう

スピンを減らすことは簡単ではないが、望む結果を得るためにはいくつかトライしてみよう。

これだけは覚えておいて欲しい。あなたに必要なのは一つの要素だけではないかもしれない。異なる方法を試したり、いくつか修正を組み合わせたりすることで、スピンの問題を解決することができるかもしれない。

幸運にも、既存のギアで実現できることだってあるかもしれない。