正直に言うと、新しいミズノ「JPX 925 フォージドアイアン」には少し混乱させられている。

ただし、それはクラブの性能に対する混乱ではない。ミズノのJPXシリーズは、「ホットメタル」が登場して以来、MyGolfSpyのテストで常にトップクラスの成績を収めてきた。

そして、「JPX 925 フォージド」がどのカテゴリーに属するクラブなのかも、まったく問題なく理解している。

これは間違いなく『競技志向者向けの飛び系アイアン』に分類されるクラブだ。

混乱の本質は、このクラブが“どのプレーヤーに向けて”開発されたのか、はっきりしない点だ。


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

「JPX 925 フォージド」は、前作と同様に、「競技志向者向け飛び系」アイアンとしてはコンパクトなデザインだ。しかしミズノは、その「寛容性」がスコアを伸ばしたいと思っている初・中級者にも有効だと胸を張って主張する。

一方この「JPX 925」のヘッドサイズは、競技志向者向けのブレードやキャビティバックと比べると明らかに大きいが、打音や打感は、「ミズノPro 243」以上に“ブレードアイアン”っぽいとのこと。

ボール初速と慣性モーメント(MOI)は、テーラーメイドの「P790」やPINGの「i530」と同程度である。ヘッドサイズはこの2モデルよりも明らかに小ぶりなのにも関わらず、だ。

そして、このカテゴリーにしては薄めのソールとトップライン。(これを語り始めると止まらなくなるので割愛する)

ミズノは、この細部の美学を武器にしている。ソールはスリムで、トップラインもシャープ。そのおかげで、アドレス時には「操作性抜群のツアーアイアン」にしか見えない。けれど、その内側には、初・中級者に向けた「寛容性」と「飛距離性能」が隠されているという二重の顔を持つ。

まさに、クラブ設計の芸術といえるだろう。

ミズノとのミーティングを経て、「JPX 925 フォージド」は、ボール初速を追求して設計された一体型鍛造の競技志向者向け飛び系アイアンで、ブレードのような打音・打感・弾きを実現しながら、同時に「寛容性」と「操作性」も兼ね備えていることがわかった。


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

もうひとつ注目したいのは、あまり誇張しないミズノにしては珍しく「JPX 925 Forged」の性能向上についてかなり強気な発言をしている点だ。「925 Forged」は「JPX Forged」シリーズが10年以上前に登場して以来、最も劇的な進化を遂げたモデルだと言っている。

これで、私がなぜ混乱しているか分かるだろう?


ミズノ「JPX 925 Forged」:進化の新境地

昨年9月、ミズノは新しい「JPX 925 Hot Metal」シリーズを発表したが、フォージドモデルだけ欠けていた。これは、「JPX 925 Forged」が日本で秋に発売される予定だったからだ。

「JPX 925 Forged」は、前作「923 Forged」とは根本的に異なるコンセプトを持つクラブだ。特に、一体成型するミズノ独自の鍛造製法から完全に新しい製造プロセスへ移行した点が大きい。


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

前述の通り、「923 Forged」は独自の鍛造製法で作られていた。8番アイアンからギャップウェッジまでは「ピュアセレクト炭素鋼」である「1025E」の単一素材で鍛造され、4番から7番アイアンには高強度の「クロムモリブデン鋼(SCM420)精密鍛造/4120」が使用されていた。

ロングアイアンでは、ソールに設けられた「マイクロスロット加工」から「ミーリング加工」を施すことで、フェース厚を部分的に調整する『可変フェース厚』を実現していた。

しかし、この手法ではスイートエリアの厚みを約2.3mmまで薄くするのが限界だった。

「925 Forged」では、ミズノは新たに数百万ドルを投じた鍛造機器と新しい製造プロセスを導入し、フェースをさらに薄くすることに成功した。

従来のようにヘッド全体を鍛造するのではなく、ネック、フェース、トップラインを単一素材から鍛造し、ソール部分には「431ステンレススチール」を溶接する構造に変更した。

この新しい構造によって、ミズノはソールの「マイクロスロット」を使うのではなく、フェース裏を直接「ミーリング加工」できるようになった。

その結果、ミーリング加工においてこれまで以上に攻めた設計やクリエイティブなアプローチが可能になった。


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

「インパクトゾーンの厚さは現在2.1mm、フレックスゾーンである周辺部分は1.5mmまで薄くしている」と、ミズノUSAのゴルフ製品・マーケティングマネージャーであるクリス・ヴォーシャル氏は我々MyGolfSpyに語っている。「これはフェースの厚みを30%削減したことになる。ここまで薄くできるということは、性能が飛躍的に向上するということだ。」


叩いて - 押して - 絞り込む:鍛造の進化

鍛造は、溶けた金属の塊をゴルフクラブの形になるまでただひたすら叩き続ける、という単純な作業ではない。他の製造技術と同じように、鍛造プロセスも進化している。その例が、先ほど触れた新しい鍛造機械だ。

ミズノは、アイアンの鍛造にハンマープレスと油圧プレスを使用している。「JPX 925 Forged」では、従来よりも高度な油圧プレスを採用し、二次鍛造の精度と効率を大幅に向上させている。

この新しい機械により、ミズノはヘッドを圧縮する際、タイミングごとに圧力を変えることが可能になった。


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

「フェース部分に到達する圧力まで細かくコントロールできるようになった」とヴォーシャル氏。「圧縮が始まると、その圧縮の仕方やスピードを調整できるため、フェースをこれまでよりもさらに薄くすることが可能になった。」

わかりやすく言うなら、旧型の油圧プレスは「バンバン叩く」機械だった。一方で、新型の油圧プレスは「叩いて、潰して、絞り込む」ような動きをする機械だ。


ミズノ「JPX 925 Forged」:打感の科学

熟練のクラブデザイナーなら誰でも知っていることだが、形状の設計が悪い鍛造アイアンは、ひどい打感になる。

一方で、鋳造アイアンでも、賢い形状設計が施されていれば、最高の鍛造アイアンに匹敵するほどの心地よい打感を生み出すことができる。

ゴルファーが「打感」を表現する言葉は独特で、しかもかなり主観的だ。「非常に滑らか」や「心地よい」といった表現は、明らかにポジティブなニュアンスを持つ。

一方で「柔らかすぎる」はあまり歓迎されない。「しっかりしている」や「力強い」は良い打感の例だが、「カランカラン」や「カチカチ」、そして「チン」といった音を連想させる表現は敬遠されがちだ。


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

「非常に滑らか」や「心地よい」は同じものではない。どんな言葉で表現するにしても、「打感」と呼ばれるものは、「振動と音」が密接に関係している。

「振動そのものは素晴らしいものだ」とヴォーシャル氏は語る。「ただし、それが短時間で消えてしまうと、ほとんど感じ取れない。一方で、振動が長く続いても、その周波数が適切でなければ、長い間ひどく不快な感覚を味わうことになる。」


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

さらに、「JPX 925 Forged」のようにフェースが極限まで薄くなると、「チン」とした不快な音が問題になりやすい。しかし、ミズノはフェースからネックまで一体成型する独自の鍛造製法と優れた形状設計によって、この音をしっかり抑えることに成功している。

「トップラインを鍛造することで、その下の部分の形状をコントロールできる」とヴォーシャル氏。「よりソリッドな打感を実現している。」

さらに、ミズノはその不快な音を引き起こす周波数帯を特定している。それはおおよそ6,000~7,000ヘルツの範囲だ。この周波数の振動を抑えるために、トップラインの補強と、キャビティバックに配置された斜めのサウンドバーが効果を発揮している。

「このクラブは、『ミズノPro 243』よりもさらにソリッドで、ブレードらしい音と打感を持っている」とヴォーシャル氏。「『Pro 243』はそれほど補強されていないが、このモデルはセット全体を通して、より柔らかい打感が感じられる」


トリプルソールと重心設計

新しい油圧プレスの導入により、「JPX 925 Forged」の重心設計にも新たな可能性が広がった。その好例が重心距離だ。

「重心距離」とは、クラブヘッドの重心とシャフト軸の距離を指す。この距離が短いほど、ボールを意図的に操作しやすくなる。

一方で、この距離が長いほど反発係数(COR)が高まり、スイートエリアが広がる傾向がある。通常、この2つはどちらかを選ばなければならない。


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

「新しい構造と溶接されたバックピースのおかげで、形状を戦略的にコントロールできるようになった」とヴォーシャル氏。「重心距離をシャフト軸に近づけながら、スイートエリアを拡大することが可能。これにより、『操作性』が向上すると同時に、『寛容性』も高まる。この両方を実現できれば、それはより優れたクラブを設計したということ。」

「JPX 925 Forged」には、新たに採用されたトリプルカット、またはV字型のソールが特徴として加わっている。これは、従来のモデルでは実現できなかった設計だ。

フェースのミーリング加工がソールを介さず背面から行われるようになったことで、リーディングエッジにバウンスを追加し、中央部の丸みを減らし、トレーリングエッジを大胆に削り込むことが可能になった。

「このソールは、芝への入りと抜けがよりスムーズになる」とヴォーシャル氏。「さらに、実際に機能するソール幅をより均一にすることも可能にしている。」


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

7番アイアンから8番アイアンへのソール形状の移行は、これまで少し不自然さが残る部分だった。ミズノの新しい製造方法により、セット全体でソールをさらに薄くすることが可能になり、7番から8番アイアンへの移行もよりスムーズになった。

「COR(反発係数)を高め、ボール初速を向上させ、寛容性も追加している」とヴォーシャル氏。「それだけでなく、これまでになく薄く感じるソールを実現し、入りやすく、抜けも非常にスムーズになっている。」


「JPX」「ミズノPro」とアイアン市場

現在のアイアン市場を「ブーム」と呼ぶことはできないが、「低迷」とも言い切れない。むしろ、やや停滞した緩やかな縮小傾向にあると言えるだろう。メーカー各社は、自社の市場シェアを守りつつ、他社のシェアから少しでも奪おうと戦略を練っている状況だ。

「カスタムオーダーは大幅に増えているが、在庫品の注文は大幅に減っている」とヴォーシャル。「2年前は、店頭に1本、倉庫に10本という感じだったが、今では在庫を最小限に抑え、素早いカスタム対応に頼るようになっている。」


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

ミズノは常に熱心なファン層を持っているが、2020年頃までは比較的小さな規模だった。その年、「MP-20」シリーズの市場シェアは2.6%、「JPX 919」は3.3%に過ぎなかった。

しかし、翌年に「JPX 921」シリーズが発売されると、ミズノの市場での存在感が変化し、このシリーズだけで8.7%のシェアを獲得した。さらに2023年には、「JPX 923」が単独で約10%のシェアを記録し、ミズノ全体のアイアン市場シェアは12.6%にまで拡大した。

2024年初頭のデータによると、ミズノの市場シェアは約13%に達しており、そのうちの約80%を「JPX」シリーズが占めている。「JPX」単体のアイアン市場シェアは、2020年当時のミズノ全体のシェアを上回る規模に成長している。

つまり、鍛造のツアーレベルのブレードアイアンも素晴らしいが、ミズノの「JPX」シリーズこそが、本当に売上を支える主力商品ということだ。


ミズノ「JPX 925 Forged」: スペック、価格、発売情報

「JPX 925 Forged」のロフト設定は、「競技志向者(上級者向け)飛び系」カテゴリーの中で最も立っているわけではないが、ややストロングロフトの部類に入る。具体的には、7番アイアンのロフト角が30度に設定されている。

一方で、9番アイアン、ピッチングウェッジ、ギャップウェッジのロフト角は若干寝ており、クラブ間の飛距離差(ギャッピング)とスムーズな流れを実現するための調整が施されている。


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

ミズノは「JPX 925 Forged」の発売時に、ブラック仕上げのモデルも同時に提供するという珍しい戦略を取っている。

通常、メーカーはアイアンのブラックバージョンを1年後にリリースし、2年目の売上を後押しするのが一般的だ。しかし、ミズノは独自のアプローチを選び、このタイミングでブラックモデルを投入している。

ブラック仕上げは、ミズノが「プレミアムPVD」と呼ぶコーティング技術を採用している。この仕上げは、下地となるソフトホワイトサテンの上に施されており、このサテン仕上げの少し粗めの表面がPVDコーティングの密着性を高めている。

また、フェース部分はブラスト加工によって淡いグレーに仕上げられており、インパクト時の跡が目立たないよう配慮されている。


ミズノアイアン,JPX925,JPX925フォージドアイアン,飛び系アイアン,ミズノ打感,上級者向けアイアン,ミズノツアーアイアン,ミズノミーリング技術

※以下のスペックはアメリカモデルのものです。日本モデルの詳細については、「ミズノ公式ホームページ」をご確認ください。


標準仕様の「JPX 925 Forged」アイアンには、「KBS C-Taper Light」シャフトと「Golf Pride MCC」グリップ(ブラック/グレー)が装着されている。一方、ブラック仕上げのモデルには、「Dynamic Gold Tour Issue Mid 115」シャフト(Black Onyx仕上げ)と同じくブラック/グレーの「MCC」グリップが採用されている。

いつものように、ミズノは「追加料金なし」で選べるシャフトのラインアップが業界でもトップクラスに充実している。

クローム仕上げの「JPX 925 Forged」アイアンは1本あたり200ドルで、右打ち用と左打ち用の両方が用意されている。一方、ブラック仕上げのモデルは右打ち用のみで、1本あたり215ドルとなる。

予約受付は1月23日から開始され、2月6日に店頭販売がスタートする。