スリクソン「ZX Mk II」アイアンの注目ポイント

・「ZX7」、「ZX5」、「ZX4」、そしてユーティリティアイアンが刷新

・トップラインが全て同じ幅でコンボセット向けの設計

・ニュー「Z-FORGED Ⅱ」ブレードアイアンも新登場

・価格は7本セットで1,199ドル(約155,000円)、ユーティリティアイアンは1本239.99ドル(約31,000円)

・発売日は1月20日、「Z-FORGED Ⅱ」ブレードは4月19日


一見すると、新しいスリクソン「ZX Mk II」は、十分に裏付けされたスリクソンの段階的に改良するという“改善哲学“に沿ったアイアンだ。当然、テクノロジーの進化と改良は見られるが、劇的な変化というものはない。

しかし、スリクソン「ZX Mk II」をざっと見るだけでは勘違いしてしまうほど洗練されたルックスだ。

随分前からスリクソンのアイアンはMyGolfSpy読者からも密かに人気がある。最近の“バックの中身は何?”という調査結果からも、アメリカでスリクソンのアイアンはPINGやPXGくらい売れており、これはスリクソンが想定するアイアンシェアの約2倍に相当する。

だが、スリクソンが目指すところはそこではなく、大手メーカーのキャロウェイ、テーラーメイド、タイトリストだってこと。しかし我々の考えでは、クラブのルックスからは、どう考えてもスリクソンはミズノ狙いで、上級者の選択肢になりたいと思っているんじゃないかな。

そして今言えることは、この新しい「ZX Mk II」アイアンとユーティリティアイアンが確実に彼らへの“先制打”になるということだ。


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スリクソン「ZX MK II」アイアンは何が新しいのか?

正しく“改善”と言っても、スリクソン「ZX MK II」アイアンシリーズに対する改善の多くは漸進的だ。

シングルピース“1020鍛造”の「ZX7」は『PUREFRAME(ピュアフレーム)』テクノロジーを搭載。“上級者向け飛び系”の「ZX5」は、次世代AI設計による可変厚フェースの『MAINFRAME Mk II(メインフレームMk II)』が採用されている。

そして改善が最も分かりやすいのは、新たにスリム化された初・中級者向けの「ZX4」だろう。

このアイアンを2021年の『Most Wanted』でテストした時は、(「ZX5」が中級者向けで)初級者向けとしていたが、今回の流れるような形状と薄いソール幅を見ると、「ZX4」は「初・中級者向け(スコア改善型)」に、「ZX5」は「上級者(競技志向者)向け飛び系」に移行したと言える。


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上記のことはまったく問題ないし素晴らしいことだが、「ZX Mk II」アイアンシリーズで一番の注目点はアドレスした時にしか分からない。また、「Mizuno Pro」シリーズ同様、コンボセットにされることを前提として、意図的にトップラインの幅が同じになるように作られているのだ。そして、ここにはユーティリティアイアンも加味される。

「我々は、コンボセットと複数世代の融合について話し合ってきた」と言うのはスリクソンの工学技術ディレクター、ダスティン・ブレッキ氏。「勿論それを意識してきたし、このシリーズでは工学技術から細かい部分に至るまでそうしたことを重要視してきた」。

スリクソンアイアン販売量の75%が「カスタム」であることを考えると、賢い選択だと思う。


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トップライン、ソール幅、ブレード長について

新しいスリクソン「ZX Mk II」アイアン全3モデルのトップラインは、「ZX」ユーティリティアイアンのそれと同様に「6mm」に設定されている。これって簡単そうに見えるが、ブレッキ氏によると、そうでもないようだ。

「『ZX4』や『ZXユーティリティ』のような中空ボディにマッチする“トップライン”にすることは決して容易なことではない。ソールが『ZX5』や『ZX7』より幅広でそれに合わせたバックフェースがあるし、加えて、上級者向けのフェースサイズにしなければならないからだ」。


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前作の「ZX4」と「ZXユーティリティ」は、よく言うと「ZX5」と「ZX7」の異母兄弟のようだった。ともに小ぶりのポッテリとした形状で、ソールはかなり幅広、ブレードも長くトップラインには厚みがあった。そこでスリクソンでは、トップラインに手を加え、ブレード長とソール幅の差異を縮めていった。

例えば、「ZX7」と「ZX4」のPWのブレード長はわずか3mm差で、7番アイアンのブレード長の差は4mm以下。ソール幅は明らかに差がでるもののそこまでの差を感じさせない程度。

「ZX7」と「ZX4」の4番アイアンのソール幅の差は4mm以下で、「ZXユーティリティ」の4番アイアンのソールは「ZX7」の4番よりも7mmワイドという感じ。アイアンが短くなれば、ソール幅の差も広がっていく。


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またコンボセットの場合、オフセットが気になるところであるが、ここでもその差はごく僅か。3モデルとユーティリティアイアンにおいて、ロフト間での最大差はわずか1mmとなっている。


スリクソン「ZX7」と「PUREFRAME(ピュアフレーム)」

意外なことに、スリクソン「ZX7」は2021年『Most Wanted上級者向けアイアンテスト』で下位に沈んだ。飛距離では高得点を獲得し、テスターもフィーリングを気に入っていたものの、「ストロークス・ゲインド」で失速した。

今回の新モデルにはスリクソンの『PUREFRAME(ピュアフレーム)』テクノロジーの改良版を搭載。このテクノロジーは、ボディにプレスされた隆起状のもので、スイートエリアが80%以上も肉厚になっている。

「ボール後方の肉厚はインパクトでの振動とフェースのたわみに関与する」とブレッキ氏。「今は分析が進んでおり、鍛造キャビティのフェースのたわみをより理解できるようになった。もっちりとしたブレードのような打感を実現できるようになったのだ」。


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「ZX7」は間違いなく上級者向けキャビティバック部門の中でも上級者向けに属する。しかし、スリクソン独自の『TOUR V.T. SOLE(ツアー・ブイ・ティ・ソール)』と特徴的なソールのV字形状を調整したことで、このアイアンはより使い勝手がよくなっている。

「ソールの『V字形状』はヒールとトゥが意図した以上に芝に引っかかる部分の抵抗を軽減する働きがある」とブレッキ氏。「その程度は、芝の状態やプレーヤーがアップライト・フラット具合次第だが、我々はこの大きさを少なくしようとしているのだ」。

また、『TOUR V.T. SOLE』にすることで、リーディングエッジのバウンス角が増え、より芝の抜けが良くなっており、ダフったときの衝撃も軽減できる。


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「ZX5」と「MAINFRAME Mk II(メインフレームMk II)」

スリクソン「ZX5」は2021年『中級者向けアイアンテスト』でトップ5に入るパフォーマンスを見せたが、飛距離では下位という結果に終わった。今回の「ZX5」は「上級者(競技志向者)向け飛び系」に移行したことで、何かしら策が講じられている。

「『ZX5』に大きな進化はない」とブレッキ氏。「でも、質量を減らしてボール初速を向上させるために『MAINFRAME(メインフレーム)』と『可変厚フェース』パターンには、調整と改良が加えられている」。


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『メインフレーム Mk II』は、スリクソンのAI設計によるフェーステクノロジーだ。これは、鍛造「SUP10」フェースの背部に溝やキャビティをプレスした『可変厚フェース』パターンを指す。

スリクソンでは長年に渡り「SUP10」を採用しているが、これは比較的高い抗張力を備えた硬いスチールのことだ。なお「ZX5」アイアンのボディには「1020カーボンスチール」鍛造となっている。


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徹底的に見直した「ZX4」

2021年発売の「ZX4」は、我々にはどっちつかずのアイアンに見えた。なぜなら「飛距離」と「寛容性」を実現するため中空ボディになっているのは今も変わらないが、「初級者向け(超スコア改善型)」部門としては不自然で、「上級者(競技志向者)向け飛び系」としては少々使えないアイアンのように感じたからだ。

しかし今回、スリクソンはそのような解釈にならないように「ZX4」を「初・中級者向け!(スコア改善型)」としている。

ロフト構成は、「初・中級者向け(7番アイアンで28.5度)」の他モデルに沿っているが、キャロウェイ「パラダイムX」よりもオフセットが25%小さくなっており、「初・中級者向け」の中では明らかにスキルがあるプレーヤーがターゲットだ。

そして今回は「ZX4」の中空ボディ構造用に、『メインフレーム Mk II』デザインの『可変厚フェース』に高強度「HT1770M」ステンレススチールが採用されている。


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そして、今回の中空ボディには、音や振動を吸収するための「TPU」、「マイクロスフェア」、あるいはその他のインサートが搭載されていない。

普通、この手の構造だと、良く言っても金属音がするが、「HT 1770M」フェース、「431ステンレススチール」のボディ、そして技術と形状の融合により、「ZX4」は、「初・中級者向け」アイアンというよりもシングルピースの鍛造アイアンのようなフィーリングが得られる。その点はかなり計算尽くされているようだ。

ソールも前作よりも薄くなっており「ZX5」や「ZX7」とのコンボセットを想定して違和感なく移行できるようになっている。

また、“低重心”について言及しなければ、「初・中級者向けアイアン」にはならないだろう。重心が低ければ上げやすくなり、ストロングロフトにもなっていればボールはぶっ飛んで行く。今回の「ZX4」では、重心を極限まで低くするためにソール部分にタングステンの塊が搭載されている。


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スリクソン「ZXユーティリティ」アイアン

「ZXユーティリティ」アイアンも刷新された。「ZX4」のロングアイアンを使うプレーヤーは、ユーティリティよりもハイブリッドを選ぶことが多いことを想定すると、このクラブは「ZX5」との融合を目的としている。こちらもトップラインが薄いが、ソールは前作モデルよりも若干幅広。

「番手が大きくなると、ディボット(削り取られた芝の断片)は小さくなっていく」とブレッキ氏。「入射角もシャロー(ゆるやか)なので、押し込みも小さく、ハンドファーストの度合いは弱まる。つまりバウンス角も少なくて済むのだ」。


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そんな「ZXユーティリティ」アイアンも、AI設計の『メインフレームMk II』『可変厚フェース』が特徴。「ZX5」のフェースと同じ鍛造「SUP10」素材を使い、ボディには同じく鍛造「1020カーボンスチール」が採用されている。

スリクソンのユーティリティアイアンは、MyGolfSpy読者の間で人気があるモデルだ。我々の「バックの中身は何?(ワッツ・イン・ザ・バッグ?」の調査で人気ユーティリティ第3位にランクインしている。

また、多くのPGAツアーのプロたちが、契約外でスリクソンのユーティリティを最低1本は使っている。スコッティ・シェフラーもその一人で、昨年のマスターズで優勝した時にはバッグに1本入れていたほどだ。


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スリクソン「ZX MK II」アイアン:スペック・価格・発売時期

先述したが、スリクソンのアイアン売上の75%はカスタムオーダーだ。そして「ZX Mk II」アイアンは、カスタムを最大化するためにデザインされている。

「ZX7」と「ZX5」のロフト角は、6番から7番への移行がスムーズにできるように近くなっているが、ストロングロフトの「ZX4」との組み合わせだとギャップがややおかしくなる場合があるかも。いずれにしても素晴らしいフィッティングとロフト調整器に任せればOKだ。

「ZXユーティリティ」アイアンは、2番、3番、そして4番がラインナップ(ロフト角はそれぞれ18度、20度、23度)。


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「ZX7」の純正シャフトは日本シャフトの「Modus3 120(モーダス3 120)」で、「ZX4」と「ZX5」にはKBS「Tour Light(ツアーライト)」が純正シャフトとして装着されている。また純正のカーボンシャフトはアイアン3モデルとユーティリティともに、UST Mamiya(マミヤ)の「Recoil Dart(リコイル ダート)」だ。

純正グリップはゴルフプライド「Tour Velvet 360(ツアーベルベット)」。全モデルで右打ち用、左打ち用がある。

スリクソン「ZX Mk II」アイアンの価格だが、どのような組み合わせにしても7本で1,199.99ドル(約155,000円)1本約171ドル(約22,000円)。「ZXユーティリティ」アイアンは1本239.99ドル(約31,000円)だ。

スリクソン「ZX Mk II」アイアン全シリーズは1月20日。詳細はダンロップスポーツ-スリクソン-クリーブランド-ゼクシオのウェブサイトまで。


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スリクソン「Z-FORGED II」ブレード

スリクソンは、また同社の鍛造ブレードを予定通り4年でモデルチェンジする。本格的なメーカーなら、魅力的なブレードセットは欠かせないからね。同社のブレードは本格的。そしてかなり魅力的だ。

「ブレードの製品サイクルは、進化が遅い分、長くなっている」とブレッキ氏。「我々は、ブレードにおいて非常に少ない縦のMOI(慣性モーメント)を改善することが可能だ。エッジ部分を削り、ウエイトを真ん中、ブレードのフランジ、そしてマッスルバック部分に増やせば少ないながら改良させることができる」。


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「中心部の打感やソールのパフォーマンスをおかしくしなければ、ツアープロにとってはメリットがあるだろう」。

スリクソン「Z-Forged II(Z-フォージド II)」ブレードは、「1020カーボンスチール」の鍛造で、「ZX Mk II」アイアンと同じテクノロジーがいくつか採用されている。

芝の抜けを良くするスリクソンの『TOUR V.T. SOLE』に加え、スリクソン独自の番手別溝設計『プログレッシブグループ』も採用。3番から7番は飛距離重視の幅広設計で、8番からPWは狭く深めの溝に加え溝の本数も多く、どんな状況のアプローチショットでもスピン性能を高めてくれる。

「製品ラインの主要モデルだが、少数派にしかオススメできない」とブレッキ氏。


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その少数派と言っても右利き限定。左打ち用はない。

純正シャフトは日本シャフト「Modus3 120(モーダス3 120)」で純正グリップはゴルフプライド「Tour Velvet 360(ツアーベルベッド360)」となっている。

スリクソン「Z-FORGED II(Z-フォージド II)」ブレードは7本セットで1199.99ドル(約155,000円)。発売は4月19日だ。