7番アイアンでキャリー168ヤード。しかもヘッドスピードは約34.4m/sだ。
2027年モデルとして登場したスリクソンの新「ZXi」シリーズで、MYGOLFSPYが最も気になったのが、新たに加わった「ZXi5+」だ。
初期テストでは平均ボール初速約51.0m/s、ミート率1.48という目を引く数字を記録した。
ただし、“飛ぶアイアン”ならそれだけで高評価、というのがMYGOLFSPYではない。
7番のロフトは29.5度。平均スピン量は4,100rpm弱だった。この飛距離は、グリーンを狙うための「使える飛距離」なのか。それとも、ストロングロフトによって生まれた数字なのか。
だが、今回の新「ZXi」で見るべきポイントは「ZXi5+」だけではない。「ZXi7」「ZXi5」も進化し、スリクソンは遠藤製作所による鍛造と、打感へのこだわりをこれまで以上に前面に押し出してきた。

そして、もうひとつ興味深いのが発表のタイミングだ。
少なくともここ10年ほど、スリクソンは1月を中心に新製品を発表してきた。ところが今年は、クリーブランド「RTZ2」ウェッジに続いて新「ZXi」が登場。MYGOLFSPYが得ている情報では、スリクソンのメタルウッドも近く発表される予定だ。
どうやら単発の前倒しではなさそうだ。競合の新製品が集中する時期を避ける狙いなのか、この流れが業界全体に広がるのかも興味深い。
だが、まずは本題だ。 今回登場した新「ZXi」アイアンを見ていこう。

新たに加わった「ZXi5+」とは?
今回登場した2027年モデルは「ZXi7」「ZXi5」、そして新たに加わった「ZXi5+」の3モデル。さらに「ZXiU」ユーティリティアイアンもアップデートされた。
一方、これまでラインナップされていた「ZXi4」の新モデルは、今回の発表には含まれていない。
ここで気になるのが、「ZXi5+」は何のために追加されたのか、ということだ。
名前だけを見れば「ZXi5」の派生モデルにも、「ZXi4」に代わるモデルにも思える。しかし実際には、そのどちらとも少し違う。
「ZXi5」は、操作性と寛容性、飛距離性能のバランスを重視したモデルだ。
それに対して、新しい「ZXi5+」は飛距離性能をさらに強化した「プレーヤーズ・ディスタンス」に位置づけられる。
いわば、上級者や中上級者が好むシャープな見た目を保ちながら、飛距離と寛容性を取り込んだ“アスリート向け飛び系アイアン”だ。
なお、「ZXi5+」については、現時点で日本仕様の発表はない。

スリクソンが今、「遠藤製作所」を前面に出す理由
各モデルを詳しく見る前に、今回の「ZXi」でもうひとつ注目したいことがある。
スリクソンが、アイアンの鍛造を担う遠藤製作所との関係を、これまで以上に前面に押し出していることだ。
遠藤製作所は1950年創業の日本の鍛造メーカーで、一体鍛造だけでなく、複数素材を組み合わせた鍛造や薄肉フェース、複雑なキャビティ構造などを手掛けてきた。これまでタイトリスト、ナイキ、ブリヂストン、スポルディング時代のベン・ホーガンなど、さまざまなブランドの鍛造を担ってきた実績を持つ。自社ブランド「EPON(エポン)」でも知られる存在だ。
スリクソンも以前から、遠藤製作所による鍛造を採用してきた。
興味深いのは、それ自体が新しいことではない点だ。
これまでスリクソンは、遠藤製作所との関係を積極的にブランドストーリーとして打ち出してこなかった。しかし今回、少なくとも米国では、その関係を明確かつ戦略的にアピールし始めている。
なぜ今なのか。
我々は、そこにひとつの狙いがあると見ている。
スリクソンは、「鍛造アイアンの打感」といえばミズノ――そんなイメージを本気で奪いにきているのではないか。

新「ZXi」が追求した「打感」の正体
そのためにスリクソンがさらに磨きをかけたのが、独自の『i-FORGED』だ。
ミズノが『グレインフローフォージド』を長年にわたって打ち出してきたのに対し、スリクソンは『i-FORGED』を新「ZXi」の打感を支える技術のひとつとして前面に押し出している。
『i-FORGED』は2025年モデルの「ZXi」シリーズから採用された独自の鍛造技術だ。クラブヘッドの必要な部分に突起を設け、鍛造工程で圧力を加えることで、その部分を高密度化。ヘッドを必要以上に肉厚にすることなく、必要な強度を確保する狙いがある。
そのメリットのひとつが、より軟らかいS15C軟鉄を使えることだ。
新しい「ZXi7」では、このS15C軟鉄を採用。スリクソンは、『i-FORGED』によって必要な強度を確保しながら、インパクト時の振動を抑え、より軟らかな打感につなげているとしている。

「すべての判断は、打感を念頭に置いて行われました」と、スリクソンのプロダクトマネージャー、ケイシー・シュルツ氏は説明する。
今回の世代ではその考えをさらに推し進め、性能と、インパクトでゴルファーが感じるフィーリングの両立を目指したという。
そして興味深いのは、スリクソンが打感を技術だけで説明していないことだ。
今回の製品資料では、日本ブランドとしてのルーツや、エンジニアのYuki Shimahara氏率いる開発チーム、日本の熟練した職人によるものづくりにもスポットを当てている。
精密な設計と人の手による仕上げを組み合わせ、芯で捉えた瞬間に感じられる打感を生み出す――かなり情緒的なストーリーだ。
しかし、その言葉選びそのものが興味深い。

スリクソンが今回売り込もうとしているのは、単なるアイアンの性能だけではない。
「日本の鍛造」「職人技」、そしてその先にある「打感」まで含めたブランドイメージなのだ。
実際の性能だけでなく、「打感のスリクソン」というイメージまで確立できるのか。
今回の新「ZXi」シリーズでは、そこも注目すべきポイントになりそうだ。
「ZXi5」と「ZXi7」はどう進化した?
新しい「ZXi7」と「ZXi5」は、それぞれの持ち味を伸ばす方向で進化している。
まず「ZXi7」は、S15C軟鉄による一体鍛造を採用。ロング〜ミドルアイアンのトウ側にはタングステンウエイトを配置し、操作性と安定性の両立を図っている。
さらに進化したのが『PUREFRAME iQ』だ。 AIを活用した設計によって、フェース裏側の肉厚部を従来より広く配置。インパクトエリアの剛性を高め、打点付近の余計な振動を抑えることで、スリクソンが重視する打感の向上につなげている。

一体鍛造の「ZXi7」にとって、こうした進化は打感だけに効くものではない。インパクト時の不要なフェースの変形を抑えることで、安定したパフォーマンスにつなげる狙いもある。
そして、我々が行った限られた初期テストでは、興味深い結果も出ている。
「ZXi7」は一体鍛造で、ロフト設定もストロングロフトではない。それにもかかわらず、ボール初速は率直に言って驚くほど高かった。

一方、「ZXi5」がより重視しているのは、ボール初速と寛容性だ。
「ZXi7」がS15C軟鉄の一体鍛造なのに対し、「ZXi5」は複数素材を組み合わせた構造を採用。日本仕様では、フェースにクロムバナジウム鋼、ボディにS20C軟鉄を使用している。
その中核となるのが、AIを活用した『MAINFRAME iQ』だ。
長年蓄積してきたシミュレーションデータをもとにフェースの肉厚を最適化し、より効率的にフェースをたわませることでボール初速の向上を狙っている。
国内仕様の「ZXi5」では、この設計によって従来モデルより約4gの余剰重量を生み出し、その重量を低重心化に活用。ボール初速だけでなく、ミスヒットへの強さや安定性にもつなげている。
つまり、「ZXi7」が操作性や打感を重視するゴルファーに向けたモデルなら、「ZXi5」はそこに飛距離と寛容性をより多く取り込んだモデルという位置づけだ。
新モデル「ZXi5+」は要注目だ
では、その「ZXi5」からさらに飛距離性能を高めた「ZXi5+」はどうなのか。
現時点で日本仕様は発表されていない。それでも、我々が行った初期テストの結果を見る限り、「ZXi5+」は2027年のMYGOLFSPYアイアンテストで要注目の1本になる可能性がある。
とにかく、ボール初速が速い。

「ZXi5+」は、アスリートモデルらしいコンパクトな形状を維持しながら、「ZXi5」よりロフトを立て、飛距離性能を高めた「プレーヤーズ・ディスタンス」、いわば“アスリート向け飛び系”のモデルだ。
米国仕様では、S20C軟鉄の鍛造ボディにSUP10鋼の鍛造フェースを組み合わせ、寛容性も「ZXi5」よりわずかに高めた設計となっている。
興味深いのは、飛距離性能を強化しながら、見た目を大きく変えていないことだ。「ZXi7」「ZXi5」と比べても、ブレード長やトップライン、オフセットなどの違いは小さく、構えたときにいかにも“飛び系”という印象は受けにくい。
では、なぜ「ZXi5+」が必要だったのか。
これまでの「ZXi5」は、MYGOLFSPYのテストで長年にわたって高く評価されてきた。
前世代の「ZX5 Mk II」は2023年と2024年のMYGOLFSPYテストで2年連続トップ。続く「ZXi5」も2025年は3位タイ、2026年は4位タイに入っている。
つまり、「ZXi5」は総合性能に優れたアイアンだった。ただし、圧倒的な飛距離だけを武器にするタイプではない。
だからこそ、「ZXi5」のバランスを大きく崩すことなく、その上に飛距離性能をさらに強化した「ZXi5+」を加える意味がある。
では実際、「ZXi5+」はどれほど飛ぶのか。 ここからが面白い。
実測データが示す「ZXi5+」の実力
「ZXi5+」のテストはまだ限られたものだが、すでに興味深い数字が出ている。
平均ヘッドスピード約34.4m/sに対して、ボール初速は約51.0m/s。ミート率にすると、実に1.48だ。
しかも、アイアンでだ。
もちろん、ロフトが立っていることは無視できない。「ZXi5+」の7番アイアンは29.5度。高いボール初速と飛距離には、このストロングロフトも影響している。
それでも実測値は目を引く。
平均キャリーは168ヤード、トータルでは約179ヤード。平均スピン量は4,100rpm弱、最高到達点は約24.7m、落下角は平均43度だった。
ここで重要なのは、168ヤードという飛距離だけではない。
飛ぶアイアンを評価するときに我々が見たいのは、その飛距離をグリーン攻略に使えるかどうかだ。その判断には、スピン量だけでなく、弾道の高さや落下角も重要になる。
その点、「ZXi5+」は29.5度というストロングロフトながら、今回のテストでは4,100rpm弱のスピン量に加え、約24.7mの最高到達点と43度の落下角を記録した。
では、この数字なら本当にグリーンで止められるのか。
そこが「ZXi5+」を評価するうえで、次のポイントになる。

その飛距離、本当にコースで使えるのか?
ただし、本当に重要なのはここからだ。
これだけの飛距離が出ても、実際のコースで使える弾道になっているのか。
今回の平均スピン量は4,100rpm弱。決して多い数字ではない。一方で、最高到達点は約24.7m、落下角は平均43度だった。
つまり、「ZXi5+」の評価は168ヤードという飛距離だけで決めるべきではない。スピン量、高さ、落下角をセットで見て、そのキャリーをグリーン攻略に使えるかを判断する必要がある。
今回のデータを見る限り、高さと落下角はある程度確保できている。ただし、硬く締まったグリーンや、キャリー地点からランをできるだけ抑えたい状況では、4,100rpm弱というスピン量がどう影響するのかは気になるところだ。
つまり、「ZXi5+」が合うかどうかは、何をアイアンに求めるかで変わってくる。
以前よりアイアンの飛距離が落ちてきた、あるいは今よりキャリーを伸ばしたいゴルファーにとって、この飛距離性能は大きなメリットになり得る。
しかし、すでに十分な飛距離があり、グリーンでの止まりや距離のコントロールをより重視するなら、「ZXi5+」が必ずしも最適とは限らない。
「ZXi5」と「ZXi5+」のどちらを選ぶにしても、見るべきなのは7番アイアンが何ヤード飛んだかだけではない。 キャリー、スピン量、最高到達点、落下角、そして番手間の距離差まで確認して初めて、その飛距離が自分にとって本当に“使える飛距離”なのかが見えてくる。
「ZXi4」はどうなる?
「ZXi5+」の登場で気になるのが、「ZXi4」の今後だ。今回発表された新モデルには「ZXi4」が見当たらない。
一見すると、「ZXi5+」が「ZXi4」の後継にも思える。しかし、両者の狙いは少し違う。
「ZXi4」の方がヘッドは大きく、ブレードとソールも広めで、オフセットも大きい。より寛容性を意識した形状だ。
一方、「ZXi5+」も単に“ロフトを立てたZXi5”ではない。ブレードを長く、ソールを広くするなど、「ZXi5」から形状にも手を加え、ストロングロフトでも高さを確保しやすい設計を目指している。 つまり「ZXi5+」は、単なる「ZXi4」の後継でも、“ロフトを立てたZXi5”でもない。

ただし、「ZXi5+」の追加によって、スリクソンのアイアンラインナップにおける「ZXi4」の立ち位置が以前より分かりにくくなったのは確かだ。
「ZXi5+」と、より寛容性を重視した「ZXiR」の間に、「ZXi4」をどう位置づけるのか。
もちろん、それだけで「ZXi4」がなくなると決めつけるのは早い。今回発表されなかっただけなのか、それともラインナップそのものが再編されるのか。現時点では、今後の動きを待つしかない。
「ZXiU」ユーティリティアイアンも進化
忘れてはいけないのが、新しい「ZXiU」ユーティリティアイアンだ。
世界トップクラスのスコッティ・シェフラーも、テーラーメイド中心のセッティングの中にスリクソンのユーティリティアイアンを入れている。ただし、使っているのは最新モデルではない。約9年前に登場した「Z U85」だ。
これはユーティリティアイアンというカテゴリーの性格をよく表している。
特に競技者にとって、この種のクラブは新しくなったからといって簡単に替えるものではない。求める弾道が出て、狙った距離を打てて、構えたときの安心感があるなら、無理に替える理由がないからだ。
だからこそ、新しい「ZXiU」に求められる進化も少し特殊になる。
「良くしてほしい。でも、大きく変えないでほしい」――そんな競技者の要求に応えるアップデートだ。

新しい「ZXiU」には、「ZXi5」と同様に『i-FORGED』や『MAINFRAME iQ』を採用。日本仕様では、フェースにクロムバナジウム鋼、ボディにS20C軟鉄を使用し、トウ側にはタングステンウエイトを配置している。
ユーティリティアイアンは、ハイブリッドやロフトの大きいフェアウェイウッドと比べれば、一般的に打ち出しの高さや寛容性を得にくい傾向がある。
その一方で、アイアンに近い感覚で構えやすく、弾道をコントロールしやすいことが魅力だ。
新しい「ZXiU」は、その基本的なキャラクターを大きく変えるのではなく、現代のZXiシリーズの技術を取り込みながら磨き上げたモデルと考えるのがよさそうだ。

左から「ZXiU」「ZXi5+」「ZXi5」「ZXi7」。
新「ZXi」アイアンの国内価格と発売日
国内では、新しい「ZXi7」「ZXi5」「ZXiR」と「ZXiU」が2026年9月12日に発売される。
各モデルの価格は以下の通り。
| モデル | セット/番手 | スチール | カーボン |
|---|---|---|---|
| ZXi7 | #5〜9、PW(6本) | 171,600円 | ― |
| ZXi5 | #5〜9、PW(6本) | 171,600円 | 178,200円 |
| ZXiR | #6〜9、PW(5本) | 143,000円 | 148,500円 |
| ZXiU | #2(18度)、#3(20度)、#4(23度) | 38,500円/本 | 41,800円/本 |
※価格はすべて税込。
なお、今回の記事で注目してきた「ZXi5+」については、現時点で日本仕様は発表されていない。

「ZXi5+」は“飛び系”の本命になるか?
現時点で「ZXi5+」を“飛び系”の本命と断言するにはまだ早い。
ただ、今回の初期テストで見せたボール初速と飛距離性能を考えれば、“アスリート向け飛び系”の本命候補のひとつと呼ぶには十分だ。
問題は、その飛距離をコースでどこまで使えるか。
アイアンは「何ヤード飛んだか」だけでは評価できない。必要な距離を出しながら、狙った場所に止められるか。そして、その性能を安定して再現できるかが重要になる。
「ZXi5+」はボール初速が速い。飛距離もある。次に確認すべきは、スピン、高さ、落下角、そして距離の安定性だ。
「ZXi5+」が2027年の“アスリート向け飛び系”アイアンの本命になれるのか。
その答えは、いずれMYGOLFSPYの性能テストで明らかになる。



