ゴルフバッグの上の番手には、今やさまざまな選択肢がある。
ハイブリッド(ユーティリティ)、ユーティリティアイアン、フェアウェイウッド。さらに最近では、7番ウッドや9番ウッドをロングアイアンの代わりに使うゴルファーも増えている。プロでさえ、7番ウッドや9番ウッドをバッグに入れる時代だ。
では、なぜロングアイアンは敬遠されるのか。
よく言われるのが、「ヘッドスピードが遅いと打つのが難しい」という理由だ。
ヘッドスピードが遅ければ、ボールが上がりにくく、スピン量も不足し、グリーンで止まりにくくなる。だからロングアイアンは難しい、というわけだ。
しかし、本当に問題はヘッドスピードなのだろうか。
MYGOLFSPYでは、すべてのテスターに5番アイアン、7番アイアン、ピッチングウェッジを打ってもらっている。これにより、5番アイアンがほかの番手と比べてどのような性能を発揮するのかを検証できる。
そこで今回は、2017年から2026年までのテストデータを分析。ヘッドスピードがどこまで落ちると、5番アイアンをバッグに入れておく意味が薄れるのかを調べた。
すると、予想とは少し違う結果が見えてきた。
今回の分析データについて
今回の分析対象は、2017年から2026年までのテストで得られた495件のデータだ。
ここでいう1件とは、1人のテスターが1シーズンに参加した記録を指す。同じテスターが複数年参加した場合は、それぞれ別のデータとして数えている。
今回のデータでは、7番アイアンのヘッドスピードの中央値は約36.9m/sだった。
また、ヘッドスピードが特に遅い5%と速い5%を除いた90%のデータは、約30.4〜41.6m/sの範囲に収まっていた。
そのうち、7番アイアンのヘッドスピードが33.5m/s未満だったのは118件(実人数48人)。31.3m/s未満のデータも50件含まれている。
つまり、ヘッドスピードが遅いゴルファーのデータも十分に含まれており、その傾向を分析できるだけのサンプルがあるということだ。
なお、7番アイアンのヘッドスピードは、次の計算式でドライバーのヘッドスピードにおおよそ換算できる。
ドライバーのヘッドスピード ≒ 7番アイアンのヘッドスピード × 1.33 − 4.5m/s
例えば、7番アイアンのヘッドスピードが約31.3m/sなら、ドライバーでは約37.1m/s。約33.5m/sならドライバーで約40.2m/s、約37.1m/sなら約44.7m/sが目安となる。
以下の分析では、自分のヘッドスピードと照らし合わせながら結果を見てほしい。
ヘッドスピードが遅いほど、ロングアイアンは打ちにくくなるのか?
ヘッドスピードが遅いほどロングアイアンを打つのが難しくなるなら、スピードが落ちるにつれて、打点の質やショットの安定性も悪化するはずだ。
しかし、今回のデータでは、そうした傾向は見られなかった。
▪ キャリーの安定性: 5番アイアンは7番アイアンよりキャリーのばらつきが約1ヤード大きい。ただし、その差はヘッドスピードに関係なくほぼ一定だった。
▪ 打点の質とスマッシュファクター: ヘッドスピードが遅くなっても、打点の質やスマッシュファクター(ヘッドスピードをどれだけ効率よくボール初速に変えられるか)が悪化する傾向は見られなかった。
▪ グリーンでの止まりやすさ: 「ロングアイアンはグリーンで止まりにくい」という問題は確かにある。しかし、これはロングアイアンだけの話ではない。ヘッドスピードが遅くなると、どの番手でもボールの落下角度は浅くなる。
実際、5番アイアンの落下角度は、ヘッドスピードに関係なく7番アイアンより平均約4.6度浅かった。
今回のデータでは、7番アイアンのヘッドスピードが約37.5m/sを下回ると、5番アイアンの平均落下角度は40度未満になった。一方、7番アイアンの平均落下角度が40度を下回るのは、ヘッドスピードが約33.5m/s未満になってからだ。
つまり、ヘッドスピードによって変わるのは、それぞれの番手の平均落下角度が40度を下回るタイミングだ。一方、5番アイアンと7番アイアンの落下角度の差は、ヘッドスピードに関係なくほぼ一定だった。
今回のデータからは、ヘッドスピードが遅くなるほど、5番アイアンの打点の質やキャリーの安定性が7番アイアンに比べてさらに悪化する傾向は確認されなかった。
では、「打ちやすさ」が問題ではないとしたら、本当の問題は何なのだろうか。
本当の問題は、番手間の飛距離差にある
今回のデータで明らかになったのは、ヘッドスピードが遅くなるほど、5番アイアンと7番アイアンのキャリーの差が小さくなるということだ。
7番アイアンのヘッドスピードが約0.45m/s(1mph)低下するごとに、両番手のキャリーの差は平均約0.39ヤード縮まっていた。
この傾向は、どのカテゴリーのアイアンでも確認された。さらに、同じテスターのヘッドスピードが前年から変化した場合にも、同様の傾向が見られた。
具体的に見ると、7番アイアンのヘッドスピードが約40.2m/sのゴルファーでは、5番アイアンと7番アイアンのキャリーの差は平均約20ヤード。
ところが、ヘッドスピードが約33.5m/sになると、その差は約15ヤードに縮まり、約29.1m/sではわずか約11ヤードになる。
つまり、ヘッドスピードが遅くなるほど、5番アイアンを使っても7番アイアンとあまり飛距離が変わらなくなるということだ。
では、実際にどれくらいのゴルファーが、5番アイアンと7番アイアンのキャリーにほとんど差がない状態になっているのだろうか。
次の表は、両番手のキャリーの差が10ヤード未満だったテスターの割合を、ヘッドスピード別に示したものだ。
| 7番アイアンのヘッドスピード(ドライバーの目安) | 5番アイアンと7番アイアンのキャリー差が10ヤード未満だった割合 |
|---|---|
| 31.3m/s未満(約37.1m/s未満) | 42% |
| 31.3〜33.5m/s(約37.1〜40.2m/s) | 31% |
| 33.5〜35.8m/s(約40.2〜42.9m/s) | 18% |
| 35.8m/s超(約42.9m/s超) | 約2% |
5番アイアンと7番アイアンのキャリーの差が10ヤード未満なら、実質的に同じ飛距離を打つクラブが2本入っていることになる。15ヤード未満でも、ほかのクラブに替えた方がよい可能性を示すサインだ。
ただし、先ほど示した「ヘッドスピードが約0.45m/s低下するごとに、キャリーの差が平均0.39ヤード縮まる」という数値は、あくまで全体の平均であり、変化の割合は一定ではない。
7番アイアンのヘッドスピードが約37.1m/s(ドライバーで約44.7m/s)を超える場合、ヘッドスピードが約4.5m/s低下すると、5番アイアンと7番アイアンのキャリーの差は約2.5ヤード縮まる。
ところが、7番アイアンのヘッドスピードが約37.1m/sを下回ると、同じ約4.5m/sの低下でも、その差は約5ヤード縮まる。
つまり、ヘッドスピードが遅くなるほど、5番アイアンと7番アイアンの飛距離差は急速に小さくなるということだ。
この約37.1m/sという数値は、今回のテスターの中央値である約36.9m/sにも近い。ただし、明確な境界線ではなく、あくまで目安として考えてほしい。
さらに興味深いのは、スーパーゲームインプルーブメント(SGI)アイアンの結果だ。
SGIアイアンは、主に初心者〜中級者やヘッドスピードが遅いゴルファーを対象に、やさしさを重視して設計されたアイアンだ。
ところが、今回テストしたアイアンのカテゴリーの中で、5番アイアンと7番アイアンのキャリー差が最も小さかったのは、このSGIアイアンだった。
SGIアイアンをテストした全ゴルファーでは、5番アイアンのキャリーは7番アイアンより平均わずか12.9ヤード長いだけだった。
さらに、7番アイアンのヘッドスピードが33.5m/s未満のテスターに限ると、その差はわずか11.5ヤードだった。
つまり、初心者〜中級者やヘッドスピードが遅いゴルファーに向けたSGIアイアンで、5番アイアンと7番アイアンの飛距離が重複しやすい傾向が見られたという、意外な結果になった。
自分のクラブセッティングにどう活かす?
今回のデータを踏まえると、7番アイアンのヘッドスピードによって、ロングアイアンを使い続けるべきかどうかの目安が見えてくる。
▪ 37.1m/s超(ドライバーで約44.7m/s以上): ロングアイアンでも番手間の飛距離差が十分に確保できている可能性が高い。問題なく使えているなら、無理に替える必要はない。
▪ 33.5〜37.1m/s: 判断が分かれるゾーンだ。弾道計測器を使って5番アイアンと7番アイアンを打ち比べ、キャリーの差を確認してほしい。
▪ 33.5m/s未満(ドライバーで約40.2m/s): 5番アイアンを別のクラブに替え、番手間の飛距離差を改善できないか、真剣に検討する価値がある。
▪ 31.3m/s未満(ドライバーで約37.1m/s): 5番アイアンの役割が7番アイアンと重複している可能性が高い。今回のデータでは、この範囲のテスターの42%が、両番手のキャリー差10ヤード未満だった。
最も簡単な判断方法は、自分の5番アイアンと7番アイアンのキャリー差を確認することだ。
その差が15ヤード未満なら、5番アイアンの役割を見直す一つの目安になる。ただし、15ヤードという数値だけで入れ替えを決める必要はない。ほかの番手との飛距離差や、弾道の高さ、グリーンでの止まりやすさも確認したい。
必要に応じて、5番アイアンの代わりにユーティリティやロフト角の大きいフェアウェイウッドを試してみる価値がある。




