「どこを見るか」でパットの結果は変わる
PINGの新作「Scottsdale TEC(スコッツデール テック)」パターは、ストロークそのものではなく“視線”に着目したモデルだ。
一般的にパッティングでは、ラインやフェース向きに意識が向きがちだが、PINGの検証では「視線の安定」が結果に大きく影響することが示されている。
構えた後に視線が動くと、ストローク中のフェース向きや打点の再現性が乱れやすい。結果として、ボールは狙ったラインから外れる可能性が高くなる。
「Scottsdale TEC」は、この“視線のブレ”を抑えることを目的に設計されたパターである。
重要なのは配色ではなく「視線の置き場」だ
この新しい『EYE-Q(アイキュー)』アライメントを見て、まず目に入るのは白と黒のコントラストだろう。視覚的に強調されたデザインは、確かに構えた際の認識を助ける要素になっている。
ただし、このパターの本質はそこではない。
注目すべきは、フェース前方に配置された小さなドットだ。この一点に視線を置くことが、「Scottsdale TEC」の設計意図を理解するうえで重要になる。
視覚は助けにもなれば、ミスの原因にもなる
ストローク直前の視線を安定させる設計
『EYE-Q』デザインの目的はシンプルだ。ストローク直前に視線をパター前方へ戻すことにある。
長いサイトライン(ターゲット方向に構えを合わせるための基準線)はターゲット方向の確認を助ける。一方で、フェース前方のドットはインパクト直前の視線を固定する役割を持つ。
つまりこのパターは、「狙う」と「打つ」という2つの動作で視線の役割を分けている。
この考え方のベースにあるのが『Quiet Eye(クワイエットアイ)』と呼ばれる視線制御の理論だ。ストローク直前に視線を一点に保つことで、動作の再現性を高めることを狙っている。
結果として、フェース向きや打点のばらつきが抑えられ、パットの成功率向上につながる設計になっている。
『Quiet Eye』は他競技でも活用されている理論
この『EYE-Q』設計の背景には、『Quiet Eye』と呼ばれる視線制御の考え方がある。
以下は、PINGのCEO兼プレジデントであるジョン・K・ソルハイムのコメントだ。
「私たちの研究チームは、ゴルフ以外の分野からもヒントを得ています。『Quiet Eye』は、精密な動作が求められる他のスポーツでも広く活用されており、動作直前の集中力を高める手法として知られています。バスケットボールのフリースローやテニスのサーブなど、多くのトップアスリートがこの技術をトレーニングに取り入れています。「Scottsdale TEC」と『EYE-Q』テクノロジーによって、ゴルファーにもこの考え方を取り入れる手段を提供します。」
『EYE-Q』システムの役割は、パッティングの最後の動作を安定させることにある。
ラインを読み、フェースを合わせたあとに求められるのは、意図した通りにボールを打ち出すことだ。
その局面で視線を一定に保つことで、ストロークの再現性が高まり、狙ったラインにボールを乗せやすくなる。
フェース前方のドットは、ストローク直前に視線を置く最終ポイントとなる。
このドットをボール中央に合わせ、そのままストロークに入る。動作はそれだけだ。
PINGはこの設計を検証するために、複数のアライメントパターンを用意し、テスターに視線追跡デバイス(Tobii社製アイ・トラッキンググラス)を装着させて比較テストを行っている。
その結果、前方のドットと長いサイトラインを組み合わせたこの構造が、最も視線の安定性とパッティングパフォーマンスの両方で優れた結果を示した。
つまりこの設計は、見た目の工夫ではなく、検証データに基づいて導き出されたものだ。
ストローク直前の精度を左右する「ドット」
アライメントは“統一された正解”があるわけではない
アライメントの違いがパッティング結果にどのような影響を与えるかについては、いまだ明確な結論が出ているわけではない。
ラインやドットといった視覚的な要素が、構えた際のフェースの向きに影響を与えること自体は広く認識されている。しかし、それがどのように作用するのかについては、見解が分かれているのが現状だ。
実際、メーカーごとにその考え方は大きく異なる。
例えばEdel Golfは、アライメントラインが構えに与える影響を重視し、フィッティングの中心に据えている。一方でL.A.B. Golfは多様なアライメントオプションを用意しながらも、それぞれがエイミング(狙いを定める動作)にどう影響するかについて明確な指針は示していない。
シャフトフレックスと同様、アライメントに統一基準はない

Ping Scottsdale TECパターは、モデルごとに異なるアライメントライン設計を採用
「狙う」と「打つ」は別の動作として設計されている
ここで重要なのは、『EYE-Q』アライメントがエイミングそのものを目的としているわけではないという点だ。
この設計が狙っているのは、ストローク直前の視線の安定にある。
ターゲット方向の確認は、ボディラインに沿った長いサイトラインが担う。この長いラインは、過去の検証で有効性が確認されている要素だ。
一方で、フェース前方のドットは役割が異なる。ボールとフェースが接触する瞬間に視線を集中させるためのものだ。
つまりこのパターは、「狙う」と「打つ」という2つの動作を分け、それぞれに適した視覚情報を与える設計になっている。
Scottsdale TECシリーズのモデル構成

Ping Scottsdale TECシリーズの各モデルは、それぞれ異なる形状と特徴を持つ
今回の「Scottsdale TEC」シリーズは、いずれもPINGの従来モデルをベースに再設計されたものだ。
「Ally Blue(アリーブルー)」と「Ketsch(ケッチ)」は従来モデルの名称を踏襲しているためイメージしやすい。一方で「Hayden(ヘイデン)」は新しい名称だが、ベースとなっているのは「Nome(ノーム)」系の形状である。
3モデルすべてに共通するのは、白と黒のコントラストを強調したヘッドデザインと、フェース前方に配置された『EYE-Q』ドットだ。
この基本構造を踏まえたうえで、それぞれのモデルの特徴を見ていこう。
Scottsdale TEC「Hayden」|「Nome」系をベースにしたマレット
Scottsdale TEC「Hayden」は、3モデルの中で唯一、ヒールシャフトのホーゼルを採用したモデルだ。
他の2モデルとは異なる構造だが、特殊というわけではない。むしろ従来のパターに近い構成であり、多くのゴルファーにとって構えやすい形状と言える。
ヘッド形状は3モデルの中で最も大きく、ベースとなっているのはPINGの「Nome」だ。このモデルは2012年に登場したマレットで、当時としては特徴的な形状を持っていた。
当時のPINGは独自性のある形状を静かに市場投入する傾向があり、「Nome」や「Sydney」も大きなプロモーションなしに展開されたモデルのひとつだった。
その後、ハンター・メイハンがWGCアクセンチュア・マッチプレーで使用して優勝したことで注目を集め、「Nome」は広く認知されるモデルとなった。翌年には改良モデルの「Nome TR」も登場している。
この「Hayden」は、「Nome」系の形状をベースにした伝統的なマレットに位置づけられるモデルだ。
フルシャフトオフセットを採用し、ライ角は±2°の調整が可能となっている。
また、フェースバランス設計により、ストレートに近いストロークを行うゴルファーに適した特性を持つ。
Scottsdale TEC「Ally Blue Onset」|視線とストロークを安定させるオンセット設計
2025年8月には、PINGは「PLD Ally Blue Onset」の限定モデルを発売している。今回のScottsdale TEC「Ally Blue Onset」は、そのPLDモデルをベースにしつつ、いくつかの仕様が変更されている。
大きな違いのひとつが『EYE-Q』システムの有無だ。PLDモデルは長いサイトラインのみを採用していたのに対し、「Scottsdale TEC」では前方のドットを含む『EYE-Q』設計が追加されている。
もうひとつの違いはフェースだ。このモデルには、PINGの2025年「Scottsdale」シリーズと同様に「PEBAX」エラストマーインサートが採用されている。
このモデルでは、フェースに採用されたインサートがパフォーマンスに大きく影響している。
フルミルド(削り出し)のPLDモデルとは打感が異なるだけでなく、インサートによって軽量化された分の重量をヘッド周辺に再配分することが可能になっている。その結果、ヘッドの安定性が高められている。
また、この「Ally Blue Onset」はゼロトルク設計ではない。
オンセットのシャフト位置からゼロトルクのように見えるが、構造は異なる。ゼロトルクパターは重心位置にシャフトが配置されるのに対し、このモデルでは重心より前方にシャフトが配置されている。

Ping Scottsdale TECパターのアライメント設計により、ボールへの集中力を高める構造
PINGは創業者カーステン・ソルハイムの時代から、一貫して重心をシャフトの後方に配置する設計を採用してきた。
この構造の狙いは、ストローク中にヘッドを「押す」のではなく、「引く」ような動きを生み出すことにある。
重心がシャフトの後方にあることで、ヘッドの動きが安定しやすく、ストロークの再現性を保ちやすくなる。
この設計について、PINGのCEO兼プレジデントであるジョン・K・ソルハイムは次のように説明している。
「重心を引く設計にすることで、ストローク中の安定性が高まり、ボールを狙ったラインに乗せやすくなる。」
シャフトが重心から離れた位置にあることで、「Ally Blue Onset」と「Ketsch Onset」には一定のトルクが生じる設計となっている。
実際にシャフトバンドの仕様を確認すると、これらのモデルはわずかにアークを描くストロークに対応するセッティングになっていることが分かる。
Scottsdale TEC「Ketsch Onset」|安定性を重視したオンセットマレット
「Ketsch」は、これまでのモデルで高い評価を得てきたシリーズだ。
そのため、新しいモデルには従来モデルと比較されるだけの期待がかかる。
今回のScottsdale TEC「Ketsch Onset」も、その評価に応えられるかがポイントとなる。
初代「Ketsch」も、特別なプロモーションなしに市場投入されたモデルだった。
しかしテストでは非常に高いパフォーマンスを示し、マレット型パターの中でも扱いやすいモデルとして評価されている。

Ping Scottsdale TECシリーズのKetschモデルは安定性に優れた大型ヘッド形状
初代「Ketsch」は、重量配分とフェースの溝設計によって、特にショートパットで高い安定性を示したモデルだ。
テストでも約1.5m前後の距離において再現性が高く、安定して結果を出しやすいパターとして評価されている。
今回のScottsdale TEC「Ketsch Onset」は、初代と比較してややコンパクトな形状となり、設計アプローチも大きく見直されている。
基本となるヘッド形状は継承されているものの、シャフト位置とフェースインサートの違いによって、打感やストローク中の挙動は大きく変化している。
オンセットホーゼルの特徴のひとつは、構えた際にフェース前方の視界が広くなる点にある。
ボールとの関係が視覚的に把握しやすく、『EYE-Q』ドットを基準にしたセットアップとも相性が良い。
一方で、この構造には制約もある。オンセットホーゼルを採用する「Ally Blue Onset」と「Ketsch Onset」は、ライ角の調整ができない固定仕様となっている。
ライ角は70°に設定されており、シャフトを曲げて調整することはできない。
そのため、フラットやアップライトの調整が必要なゴルファーにとっては適合しない可能性がある。
なお、「Hayden」はライ角を±数度調整できるため、この点での自由度は高い。
『EYE-Q』は本当にパットを変えるのか
では、『EYE-Q』は一過性のアイデアなのか、それとも継続的な価値を持つ設計なのか。
現時点で視線追跡データを用いた詳細な検証は行っていないが、実際に構えてみると、このドットに視線が集まる感覚は確かにある。
もちろん、意識的にそこを見るようにしている影響も否定はできない。
ただし、それによって視線が安定し、ストロークの再現性が高まるのであれば、この設計は意図通りに機能していると言える。
PINGが視線データをもとに設計を見直すのは、今回が初めてではない。
例えば現在のシャフトラベルが小さくなっているのも、従来の大きなラベルがストローク中の視線を引きつけてしまうという検証結果に基づいたものだ。ラベルを小さくすることで、視線がボールとフェースに集中しやすくなっている。
この点を踏まえると、『EYE-Q』も同様に視線の動きをコントロールするための設計と考えることができる。
一方で、この機能が白いヘッドでなければ成立しないわけではない。黒いヘッドに白いラインを組み合わせた場合でも、同様の効果は期待できるはずだ。
今回あえて白を基調とした配色が採用されているのは、視認性だけでなく、新しいコンセプトを強調する意図も含まれている可能性がある。

パッティングでは、視線の位置がフェース向きと打点の再現性に影響する
実際にショップに並べば、この白いヘッドは自然と視線を引きつけるはずだ。
Scottsdale TECは、パフォーマンスと視覚的な訴求を両立させたモデルと言えるかもしれない。
ゴルファーが新しいパターに気づかなければ、その性能を試す機会すら生まれない。視線をドットに導く設計であると同時に、まずはクラブそのものに目を向けさせる必要がある。
実際、今年のPGAショーでの反応やトニー・フィナウの使用によって、この白いマレットはすでに多くのゴルファーの注目を集めている。
「Scottsdale TEC」は2026年4月9日(木)に発売予定。製品の詳細はPING公式サイトで確認できる。




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