「新しいクラブほど優れている」。
そう思われがちだが、PGAツアーの現場では必ずしもそうではない。
毎年新製品が登場する一方で、トッププロのバッグには数世代前のクラブが今も残り続けている。それは懐かしさでも節約でもない。「替える理由がない」ほど完成度が高いからだ。
今回は、2026年にPGAツアーで優勝した選手たちが使い続けていた3本の旧モデルを紹介する。本当に性能の良いクラブは、時間が経っても価値が色褪せないことがよく分かるはずだ。

マット・フィッツパトリック「PING S55」アイアン
マット・フィッツパトリックは、現在も5番アイアンから9番アイアンまで2013年発売のPING「S55」を使い続けている。発売からすでに12年以上が経過したモデルだが、2026年シーズンも「バルスパー選手権」を含む複数の優勝に貢献している。
「S55」は、ツアープレーヤー向けのコンパクトなヘッド形状に加え、トウ側へタングステンウェイトを配置することで寛容性を確保。さらに、距離のばらつきを抑えるためのスタビライジングバー(打感と方向性の安定性を高める構造)を搭載したモデルだ。
しかし、フィッツパトリックが使い続ける理由は、スペックだけではない。狙った距離を正確に打ち分けられること、長年使い慣れた抜けの良さ、そして思い描いた弾道を再現できること。
そうした信頼感こそが、彼にとって最大の武器になっている。
PINGから最新モデルが次々と登場しても、性能が上回ると確信できなければ替える理由はない。ツアープロにとって本当に重要なのは、新しさではなく、自分のゴルフで結果を出せるかどうかだ。

ビクトル・ホブラン「PING Glide 2.0」ロブウェッジ
ビクトル・ホブランは、2017年発売のPING「Glide 2.0」60度ロブウェッジで2026年「トラベラーズ選手権」を制した。
ホブランが気に入っているのは、ややスクエアなフェース形状や小ぶりなヒール、コンパクトなソールといった旧モデルならではのデザインだ。しかし、ここで一つ誤解してはいけないことがある。
ホブランが使っているのは、2017年から同じウェッジを使い続けているわけではない。PINGのツアーサポートでは、好みのヘッド形状や抜けの良さを維持しながら、新しいヘッドを製作・調整することができる。そのため、長年愛用しているのは「古いウェッジ」ではなく、「信頼する形状と性能」なのである。
実際、MyGolfSpyが行った耐久テストでは、75ラウンドとバンカーショット500回を想定した摩耗後、50ヤードのアプローチにおける平均スピン量は7,021rpmから3,737rpmまで低下。キャリーの安定性も大きく損なわれた。
形状やソール、グラインドにこだわるのは構わない。しかし、溝が本来の性能を発揮できる状態であることが、その前提となる。
アーロン・ライ「TaylorMade M6」ドライバー
アーロン・ライは、2019年発売のテーラーメイド「M6」ドライバーで2026年の全米プロゴルフ選手権を制した。
「M6」は2019年の『Most Wantedドライバー』テストで「飛距離」部門No.1を獲得したモデルだ。複数の飛距離指標でトップとなり、「ストロークス・ゲインド」でも2位にランクインするなど、当時から高い飛距離性能を備えたドライバーとして評価されていた。
興味深いのは、ライが決して新しいクラブを否定しているわけではないことだ。フェアウェイウッドは最新モデルを使用し、新製品のテストも継続して行っている。その上で、「M6」が打ち出し角やボール初速、方向性など、自分が求める性能を今も満たしているため、使い続けているのである。
ここから学べることはシンプルだ。モデルが古くなったからという理由だけで、フィッティングされたドライバーを替える必要はない。本当に替えるべきタイミングは、新しいクラブが明確に優れた性能を発揮するとテストで確認できたときだ。

総括
2026年のPGAツアーで結果を残した3本の旧モデルに共通しているのは、「古いから使われている」のではなく、「替える理由がないほど完成度が高い」という点だ。
フィッツパトリックのPING「S55」は、長年培った距離感と操作性への絶対的な信頼。ホブランのPING「Glide 2.0」は、愛用しているのは古いヘッドではなく、自分に合った形状と性能であり、溝の性能は常に最新の状態に保たれている。そしてライのテーラーメイド「M6」は、新モデルも試した上でなお、自分にとって最も高いパフォーマンスを発揮できるドライバーとしてバッグに残り続けている。
つまり、ツアープロがクラブを選ぶ基準は「新しいか古いか」ではない。実際のテストやプレーを通じて、自分の求める弾道や距離、方向性を最も安定して再現できるかどうかだ。
アマチュアゴルファーにとっても、この考え方は参考になる。最新モデルが必ずしもベストとは限らず、現在使っているクラブが自分に合っているのであれば、無理に買い替える必要はない。一方で、ウェッジの溝の摩耗のように性能が明確に低下する部分や、新モデルがフィッティングで優位性を示した場合には、買い替えを検討する価値がある。
クラブ選びで本当に重要なのは、発売年ではなく、自分のスコアに貢献してくれる一本かどうか。その視点こそが、ツアープロたちのセッティングから学べる最大の教訓と言えるだろう。



