キャロウェイの2020年モデル、クロムソフトとクロムソフトXにまつわる物語は、同社のマーベリックドライバーのそれと似たような序章から始まる。

2019年はキャロウェイのボールにとって最高に良い年だった。

17%から25%と(調査機関により数字は変動)、同社として史上最高のマーケットシェアを獲得した。トゥルービズ人気は高まるばかりで、トリプルトラックテクノロジーは手動で線を引くシャーピーに取って代わった。

だが同時に、2019年はキャロウェイのボールにとって残念な年でもあった。

MyGolfSpyのボールテストで、低コンプレッションすなわちソフトなボールはスロー(飛ばない)であり、ソフトなツアーボールについて言われていることは誤りなのではないかという結論に至った。

だがそれはほんの始まりに過ぎなかった。

我々の『#FindItCutIt=切って確かめよう』の取り組みで、混在する品質の異なるボールから、コアがセンターにないボールが大量に見つかり、キャロウェイのボールは品質管理に問題があることが明らかになった。同様の問題が歴代モデルでも見つかった。

スタッフを含む多くのゴルファーから送られてきたキャロウェイボールの不備、オフセンターコア、捻れたコアに消えたディンプルなどを証明する写真で私の受信トレーは一杯になった。

ある業界関係者いわく、どんどん騒ぎが大きくなっているという。「キャロウェイは良いドライバーを創るが、ことボールに関してはただの目立ちたがり屋だ」と。

一連の流れについて紐解くのもなかなか大変なので、二つに絞って考えていくことにする。

まず、多くのゴルファーがクロムソフトを好んでいるということ。消費者から支持されていなければ20%前後のマーケットシェアを獲得できるはずがない。

だが、ゴルファーの好みはさておき、客観的に見てクロムソフトが良いボールであったことはない。

ソフトなボールの開発者は誰も、ヘッドスピードが平均的〜速いゴルファーのパフォーマンスにどのような影響を与えるかつまびらかにはしてきていないし、キャロウェイの品質管理の不備により、ユーザーが気づかないうちにミスを誘発している可能性がある。

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再出発

これらすべての出来事により、2020年度のボールラインナップを決める前にキャロウェイは通常と異なる挑戦を強いられることになった。

ゴルファーたちが愛するクロムソフトのすべてを継承しつつ、世の中に知れわたったその不甲斐ない品質を改善するという挑戦を。

「プレーしてみればこのボールに満足するはず。全く別物に生まれ変わった」とキャロウェイゴルフの上級副社長、ショーン・トゥーロン氏。

朗報だと喜ぶ人もいれば、眉唾ものだと疑う人もいるだろうが、あなたのクロムソフトのコアがどっち寄りかに拘わらず、結論はこうだ。

キャロウェイは、クロムソフトを期待通りの素晴らしいボールに作り直そうと全力を尽くしている。キャロウェイはボールを改良し続けているのだ。


 

クロムソフト理論

キャロウェイが本当に良い製品を作るために尽力していることを思えば、今までほとんど考察されてこなかったクロムソフトの設計理論から見ていくのが筋であろう。

始まりは数年前、タイトリストがボール市場を席巻していた頃に遡る。タイトリストはぶっちぎりのナンバーワンで、ブリヂストンやテーラーメイド、スリクソン、キャロウェイは残り10%以下のシェアを奪い合っていた。タイトリストは無敵だったのだ。

当時すでに多くのゴルファー、特にヘッドスピードが遅めのプレーヤーはソフトな打感を好むということは知られていた。

もしキャロウェイが低コンプレッションの(ソフトな)ツアーボールを開発できれば、タイトリストとの差別化をはかることができ、その他大勢から抜け出して市場での二番手の座につき、将来的にはタイトリストの首位を脅かすことも夢ではない。

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クロムソフトの始まり

ブリヂストンはRXシリーズがまさにそれだったと主張するだろうが、それまでソフトなボールが存在していたとしても、キャロウェイこそがソフトなツアーボールをゴルファーたちの間に浸透させたメーカーであることに異議を唱える者はいない。

ボールビジネスに関わっている他の者たちと同じく、キャロウェイもソフトなボールは本質的にスロー(飛ばない)であることは承知していたが、総体的なストロークゲインド手法をボール設計にも用いることで、ティーショットで損なわれた飛距離があったとしても距離のあるアイアンショットで取り戻せると考えた。

そして薄めのカバーによりショートゲームでスピン量を増やし、その結果スコアが縮まると。

目指すべきはソフトな打感に確かな性能。クロムソフトの設計理念は知らなくても、ゴルファーたちはそれに飛びつきシェアを20%に押し上げ、キャロウェイは3位以下を大きく引き離してナンバー2の座についた。

クロムソフトについてあまり語られていないもうひとつのことは、低コンプレッションのデュアルコアボールを作るのは極めて困難であるという事実。軟らかめの素材は望む場所に留まってくれないものだ。

これはちょっと単純化しすぎかもしれないが、2枚のグラハムクラッカーの真ん中に炙られたマシュマロを挟んでみてほしい。コアを完璧に中央に据え置かねばならないとして、そんなこと可能だろうか。


 

2020年版クロムソフト

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2020年モデルでキャロウェイは、クロムソフトを再設計しただけでなく、より良いボールを作るためマサチューセッツ州チコピーにある製造施設の設備も一新した。

今回の改良はただ性能を一段階進めるだけの話ではない。品質と一貫性において大きな飛躍を遂げるには、という話なのだ。

ボールの再設計に関しては業界の標準パターンを踏襲している。

化学式を微調整して、レイヤーのひとつを薄くし、もうひとつを厚くし、バランスを均等にとりなおし、願わくば前作より明らかに良いところまで持っていく。

クロムソフトにおいてそれは特に難易度の高い課題だった。

「製品の持つエッセンスやスピリットを失うわけにはいかなかったので」とトゥーロン氏。より良く、しかしより硬くはしないというわけだ。

挑戦は、インナーコアの質量を34%増やすことから始まった。これにより高打ち出し角と低スピン量が得られるため、クロムソフトXと差別化する大きなポイントになる。

グラフェンが注入されたアウターコアはショートゲームにおいてスピンをもたらし、新たなハイスピード・マントル構造により、どの番手でもボール初速が上がる。

新素材の採用と3層のインナーレイヤーの関係性を組み直すことで、キャロウェイはゴルフボールにも『ジェイルブレイク』と形容できる効果を得たのだ。同じソフトな打感で、速いボール初速を実現した。

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進化した空力性能

進化はまた、六角形のTPUディンプルカバーによっても実現している。改良版では、高弾道を最優先事項とする、遠くに確実に飛ばすため抵抗を減らすよう設計されたディンプルパターンのおかげで、10%薄くなった。

ボール性能においてはドライバー使用時のそれが最も重要だということに異論はないだろうが、クロムソフトのドライバーにおけるボール初速が精査されるであろうことはキャロウェイも理解している。

このボールにはティーショットにおける競争力がもっと必要なのだ。その点についてキャロウェイは、今回ドライバーで5ヤードの飛距離増(ヘッドスピード45m/sで)がみられたと言う。

そして5ヤードのうち2割は工場の工程改善に起因するとキャロウェイが言っていることは注目に値する。それについてはまた後ほど。

フィッティングの観点からいえば、45m/sのヘッドスピードはクロムソフト使用推奨のほぼ上限に位置する。

より速いスピードでボールを必要以上に押しつぶせば飛距離を損なうことになるので、これは当然の懸念である。ヘッドスピードの速いゴルファーのほとんどはクロムソフトXのほうが結果が出るはずだ。

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上記画像:【5ヤード増の要因】

ヤード数 / ドライバー飛距離(クロムソフト2018との比較)

(左から)

デュアル・ソフトファスト・コア

ハイスピード・マントル

薄くなったウレタンカバー

最適化された空力

製造工程の改善

トータルヤード数


 

カラーラインナップ

最近聞いたなかで最も衝撃的だった統計データは、キャロウェイのボール売上の70%近くがホワイト以外のボールだということ

そのため新作でもホワイトのほか、レッド/ホワイトのトゥルービズ、イエロー/ブラックのトゥルービズ、ホワイトのトリプルトラック、イエローのトリプルトラックが販売される。


 

2020年モデル クロムソフトX

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クロムソフトの赤い外箱にもたらされた微妙な変化が進化を意味するものだとすれば、クロムソフトXの黒い外箱は新しいボールが全く別物になったということを表している。

どんな変化かはさておき、これはテーラーメイドのLETHAL(リーサルボール)を思い出させる。ボールの名前は馬鹿馬鹿しかったがその性能は素晴らしかった。

キャロウェイでは、その高い性能がクロムソフトXでも真実だと証明されるよう願っている。

クロムソフトXはクロムソフトと同じ問題を多く抱えていたのと同時に、おそらく市場での失敗の規模はクロムソフトと同じ程度だっただろう。

クロムソフトXではPro V1xやTP5x、ZStar XVに太刀打ちできなかった。ゴルファーが「X」と名のつくボールに求めるものとは程遠かったのだ。

キャロウェイはクロムソフトXの売上を見誤ったとトゥーロンも言っている。これは予想ほど売れなかったという業界の言い回しだ。

市場での現状の割合は80対20ほどでスタンダードボールが支持されている。

キャロウェイはこの数字を65対35に、本音では60対40まで持っていきたいところだろう。そのためには全く別物のボールが必要だ。

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ツアーで使用(されない)クロムソフトX

一般ゴルファーが購入できるボールをメーカーのツアープレイヤーが使っていれば、妥当性や信頼性などの価値を付与することになる。

LEFT DASH (レフトダッシュ)の発売前、タイトリストのスタッフプレーヤーの80%がプロV1かプロV1xのいずれかを使用していた。ブリヂストンとスリクソンは、スタッフプレーヤーが100%、市販モデルと同じボールを使用していると断言している。

裏メニューはないのだ。じゃあテーラーメイドは?それはまた後日改めて。

しかし、キャロウェイに関しては、同社の市販ボールを使っているスタッフプレーヤーの数は100%よりは0に近いのが常であった。フィルにザンダー、セルヒオ。いやいや、あり得ない。

2020年モデルのクロムソフトXで、キャロウェイはその状況を変えようとしている。判断するにはまだ時期尚早だし推測でしかないが、キャロウェイのアラン・ホックネル博士はツアースタッフの60%が市販モデルを使うようになるだろうと予測している。

残りの40%はスピン量のより多い、またはより少ない、ふたつの極端な選択肢にほぼ等分されるだろうと。じゅうぶんに納得のいく話だ。

キャロウェイがそのゴールを「コンプレッションの保持」としているクロムソフトと違い、クロムソフトXでは意図的にボールを硬く仕上げた。

名前に『ソフト』が入っているのが不釣り合いな硬さではあるが、かといって『クロムファーム』もまた相応しくない。

高コンプレッション設計により、ツアープレーヤーのヘッドスピードでもボールが潰れすぎずに済む可能性は高い。だからといってピナクルのようになったわけではない。

クロムソフトと同じく、素材の微調整および、コアと2層のマントルレイヤーとの関係性を見直したことで、競合他社の製品よりも「速い」のに「比較的軟らかい」打感のボールが出来上がった。

「このコンプレッション値においてはどこよりも速い」とホックネル博士。市場において歴代のクロムソフトXが他社のX系ボールと比べてどうだったかを考えればずいぶんと思い切った発言だ。

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117%増のコア

クロムソフトXが新たに手に入れたスピードの要因は大きくなったコアにある。ただ大きくなったという話ではない。117%大きくなったのだ。

一見その数字は夢物語に思えるが、2020年モデルクロムソフトXの構造を全く別物に変えたおかげでキャロウェイはコアのサイズを倍以上にすることができた。

スタンダードのクロムソフトと同じく、Xの前モデルは4ピースのデュアルコア設計(大きなボールの中に小さなボールがあって2層の薄いレイヤーが覆っている)だった。

2020年モデルクロムソフトXは4ピースのデュアルマントル設計(大きなボールの周りに3層の薄いレイヤー)で、ほとんどのゴルファーはピンとこないかもしれないが、これによりやっとクロムソフトシリーズの二つの製品を明確に差別化することができる。

大きく硬いコアを緩衝レイヤーの機能を果たす軟らかいインナーマントルと組み合わせることで、高コンプレッションにもかかわらずクロムソフトXのソフトな打感を保持できた。

硬めのアウターマントルはスピードを担いつつ、グリーン周りではスピンを増やすことができる。

キャロウェイはコンプレッションの実値を100としている。前作に比べるとかなり高いが(昨春発売のクロムソフトX・トリプルトラックに近い)、キャロウェイいわく打感は変わらずソフトだという。

アベレージゴルファーの多くやそれ以上のアマチュアゴルファーでも、ボールが硬くなったことに気づかない者がいるかもしれない。

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上記画像:【7ヤード増の要因】

ヤード数 / ドライバー飛距離(クロムソフトX 2018との比較)

(左から)

大きいソフトファスト・コア

ハイスピード・デュアルマントル

薄くなったウレタンカバー

最適化された空力

製造工程の改善

トータルヤード数


 

新設計カバー

2020年モデルクロムソフトXのカバーは前作のクロムソフトXや今作のクロムソフトと比べて22%薄くなっている。

キャロウェイはカバーの薄さはあるところまでいくと効果が得られなくなると考えているので、別に業界で最も薄いカバーを作り出そうとしているわけではない。

すでに最も薄いカバーのひとつではあったが、厚みを減らすことでグリーン周りでのスピン増が期待できる。キャロウェイいわく新しいクロムソフトXでは全番手においてスピン増が望めるということだ。

クロムソフトと同じく、クロムソフトXでも新たなディンプルパターンが採用されている。ディンプルの数はどちらのボールも同じだが、その設計は根本的に異なるものだ。

見た目でも明らかだが、Xのカバーはターゲットゴルファー向けに最適化されている。その弾道はフラットだが低すぎず、射程のより先で最高到達点を迎える。

53.65m/sでおこなったロボットテストで、キャロウェイは7ヤードの飛距離増を確認した。クロムソフトと同じく製造工程の改善に起因するものもある。

「要はこのボールの出来は素晴らしいということ」とトゥーロン氏。「前作はそうじゃなかったということになるね」。

キャロウェイいわくツアープレーヤーからの評価は非常に好評で、スタッフプレーヤーの中には風の中でのパフォーマンスの向上について口にする者も数名いたという。

断言するにはまだ時期尚早とはいえ、キャロウェイは正真正銘のツアーレベルといえる市販ボールをようやく創り上げたのかもしれない。

もし市場に受け入れられて割合が60対40に近づいたら、将来的にトゥーロンモデルの限定バージョンが登場するかもしれない。

今のところ、クロムソフトXのラインナップは、無地のホワイト、イエロー、イエロー/ブラックのトゥルービズ、ホワイトのトリプルトラックとなる予定だ。

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品質管理と製造工程の改善

蒸し返しても仕方のないことだが、クロムソフト(とそれ以前のボール)は品質管理に問題があった。キャロウェイは正直にそれを認めて改善すると誓った。

ボールに模様やラインをペイントする機械を買うだけでなく、品質と一貫性を高めるためのテクノロジーにかなりの投資をした。

ここからは良くなるいっぽうだ。とりあえずその準備は整った。

MyGolfSpyのスタッフは3月にボール工場を訪れるプランを練っている。その時にまた説明することが出てくるはずだ。もちろん新しく進化したボールをテストすれば(カットもすれば)なお一層だ。


 

リスト

それはそれとして、とりあえずキャロウェイのチコピーにあるボール工場内の変化を現在わかる範囲で要約しておこう。

・最先端の4階建ての高さのミキサーが導入された。ズレたコアの問題はもちろんそのほか素材がうまく配分されないことで起こる問題の解決にも極めて重要な設備である。

・建物全体を管理する新たな環境制御システムにより、天候が変化してもボールは変化しない。

・新しいデュアルコアの製造セルを見直し、コアをセンターに据える正確性とベーキング工程の一貫性を向上。想像できる最高に精密なマフィン型で焼く工業用オーブンだと思ってもらえばいいだろう。ロボティックアームによってより効率的にモノの移動がおこなわれる。

・新しいX線機械(ボールをカットした私のせいだな)が生産ライン上の何ヶ所かに設置された。製造工程において全てのボールを多段階にX線でチェックする。3DのX線テクノロジーを利用して様々な角度からコアを確認できる。オフセンターコアやその他の問題があるボールは全て市販前に取り除かれる。

・ペイントおよび仕上げ工程の向上により、均一なコーティングと妥協なき空力性能を確保。

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ベストなゴルフボール?

二つのことが言える。

ゴルファーはクロムソフトが大好きだ。それには議論の余地がない。と同時に、ベストかつ最高品質のゴルフボールを本気で作ろうとするなら、キャロウェイにはまだやるべきことがある。

「二番手で終わるつもりはない」とトゥーロン氏。「最高にベストな選択肢になるため、我々にはまだ対処しなければならないことがあるが、もうすでに取りかかっているところだ」。

誰だって最初はみんな初心者なのだ。

キャロウェイのクロムソフトとクロムソフトXの小売価格は47.99ドル。3月12日より発売開始。

訂正箇所あり:初稿ではキャロウェイボールのシェアは20〜25%だと書いたが、業界標準マーケットシェア値に準ずる形でより広範に改訂した。


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