キャロウェイ「ROGUE STアイアン」主要ポイント

・「ROGUE ST」は4モデルの初・中級者向け(スコア改善型)アイアン

・4モデルすべてにAI設計による『450フェースカップ』を搭載

・最大62gの「タングステン」の追加により「低重心化」を実現

・セット価格999.99ドルから。2月18日より発売


まずは、キャロウェイ「ROGUE ST」アイアンについて簡潔にまとめてしてみよう。「AI設計」に大量の「タングステン」。

簡潔な物言いで足りないと感じるなら、「ROGUE ST」はキャロウェイのアイアン戦略の今後の道しるべと言っても良いかもしれない。何をもって「コンボセット」と定義するかによるが、キャロウェイは現在12〜16モデルのアイアンセットを有している。

それだけあれば売り場面積も消費者の関心も手に入れることができるというものだ。もし自分のプレースタイルに合ったキャロウェイのアイアンを見つけられない場合、ゴルフそのものがあなたに向いていない可能性すらある。

しかし、多すぎる選択肢はゴルファーを余計に混乱させる危険性もはらんでいる。新しい「ROGUE ST」アイアンは「初・中級者向けカテゴリー」に位置しているが、はたして初・中級者に4モデルもの選択肢が必要だろうか?


キャロウェイ「ROGUE ST」アイアン:4つの新モデル

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キャロウェイのアイアンは2年周期で新製品がお目見えする。今回の「ROGUE ST」アイアンは2020年2月に発売された「MAVRIK(マーベリック)」アイアンシリーズの後継となる。

ちなみに、「MAVRIK」シリーズでは5モデルのアイアンセットがあった。スタンダードな「MAVRIK」に「MAVRIK MAX」、「MAVRIK PRO」、さらに女性向け「MAVRIK MAX W」と「MAVRIK MAX W LITE」だ。

キャロウェイは今回「ROGUE ST」シリーズの合理化およびネーミング法則の変更をおこなっている。これにより「ROGUE ST MAX(ローグSTマックス)」がスタンダードな「MAVRIK(マーベリック)」に代わってラインナップの核となり、「ROGUE ST PRO(ローグSTプロ)」が「MAVRIK PRO(マーベリックプロ)」の後継となった。


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キャロウェイはレディースモデルを廃止するが、それは名目上で製品名から「レディース」の文字が消えるだけ。「ROGUE ST MAX OS(ローグSTマックスOS)」および「MAX OS LITE(マックスOSライト)」が、性別を問わずヘッドスピードが遅めのプレーヤーに向けた軽量設計モデルとなっている。

だが、「レディースの『MAVRIK MAX W』アイアンの売上は好調だった」と研究開発部門のバイスプレジデントであるアラン・ホックネル氏は言う。「しかしフィッターや営業担当者から、このカテゴリーを女性のものだけにしておくのはもったいないのではというフィードバックを得た。打ち出し角やヘッドスピードを上げたいゴルファーなら誰もが、特にシニアゴルファーが恩恵を受けられるはずだと」。


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AI設計と『450フェースカップ』

キャロウェイは “初の”という冠を好む。「MAVRIK」ではAI設計による『フェースカップ構造』を搭載した“世界初”のアイアンであると高らかに宣言した。そうなると、今回の「ROGUE ST」ではAI設計による『450ステンレススチール フェースカップ』を搭載した“世界初”のアイアンということになる。

「世界初の450フェースカップ構造」ではなく、「AI設計」によるものが“世界初”というだけだ。

では『フェースカップ構造』とは何か?典型的な複合構造では、アイアンのボディに平なフェースをはめ込んで溶接する。『フェースカップ』は、トップラインとソール、ヒール、トゥをカップ状に覆い、ボディに溶接している。高強度の『カーペンター450』を採用することにより、「AI」が魔法をかけるための大きな“キャンバス”を提供できるというわけだ。


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「より強度の高い『カーペンター450』の利点を生かした『フェースカップ構造』と『AI設計技術』により、ボール初速を上げ、打ち出し角とスピン量をコントロールするシステムを生み出すことができる」とホックネル氏。

「ボール初速」と「打ち出し角」、「スピン量」は“飛距離の三原則”である。これらをいかにうまく組み合わせるかが設計者の腕の見せ所。

「できるだけ遠くにボールを飛ばすクラブというだけなら方程式は非常に簡単」とホックネル氏。「しかしアイアンにおいては、飛ばすだけでなく(グリーン上で)止めなければならない」。

「MAVRIK」同様、アイアンのロフト角毎にそれぞれ適した『フェースカップ構造』が採用されている。5番アイアンと9番アイアンではその役割が大きく異なるからだ。キャロウェイは言い回しにはとても慎重で、目標は「ボール初速の最大化」ではなく「最適化」だと表現する。


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三原則の残り二つをコントロールするのに、キャロウェイは昔なじみの“古い親友”を重用している。





大量の『タングステン』

思うに、「ジャック・ウルフスキン」を買収してから「トップゴルフ」と合併するまでの間、キャロウェイはタングステン鉱山を掘り当てたに違いない。それ以外に「ROGUE ST」におそろしく大量のタングステンが使われている理由が説明できない。

「MAVRIK」シリーズでは、平均約17gのタングステンが各アイアンに使われていた。それに比べて「ROGUE ST MAX OS LITE」では「46g」。そしてこれがシリーズの中で、最もタングステンの量が“少ない”モデルなのだ。

スタンダードモデルの「ROGUE ST MAX」では各ヘッドに「62g」のタングステンを搭載している。これはなんと「MAVRIK」の250%増し。比較すると明らかに、タングステンが多すぎるような気がするが…、そんなこともないのだろう。


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「タングステンを使うことでヘッドの様々な部分に効率よく重量を移動させ、重心位置や慣性モーメントを変えることができる」とホックネル氏。「そうすることで、重心位置がよりフェースと同調するようになり、過剰にストロングロフト化せずとも、ボール初速を上げ、打ち出し角スピン量をコントロールできるようになる」。

“過剰にストロングロフト”であるというのは解釈の余地があると思うが、「ROGUE ST MAX」のロフト角が「MAVRIK」よりも0.5°増えたというのは注目に値する。

「タングステンをより大量に使うことで、初速の出し方とスピン量や打ち出し角のコントロールの関係性を変えているのだ」とホックネル氏。


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『マイクロスフィア』も忘れずに

少量のタングステンでも役立つのに、それが大量に使われているということは、普通に考えてもっと良いってこと。キャロウェイによると、これと同じ事が『ウレタン・マイクロスフィア』にも言えるという。

2018年の初代「ROGUE」アイアンで初登場した『ウレタン・マイクロスフィア』はキャロウェイの特許技術だ。メーカー各社は、ボール初速を上げるためにフェースを薄くすることに躍起になっていた。しかし、ただの薄いフェースだけでは「打音」が最悪で「打感」も悪いという問題があった。

そこで、振動を吸収し、「打音」を抑えるために、メーカー各社は「スピードフォーム」や「減音システム」、その他各社特有の「充填剤」でヘッド内部の空間を埋める努力をしてきた。

しかし、そこにはもうひとつ別の問題もあった。素材の種類にかかわらず、薄くて柔軟なフェースを補強すると、その素材のせいでフェースが硬くなるのだ。進退窮まるとはこのこと。「打音」は抑えられても、必死に守ろうとしている「ボール初速」が損なわれてしまうのだから。


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キャロウェイは「ソフトウレタン」に微細なガラス球を混合し、『ウレタン・マイクロスフィア』を作りだした。実際に、ほんの小さなガラス球が形を変え、インパクトでは平らになり、フェースとともにたわむ機能を素材にもたらしている。

初代「ROGUE」も「MAVRIK」も、下から3本目の溝まで『ウレタン・マイクロスフィア』を充填していたが、新しい「ROGUE ST」では中空の形状が異なり、6本目の溝まで『ウレタン・マイクロスフィア』を充填できるようになった。

『ウレタン・マイクロスフィア』の量が増えるということは、インパクト時にフェース面をより広範囲に支えられるということで、打音も打感も良くなるはずだ。


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「ROGUE ST(ローグST)」のラインナップ

前述の通り、新しい「ROGUE ST」のラインナップは4モデルのアイアンセットで構成される。「ROGUE ST MAX」はスタンダードモデルとなる。「MAVRIK」では“MAX”はオーバーサイズモデルだったが、「ROGUE ST MAX」は新たな4モデルの中で核となるアイアンだ。

「フェースサイズ、ソール幅、オフセット度合いとトップラインにおいて、中級者向け市場のど真ん中に位置している」とホックネル氏。「市場で最も需要の高いカテゴリーに当てはまるはずだ」。


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「MAVRIK MAX」および「MAX W」「MAX W LITE」に代わるのが、「ROGUE ST MAX OS」と「MAX OS LITE」だ。その名称から知るべき事はわかるだろう。より広いソール幅により長いフェース長、より強いオフセットで、スタンダードモデルよりも大きく、より寛容性が高い。

「OS」も「OS LITE」も「ROGUE ST MAX」に比べるとタングステンの量はかなり少なく、ロフト角はやや多く設定されている。

「我々はゴルフボールの滞空時間を最優先に考えようとしている」とホックネル氏。「適正なロフト角で高い打ち出しを容易にし、キャリーを出すことで飛距離に繋げているのだ」。


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見栄えを考えているなら、「ROGUE ST」のラインナップは「APEX 21(エイペックス)」や「X-FORGED CB(X-フォージド CB)」と同様の、サテンクローム仕上げとキャビティ部を占めるブラックエンブレムが特徴的だ。本日発表されたテーラーメイドの「ステルス」と同じく、オトナのための中級者向けアイアンだといえよう。

そう考えると、「ROGUE ST PRO」への興味も増す。


キャロウェイ「ROGUE ST PRO(ローグSTプロ)」

キャロウェイ「ROGUE ST PRO」は、「APEX 21」の外観は気に入っているが、もう少し「寛容性」が欲しいというゴルファーのために設計された。「ROGUE」シリーズの他モデルに比べ、上級者好みのコンパクトな形状に薄めのトップライン、弱めのオフセットを有している。

「PRO」の「中空構造」によりマッスルバックっぽい見た目でありながら、AI設計の『450フェースカップ』にタングステン48g、6本目の溝まで入った『ウレタン・マイクロスフィア』、ツアーレベルのアイアンに比べるとストロングロフトが採用されている。


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「APEX 21 PRO」の“改造版”といったところか。

「上級者のように見られたいが、初・中級者向けアイアンから得られるメリットを必要としているプレーヤーのためのアイアン」とホックネル氏。「そしてそのメリットは中空構造の内部に隠されている」。

「ROGUE ST」の他のモデルは「APEX 21」側の初・中級者向けカテゴリーに属しているが、「ROGUE ST PRO」の立ち位置は少々曖昧だ。キャロウェイ曰く、スタンダードな「APEX 21」よりは寛容性に劣るが、「ROGUE ST PRO」の外観とロフト構造は、上級者向け飛び系アイアンのカテゴリーに属するという。


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「『APEX PRO』よりはストロングロフト」とホックネル氏。「初・中級者向けアイアンの助けを必要とする上手なアマチュアにとっては朗報だろう」。


選択肢が多すぎる?

前述の通り、新しい「ROGUE ST」ラインナップの登場で、「APEX」のコンボセットを数に入れるかによるが、キャロウェイのカタログには12または16モデルのアイアンセットが載ることになる。

キャロウェイにとってのプラス面は単純だ:モデルの数が多ければ取りこぼしがない。多重人格のゴルファーにすら合うものがあるだろう。そして最小在庫管理単位が多ければ多いほど、小売店での売り場面積も拡張できる。

つまり、自社の売り場面積が増えれば、競合他社の面積が減るということ。


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キャロウェイがテーラーメイドやピン、タイトリストを追いやることはないだろうが、コブラやミズノ、スリクソン-クリーブランドやウィルソンにとって脅威となる可能性はある。

一方、選択肢が多いことのデメリットは「さて、どうやって決めればいいのか?」ということだ。簡単に言ってしまえば「フィッティング」がその答えだ。

しかし、現実には、大手メーカーのカスタムオーダーが急増しているにもかかわらず、初・中級者向けアイアン市場のゴルファーのほとんどが既製品を買っている。

心理学者のバリー・シュワルツは、多すぎる選択肢を前にしたとき、“買い手はなにも選択できなくなる傾向がある”と書いている。もし何か選んだとしても、その商品に不満を持つ傾向が高いとも。

12(あるいは16)モデルのアイアンセットの選択肢には、もちろん明らかな戦略がある。わかりやすいものは“誰しもが何か見つけられる”ということ。そして次に“売り場面積の拡大”。もし未知の領域に踏み込みたいなら、あるいはもし小売ベンチャー企業を立ち上げたいなら、12(あるいは16)モデルのアイアンセットで始めるのは賢い戦法だろう。


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そしてもちろんキャロウェイがなにも考えていないという可能性も実はある。12(あるいは16)モデルのアイアンセットを作れるから作っているだけ、という。


キャロウェイ「ROGUE ST」アイアン:スペック、価格および純正シャフト・グリップ

キャロウェイの「ROGUE ST MAX」と「MAX OS」では新たに「True Temper Elevate MPH(トゥルーテンパー エレベートMPH)」を純正シャフトとして採用した。オプションは85gまたは95g。「ROGUE ST PRO」には古き良き「 Rifle Project X(ライフル プロジェクトX)」で中打ち出し角、中~高スピン量を実現。

「ROGUE ST MAX OS LITE」はカーボンシャフト「Project X Cypher Black(プロジェクトXサイファーブラック)」が標準。「ST MAX」と「ST MAX OS」の純正カーボンシャフトは「Tensei AV Series Blue(テンセイAVシリーズ ブルー)」、「ROGUE ST PRO」の純正カーボンシャフトは「Tensei AV White(テンセイAVホワイト)」。


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「ROGUE ST PRO」のみゴルフプライドの「Tour Velvet 360(ツアーベルベット360)」。その他ラインナップではキャロウェイの「Universal Grip(ユニバーサルグリップ)」が標準グリップ。

キャロウェイによると「ROGUE ST」ラインナップの価格は999.99ドルからで、「MAVRIK」より200ドルアップとなった。テーラーメイドの「ステルス」も同様に前作「SIM2」より200ドルアップしていることを考えると、新たな価格設定はコロナ禍のニューノーマルということなんだろう。

「ROGUE ST」アイアンは2月18日発売。詳細はキャロウェイの公式サイトにて。