クリーブランドのウェッジと聞いて思い浮かべるのは、「伝統的なウェッジ」だと思う。「安定したウェッジ」とか「ジップグルーブ」といったイメージもあるかもしれない。

さて、本日クリーブランドゴルフから新ウェッジ「RTX ZipCore」が発表された。それに伴い、新たな「ジップ(Zip)テクノロジー」が登場する。

ブレードタイプのウェッジに搭載できて、さらにブレードウェッジとして機能させるテクノロジーは限られている。一方で、「ZipCore」はクリーブランド「RTXモデル」の DNAを多く引き継いでいるが、知って損はないくらいの技術革新が十分盛り込まれている。

一言で表現するならば、『昔ながらの新世代ウェッジ』とでも言おうか。

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主力ウェッジをオーバーホール?

RTXシリーズ(おなじみの「ROTEXフェースミーリング」)は、2012年以降クリーブランドの主力商品となっている。

新モデルが発売される度に、『CG(重心)の位置』、『グルーブテクノロジー』、『ソールグラインド』が少しずつ改良されているが、今回の「RTX ZipCore」では、従来の設計思想を取り壊し一から作り直した。

「性能を次のテクノロジーやイノベーションの段階に押し上げること、従来のクラブに慣れ親しんだツアープレーヤーや熱心なゴルファーの要望に応えること。常にこの2つのバランスを取らなければならない。彼らは、基本的に馴染みないヘッドシェイプや、慣れ親しんだものとは異なる打感のウェッジを受け付けないものだ。」とクリーブランド マーケティング部長のブライアン・シェルケ氏は述べる。

では、コアのファンにルックスを納得させながら、どのように“性能”を押し上げるのか。そこで今回考え出されたのが、“ヘッド内部のオーバーホール”だ。

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「ルックス、打感、シェイプを維持しながら、ブレードウェッジでできることは非常に限られている。これが新しい構造を研究するきっかけになり、ウェッジの内部構造について再度考えるようになった。」とシェルケ氏。

クラブデザイナーの究極の目的は、不必要なエリアのウェイトを削減し、よりメリットが得られる場所にウェイトを移動する方法を見つけ出すこと。

ブレードタイプのウェッジでは、ウェイトを動かす貴重な機会がほとんど得られない。しかし、クリーブランドはそれを見つけ出し、「ZipCore」のコンセプトにつなげた。

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「ZIPCORE」を構成するもの

最近のトレンドに従うなら、重心をクラブフェース中心に配置することが絶対条件だ。

クリーブランドが重心をセンターへ大きく移動させたのは、ホーゼルからウェイトを僅かに取り除く「RTX-3」の『フィールバランシング・テクノロジー』から始まった。これにより、ヒール部分からウェイトが取り除かれ、重心を中央に移動させることに成功した。

ただし、ホーゼルからウェイトを除くには限界がある。フィールバランス・テクノロジーを駆使して削減できるのは、数グラムに過ぎない。一方の「ZipCore」 は低密度のコアで、約16グラム削減できる。ウェッジにしては、非常に大きい。

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「ZipCoreの密度は1立方センチメートルあたり約2グラム。因みに、通常ウェッジに使用する“8620炭素鋼”の密度は8グラムだ。ちょうど、4分の1の密度にあたる。」とシェルケ氏。

「ZipCore」は、高融点の強力なケイ酸アルミニウム化合物でできている。さらにウェッジの残りの部分はキャストで覆うといい、非常に重要な工程だ。シェルケ氏によると、RTX-4モデルの重心はフェースの中心から約2.8 mmのところに配置されるという。一方の、RTX ZipCoreでは、重心は中心からわずか1.4 mmだ。

「もっと重心を動かすこともできたが、このウェッジは上級プレーヤー向けだ。大幅な重心の変更は良くないが、打感とコントロール性を向上させる程度の改良は役に立つと考えた。」

重心は中央に近いだけでなく、少し高めに配置されている。クリーブランドによれば、上下MOIは9%改善されたという。

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「うまいプレーヤーはトゥやヒールにミスすることはない。しかし、固いライや厚いラフなどでは、特にロフトのあるウェッジでは、上下のミスが起こりがちです。上下MOIを増やすと、フェースの上部にミスしても、スピンコントロールや距離のコントロール、弾道が安定する。」

   

よりシャープで深く密集したグルーブ

クリーブランドには常に『グルーブストーリー』がある。今回のストーリーは「UltiZiグルーブ」のことで、よりシャープに、より深く、これまで以上に密集したグルーブになったと彼らはいう。そしてもちろんUSGAの承認済みだ。

「コース上でテストしたウェッジショットのデータベースは膨大にあり、その数は500万ショットを超える。チップショットやフルショットを安定して打つことはアマチュアにとっては難しいことだ。」(シェルケ氏)

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クリーブランドのデータによると、ほとんどのウェッジショットは20〜50ヤードだ。この程度の距離では、ボールをあまり強く打たないので、深いグルーブを2列追加すれば、インパクト時にボールを捉えるパワーが増すことになる。

「またグルーブが浅すぎると、十分に汚れや破片を流すことができない。それで、 私たちはどこよりもグルーブを深く、密集させることにした。ごくノーマルなウェッジショットを改善できるように、グルーブの最適化を図ったのだ。」(シェルケ氏)

メーカーの中には、一般的にフルショットを打つ際に使用するのは、56度や60度ではなく48度のウェッジだという考えのもと、ロフト角によってグルーブを段階的に変化させるブランドもある。だが、クリーブランドはその方法を採用していない。

「私達が目指すのは、マット上で最大スピンを引き出すことではない。62度のウェッジのスピンを増やして、46度のウェッジからスピンを減らそうとすることでもない。目指すのは一貫したスピンであり、どんなショットでも「フライヤー」を阻止することだ。一貫して同じグルーブデザインを採用したことにより、これらを全て叶えてくれるウェッジが完成した。」

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もっと細かく言うと、「UltiZip」に採用した グルーブは「RTX-4」より11%鋭く、7.3%深く、7.4%密集していると言う。グルーブの間隔を狭くしたおかげで、フェースに2列余分にグルーブを追加することが可能になった。

 

耐久性を高める熱処理

グルーブはすり減るものだ。メーカーも、ゴルファーも、もちろんクリーブランドだって知っている。

従来の常識では、パフォーマンスの低下に気付いたとき、または75ラウンド前後のどちらか早い方のタイミングがウェッジの交換時期だと言われてきた。 特に1年から1年半にかけて徐々にパフォーマンスが低下する場合、一般の人がどれくらいそれに気づくだろうか。

クリーブランドは、バンカーショットを含むすべてのタイプのショットのシミュレーションが可能な寿命計測システムを開発した。

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「グルーブの消耗を測るのは難しい。」とシェルケ氏も認める。

「当社の新しいシステムでは、ウェッジをテストにかける前にグルーブを測定し、テスト後に再度測定する。これにより、グルーブの摩耗を数値化し、耐久性を分析することが可能になった。」

さらに、耐久性を向上させるため、新「RTX ZipCore」ウェッジには新しい熱処理プロセスを採用。クラブヘッドは炭素鋼の結晶粒構造が再配置されるまで十分に加熱され、これによりフェースを含むウェッジ全体の耐久性が上がる。

「当社のテストでは、これらの熱処理を施したグルーブは前モデルよりも約31%耐久性が高くなった。しかし、ヘッドスピードが速くて、バンカーで激しく振り下ろし、ボールを打ちつけるような人は、どんなウェッジでも早く消耗することになる。週に1回程度のラウンドで、ドライバーのヘッドスピードが38m/s、掃うようにスイングする人は、もちろん長く使える。」

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いつも、クリーブランドは他のウェッジと比較したテストデータを開示する。ただ、現在そのデータ情報が遅れているようだ。

「現在、新モデルのテストを行っている最中だ。しかし、ご存じの通り、ここ数ヶ月オフィスやラボにあまり行けないのが現実だ。」

 

グラインドとシャフト

クリーブランドは以前のように、グラインドオプションを3つに戻した。RTX-4ラインナップで提供されていた「X-Lowバウンス」オプションはなくなったようだ。

「我々のソールグラインドは常に“ツアー主導”だが、X-Lowはツアープロには低すぎた。そして、それが彼らにとって低すぎるなら 、アマチュアの私たちにとってはさらに低すぎるという意味だ。」

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「Low」、「MID」、「FULL」グラインドは、以前のモデルとほとんど変わらない。「Low」は、トゥ、ヒール、トレーリングエッジリリーフを備えたクラシックなC型グラインド。バウンス角は、6度だ。「MID」グラインド(10度)は最も用途が広く、くっきりとしたVソールとフルショットに役立つトレーリングエッジリリーフが特徴。「FULL」ソールは一番高いバウンスオプション(12度)で、バンカーやラフで長時間使う時に役立つ。

さらに、「RTX ZipCore」には新シャフト「Dynamic Gold Spinner Tour Issue」が用意される。

「これはクリーブランドがTrue Temperと共同で作ったシャフトで、重量を少し減らし(S400よりも4グラム軽い)、シャフト先端にもう少し操作性を与えた。これにより、チップショットでの打感が改善されただけでなく、グリーンを捉えるパワーが上がった。」とシェルケ氏。

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このシャフトは全く違う。「DG Spinner」や、いわゆる砂時計形のシャフトとも全く違う。まったく新しいシャフトなのだ。True Temperは、今年の夏後半にアフターマーケットとして発売する予定だ。

 

最終考察

クリーブランドは、ボーケイに続き、キャロウェイとシェア第2位の座を狙って戦闘を繰り広げている。

キャロウェイのウェッジの方がやや高いため(2020モデルの価格は159.99ドル)、売上高は勝る。クリーブランドは、販売数は多いのだが、単価が低い。8年が経過した今こそ、まさに“オーバーホール”の時だ。

彼らのウェッジは、Most Wantedテストで常に上位にランクインする優秀者だが、「ZipCore」 が情勢を変えることになるのか非常に楽しみだ。

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また、マーケティング的に新しいルックスは人目を引くものだ。間違いなく、テーラーメイド「790アイアン」に少し似ている。コピーとも言えるが、高MOIを実現するためには、重心を高い位置、さらにトゥ側に移動させることが不可欠だ。

「重心をその位置に押し上げると同時に、可能な限り最も美しい形で実現しなければならなかった。」(シェルケ氏)

「RTX ZipCore」には、他社のウェッジとスペックの比較ができるチャートが付随する。このチャートは、ボーケイやキャロウェイのユーザーがクリーブランドに乗り変える際、ソールグラインドが手持ちのウェッジと一致するかどうか確認するためのものだ。

「ソールグラインドは複雑だ。それを明確に一貫性のあるものにするよう努めている。「RTX 2」や「3」から買い替えするにしても、タイトリストやキャロウェイからアップグレードするにしても、ゴルファーに最適なウェッジを見つけられるよう支援したいと思っている。」(シェルケ氏)

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価格と販売予定

今回の「RTX ZipCore」では、新たなロフトとグラインドオプションはない。ミドルグラインドが最も一般的で、46度から60度のモデル(2度刻み)が揃う。フルグラインドは54度から60度のモデルで利用可能。ローグラインドは56度から62度のモデルが対象だ。

新シャフト「Dynamic Gold Spinner Tour Issue」と人気のGolf Pride「Tour Velvet 360」がオリジナルシャフトとして用意される。発売時は、「ツアーサテン仕上げ」のみだが、今年後半に「ブラックサテン」と「ノーメッキ仕上げ」が予定されている。

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クリーブランドは、「RTX ZipCore」を発表したが、店舗での販売は8月14日からだ。

7月27日よりクリーブランドのウェブサイトにて販売開始。価格は$ 149.99だ。