先週開催されたPGAマーチャンダイズショー(PGAショー)。全出展企業の中で、ブリヂストン以上にハッピーだった企業はないと断言してもいいだろう。

ブリヂストンがPGAショーに参加するのは3年ぶり。「B」の黒いロゴ入りウェアを着たスタッフの誰もが晴れ舞台に戻ったことを素直に喜んでいて、何とも清々しかった。

今回のショーで、ブリヂストンはそのニュースでも目立っていた。e12ゴルフボールの発売開始に加え、ブリヂストンならではのボールフィッティングプログラムの再開も発表。

e12は従来のラインナップとは異なるユニークなボールで、ボールフィッティングプログラムは、キャロウェイとテーラーメイドに奪われたマーケットシェアの奪回に向けた重要な一歩となる。

その他にも、決して見過ごせないニュースが2つある。それは、「打つもの」と「試す」ものだ。

ブリヂストン,TOUR B,XW-1,ウェッジ

新TOUR B XW-1ウエッジ

ブリヂストンのクラブの名称や番号を決めるルールを見つけ出そうとしたが、あきらめた。

せいぜいJGRがJapanese Gravitational Rapidity(日本の重力速度)かJoe Gibbs Racing(ジョー・ギブス・レーシング)のどちらかの略だということくらいだ。

今もってどちらなのか分からない。ちなみに、PGAショーで先週発表されたブリヂストンの新しいウエッジの名称は、Tour B XW-1。不思議なことに、前モデルと同じ名前だ。

新XW-1は特別なS20C軟鉄鍛造(2017モデルはS25C)で、ロフト角に合わせた3種類のソールグラインド(2017モデルは1種類のみ)と、スピン量を増すための「バイティングレールミルド」と呼ばれる溝が特徴だ。

「フェースには、高精度なマイクロミリング加工が施された新しいパターンを採用した」とブリヂストンのザック・クッパーブッシュ氏は話す。

「フェースをなでると、フェース全面にわたって溝と溝の間にパラレルミリング加工が施されているのがわかるはずだ。

これは突き出した歯のようなもので、ボールがフェースに乗っている時間がほんの少しだけ長くなることで、スピン量が増える」

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バイティングレールミルドによって、2017年モデルと比較してグリーン周りでスピン量が250~300rpmほど増えるという。

「大した違いではないと思うかもしれないが、適合ルールの範囲内できることは限られる。溝自体ををいじることはもうほとんどできないが、溝と溝の間なら改善の余地がある」

「マイクロミルドのパターンを変えて300rpmプラスできるなら、悪くないだろう」

 

甘い「ソール」ミュージック

 ブリヂストンはこれまでウェッジのグラインドにうるさいメーカーではなかった。

ウェッジではマイナー選手であることがそうさせたのだろう。そのブリヂストンが、新XW-1ではロフト角に応じて3種類のグラインドを用意している。

XW-1のロフトは50~60度で、2度刻み。50度の特徴は「Fソール」と呼ばれるグラインドだ。

「FはFlat(フラット)の意味で、ヒール側とトゥ側に最低限のグラインドが施されている。50度なら、おそらく100~110ヤードのフルショットで、フェースは開かずに打つだろう」(クッパーブッシュ氏)

ブリヂストン,TOUR B,XW-1,ウェッジ56度のグラインドはAソールと呼ばれている(要注意!)。バンカーやグリーン周りでフェースを開き、ボールを素早く上げたいときに使うように設計されたものだ。なお、52度、54度、58度、60度はすべてMソールである。

「MはMulti-purpose(マルチパーパス)の意味だ。ヒールからトゥにかけてグラインドされており、コース上のどんな場面でも対応できるはずだ」

好みによっては、新XW-1は少し模様がうるさいと思うかもしれないが、これは日本人の好みを反映したもので、ブリヂストンのクラブ全体に見られる傾向だ。

バックフェースには「Biting Rail Milled」の刻印があり、Bのロゴも健在だ。ただし、ロゴの浮き彫りは2017年モデルよりもかなり鮮明になっている。

 

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「これには賛否両論あったが、今年のモデルはロゴを控えめにしている」

Bロゴがすっきりしたのは、機能面にも理由がある。2017年モデルのBは凸状だったため、インパクト部分のちょうど裏側に重量がプラスされていた。

確かに良いアイデアだが、少しでも芯を外すと、打感が悪くなる。Bロゴのスリム化で重量が少し拡散するため、わずかだが許容性が高くなり、オフセンターヒットでも良い打感を得られるという。

 

価格と販売状況

 ブリヂストンはゴルファーの気を惹こうとアグレッシブな価格設定を継続している。

新XW-1ウエッジは小売価格が139.99ドルで、ウェッジの価格傾向を見ると、かなり手頃感が強い。S20C軟鉄鍛造のウェッジであればなおさらだ。

「市場におけるブリヂストンの位置はよくわかっている。私たちはゴルフボールメーカーであり、ブリヂストンブランドを信頼してくれるゴルファーのためにクラブも造っている。我々の専門知識を信頼してくれるゴルファーのためにも、精巧なクラブを届けたいと思っている」

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XW-1ウェッジは仕上げがサテンクロームのみで(2017年モデルにはポリッシュ仕上げのクロームとブラックがあった)、右利き用モデルのみ(レフティーの皆さんは残念)だ。

通常生産品は、シャフトが硬いN.S.PRO MODUS3  TOUR 105シャフト(スチール)、グリップはGolf Pride MCCのブラック。

特注シャフトとグリップのオプションはブリヂストンのウェブサイトで注文できる。なお、無料で対応してくれるものと、追加料金が必要なものがある。

販売は3月5日以降の予定だ。

 

試打プログラムが復活

 ブリヂストンはTour B JGRドライバーとXW-1ウェッジ向けに、オンラインのテストドライブ(試打)プログラムの復活も発表した。

テストドライブプログラムは数年前に導入されたが、アンヘル・イラガンCEO時代に中止された。ブリヂストンはそれを復活させることで、何らかの起爆剤になることを期待している。

「サイトにアクセスし、クレジットカード情報を入力して20ドルを払えば、コースでも練習場でも21日間自由に試し打ちができて、クラブの使い勝手を自分で確かめられる」

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このプログラムはすでにサービスが始まっており、Tour B JGRのドライバー・フェアウェイウッドユーティリティーに加え、HF1/HF2アイアンも試すことができる(XW-1ウェッジは3月に追加予定)。

ロフト角やシャフト、フレックスもいろいろ用意されている。たとえば、ロフト9.5°でSフレックスのJGRドライバーを試したい場合、ブリヂストンから2種類のドライバーが送られてくる。

つまり、選べるシャフトの中から試してみたいものを選べるシステムだ。

ブリヂストンがこのサービスを導入した当時、業界にはこのようなプログラムが一切なく、一部では抵抗も見られた。

しかし、現在では、直販メーカーやベン・ホーガン、新興のサブ70などでも同じ方式を採用している。

いや、決して同じではない。他社のプログラムはショップまで足を運び、シミュレーター相手にクラブを5分ほど振ってデータを見るというものなのだから。

ブリヂストンのプログラムでは、実際に3週間ホームグラウンドでクラブを使うことができる。

これは大きな違いだ。ゴルファーはみんな新しいもの好きで、新製品を嬉々として試す人たちなのだ。

「ブリヂストンの目的は、製品をゴルファーに届けて、試してもらうことにある。それこそが私たちが直面している問題だからだ。

この『テストドライブ』プログラムに加え、クラブ・チャンピオンやトゥルー・スペックなどカスタムフィッティング専門会社と新たにパートナーシップを組むことで、顧客獲得に取り組んでいる」

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ブリヂストンは、自社製品が代表的な販売店で広く取り扱われていないことだけでなく、製品の性能が向上すれば問題が解決するわけではないことも熟知している。

チャレンジャーにとって最大のジレンマは、「販売店は客が買うものを店頭に並べ、客は店頭に並んでいるものを買う」ことだ。

商品棚は極めて重要なスペースであり、ほとんどの場合大手5社の製品が占めることになる。

ウィルソンやスリクソンのように、4~5年前と比べると取扱い販売店が増加し、この状況を克服しているブランドもある。

しかし、ブリヂストンがそれらと肩を並べるためには依然として努力が必要だ。