「ピンはミーリング精度を上げ、PING VAULT 2.0パターをゴルファーのストロークや打感に合うように微調整することに成功した。新しいウェイトシステムでは、ヘッドウェイトの増減により、各ゴルファーに合ったベストバランスを実現し、グリーン上での安定感をもたらす。」

ピンが初めて「VAULT」と呼ばれるパターを発表したのは2年前の8月だった。当時、私は大胆な発想のネーミングだと思っていた。なぜなら「VAULT(貯蔵庫)」は、歴代のウィニングパターの栄光をたたえて黄金で制作したゴールドパターの貯蔵庫を意味するからだ。

ピンの貯蔵庫にVaultのゴールドパターが保管されているかは定かでないが、トレイ・マリナックスが2017年のUSオープンでピンのVaultベルゲンを使い、タイ9位という成績を収めた。トップ10入りではゴールドパターには値しないが、トレイ・マリナックスがVaultベルゲンを使い、メジャーツアーでのトップ10入りを果たし、279,542ドルの賞金を獲得したことは大きな成果である。

今年2月、ピンは次世代クラスのVaultパター「Vault 2.0」を発表する。ゴールドパターを彷彿とさせるイメージのパターである。期待どおり、単に前モデルの焼き直しではなく、改良とともに新しいポイントも追加されている。

 

ピンVAULT 2.0パターの特徴:TRグルーブ

「TRテクノロジーという精密なミーリング技術により、フェース全面でショットの寛容性を向上し、安定的にスピードを生み出す。1本1本精密に削られる溝は、フェースの場所によって深さとピッチがさまざまで、オフセンターのインパクト時のスピードを保ち、安定性を向上する。確実に3パットは減らせるはずだ。」

ピン独自のTRグルーブは、長年にわたりピンのパターのフェースを飾っている。この素晴らしく効果的な技術はVault2.0ラインにも採り入れられた。さまざまな深さの溝(グルーブ)はフェースの中心をはずしたミスショットもホールへ向かってボールを転がす。もちろんこれは、あなたのようなアマチュアの話だ。プロはミスヒットしないのだから。

最近行ったSAM Labセッションによると、私のパッティングは、安定的にセンターフェースにボールが当たっているにもかかわらず方向がそれるという結果だった。こういう場合に役立つのがグルーブ(溝)だ。インパクトがわずかにセンターから外れても、フェースの溝がボールをホールの方向へ押し出す作用をする。トゥ側でヒットしたダウンヒルショットを緩やかに転がすことも可能だ。もちろんセンターから2インチも外せばグルーブの効果はないが、少しのミスであれば確実に効果を発揮する。

 

ピンVAULT 2.0パターの特徴:ソールウェイト

「カスタマイズ可能な新ウェイトシステムには、ゴルファーの打感やバランスの好みに合わせられるように、スチール(標準ウェイトヘッド)、タングステン(標準より15g重い)、アルミニウム(標準より15g軽い)の3種類のオプションがある。」

グルーブに関しては以前からの変更はないが、このウェイトシステムは新しく採用された画期的な点だ。これまでは、たとえばAnserパターにウェイトを加えたい場合、ピンにクラブを送ってタングステンを入れてもらう必要があった。だが、覚えている方もいるだろうが、ピンは2008年にiWiラインで取り外し可能なウェイトを開発している。既に交換可能ウェイトインサートを発表しているのだ。

つまり調節可能なウェイト自体は全く新しいものではないが、今回の大きな変更点は、使う素材によって重さを増減させることだ。これはiWiにはなかったオプションだ。iWiでは、重くすることはできても、軽くすることはできなかったのだ。

軽いヘッドか、重いヘッドか。あなたの好みに合わせてオーダーできるので、ぜひ試してみて欲しい。自分で調節したいゴルファーには残念だが、今回は別売りのキットは発売されない。今後Vault 2.0パターの人気が出て、ゴルファーからの要望が多ければ、改良されるかもしれない。

 

ピンVAULT 2.0パターの特徴:表面の仕上げ(フィニッシュ)

 

オリジナルのVaultパターには2種類の表面仕上げがあった。Vault 2.0へのモデルチェンジに伴い、5つのモデルでステルス、銅、プラチナの3種類から選べるようになった。アルミニウムのKetsch(ケッチ)モデルは、スレートとステルスの2種類の選択肢がある。Ketschモデルに銅のオプションはないが、アルミニウムに銅の仕上げはうまくいかないため、残念ながら選択肢から外されている。

近くの販売店にすべての仕様がそろっているとは限らないが、販売店を通してピンにオーダーすることができる。カスタムオーダーが必要な仕上げについては、以下の各モデルの詳細を確認してほしい。

直接ピンへオーダーして、パターのスペックをすべて設定してもらうこともできる。写真でオレンジ色の点があるのは角度をカスタムオーダーしたことを示している。

自分の好みにあった仕上げ、ウェイト、角度を選んでオーダーすれば、カスタムフィットのパターが短時間で手に入る。

 

ピンVAULT 2.0パター特徴:グリップ

「ピン独自のピストル型テーパーグリップにはさまざまな形状と感触がある。PP60はミドルサイズの軽量設計で発泡材が挿入されており、フェース方向を明確にするため表面がフラットになっている。PP61は、ゴルファーの手にしっくりくるように、はっきりとしたピストル型のデザインが特徴的で、下層部に挿入されたラバー素材により軟らかい握り心地だ。PP62は軽量で大きく丸みを帯びたデザインが特徴だ。CB60は今回のラインの標準グリップで、カウンターバランスタイプだ。」

個人的には、私のVault Anser 2のグリップ、PP62の感触や使いやすさが気に入っている。ピンのグリップの中では一番のお気に入りで、コースで出会う見知らぬゴルファーたちにも薦めていたほどだ。

Vault 2.0パターのPP62グリップは、オリジナルモデルの時代から変わらず優れたグリップだが、今ではPP61にも惹かれている。どのグリップも素材とくぼみの質感が良く優れたグリップだが、PP61の全体的な形がPP60より少し優れていると思う。

私の個人的な好みには興味がないかもしれないが、Vault2.0のグリップにはさまざまな選択肢があり、それぞれに特徴があることを知ってもらいたい。仕上げと同様にグリップにもオプションが用意されているので、近くの販売店に在庫がなければピンに直接オーダーしてほしい。

さて仕上げとグリップの話はこれぐらいにして、パターの話に移ろう。

 

ピンVault 2.0:DALE ANSER

   

「新しいDALE ANSERは、オリジナルのAnserモデルの影響を受けている。オリジナルのAnserはAllan Dale Solheimによって設計され、彼の父Karsten Solheimが細部の装飾を担当した。」

・350g、完全機械加工の303ステンレススチール

・銅・プラチナ・ステルスの3種類の仕上げ

・セミアーク

・標準仕様 35インチ、ロフト3度、調整可能ライ角±4度

・米国内小売価格:325.00ドル

もしピンのパターの新しいラインに興味があるなら、まず定番のAnserを試してみることをお薦めする。

Anserは最も象徴的なパターの1つであり、その革新的なデザインを模倣して数多くのパターが誕生した。Anserには歴史があり、その伝統的なデザイン(設計)と新しいテクノロジー(技術)とがうまく融合していて、ピンのパターの特長がよく出ている。ピンはその歴史を大切にしながらも決して過去に留まらず、常に進化したより良いゴルフクラブを作り続けている。

VAULT 2.0 DALE ANSER vs VAULT 1.0 ANSER 2

 

Vault 2.0の Dale AnserとAnswer2の違いはどこにあるのだろうか。私が説明しよう。上のアドレス時の写真から、見た目の違いは明らかだ。両モデルともヒールとトゥにウェイトが置かれたブレードだが、異なる点がある。

Anser 2はDale Anserに比べて全体的にスクエアなルックスだ。コーナーを見るとAnser 2は角ばっていて、Dale Anserは丸みを帯びている。実際のヘッドの長さはほとんど変わらないが、Anser 2の方がヒールからトゥにかけて少し長く見える。

Dale Anserのトップラインは厚めで、フェースのインパクトポイントにはよりメタル感がある。打音はAnser 2に比べて低くソフトだ。記事の最後に、比較した画像を載せたのでチェックしてほしい。

 

ピンVAULT 2.0:PIPER

 

   

・360g、完全機械加工の303ステンレススチール

・ステルス仕上げ(銅・プラチナは個別にオーダー可能)

・セミアークまたはストレート

・標準仕様 35インチ、ロフト3度、調整可能ライ角±2度

・米国内小売価格:325.00ドル

PiperモデルはAnserほどのビッグネームではないが、ピンの長年の定番パターだ。一見したところ違いはわからないが、太いサイトラインと、後方により大きな丸みのあるデザインが特徴の小さめのマレットだ。

Piperをアドレスした時に、非常に興味深いことに気付くだろう。私には、後方のカーブはほとんど見えず、白いラインと前方の厚いボディ部分だけが残って見えたのだ。さらに、フランジのアングルが少しファング形状のようになっているヒールとトゥエッジ部分に視線が引き付けられた。このことに気付いて以来、アドレスの方向調整に活かしている。これまでラウンドタイプのマレットでのエイミング(正確に目標にセットアップすること)は難しいと感じていたが、Piperなら問題なさそうだ。

ピンVAULT2.0: KETSCH

   

「受賞歴のあるKetschマレットパターは、航空工学仕様の6061アルミニウムのボディとステンレススチールのソールプレートを組み合わせ、究極の高MOI(慣性モーメント)を実現し、優れた方向調節を可能にする。」

・365g、完全機械加工の6061アルミヘッド、ステンレススチールソールプレート

・ステルス仕上げ(スレート仕上げは個別にオーダー可能)

・セミアーク またはストレート

・標準仕様 35インチ、ロフト3度、調整可能ライ角±2度

・米国内小売価格:325.00ドル

ピンが「受賞歴のある」と表現したのは、Ketsch の2015年MGS Most Wanted Putterのテスト結果のことだろうか。Ketschはその年、他の競合パターを退け優勝に輝いた。控えめなリリースであったのにもかかわらず、素晴らしい結果だ。

このところKetschのリリースに関心が集まっている。ピンもVault 2.0で再びMGS Most Wanted Putterの栄冠を勝ち取るのを楽しみにしているのではないか。そうなった場合、ピンの貯蔵庫にゴールドパターがもう1つ増えるかもしれない。

 

VAULT 2.0 KETSCH vs OG KETSCH

新しいKetschは何が変わったのか。上部を見ただけでは変化は分からないと思う。Ketschの形やラインは精度の高さの現れだとすれば、変化がないのは悪いことではない。

しかしパターを裏返してみると、Vault2.0のKetschのソールは全く新しいということが分かる。ソールプレートはパター後部に限定されていない。プレートが前方にまで伸び、エッジの周りを縁取っている。標準重量も変わり、365gに増えた。

最初に述べたとおり、ヘッドの重さを調節したければピンへオーダーしてカスタマイズできる。

この設計変更はパフォーマンスにどう影響するのか。2018年のMGS Most Wanted Putterのテスト結果で明らかになるだろう。

 

ピンVAULT 2.0:VOSS

   

・350g、完全機械加工の303ステンレススチール

・ステルス仕上げ(銅・プラチナ仕上げは個別にオーダー可能)

・セミアーク

・標準仕様 35インチ、ロフト3度、調整可能ライ角±4度

・米国内小売価格:325.00ドル

 

VAULT 2.0 Vossのパフォーマンスは他のラインと似ている。Dale AnserとAnser 2のルックスの違いはごくわずかだが、VossのがっしりとしたルックスはAnserモデルとは異なっている。

もちろんヒールとトゥ側にウェイトを設置したブレードタイプだが、アドレス時は箱のような形に見える。だがバンパーはダイナミックな滑りで、がっしりした箱型だとは思えない。非常にクールな特性だ。Vossはまるで「マジックアイ」のように、最初に見た感じが、じっくり見るうちに変わってくるのである。

 

ピンVAULT 2.0:B60

   

・355g、完全機械加工の303ステンレススチール

・ステルスと銅仕上げ(プラチナ仕上げは個別にオーダー可能)

・セミアーク

・標準仕様 35インチ、ロフト3度、調整可能ライ角±4度

・米国内小売価格:325.00ドル

ピンはB60をブレードパターとして発売している。確かにブレードの特徴を持ってはいるが、マレットと呼んでもいいと思う。ブレードとマレットの中間といったところだ。マレットを使いたいが大きさに圧倒されているなら、まずB60を使ってマレットの感覚に慣れておくことを勧める。

あるいは、多くのゴルファーのように、ブレードかマレットかは気にせずB60を使い続けてもいい。B60の薄いトップラインやネックはブレードの特徴だが、大きなバンパーはマレットのようなMOI(慣性モーメント)をもたらす。ブレードとマレットの利点を両方兼ね備えている。

 

ピンVAULT 2.0:ZB

   

・350g、完全機械加工の303ステンレススチール

・プラチナ仕上げ(銅とステルス仕上げは個別にオーダー可能)

・セミアーク

・標準仕様 35インチ、ロフト3度、調整可能ライ角±4度

・米国内小売価格:325.00ドル

Vault 2.0 ZBは、2009年Redwoodライン以来、ピンが初めてミーリングしたZBパターである。Redwoodの数年後にはScottsdaleラインのZBが発表されたが、どちらもVault 2.0 ZBには及ばない。

ZBはVault2.0ラインの中で最も深いトゥハングを特徴としている。セミアークのストロークタイプのプレーヤーを対象としているが、アークのプレーヤーも引き寄せる魅力がある。デザイン自体は一見シンプルだが、アドレス時の視覚は多少複雑だ。トップにある小さな点はアライメントを決めるのに最低限は役立つが、フェースとフランジのラインを見れば、役割はそれだけではないことが分かるだろう。点を目印にすることで、パターをボールの後ろの正確な位置に構えることができ、パター上のラインはターゲットラインに対して垂直にパターを合わせるのに役立つ。このアライメントデザインは、オデッセイVersaブラックほど明白ではないが、似たような役割を果たす。ZBを試打すれば、この意味が分かるだろう。

 

発売予定

 

ピンVault 2.0パターは2月8日より最寄りのショップで販売開始となる。自分好みのヘッド、グリップ、シャフトやウェイトなどを見つける時間は十分にある。繰り返すが、ショップに欲しいモデルやデザインがなければ、ピンに直接オーダーすることができる。さらに、自分のスペックに合ったロフト角、ライ角、長さに調整することも可能だ。

Vaultパターの価格(325ドル)は他のミルドパターと比べても競争力がある。高額なスコッティ・キャメロンパターを購入しても、これだけのカスタムオプションはないはずだ。もし同じ価格帯のパターを探しているなら、ピンのパターを検討してみてはいかがだろう。Vault 2.0ラインには、視覚的にもゴルファーの好みに合うよう複数の仕上げのオプションが用意されている。また、グルーブテクノロジーも搭載され、技術的な面でも秀でている。至れり尽くせりだ。

どのモデルや仕上げに興味があるだろうか。Vault 3.0がリリースされたら、ぜひ手に入れたいモデルはあるだろうか。