・コブラ「KING Supersport-35」パターは、HP製の『 Metal Jet 3Dプリンター』を使用して作られる。

・SIKゴルフの『DLTテクノロジー(Descending Loft Technology)』を採用。

・11月20日にコブラのウェブサイト(Cobra.com)にて数量限定で発売。価格は、399ドル。

本日(11月17日)、コブラゴルフから新作パター「KING Supersport-35」が発表された。コブラからパターと聞いて、取り上げないわけにはいかない。正直なところ、コブラが最後にパターをリリースしたのはいつだったか。

いくつかあったが、ほとんどはボックスセットに入っているパターだったと思う。また、アメリカ以外の地域だったが、2017年にも発売されている。

その中でも、私の記憶に残る唯一のコブラパターは、2011年の「Ian Poulter(イアン・ポールター)」のために作ったプロトタイプパターだ。

今回の「KING Supersport-35パター」は、より印象に残るパターになると思う。おそらく、コブラパターにとって、パターデザインの新時代を告げるものになるだろう。

1つ確かなことは、「KING Supersport-35」が、コブラの刻印が施された単なるパターではないということ。確かに、CNCミルドは工程として残るが、実際の製造には『ハイテク3Dプリント』が使われている。

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「KING SUPERSPORT-35」のプリント技術

「HPの3Dプリンター技術でデザインした複雑な格子構造を利用して、パターヘッドの中心からウェイトを取り除き、かなりの量のウェイトを周囲に配置することが可能になった。その結果、優れたMOIレベルが得られ、安定性とやさしさが大幅に向上する。そのため、3Dプリンターはより安定的な生産をもたらすだけでなく、製品の設計までも変えることになった。」コブラゴルフ マーケティング担当副社長 ホセ・ミラフロール氏

おそらく最初に目を引くのは、そのかわいらしい「格子」だろう。非常に独特なデザインだが、これを可能にするのは独自の製造方法だ。最近のパターはキャストかミルド加工が多い中、コブラ「KING Supersport-35」は「プリント」を採用している。

3Dプリントは、当初は純粋なSFテクノロジーの1つだった。新テクノロジーは、概してそのように捉えられがちだが、3Dプリントはさらに未来的だった。

3Dプリンターを使用すると、コンピューター上で制作した3Dデザインを、実物として手に持つことができる。当然のことながら、初期のプリンターは法外に高かったが、最近ではアマゾンで、ポリマープリンターが数百ドルほどで手に入る。



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ラピッドプロトタイピング

ゴルフを含む多くの業界が、「ラピッドプロトタイピング(迅速に試作を作る)」を行うために設計プロセスに3Dプリンターを取り入れている。

これにより、エンジニアは3Dプリンターを利用してコンピューター設計からテスト可能なプロトタイプ作成までを迅速に行う作り上げることができる。

設計変更の際はマシンの再調整は不要で、新たにプリントするだけだ。ここに、設計プロセスに3Dプリントテクノロジーを使った2013年のコブラビデオがあるので是非見て欲しい。

「KING Supersport-35」の特異な点は、これが設計用ではなく消費者向けに作られた3Dプリントパターであるということだ。HP「Metal Jet 3Dプリンター」は、販売向けに使用できるプリンターなのだ。これは業界初である。

ピンが2015年PGAショーで3Dパタープリンティングを披露した時は話題になったが、彼らの3Dパターが市場に出ることはなかった。「KINGSupersport-35」は今週金曜日(11月18日)にコブラ自社サイトにて、実際に発売される。

去年の夏、MyGolfSPyスタッフのジョン・バーバが、HP Metal Jetプリンターが製造現場を変えるというコブラの計画を聞きつけたが、彼自身は実現すると思っていなかった。この「KING Supersport-35」がまさにそのクラブなのだ。


3Dプリントがなぜ画期的なのか?

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3Dプリントが製造プロセスに組み込まれると、企業の情勢は変わる。それがプロトタイピングプロセスを変えることは話したが、製造コストや製造場所にも影響する。

とはいえ、興味をそそるのはコストではなく、従来のミーリング加工や鋳造では不可能な方法でパターを完成させることが可能な点だ。

では、「KING Supersport-35」の内部の「格子」の話しに少し戻ろう。このような金属の配置は、ミーリングや金型では不可能だ。独自のデザインを可能にする3Dプリンターならではの能力であり、革命的ともいえる。

3Dプリントにより、新しい方法で金属を配置することが可能になり、更には慣性モーメント(MOI)や重心(CG)をも変えることができる。製造上の制約がなくなれば、設計上の制約もなくなり、イノベーションが起こる。

もちろん、新しいものが常に良いわけではない。しかし、斬新なものを作らなければ、永遠に変わることはない。


「KING SUPERSPORT-35」を解体すると・・・

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「KING Supersport-35」の内部の「格子」とボディの残り部分は、316ステンレス鋼から3Dプリントされている。この独特なデザインは、特大ブレードパターのウェイトをエッジ後方に配置することを可能にした。

これまでの多くのパターは、これを実現するためにウェイトやタングステンのような材料を活用していた。そして、もうひとつの特徴が「アルミニウムインサート」。これについては後ほど説明しよう。

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パターをプリントした後、強度を作るため焼結し(結合させるため、熱と圧を加えるようなもの)、CNCミーリングにてすべてのエッジを滑らかにする。


SIKフェース

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「私は何年もSIKパターを愛用しており、このパターで成功してきた。今回、コブラと一緒に新たなパター開発や製造に関わり、世に送り出せることを非常に嬉しく思っている。」ブライソン・デシャンボー

「KING Supersport-35」の特徴的なもうひとつの技術は、「SIK Golf」の「Descending Loft Technology」をアルミニウム面に組み込んだことだ。

SIKで設計されるフェースは、決まった1つのロフトを持つのではなく、4つの異なる「ロフトゾーン」を備える。フェース上部は4度で、フェースの上から下につれて、ロフトが1度ずつ立つ設計になっている。芯を外して打ったときのストロークのずれを最小限に抑えることが目的だ。

デシャンボーはしばらくの間、SIKゴルフパターをバッグに入れていた。トッププレーヤーが認める技術をコブラが採用したのは、納得の選択だと思う。今回の技術採用が斬新なのは、両社の共同開発であるということ。

多くの場合、アイデアやテクノロジーは仲介されるというより、“貸し出される”。共同開発を選んだSIKゴルフとコブラゴルフの両社は互いにメリットがある。

コブラはデシャンボーが認めるパターフェースを使用することができ、SIKはメーカー並みにデザインの宣伝ができるからだ。


実際の性能は?

きっと誰もが知りたいことだろう。以下は、「KINGSupersport-35」を試打させてもらった際の私の第一印象だ。

・まさに“パター”という感じ。良い意味で、だ。従来とは異なる方法で作られたとは全く感じないし、ストローク中に、「プリンターで作られたパター」と思わせるものは何もない。

・打音は、チンという音というよりカチという音に近い。人によって好みの打音は違うので、これは人それぞれだ。そこで私が考えたのは、プリンターによるプロセスがどのようにインパクト時の音に影響するのか?打音は、デザインの特徴としては表現されないが、購入決定にかかわる重要な要素だ。もしかしたら、将来チューニング付きパターが販売される日が来るかもしれない。

・インパクトは重く、どっしりと感じる。実験的にインパクトの角度を調整して、SIKフェースの性能を確認してみたところ、数値化できるものではないが、すべてのストロークが同じように転がった。これがSIK効果なのだ。

・「KINGSupersport-35」のトゥハングは時計の4時方向だ。これは、アークストローク気味の人にぴったり合うはずだ。ただし、アドレス時の顔はかなりどっしりとしているため、調整が必要かもしれない。

アドレスといえば、このパターはボールの後ろ側が独特である。

上のアドレス時の写真を見ると、パターの中央部分が少し落ちているので、シルバー部分が目立つ。別の言い方をすれば、ワイドブレードというよりは、大きなCのように見える。明らかに意図的で、「C」はコブラのCだろう…


革新からニューノーマルへ

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先にも触れたが、コブラの3Dプリントへの取り組みに関するジョン・バーバの見解を再度考えてみるべきだ。「KING Supersport-35」は、コブラの最初の3Dプリント商品だ。

今後数年間で考える彼らの計画は、HP「Metal Jet」を利用して多くの製品をリリースすること。同社からは具体的には述べられていないが、パターが作れるなら、ウェッジも作れるだろう。今や、彼らはプリンターを駆使した独自手法でデザインを微調整する技術を手に入れた。

多くの企業が、ポリマーを充填する中空アイアン設計を行っている。「Supersport-35」の格子のデザインを、キャビティーに取り入れたらどうか?どうなるかは未知の世界だが、可能性が広がっていることは確かだ。

3D制作への取り組みは、未踏の地であり今後のクラブ設計の限界を押し上げる革新的技術になることだろう。