PING「G430 MAX 10K」ドライバー – ネーミングが表すもの

まずはっきりさせておきたいのは、PING「G430 MAX 10K」は後継モデルではなく、PING「G430」シリーズの追加モデルであるということだ。

そもそも「10K」とは何なのか?それは、10,000を超えるMOI(慣性モーメント)を表す。もっと正確に言うと、PINGのCAD(コンピューター支援設計)における「G430 MAX 10K」の実際のMOI値は10,100近くになるわけだが、CADの値が常に完成品の値とピッタリ一致するというわけではない。

ここで大切なことは、PINGのネーミングに対する自主規制が慎重過ぎということと、軽量の「HL」を除けば、「G430 MAX 10K」の完成品全てがMOI値10,000を超えているということにあるのだ。


ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

「10K」と「USGA」

そもそも、「MOIの制限って5,900(g・cm2)だよね?こんな風に思うひとがいるでしょ?」

確かにそうだ。

しかし、このUSGA規定はいずれかの単一軸に適用される。一般的に「MOI」といえば「ヒールからトゥにかけて」の捩れに対する抵抗を指すが、これがMOI(慣性モーメント)の全てではない。

クラブは上下にも捻れたり、たわんだりする。そして、それぞれ個別の軸に対してのMOIで「5,900」を越えるものなどないが、PINGは別の軸に対して4,100から4,200のMOI値を絞り出すことに成功し、クラブヘッド全体のMOIを「10K」以上に押し上げることができたというわけだ。


ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

今こそ、MOIが「寛容性」の全てじゃないということを伝えるには良い機会だと思う。しかしこれが、ドライバーの易しさを向上させる手法だという思い込みとなっているのもまた事実。

2023年モデルのPING「G430 MAX」(合計MOIは9,000台)は、これまでの市場で最も「寛容性」が高いドライバーだった。だが、PINGは今回の追加モデル「G430 MAX 10K」でそれを超えてきたということだ。


PINGが「10K」を実現した方法

PINGは、MOI「10,000」の壁を破るため、今回3つの重要なことを行なった。


1、投影面積の最大化

ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

まずPINGが着手したのが、ドライバーの物理的なサイズの拡大だ。他のルール規制ほど知られていないと思うが、USGA規制はヘッド体積(460cc)だけでなく、ドライバーのサイズにも及んでいる。

全てのドライバーには、ヒールからトゥ、そして前後のサイズについて収めなければならない文字通りの規定があり、「G430 MAX 10K」ドライバーは、その規定ギリギリ(ある程度の製造公差がある)を攻めたPING初のドライバーとなっている。

そのため、今回のモデルは「G430 MAX」を含むPINGの他のモデルよりもアドレスで明らかに大きく見える。そして見た目が大きいと言うことは、必然的に上下の厚みはシャロー(薄く)になるが、今回はさらに薄く(測定位置によると4〜7%)することが可能になったという。

薄肉化による初速アップ、これはPINGが「G430 MAX」で効果的にボール初速をニュートラルにキープする手法だった。

これら全てをまとめると、他のPINGのドライバー、特に「G430 LST」を隣にすると、「G430 MAX 10K」は超大型ヘッドに見えるはずだ。


2、カーボン・フライ・ラップテクノロジー

ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

「G430 MAX 10K」は「G430 LST」同様、PINGの『カーボン・フライ・ラップクラウン』が特徴。「G430 LST」と物理的な配置は同じだが、投影面積が大きいということはクラウンも大きくなっており、さらなる軽量化を実現している。


3、28gの後部ウエイト(固定式高比重ウエイト)

ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

このウエイトの意味はご存知のはずだ。一つのエリアからウエイトを削除することで、余剰重量が生まれ、より有用なところにウエイトの再配置が可能になる。

PING「G430 MAX 10K」ドライバーの場合、ウエイト軽減により28gの後部ウエイトを搭載できた。これはPINGがこれまで実現した中では最も重たいウエイトとなっている。

このウエイトは「G430 MAX」や「G430 LST」と違い固定式(弾道調整用ではない)だが、MOI向上に加え、フィッティングとスイングバランスのチューニングに柔軟性をもたらしてくれる。


PING「G430 MAX 10K」ドライバーのパフォーマンス

ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

これまでに2024年は「“真っ直ぐな飛び”の年」であることに触れたが、これはPING「G430 MAX 10K」の目的にもなっている。

つまり、これはPINGがかつてないほどに高MOIを目指したことで、ボール初速、一貫性、ストレートショットが向上し、最終的には着弾範囲(多くの弾道測定器上に表示される楕円形にグルーピングされたショット)を小さくすることを意味している。

PINGが統計範囲式とするバラつきは各メーカーで異なるが、PINGの計算によると、「G430 MAX 10K」はスタンダードの「G430 MAX」に比べてバラつきの範囲が16%小さいという。

となると、スピン量が多いことが予測されるが、「G430 MAX 10K」はやや低重心なため、ボール初速がほぼ変わらないのに、打ち出しが高くスピン量は若干少ない程度となっている。


ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

ということは、「G430 MAX」より良いということなのか?

いや、そうではない。一番、わかりやすく言うと「G430 MAX 10K」は「G430 MAX」とは違うということだ。

おそらく一番簡単な差別化要因は、「G430 MAX 10K」が極端なミスに苦戦しているゴルファー向けということになる。

我々は、PING本社の練習場施設で「G430 MAX 10K」を試打する機会に恵まれたが、このモデルは初めて“真っ直ぐ飛ばすために設計された”ドライバーだと思ったし、その結果にも圧倒されたのだ。

確かに大きなミスがなかったとは言わないが、極端に大きなミスに繋がるようなショットが減っていることは分かった。

もし、あなたがよくOBを打つようなゴルファーなら、「PING G430 MAX 10K」を使うことで、OB杭はフェアウェイの遠くへ押しやられると思う。


ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

PING「G430 MAX 10K」ドライバーはあなたに合うのか?

フィッティングの際は、PINGの他のドライバー2モデルと同様、重なる部分もあるはず。それだけに、大きなミスの軽減以外のフィッティング項目に関しても気になるはずだ。

まずはヘッドスピードから。「G430 MAX 10K」は「エアロダイナミクス(空力特性)」という点でスタンダードの「G430 MAX」とほぼ同等だ。

つまり、エアロダイナミクスは「G430 LST」ほど良くないということ。ヘッドスピードが速いゴルファーでもこの差は大きくないが、ヘッドスピードで飛距離を伸ばしたいなら、「G430 MAX 10K」は向いていない可能性がある。

また、基本的にスピン量は少ない方が良いが、「G430 MAX」が最適なゴルファーにとっては、低スピンが飛距離ロスを招く場合がある。

反対に高打ち出しだからロフトの立ったヘッドが使えるというなら、飛距離が伸びる場合もあるだろう。

なお、その他のPING「G430」シリーズに搭載された調整可能な『アジャスタブルウエイト』で弾道矯正する必要がある場合は、「G430 MAX 10K」の「固定式ウエイト」だと、それが実現できない。


ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

「Co-Pilot」を頼るのもあり(アメリカのみ)

多くのゴルファーにとって、正しい判断はデータの中にある。もう少しシンプルに言うと、PINGでは消費者向けに「Co-Pilot」フィッティングソフトを開発。距離とオフライン情報を入力すれば、PINGのドライバー効率指標を使うことで、ツールが各ドライバーのスコアを提示しどのクラブがどのくらい、あなたに合っているかが分かる。

フルのフィッティングがおすすめなことに変わりないが、「Co-Pilot」を使うことで、数分あれば誰でも簡単にクラブ選択ができるはずだ。

※日本では「PING認定フィッター在籍店」やPINGフィッティングスタジオの世界で日本のみとなる「PING直営店」で、最先端ツールを使ったフィッティングスペシャリストによるPINGフィッティングが提供されている。詳しくはPINGホームページより


ツアーにおけるPING「G430 MAX 10K」

ほとんどのPGAツアープロはMOIを最大化させようなんて思っていないと考えるのが普通だが、中には…、特に突然ひどいミスをしているようならそう思うプロもいるはずだ。

また「G430 LST」こそPINGのツアーモデルと思っているかも知れないが、「G430 MAX」を使う高ヘッドスピードのプロもかなりおり、こうしたプロは「G430 MAX 10K」に移行する可能性が高い。

ここで重要なのは、高MOIドライバーはアベレージ層(さらにアベレージ以下のゴルファー)にメリットがあると考えがちだが、現実として高MOIは上級者にも不釣り合いながらもメリットをもたらすということだ。

「ヘッドスピードが速くなればなるほど、1慣性モーメントあたりのコスパがよくなる」と語るのはPINGのエリック・ヘンリクソン氏。「クラブは非常に速く動くため、1慣性モーメントあたりのボール初速は私の父親よりキャメロン・チャンプの方が遥かに速くなる」。

これら全てのことで、「G430 MAX 10K」が他の「G430」シリーズより優れていたり劣っているというわけではない。新作の登場は、個々のゴルファーに対してパフォーマンスを最適化させるさらなる引き出しをフィッターにもたらしているというわけだ。


PING「G430 MAX 10K」ドライバー – デザイン性

ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

ビジュアル面において、「G430 MAX 10K」はやや極端と言える。超大型ヘッドで、十分に目立ってしまうほどだ。これが気に食わない人もいるだろうが、何かが機能すれば他のことはあまり気にならなくなるというのも事実だ。

他の「寛容性」を高めるためのデザインとは違い、セットアップ時の不安定さはないのは幸いなこと。PING「G430 MAX 10K」ドライバーは、アップライトでもなければクローズフェースでもない。

通常サイズのドライバーデザインを少し大きくしただけで、繰り返しになるが、クラブに注入されているのはストレートバイアスに過ぎないのだ。

またPINGによると、「G430 MAX 10K」の音は既存の「G430 MAX」よりも大きいとのこと。

これは新形状の機能で「打音」に不快感はなかったが、万人受けするとまでは言えないだろう。


ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

純正シャフト

「G430 MAX 10K」ドライバーの純正シャフトは既存モデルと同様で、PING「ALTA CB(アルタCB)」シリーズ」と「Tour 2.0 Chrome(ツアー2.0クローム)」、「Tour 2.0 Black(ツアー2.0ブラック)」がラインナップ。「Tour 2.0 Black」の特徴は「Ventus Black(ベンタス ブラック)」に似ているとされている。

その他カスタムシャフトは、「HRDUS Smoke Red RDX(ハザーダス スモークレッド RDX)」と三菱ケミカル「Kai’li White(カイリホワイト)」となっている。


<日本での標準シャフト・グリップ>

「ALTA J CB BLACK」

「TOUR 2.0 CHROMEクローム」

「PING TOUR 2.0 BLACK」

「FUJIKURA SPEEDER NX 35/45」

「GP360 LITE TOUR VELVET ROUND (バックライン無し)」

装着シャフトおよびグリップの詳細はPINGのホームページより


まとめ

PING「G430 MAX 10K」ドライバーは、今年私が注目しているドライバーのひとつで、飛距離の犠牲を最小限に抑えたストレート弾道を約束してくれる。

また他のドライバーと同様、誰にでもフィットするわけではないが、業界が飛距離一辺倒からコース上での結果に(徐々にではあるが)シフトしているのを見るのは新鮮に感じる。

確かに、「G430 MAX 10K」ドライバーは大きく見えるし、構えにくいと感じる人もいるだろうが、試してみる価値はあるし、もしこれでOBしないようになると思うなら買う価値もあると思う。


ピンゴルフ,ping_g430_max-10k,ping,g430_max,ドライバー,ゴルフ,ゴルフクラブ,新製品

スペック・価格・発売時期

PING「G430 MAX 10K」ドライバーのロフト角は9度、10.5度、12度がラインナップ。

PING「G430 MAX 10K」ドライバーのメーカー希望小売価格は599ドル。先行販売は本日スタートで、店頭販売は1月25日から。

※日本での発売価格は、¥104,500(税込)で、2024年2月8日発売予定となっている(左用あり)。


TONY COVEY

TONY COVEY

MyGolfSpyに新鮮で革新的なコンテンツをもたらす編集担当。編集以外でもMyGolfSpyのデータを駆使したテスト方法を開発する上で重要な役割を果たし、データを精査してゴルファーのプレー改善に役立つ方法を考案した。ポリシーは「ゴルファーは、何が真実で何が真実でないかを知る必要がある」。これはMyGolfSpyがメーカーによって作られた事実を超えて、真実を語る責任があることを意味する。ミッションは「誇大広告にとらわれず本当の性能を読者に伝え、ゴルファーに力を与えること」。





Share on Facebook Share on Twitter Share via Email