テーラーメイドの新作「P790」アイアンについては、歴代モデルの登場が市場に大きな変化を与えるほど影響力があったことを認めなければいけない。「P790」アイアンの登場により、「競技志向者向け(飛び系)」のクラブカテゴリーは爆発的に成長し、アイアン市場で2番目に大きいカテゴリーとなった。

最初に作られた「競技志向者向け(飛び系)」アイアンは何だったのか?については議論の余地があるものの、「P790」アイアンがこのカテゴリーの基準になったことは疑いの余地はない。


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「P790」アイアンの成功のカギは、性能や設計など指摘するべき点はいくつかあるが、究極的な答えとして、単純にこのアイアンを使っているゴルファーの幅広さを挙げることができる。

PGAツアーのシニアサーキット然り、LPGAのブルック・ヘンダーソンのバッグ然り、ツアーでこのアイアンを見かけることは多々ある。また、フルセットは見当たらないものの、PGAツアープレーヤーの何人かは「P790」のロングアイアンを使用している。

「P790」アイアンは、多くのアベレージゴルファーの中でも、高ハンディキャップのゴルファーから、上級者っぽい見た目で寛容性の高いアイアンを求めるハンディキャップ20前後のゴルファーまで、幅広い層がキャディバッグに入れている。

よく聞く言葉ではあるが、テーラーメイドでは、この「P790」アイアンを“アイコニック(象徴的なクラブ)”と呼んでいる。いささか乱用されすぎているきらいは否めないが、こと「競技志向者向け(飛び系)」アイアンカテゴリーにおける「P790」に対する表現としては同意せざるを得ないだろう。


変われば変わるほど…

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多くのモデルによく見られることだが、第3世代の「P790」アイアンのコアテクノロジーの大部分は新モデル(第4世代)に引き継がれている。

音と振動を軽減する充填剤『SPEEDFORM AIR(スピードフォームエアー)』を引き続き搭載。そして前作の「薄肉構造」も同様だ。セット全体にはかなりの量のタングステン(最大38グラム)が使用されているが、それはアイアンの外観からも読み取ることができる。

※ちなみに充填剤の『スピードフォームエアー』は、初代の『スピードフォーム』より69%軽量化されている。

さらに、テーラーメイドの『貫通型スピードポケット』も搭載されており、たとえフェース下部にヒットしてもボール初速を維持する。


テーラーメイド「P790」アイアン – 同じサイズ、改良されたソール

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アイアンのサイズにも変化はなく、ブレード長とオフセットも前モデルと同様。注目すべき唯一の変更点は、ギャップウェッジとピッチングウェッジのソール形状が改良されたことだろう。

テーラーメイドは「MGシリーズウェッジ」からヒントを得て、ギャップウェッジ特有のヒールとともにトレーリングエッジも若干削っている。

結局のところ、これは「P790」のセットのウェッジを全体的にもう少しウェッジらしくしながら、よりハイロフトの「MG」ウェッジへの流れを良くするための方法ということだ。


テーラーメイド「P790」アイアン – 新機軸

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ゴルフ業界にもAIが浸透しつつあり、アイアンの「打音」や「打感」を改善するためにもAIが活用されている。

テーラーメイドは今回の「P790」アイアンで、各番手別の重量を最適化するためにAIを活用した。

そのひとつに、新しい『シックシン バックウォール キャスティング』がある。これは、アイアンのバックウォール(フェース内部、バックフェースの裏側の壁の部分)の「ハニカム形状」のことで、たとえばドライバーのクラウンでも同様のものが見受けられるが、目指すところは、構造的な完全性を損なうことなく戦略的に薄肉化し重量をセーブするためにある。

いつものことながら、テーラーメイドは新しい「P790」アイアンでも、より有利な打ち出し条件とより高いMOI(寛容性)を実現するために、その余剰質量を低く広く再配置することができたというわけだ。


サウンド・スタビライゼーション・バー

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テーラーメイドは、新しい「P790」の3~7番アイアンに搭載されている『サウンド・スタビライゼーション・バー』と同社が呼ぶものを含む各アイアンの内部キャビティ構造をデザインする上でも、AIツールを活用した。

この『サウンド・スタビライゼーション・バー』は、「P790」アイアンのフェース背面に隠された「指」のような構造体だ。バーの形状は、セット内の各番手によって異なる。断面図を見るだけでも、番手ごとに、著しく、また見ただけで違いが分かるはず。下のギャラリーは3番アイアン~ピッチングウェッジだ。



名前からはすぐには分からないかもしれないが、『サウンド・スタビライゼーション・バー』はインパクト時の振動を調整し、セット全体を通してより良い「打感」を実現しているのだ。

「P790」アイアンは、テーラーメイドがAIを最も広範に使用しているアイアンとなっている。このモデルが示唆するのは、AIによるより大きな影響力を持つ何かが短期間で進行している可能性があるということだ。


テーラーメイド「P790」アイアンのパフォーマンス

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「打音」と「打感」を除くパフォーマンスをよくよくチェックしてみると、「P790」の最大の変更点は「番手別の最適重心設定」だ。

テーラーメイドは、この最新デザインを『FLTD(フライテッド)CGデザイン』と名付けた。その理由は、デザインが2017年に発売された初代っぽいことに加えて、重心がロングアイアンで最も低く(ほぼ1mm)、ミドルアイアンやショートアイアンになるにつれて徐々に重心が高くなっていることにある。

正直なところ、先進的な設計コンセプトではないが、以前の「P790」アイアンの問題点には対応している。ほとんどのゴルファーにとって、ロングアイアンは最も打ちにくいものであり、過去モデルの重心が比較的高かったことも打ちにくさの要因だった。


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一方、新しい「P790」では、ロングアイアンの打ち出しが高くなり、前世代よりも「寛容性」が向上している。

『FLTD・CGデザイン』は、ロングアイアンの問題を解決するだけでなく、セッティング全体にさらなるメリットをもたらすというわけだ。

またこれまでの「P790」では、7番アイアンの重心が最も低かった。繰り返すが、これは理想的とはいえない。テーラーメイドでは、番手ごとに重心を高くすることにより、キャリーを前世代のアイアンと同じにしながら、7番アイアンのスピン量を約150rpm増加させた。

そして、テーラーメイドの『FLTD・CG』チャートによると、ピッチングウェッジのスピン量ももう少し増えている可能性がある。

特に革新的な進歩について話しているわけではないが、だからといってゴルファーにとって実質的なメリットがないわけではないのだ。


「P790」アイアンの美学

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「競技志向者向け(飛び系)」カテゴリーの定義を考えると、“高性能 (これは飛距離の婉曲表現)”、「初・中級者向け(スコア改善型)」アイアンにみられるある程度の“寛容性”、そして“「競技志向者向け(飛び系)」の外観“にたどり着く。多くの場合、それはある種ブレード型のように見えるアイアンだ。

ある程度、目の肥えた人なら、「P790」とタイガー・ウッズの「MB」を混同する人はいないと思う。目指すところは、装飾的なものや不必要なものを加えることなく、見た目をスタイリッシュにすることにあるのだ。

また、テーラーメイドのマット・ボーヴィー氏は、「P790」を“アートと工学技術のぶつかり合い“と表現している。


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そのため、刷新された「P790」アイアンにはサテンスクラッチ(細かいひっかき傷のような)仕上げが施されており、私に言わせれば、これまでで最もクリーンで見栄えの良い「P790」になっている。

過去のモデルにおいては、ミラー仕上げがいくつかあったが、今回はバックフェース中間部分のミラーリングがツアーサテンに置き変わっている。これがサテンスクラッチとシームレスに融合し、「P790」アイアンの見た目をさらにクールなものにしている。

今回のモデルは、全体として革新的ではないものの第3世代「P790」アイアンが確実に刷新された製品だといえる。


テーラーメイド「P790」アイアンのスペック、価格、発売時期

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テーラーメイド「P790」アイアンのライ角とロフト角のスペックは以前のバージョンから変更されていない。

番手は3番~PW、AW(右/左)、純正スチールシャフトとしてトゥルーテンパー「DG 105 (S)」と「DG 95 (R)」がラインナップしている。純正のカーボンシャフトは、三菱「MMT」の75S、65R、55Aだ。

純正グリップはテーラーメイドカスタムの「Golf Pride Z Grip +2」。


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7本セットの小売価格は1,399ドル(スチール)と1,499ドル(カーボン)で、本日より予約注文開始。店頭での販売は9月1日からだ。


<日本価格および発売>

単品価格

1本¥31,900(税込)、シャフト:Dynamic Gold EX TI / N.S.PRO® MODUS3 TOUR105 / N.S.PRO®950GH neo。

1本¥33,000(税込)、シャフト: MCI 80 BK TM。

5 本セット (#6~PW)

¥159,500(税込)、シャフト:Dynamic Gold EX TI / N.S.PRO® MODUS3 TOUR105 / N.S.PRO®950GH neo。

¥165,000(税込)、シャフト: MCI 80 BK TM。

23年9月8日発売。