この流れ、どこかで見たことがあるはずだ。ほとんどのゴルフ製品が2年目には何らかの刷新を迎えるもの。

アイアンには、ブラックやブルーのペイントが採用され、(ただし“スレートブルー”にはならない)ウェッジシリーズには新しいグラインドが追加される。

そしてボーケイにとって、「SM10」ウェッジの2シーズン目は、既に優れているロフトとソールグラインドの組み合わせを、さらに拡充させるお馴染みのイベントというわけだ。


ローバウンスの「K」が追加

タイトリスト『VOKEY SM10』ウェッジ|60度・06Kグラインドのソールデザイン

2025年の幕開けとともに、ボーケイが、これまでWedgeWorks限定だったローバウンスの「Kグラインド」を「SM10」シリーズに投入した。

以前もこのローバウンスの「Kグラインド」について触れたことがあるが、ここで簡単におさらいしておこう。

このグラインドはボーケイで最もバウンスが小さい(6度)ワイドソールのウェッジであり、つまり最も「寛容性の高いローバウンスのLW」とも言える。

「Kグラインド」のローバウンス版は、ローバウンスウェッジならではのグリーン周りでの多用性を備えつつ、ワイドソール設計により通常のローバウンスよりも「寛容性」が高くなっているのが特徴だ。

そして、ウェッジの世界では、「寛容性」は基本的にソールのグラインドに依存するもの。

本来、「寛容性」と「多用性」にはトレードオフが存在するはずなのに、この「Kグラインド」のローバウンス版はそのバランスをうまく両立させている。


ボーケイのローバウンス「K」と他のグラインドを比較

タイトリスト『VOKEY SM10』ウェッジ|60度ウェッジ3本のグラインド比較(04T・MM・06K)

比較するために言うと、ボーケイで最も多用性のあるグラインドである「T」は、地面にしっかりと密着する設計になっている。

ソール幅は狭く、ヒールとトレーリングエッジの大胆に削られているため、フェースを開いた時でもリーディングエッジが地面につくほど接地を実現している。。

「Tグラインド」は、正確さを欠いたスイングだと“ザックリ”しやすいため繊細なタッチが求められる。特に地面が柔らかい状況では、その傾向がさらに顕著になる。

一方、ローバウンスの「K」はローバウンスでありながら、「T」とは異なるヒールとトレーリングエッジが施されている。そのため、地面にしっかりと接地するような感覚はあるものの、ザックリしにくい設計となっている。

さらに比較すると、ボーケイのもう一つのローバウンスLWの「L」グラインドは、多用性から寛容性のバランスにおいて、「T」とローバウンス「K」の中間に位置している。

グリーン周りでフェースをスクエアにすることが多いものの、タイトなライや柔らかいバンカーでも対応できるウェッジを求めているなら、ローバウンスの「Kグラインド」が最適な選択だろう。


タイトリスト『VOKEY SM10』ウェッジ|試打用60度モデルの全体デザイン

溝の摩耗は避けられないものだ。タイトリストでは、SWやLWを75ラウンドごとに交換することを推奨している。つまり、グリップの交換タイミングが、そのままウェッジの交換するタイミングということだ。


バンカーショットだけじゃない

「Kグラインド」は、バンカーショットで抜群のパフォーマンスを発揮すると評価され、「究極のバンカークラブ」と称されることがある(少なくとも本格派ウェッジの中で)。

この評価は、オリジナルのハイバウンスの「K」だけでなく、今回のローバウンスの「K」にも言えることだ。

これを考慮し、ボーケイでは、ゴルファーに(バウンスに関わらず)「Kグラインド」が単なるバンカー脱出用クラブではないということは是非とも理解してもらいたいと考えているようだ。

つまり、バウンスに関わらず、多様なショットでそのポテンシャルを発揮できるウェッジだということを伝えている。

要するに、ローバウンスの「Kグラインド」は、世間で言われるような“バンカー脱出お助けウェッジ”(あるいはチッパー)の類ではない。コース全体で活躍できる、本格的な多用途ウェッジなのだ。

フェアウェイ、ラフ、バンカー、どこでもローバウンスの「K」は対応する。


タイトリスト『VOKEY SM10』ウェッジ|試打用60度モデルの全体デザイン

市場投入のメリット

ローバウンスの「K」が市場投入されることで、ゴルファーにいくつかのメリットが追加される。

幅広い選択肢:ローバウンス「Kグラインド」は、これまでWedgeWorks限定だったので、その存在を知っているゴルファーは少なかったはずだ。しかし、今回の市場展開によって認知度は徐々に高まっていくはずだ。

これは、必要以上にニッチだと思われがちなややニッチな選択肢だが、それがむしろ強みとなる可能性もある。ニーズに合うゴルファーにとっては貴重な一本となるだろう。

さらなる仕上げオプション:仕上げが必要でない限り(もちろん、そうではないケースもあるが)、WedgeWorksのものは、ローフィニッシュで提供されている。つまり、仕上げ加工が施されていない、素材そのままの状態ということだ。


タイトリスト『VOKEY SM10』ウェッジ|ボーケイデザインのロゴと刻印

しかし、市場向けにラインナップされることで、ボーケイ「SM10」のローバウンス「K」はツアークローム、ジェットブラック、ニッケル仕上げがラインナップ。ローフィニッシュは、カスタム注文限定となる。

価格の引き下げ:WedgeWorksの製品は高価格で、ウェッジ1本が189ドルというのは決してお安い買い物とは言えないかも知れない。

しかし、これまでローバウンスの「Kグラインド」を⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠手に入れるために、支払わなければならなかった金額を考えれば、今回の価格はむしろ手頃と言えるだろう。


スペック・オプション・発売時期

タイトリスト『VOKEY SM10』ウェッジ|58度&60度の2本セット

ボーケイ「SM10」のローバウンス「K」ウェッジは、ロフト角58度と60度がラインナップ。純正シャフトは、トゥルーテンパーの「ダイナミックゴールドS200」、純正グリップはタイトリスト「Universal 360」だ。

また他のボーケイウェッジ同様、「SM10」のローバウンス「K」も好みに合わせてカスタマイズが可能。オプションは以下の通りとなっている。

・8種類のトゥの刻印

・複数スタンプオプション:ストレートかフリースタイルで10文字、トゥ周りに15文字、10文字で二行

・カスタムペイント:ロフトとグラインドのマーク、および「BV Wings」ロゴ

タイトリスト『VOKEY SM10』ウェッジ|バックフェースのデザインとソール形状

さらに、ボーケイウェッジはシャフト、グリップ、シャフトバンド、ソケットも好みで選択可能となっている。

ボーケイ「SM10」の「Kグラインド」の価格は189ドル。発売は3月7日。