ピンのG410 Plusを知っていて、さらに2018年の『MOST WANTED』を受賞したピンG400 LSTについても多少の知識があるならば、これから紹介するG410 LSTがどのようなものなのか、きっと想像がつくことだろう。

簡単に言うと、G410 LST はG410 Plusの低スピンモデルだ。

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そう書くと至極単純な話なのに、どうして新しいG410 LSTはなかなか発表されなかったのだろうか。

「ぴったりの広告キャッチコピーが浮かばなかっただけ」と皮肉屋は言うだろうし、今のゴルフ用品業界はそう言われても仕方がないことが多いが、ピンの場合はそれとは全く異なる。

なかなか発表されなかった理由、それは「G400 LSTが名器だった」から。数値や性能はもちろん売上も予想を上回る出来だった。

つまり、G410 LSTの発表は、G400 LSTよりも優れた製品であると確信が持てるようになるまで、慎重にならざるを得なかったのだ。

PINGの開発部門を統括するポール・ウッド氏はこう言う。「我々PING社CEOのジョン・A・ソルハイムと社長のジョン・K・ソルハイムへ、前作を上回るものができたと100パーセントの確信で報告できない限り、絶対に発表しない。それが我々のプライドだ」。「皮肉な話だが、G400 LSTが大成功したおかげで、ひどく苦労した」。

空想の世界では、新製品を使えば飛距離が20ヤード伸びるといえば皆納得する。議論の余地なく良いものができれば一件落着だ。しかし、現実はそうはいかない。

研究開発チームは革新的な何かを模索し続け、来る日も来る日もヒューマンテストを繰り返す。ボール初速は上がるのか?飛距離は伸びるのか?球のばらつきは抑えられるのか?ストローク・ゲインドの数値は上がるのか?

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「ひとつのテストをクリアしたら次に進む、という話ではない」ウッド氏いわく「説得力のあるテスト方法を構築することがなにより大事だ。ロボットテストもそのひとつ。しかし究極的にはヒューマンテストこそが真の判断基準となる。実際のゴルファーたちが実際に球を打つ、それに勝るテストはない」。

新製品は、その性能のほとんどの面において前作より優れているべきだ。性能を向上させるには、ゴルフクラブ全体のテクノロジーの向上が必要になる。

クラブのあるひとつの部分だけを20%向上させた、というようなことはあまり起こらない。ピンは、ゴルフクラブの全体が僅かでも改善することを目指している。

「20項目において、それぞれ1%~2%改善させることが重要なのだ。製造加工、品質管理、組み立てと、フェニックスで行われる全ての工程において、細かいことの積み重ねが大事だ」とウッド氏。「言葉で説明するのは難しい。真実というものはそういうものだ」。

G400 LSTのように完成されたクラブをさらに良くするというのは、デザインや性能の細部までが設計した通りに製品化され、実際のゴルファーの手に渡るようにするということだ。

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「我々が考えていた通りのドライバーがお客様の手に渡るようにする。それは容易いことではない」とウッド氏。「思い通りのドライバーを作るため、多くの課題を乗り越えなければならない。それが作れないなら、G400 LSTを超えることはできない」

より性能の良いLSTを作るにあたっても、設計時の信念を変えなかった。この最もスピン量が少ないモデルは、重心位置をできる限り後方下部に置くことに尽力した。

G410 PLUSと比較すると、重心位置は低く、フェース寄りになっている。MOI(慣性モーメント)は前作より3%高くなったが、G410 PLUSに比べると低スピンのぶん寛容性は多少犠牲になる。

とはいえ、空気抵抗の観点でいうと、ヘッド体積455ccのPLUSに比べ、450ccのLSTに利がある。

なにをどこで補うか、ピンの手法はトレードオフの好例だろう。

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もちろん性能は使用するゴルファーによって変わるものだが、全ての条件が同じだとすると、スピン量はG410 PLUSに比べて200-400rpm減、前作G400 LSTと比べても100-200rpm減だという。

多くのゴルファーにとって少しでもスピン量が減るのは有り難いことだが、G410 LSTの最も大きな魅力はその多様性にある。

G410 PLUSと同じく、G410 LSTのヘッドにも可変ウェイトが搭載され、3つの弾道調整機能がある。

また、改良されたホーゼル・スリーブの採用によって計8ポジションのロフト/ライ角調整も可能になったので、410シリーズが合うプレーヤー層はさらに拡大するはずだ。

2種類のヘッドによるロフトの選択肢や、ドロー/フェードポジション調整で最高20ヤードのショットのばらつきが抑制できるなど恩恵は多い。

つまり、ピンはこれまで取りこぼしていたLSTの潜在市場をターゲットに加え、より多くのゴルファーがその利益を享受できるようになったのだ。

「過去、LSTモデルを作るとき、ドロー/フェードいずれかを決める必要があった。LSTはスイングスピードの速い、ローハンデプレーヤーに選ばれることが多かったので、つかまりすぎないようフェード寄りに設定せざるを得なかった。しかし、ドローとフェードが調整できるようになった今、LSTはつかまるヘッドでもあり、それを待ち望んでいたゴルファーはかなりの数がいるはずだ。スピン量が多すぎて困っている多くのひとに、つかまらないドライバーは勧められない」(ポール・ウッド氏)

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G410 LSTは前作より優れた製品だが、みんなの飛距離が10ヤード伸びるというものではない。

G410 LSTを手に入れて最も恩恵を受けるのは、数年以上前のドライバーを使っているゴルファー、また強化された調整機能を最大限に活用できるゴルファーだ。

端的に言うと、最大の違いは「フィッティング=合わせやすさ」にある。

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スペック、価格 入手するには

G410 LSTは9度と10.5度の2モデル。G400 LSTは8.5度と10度のラインナップだったが、ユーザーのフィードバックから0.5度ずつロフトを上げた。両モデルの実際の弾道にはそこまでの違いはない。

シャフトの選択肢は、Alta CB Red 55 (Soft R, R, S, X)とPING Tour 65 & 75 (R, S, X)。ALTAは軽量で高弾道、カウンターバランスのシャフトだ。Tourは打ち出し角度を低めに、スピン量を軽減するモデル。Tourを選んでも追加料金はかからない。

カスタム用シャフトでは、Tensei CK Orange 60/70 (R,S,X)とEvenFlow Black 75 (5.5 ,6.0, 6.5)が選択可。Tensei Orangeはカウンターバランス気味で中弾道、かたやEvenflow Blackは低弾道だ。

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いずれのシャフトも取り寄せになるが、追加料金はかからない。

G410 LSTのメーカー希望小売価格は540ドル。実勢価格は500ドルあたりだろう。5月後半発売開始(日本は7月4日発売)。