PING「G430」アイアン – 主な注目ポイント

・ボール初速、飛距離、そして番手間ギャップに注力

・「アーコス」のデータをデザインに反映

・スチールシャフトが1本170ドル(約22,000円)、カーボンは185ドル(約24 ,000円)

・先行発売とフィッティングは本日スタート。店舗での販売は1月26日から


「G430」アイアンは、扱いやすさと「寛容性」に焦点を当てつつも熱望されている飛距離も追求、さらに番手間ギャップも重視している変わり種だ。

スコアメイクは、扱いやすさと「寛容性」、そして適切な番手間ギャップがあってこそ実現されるが、クラブ選びの決定打となっているのはいつも飛距離ばかりだ。そして、そのことをPINGが理解していないわけがない。

なぜなら「G430」アイアンは、全体的に最大2.5度ほどストロングロフトになっている。飛距離には“使える飛距離”というものがある。そして、単にストロングロフトにするより、“使える距離”を打てることのほうが大切なのだ。

そして、それは歴代モデルを見てもPINGはそのことを一番良く理解している。


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PING「G430」:歴史に学ぶ

とある公式「やり過ぎストロングロフトの手引き」の第1章の1ページ目を見ると、6番アイアン、あるいは5番アイアンに単に「7」とつけて、それを“テクノロジー”などと呼んでいるメーカーを見つけたら訴えろと書いてある。そして2ページ目には、そのメーカーが同時に「低重心化」と「フェースの極薄化」を伝えてくる時には、“くだらねー!”と叫んで1ページ目に戻れと書いてある。

3ページ目には、1、2ページ目がダメな場合、全てを自分より下手なゴルファーのエゴのせいにしろ、と書いてある。

昨今の試打で体験する“ホームラン競争”では飛距離至上主義の様相を呈しているが、PINGはこれに負け続けてきた。とあるフィッターによれば、PING「G425」は素晴らしいパフォーマンスを見せたものの、「ステルス」や「ローグST MAX」よりも15ヤードも劣ったという。


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これは、特に打ち出し角や落下角度、そして他のプレーに影響する数値が近しいとなれば、とても無視することなどでできない。

だからこそ、「G430」アイアンでは“飛び”を追求している。同社は、「G430」が一番飛ぶ中級者向けアイアンにならないことは分かっているが、少なくとも十分ネタに加わるように差を縮めたいと考えているのだ。

そして、これはPINGが約50年前に始めたことでもある。カーステン・ソルハイムは、周辺重量配分と低重心が「寛容性」を向上させ、ボールの打ち出しが高くなることに気付いたことで新境地を開拓。そしてこれが実現すると、ロフトを立ててボールを遠くまで飛ばすようになった。

簡単に打てて、高く飛び、飛距離も出る?

確かに50年前は、これは喜ばしいことだったかもしれないが、現代では“やりすぎストロングロフト警察”が目を光らせていて、先ほどの“手引き”に手を伸ばしているわけだ。


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適した飛距離

PINGはクラブに関して他社とは違う表現を用いている。同社エンジニアが使う言葉は、“インパクト体験、ホーゼルX、そして使える飛距離”という感じだ。

では、“使える飛距離”とはどういうことなのだろうか?

「ゴルファーは、セッティングの全てを使いこなせて実際に一定の番手間ギャップで打てる必要がある」というのはPINGのエンジニアディレクターのライアン・ストッキ氏。「彼らの数値通りに打てて、最高の打ち出し・落下角度で打てなければならない」。

「G425」アイアンは2021年の『Most Wanted中級者向けアイアンテスト』で総合2位だったが、飛距離部門では下位だった。一方、PINGは2022年に不参加だったが、飛距離トップ2の「ローグST MAX」とコブラ「KING LTDX」は、総合パフォーマンスで最下位に近い結果だった。


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PINGは、明らかに難しいことを成し遂げようとしているわけだ。

「我々はさらに適した方法で飛距離アップして欲しいと考えている」とストッキ氏。「そして買ってもらうだけでなく、このアイアンでその人のベストスコアを叩き出して欲しい」。

PINGは、これを実現するため、さらなる低重心化、さらなるフェースのたわみ、そしてストロングロフト化という“飛距離の三銃士”の採用を決定。ただし「番手間ギャップ」という一見地味な取組みにもしっかり目を向けている。

そして、その全てが「アーコス」のデータから導き出されているのだ。


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「アーコス」主導のデザイン

PING(そして他社)が「アーコス」のセンサーを配って45日間の無料キャディ体験を提供するにはわけがある。もちろん、データ好きなゴルファーには願ってもないことだが、PINGが次世代クラブを開発する上でのショット情報の宝庫になるからだ。

そのデータの中から意外なことに、どれだけドライバーを飛ばそうが、数字を見て分かったのは、アプローチショットの平均はカップから150ヤード付近ということ。

「(ゴルファーの)どのグループも同じ範囲に収まる」とストッキ氏。「カップからの距離において、ショットの大部分は100〜200ヤードの範囲に収まる。どのようにして、この範囲内で機能する番手間ギャップになるようにこの飛び系アイアンを設定すればよいのだろうか?」。


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つまり、試打における「7番アイアンの飛距離」が全ての基準になっている中、PINGは少なくとも、「適切な番手間ギャップ」のメリットとの合わせ技で勝負したいと考えているのだ。

「確かに“番手間ギャップ”は魅力的なトピックスじゃあない。フィッティングでは分からないからね」とストッキ氏。「でも、ゴルフをするならスコアと満足度に影響する。これを売り文句にするのは難しいけど、クラブをセッティングする上では重要な要素の一つなのだ」。

アイアンのフィッティング経験がある方は、番手間ギャップを話題にしたことはあるだろうか?

PINGはその点でデータを駆使し、飛距離アップのためだけでなく、ロフトを立てたことでショートアイアンでバラツキが出過ぎないように、ロングアイアンではあまりにも飛びすぎないように、確実に100〜200ヤードのショットをカバーできるようにロフト設定しているのだ。


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フェースと重心

PINGによると、「G430」アイアンは、番手間ギャップをキープしつつも、ライバルとの飛距離差を縮めるために“スペック学”とテクノロジーの融合を取り入れているようだ。

技術的に言うと、新しい「G430」アイアンは、3%薄い『VFTフェース』が特徴。このフェースは「G425」で初めて採用されたが、今回の新作ではさらに薄くなっており、PINGの特徴である「ハイパー17-4ステンレススチール」も進化している。

「『17-4ステンレススチール』であることに変わりはないが熱処理が高度になった」とストッキ氏。「耐久性がさらに高まっていることで、フェース部分が薄くすることが可能になり、大きくたわませることができた」。


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さらに、PINGではストロングロフトとともに重心も低くしており、これがボール初速と飛距離アップの最大要素となっている。一方で、重心とMOI(慣性モーメント)のバランスをうまく取る必要もある。

「重心を1,000分の50インチ低くするごとに、ボール初速は0.27m/sアップする」とストッキ氏。「ただ、1,000分の50インチ動かすとMOIは4〜5%ほど減少する」。

ストッキ氏によれば、ショットの75%はフェースセンターかフェース下部で当たっており、重心とMOIのトレードオフには意味があるということがPINGの研究で分かったとのこと。参考までに言うと、PINGはホーゼル(ネック形状)を短くすることで低重心化に成功した。「G430」のMOIは、実際「G425」と「G410」よりも小さいが、「G400」よりは高くなっている。


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ロフト角について

お伝えしている通り、「G430」のロフト角は、「G425」に対して全体的にストロングだが、特にショートアイアンで顕著だ。37度の9番アイアンは2.5度ほどストロングで、41度のPWは3.5度もロフトが立っている。このため、PINGでは「G430」シリーズにマッチする、45度、50度、54度、58度の4番目のウェッジをラインナップしている。

試打で使用する7番アイアンは、1度だけ立っており29度で、キャロウェイ「パラダイム」と同じだが、「パラダイムX」よりも1.5度ウィーク(寝ている)。PINGの“パワースペック”は「パラダイムX」と同じスペックになっている。

またPING曰く、薄い『VFTフェース』と低重心、そしてストロングロフトの組み合わせにより、7番アイアンでボール初速が約1.34m/s、飛距離にして7.5ヤードほど向上したとのこと。新フェースで1ヤード、低重心で3ヤード、ストロングロフトで3.5ヤードということらしい。


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「着目すべきは飛距離の最大化ではない。コンディションと初速だ」と主張するストッキ氏。「7番アイアンに最適なスピン量は、ヘッドスピードとアイアンのタイプ、そして落下角度次第なのだ」。

ストッキ氏によれば、「G430」はストロングロフトにも関わらず、最高到達点が約1m高いそうだ。これは明らかに落下角度がスティープ(鋭角)になり、どんなスピン量だろうがグリーンでボールを止める上でメリットになる。


PING「G430」アイアンの番手間ギャップとフィッティング

番手間ギャップに魅力はないが、PINGにとっては意味がある。

アーコスはPINGに対して膨大な生データを提供しているが、「G430」アイアンのセット内の全番手は、「G425」よりも6〜12ヤードほど飛び、番手間ギャップも非常に一貫しているという。4番と5番での差はわずか7ヤードだが、セット内の他の番手ではギャップが10〜13ヤードあるようだ。

PINGでは、こうした番手間ギャップとアーコスのデータを元に7番アイアンでのパフォーマンスをベースにした推奨セッティングを用意している。

例えば、あなたが7番でヘッドスピード31.3〜35.8m/sの中弾道ゴルファーだとすると、キャリーの飛距離は110〜165ヤードでスピン量は5,250〜6,000 rpm、落下角度は35〜41度ということになる。

もしキャリーを最大化するために高弾道にしたいのなら、PINGでは3番、7番ウッド、ハイブリッドの6番、アイアンは「G430」の6番〜PWにして、これにマッチする45度のウェッジを推奨するという具合。転がりを多くするために低弾道を望むなら、7番ウッド、ハイブリッドの6番ではなく、ハイブリッドの3番とアイアンの5番〜PWを勧めるというわけだ。

こうしたおすすめはフィッターにとっては素晴らしいガイドラインとなる。PINGとしては、大きな番手(下の番手)を使うという誘惑にかられる中級者に対して全体的なセッティングの重要性を説明する上で、これが役立つことを期待しているのだ。


バッジについては手短に

お伝えしたように、PINGはクラブに関して他社とは違う言い方をしている。MyGolfSpyチームへのプレゼンでは、ストッキ氏たちが、キャビティ後部の新しい「PURFLEX」バッジについて多くの時間を割いて説明してくれた。

このバッジは写真で見ると分かるように非常に目立つ。そして複合素材のバッジは、主に打音と打感の観点から、キャビティバックの中空ボディの飛び系アイアンにとっては重要だ。

実際のところ、バッジがないとボール初速が速くなり飛距離も伸びる可能性がある。問題は打音と打感が悪く感じてしまうということ。バッジは単なる飾りではないのだ。バッジは音と振動を吸収するが、これはフェースのたわみが抑制されるからで、バッジがない場合と比較して約1.34m/sほどボール初速も制限される。


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言い換えると、バッジには良し悪しがあるってことだ。

「PURFLEX」は15ピースで構成され7つのたわみゾーンがあり、PINGの前のバッジよりもフェースが曲がるようになっている。ストッキ氏によると、新たなバッジは、マイナスの影響をほぼ感じないほどのレベルになっているようだ。


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PING「G430」アイアン:スペック・価格、発売時期

アイザック・ヘイズには申し訳ないが、PINGはいつも自社シャフトありきだ(分かる?)。スタンダードの「G430」には、PING独自の「AWT 2.0」 (スチール) と「ALTA CB ブラック(アルタCB ブラック)」(カーボン)が装着。

アフターマーケットでは、「Dynamic Gold(ダイナミックゴールド)」、「Dynamic Gold 120」、「Dynamic Gold 105」、トゥルーテンパー「Elevate MPH 95(エレベートMPH 95)」、日本シャフト「Modus 3 105(モーダス3 105)」、KBS「Tour(ツアー)」、「Project X LS(プロジェクトX LS)」と「IO」がラインナップしている。

そして、ロフト設定はスタンダードに加えPINGの「Power Spec」(ストロングロフト)と「Retro Spec」(ウィークロフト)があり、PINGの軽量「HL」モデルでもラインナップされている。

また「G430」はPINGの10種類カラーコードも採用。


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金額面でも新しいPING「G430」は、新たな現実の一部となっている。2年前に発売された「G425」はスチールシャフトが1本137.50ドル(約18,000円)でカーボンシャフトが150ドル(約19,000円)だったが、今年の「G430」シリーズは、スチールが1本170ドル(約22,000円)、カーボンは185ドル(約24,000円)となっている。

PING「G430」アイアンの先行販売とフィッティングは本日スタート。発売は1月26日だ。(アメリカ)

※日本では既に昨年発売されている。