ピン「GLIDE 4.0(グライド4.0)」ウェッジ - 主な注目点

・ピンが同社スタンダードウェッジシリーズをアップデート

・新素材の軟鉄『8620カーボンスチール』を採用

・グラインドは4種類、ロフト角は46度から60度まで

・価格はスチールシャフトが217.50ドル、カーボンシャフトは232.50ドル。


新しいピン「GLIDE 4.0」ウェッジシリーズには、極めて明確なことが一つある。

ピンが同社のウェッジを変更したり改定したりアップグレードする時、そこにはちゃんとしたワケがある。

一応伝えておくと、ピンが「GLIDE」シリーズをアップデートしてから随分経っている。初代「GLIDE」は2015年初頭にデビューし、その2年後に「GLIDE 2.0」が登場。そして1年後、2018年『Most Wantedウェッジランキング』の総合1位となった「GLIDE 2.0 STEALTH」をリリース。「GLIDE 3.0」が出たのは2019年秋のことだった。

それから約3年が経ち、「GLIDE 4.0」が発売される。これにはどんな意味があるのか?ピンは「GLIDE」をほったらかしにしていたのか?

んなことはない。


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ピン「GLIDE 4.0」ウェッジ:同じに見えて少し違う

「ボーケイ」ウェッジでもない限り、ウェッジシリーズのアップデートやアップグレードはリスクが高い。市場を牽引する立場なら、何より大切なのは余計なことをしないこと。その後であれば、革新的な改良やさらなるグラインドオプション、そして新しい仕上げを好きなようにすればよい。

しかし、もしトップを追う立場で「ボーケイ」ウェッジを買う層以外の心をつかもうとしているのなら、保守的ではいられないだろう。

「我々がウェッジで実現したいと思っていることは、グラインドを適正にすることだ」と語るのはピンで製品デザインディレクターを務めるライアン・ストック氏。「またターゲットにあった形状も実現したい。まずはアドレスで構えた時に、適正なサイズである必要がある。その後で、適正な打ち出し角やスピン量を実現し、打感とフィッティングも提供するということになる」。


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これは無理難題だ。そして、ピンでは「GLIDE」において徹底したグリップからグラインドまでの再構築を実施していなかったが、今回の「GLIDE 4.0」は、ゴルファーからの注目を浴びるため「GLIDE 3.0」とは相当な変更をおこなったものの、筋金入りの「GLIDE」ユーザーを抱え込んでおけるか?という点では十分「そのまま」となっている。





何が新しくなったのか?

ピンの「GLIDE 4.0」ウェッジにおいて、最大の変更点はその素材だろう。「GLIDE 3.0」は『431ステンレススチール』の鋳造ヘッドだったが、この「GLIDE 4.0」ウェッジでは軟鉄『8620カーボンスチール』が採用されている。

ピンは、この「GLIDE 4.0」において、“フォージド(鍛造)”という単語を使わないようにしているが、「GLIDE FORGED PRO」ウェッジは鍛造であり、驚くなかれ…素材は『8620カーボンスチール』になっている。

一般的に『8620フォージド』のウェッジやアイアンは、まず鋳造で近しい形状にし、そこから最終的な形状にドロップフォージング(加熱した金属をハンマーで叩いて加工変形する工法)する。曲がったことが嫌いな人は鼻で笑うかもしれないが、これは単一ビレットの鍛造加工よりも効率的で一貫性のあるプロセスであるということ。

改めてとなるが、ピンでは「GLIDE 4.0 FORGED」と名付けていないので、今回は二つ目の工程を省いた『8620』の完全鋳造であるといって良いだろう。

また、ピンでは『8620カーボンスチール』を補強するため、より大きくてソフトな『エラストマーCTP(樹脂)』インサートも謳っている。


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「『エラストマーCTP』を採用することで、クラブの中央から多くの素材を周辺部に移行することができる」とストック氏。「一方で、我々はフェースに対するカバー率も増やし『エラストマーCTP』を適切な位置に配置している。これにより、インパクトエリア全体が、いい感じのソリッドなショットを打ったように感じることができるのだ」。

また、ピンではこの『エラストマーCTP』の柔らかさを数値化しているが、これはピンならではだ。

今回の場合、国際ゴム硬度のショアA30となっている。これってどうなのかって?おおよそだが、0だとシューズのインサートで、100だと硬いプラスチック製ホイールとなる。30は輪ゴムと消しゴムの間といったところだろうか。

つまり、柔らかいってことだ。


4つのグラインド

「GLIDE 4.0」における次の大きな変更は、そのグラインドにある。ピンは今回も薄いソールの「T」、通常ソールの「S」、ワイドソールの「W」、ピンの「Eye 2」ソールを復活させた「E」の4グラインドで展開しているが、ヘッド形状とともにこのグラインド自体が相当異なる。

一番違うのは「S」と「T」グラインドだ。「GLIDE 3.0」に比べるとヘッドサイズが、スコアライン(フェースに刻まれた溝)からホーゼル(シャフトがヘッドと繋がっている点)に移行するまでの間の長さ(ピンは「ホーゼル-X」と呼んでいる)と同様、両方とも明らかに小さくなっている。

「『S』グラインドは実証済みのものでピンのユーザーには最も人気がある」とストック氏。「リーディングエッジは丸みがあり、幅広い層にマッチする」。


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一方、新しい「T」グラインドは、「GLIDE 3.0」とは異なり、実際のところ「GLIDE 2.0」に先祖返りしている。特徴はリーディングエッジのバウンス角が大きく、ソールがトゥとヒール部が削られた三日月型をしていることだ。

「測定してみると、リーディングエッジのバウンス角が20度以上もある」と語るのはストック氏。「しかし、ソールがかなり狭く、(トゥとヒール部が)削られているので、はるかにバランスは良い。フェースを開くとグリーン周りでかなり多彩なショットが打てるようになっている。

一方、このリーディングエッジの大きなバウンス角により、薄いソールグラインドのものよりも格段に扱い易いと言えるだろう」。

ストック氏によれば、「T」ソールのニューバージョンは、さらに多彩性を求めるハンドファースト(グリップをボールより左側に倒して構える方法)気味のプレーヤーによりマッチするとのこと。また、ピンの「WRXカスタムショップ」を通じてさらなるグラインドの選択肢もあるという。


ワイドソールとEyeソール

「GLIDE 4.0」の「W」(ワイドソール)は、「GLIDE 3.0」からの変更が最も小さい。従来タイプのワイドソールでリーディングエッジは丸みを帯びており、トレーリングエッジの削りも非常に小さいのが特徴だ。

ピンでは、このグラインドが群を抜いて「寛容性」が高いとしており、スクエアフェース(フェース面がボールに真っ直ぐ向いた状態)にした時とバンカーでのショット用にデザインされている。またこのタイプは、ピンの初・中級者(スコア改善型)モデルである「G」シリーズアイアンにマッチしており、番手の流れも良いという。

「E」(Eye 2)ソールも、変更点は少ない。ピンは、絶大な人気を誇った「Eye 2」ウェッジの復刻版として「GLIDE 2.0」でこの「E」ソールを復活させた。「Eye 2」はハイトゥウェッジであり、「GLIDE 4.0」において、そのオリジナル形状にマッチするよう別の処理が施されている。


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ストック氏によれば「このヘッド形状はオリジナルの「Eye 2」をコピーしたものとなっている。ポイントはバンカーからの使い勝手が非常に良いということ。一方でバンカーの外からは、「T」グラインドに近い感じで扱うことができる。バウンス角は非常に小さい」とのことだ。


「ハイドロパール 2.0」とスピン科学

ピンが言及しているのに他メーカーが語っていないものとして、主要工程の100%の品質検査というものもある。特にフェースと溝の加工においてはそうだ。

これは他メーカーがこのレベルの検査を行っていないということでは決してなく、ピンだけが実際にこのことについて言及しているということ。

「USGAの規制値上限を攻めるうえで、全てが適合していることを確かにするために高度な検査をする必要が出てくる」とストック氏。「さらに、全てのクラブはヘッド形状、ホーゼルとホーゼルトランジション(ネック長とネック形状)、ソール形状、バウンス角の形が設計意図に合致していることをチェックするために、さまざまな異なる測定基準をパスしなければならない」。


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ピンの新しい「GLIDE 4.0」ウェッジは、昨年秋にデビューした「GLIDE FORGED PRO」ウェッジと同様のフェースの摩擦力とホイールカットの溝を備えている。『エメリーブラスト加工』と『削り出しフェース』、そして『ホイールカット溝』が特徴。

主にフルショットで使用されるロフト(46度から52度)では溝が20度になっており、それ以外のショットで使うロフト(54度から60度)では鋭角である28度の溝が採用されている。

そして、上手くいっているものは使い続ける方が良い。「GLIDE 4.0」は、水を弾く超疎水性の『ハイドロパール 2.0』仕上げも装備。


フィッティングの選択肢

誰もが良いアイデアだということは分かっているが、ウェッジのフィッティングを見つけることはトム・ブレイディの引退パーティよりも難しい。

ピンでは、ウェッジフィッティングをより身近なものにしようとしており、より知見などがあるフィッターを提供することでゴルファーが適正なウェッジのセッティングをできるようにしている。

またピンは、「T」、「S」、「W」のどのソールが必要なのかを決められるウェッジのテープに加え、「ウェッジフィッティングバッグ」を世界の400名のフィッターに配布予定。

バッグには、15種類のシャフトオプション、5種類のグリップオプション、11種類のロフト角とグラインドのオプションがあり、これで合計285の組み合わせが可能となっている。


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「ウェッジフィッティングバッグ」は、異なるロフト角とソールのカラーコード別ヘッドに加え、純正の「PING Z-Z115」スチールシャフトと「Alta CB Slate(アルタCBスレート)」カーボンシャフトも付属。

また、「ダイナミックゴールド X100」、「S300」、「105」、「120」から「KBSツアー」、「Elevate 95(エレベート95)」、「Project X LS(プロジェクトX LS)」、さらに日本シャフトの「Pro Modus3 105(プロ モーダス3 105)」と軽量バージョン、ジュニアスペックのオプションまでが含まれる。

「プレーヤーは、フィッティングをするためにウェッジをコースで試すか、少なくとも屋外に持っていくことが可能だ」とストック氏。

またピンでは、最適なグラインドの組み合わせを見つけられるだけでなく、「GLIDE 4.0」と「GLIDE PRO FORGED」のどちらが皆さんのゴルフに合っているのかを選べるチャートも準備しているようだ。


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ピン「GLIDE 4.0」ウェッジ:スペック・価格・発売時期

お伝えした通り、ピンの「GLIDE 4.0」ウェッジは日本製の「PING Z-Z115」スチールシャフトと「PING Alta CB Slate(SR、R、S)」カーボンシャフトが純正だ。

また上記のカスタムオプションに加え、スチールシャフトの「PING AWT 2.0(R、S、X)とカーボンの「Alta Distanze Black 40(アルタ ディスタンザ ブラック40)」もラインナップしている。

十世グリップはラムキン「Crossline 1150(クロスライン1150)」。通常グリップよりも長くテーパーは小さいが、必要であれば短くすることも可能だ。

「GLIDE 4.0」のグラインドとロフト角の分類は、ご想像通り論理的だ。スタンダードの「S」ソールは幅広いラインナップとなっており、46度から56度の2度刻みでバウンスは12度、58度と60度のバウンス角は10度となっている。

「E」と「W」ソールはともに54度から60度まであり、ソールが薄い「T」ソールはバウンス角が6度で58度と60度のみラインナップしている。

ピン「GLIDE 4.0」ウェッジの価格は、スチールシャフトが217.5ドル、カーボンシャフトは232.5ドル。

先行予約とフィッティングは3月15日からスタートしている(アメリカ)。