話題がほとんどない時の小ネタとして、0811 X プロトドライバーと0811 X+ プロトドライバーの限定モデルを紹介する。

両モデルは(最終モデルではない)実在するプロトタイプだが、USGAの適合ドライバーヘッドリストに掲載されおり、今月コンペがあれば使用することは可能だ…あればだが。

 

これってGEN3?

2020年が少しでも例年通りなら、PXGはGEN3のウッドを3月、あるいは10月にリリースするだろう。10月リリースという可能性は残されているが、現時点では2021年発売という確率の方が高い。現状では、繰り返しになるが…この程度のネタしかない。

今回のプロトタイプがPXGの次世代ドライバーの予告版と考えることは合理的ではある。とは言え、PXGのプロトタイプが全て主力モデルになるかといえばそれは違う。

適合リストにはお蔵入りするPXGのドライバーが数モデルあり、最終的に0811X GEN3は今回のプロトタイプと似たものにはなるだろうが、今ご覧になっている重量が重いモデルと全く同じということはないはずだ。

そして、この限定版のツアープロトタイプの価格は495ドルだ。

気にしていない人のため、そしてあまりいないだろうが蔓延しているPXGに関する無知なコメントのいくつかから判断している方のためにお伝えすると、今のGEN2ドライバーよりも200ドル高いということになる。



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PXGの移動式直販

この数ヶ月間、PXGは「ヒーロー価格」を展開している。つまり、ウェッジを除きPXGのクラブは全てセール中ということ。これについては後で触れるが、業界標準の在庫処分ではなくゴルフ用品業界では聞いたこともないような非常に珍しいセールだ。

この割引価格は4月末までの設定となっていたが、今月末まで延長されることになった。これは、PXGの移動式直販とでも言うべき進化を遂げている流通モデルだからこそ可能だ。

クラブ販売は、移動式フィッティング・バンとPXGブランドのフィッティング店での販売が大部分だが、これらが独自の販売店となり一般的な小売チャネルとは異なるところに存在していることで、PXGは自由に価格調整することが可能となっている。

またPXGはボブ・パーソンズ氏が全てであり、彼の好きなようにできる。先行きが不透明なこの時期だけに、こうした柔軟性は最も確実なアドバンテージとなるはずである。

積極的な価格調整で成功しているクラブメーカー、New Level Golfのエリック・バーチ氏も、きっとそう思ってくれるだろう。

※「ヒーロー価格」とは、元々ミリタリー(現役および退役軍関係者)に対して行われるセール価格のことである。彼らに与えられているID番号を入力したら特別価格で提供される。米国では、軍事関係者を“国を守るヒーロー”として尊敬することから命名されたもの。山火事や災害時に活躍する警察官や消防士向けの場合もある。

PXGの今回のセールでは、「コロナと戦う全国民がヒーロー」という位置づけで、一般人(軍関係者以外)にもセール価格を適用している。

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値下げのワケ

ひねくれ者なら、当然、値下げは新型コロナウイルスの影響がPXGにも襲いかかっているからと言うだろう。同社は捨て身の状態。在庫一掃ではないのに値引きをするのは、終わりが近いからというわけだ。

一方、PXGは時を待っているという見方もできる。業界全体で見れば、大幅値引きはほぼ不可避だ。

大手メーカーが、早めの値引きが伴う連鎖的な問題に対応し店舗の一斉再開を待っている間に、PXGはそんな競合他社を尻目に、好奇心旺盛なゴルファーを遠ざける障壁となっていた価格を排除することができるというわけだ。

どちらを信じるかは、あなたのPXGに対する世界観によるだろうが、結局のところ今回のプロトタイプドライバーはどちらのシナリオにも通用するだろう。

前者が真実なのかは時が経てばわかるし、後者は新作ドライバー発表の裏にある公然のワケとしてはよくある話ともいえる。

プレスリリースによると、PXGはツアープロたちからの新ドライバーに関するフィードバックを得ており、今度は平均的ゴルファーからの反応も見たいと語っている。

余談中の余談だが、これは賢いかどうかはともかく、新作を市場に投入する方法としては完璧に筋が通っているように見える。しかしご存知の通り、ゴルフメーカーというものは、発表前の新商品をできるだけひた隠しにするものだ。

競合他社に、「現在進行中」の新作を見せたら横取りされるのでお披露目などできない。

PXGがアマチュアからの反応を見たいという部分は本当だろうが、対象となる消費者グループがあるわけではない。しかし、本格的な生産を進める前に消費者の手に製品を送ることにはメリットがあるはずだ。

さて、この話はこれくらいにして、ここからは本題に戻りたいと思う。


 

PXGプロトタイプドライバーとは

今回の(限定)リリースには注目点がいくつかある。

まず、今回の2モデルはソールのデザインが改良された。少なくとも業界内のクラブ設計家の一人は、ロゴの位置が変わったことを喜ぶだろう。より洗練されたというのが正しい表現だと感じる。コスメという点では、このクラブは改善されたと言えるだろう。

そして一番の注目点は、PXGの特徴とも言えるチューニングウエイトが、同社のGEN2パターで採用されたラージサイズに変更された。

これで多くのウェイトを動かすことなく、ヘッド周囲のかなりの質量を動かすことが可能になった(プロトドライバーにはウエイトポートが4つ搭載されている)。また、これは製造上、製品ごとの特別なパーツが少なくなるのでビジネス的にもスマートと言える。

待ち望んでいた単純化と効率化が一挙両得というわけだ。

また、0811 X プロトドライバーと0811 X+ プロトドライバーのフィッティングは入射角の話が中心となる。


 

大切だけど複雑な話

ご存知かそうでないかはともかく、フィッティングにおいて入射角は欠かせない要素だ。これを理解するには時間がかかるだろうし、フィッティングやパフォーマンスの話をする前に入射角のことを語る人も少ないだろうが、常に重要なことと言える。

今はおかしく聞こえるかも知れないが、初めてこのことを内部で公然と議論しフィッティングで当たり前の議論の一つとしようとしていたのはナイキだった。同社は、この話が始まる前にクラブビジネスから撤退していることは周知の通り。

そうしたナイキの努力はさておき、マーケティング向けの資料で入射角を語るメーカーが少ないのには理由がある。

それは、ほとんどのゴルファーが自分のスイングの入射角を知らないということではなく、ほとんどのゴルファーが入射角という言葉を聞いたことがなく、その意味を知らないからだ。

入射角を語ることは、パフォーマンスの観点から見ると正しいことだが、マーケティング的に見ると非常に複雑なものとなる。

私の意見だが、PXGはこの時期にプロトタイプをリリースすることで、GEN3の基礎となるかも知れないテクノロジーのパフォーマンスと、全く異なるものになるかも知れない訴求方法が多くのゴルファーに伝わるのかをテストしているのではないだろうか。

もちろん、ひねくれ者は高い粗悪品をつかまされたと言うだろう。好きに言わせておけば良いのだ。

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0811 X プロトか0811 X+ プロトか?

今回のPXGのプロトタイプドライバー2モデルの差は、重心の場所にある。0811 X プロトドライバーは低重心設計。入射角が下降方向かレベルにあるゴルファー向けで、基本的には高スピンになりやすいインパクトをする人に合う。

一方、0811 X+ プロトドライバーは、入射角がプラス、つまりアッパーブロー傾向のゴルファー向けでスピンは中程度、重心も真ん中にある。

現行のGEN2ドライバーは低重心モデルとなっており、その意味で0811 X+は(PXGが主要メーカーなだけに)主要モデルとは一線を画す位置づけとなる。


 

価格と発売時期

0811 X+ プロトはロフトが9度、一方の0811 X+ プロトは10.5度がラインナップ。ともに右利き用のみで、少なくとも、詳細を見る限りは両モデルともにプロトタイプ用だ。

価格はともに495ドル。詳細とフィッティングの予約についてはPXG.comまで。