世の中のゴルファーは、ハイトウウェッジの良さを理解する人と、そうでない人の2タイプに分かれる。
前者は、グリーン周りでフェースを開き、多彩なショットを打つために、クラブの助けを積極的に活用する。一方、スクエアフェースでのチップやピッチが中心なら、そもそもハイトウ形状に必要性を感じないかもしれない。
では、新しいテーラーメイド「Hi-Toe 5」は、どちらのゴルファーにとってバッグに入れる価値のあるウェッジなのだろうか。

ここまで読んで、「つまりハイトウウェッジを推す話なのだろう」と思ったなら、その予想は正しい。
ただし、全面的にというわけではない。
ハイトウ形状がなぜ有効なのかは後ほど詳しく触れるとして、まずはこのカテゴリーの最新モデル、テーラーメイド「Hi-Toe 5」がどんなウェッジなのかを見ていこう。

「Hi-Toe 5」は何が変わった?
テーラーメイドの「Hi-Toe」は、2017年にジャスティン・ローズとの共同開発から始まったシリーズだ。第5世代となる「Hi-Toe 5」では、シリーズで初めて鍛造製法を採用。「MG」シリーズに加わったことで、テーラーメイドの現行ウェッジは鍛造モデルでそろうことになった。
ただし、鍛造になったことだけが「Hi-Toe 5」のポイントではない。
「Hi-Toe」が支持されてきた理由は、大きなトウ形状やフェース全面の溝など、一般的なウェッジとは異なる設計にある。
テーラーメイドのプロダクトカテゴリー・ディレクター、マット・ボビーも、「Hi-Toeは常に“ほかとは違う”ことを意識して設計してきた」と説明する。
では今回、実際のプレーに関わる部分は何が変わったのか。
注目したいのは、5種類のソールグラインドと、新たに採用された『ソーミルド・グルーブ』だ。

スピン性能を支える2つの技術
「Hi-Toe 5」では、前年の「MG5」で初めて採用された『ソーミルド・グルーブ』を搭載している。
テーラーメイドによれば、溝の壁をより急角度にし、エッジを鋭くするとともに、製造精度を高めることでUSGAの規定上限に近づけたという。狙いは、単純にスピン量を増やすことではなく、より安定してスピンをコントロールできるようにすることだ。
もうひとつが、2023年に登場した『スピン・トレッド・テクノロジー』だ。
ノンメッキのフェース表面にレーザー加工した微細な溝を設け、インパクト時にボールとフェースの間に入る水分を逃がす。濡れた路面でタイヤの溝が水を排出するのと似た考え方で、朝露や雨などフェースが濡れやすい状況でも、スピンのばらつきを抑えることを狙っている。
晴れた日のきれいなライだけでなく、芝やフェースに水分が残る場面でもスピンを安定させたい。「Hi-Toe 5」の溝には、そうした状況まで想定した工夫が盛り込まれている。

なぜフェース全面に溝が必要なのか?
ハイトウ形状と並んで、「Hi-Toe 5」の見た目を特徴づけているのが、フェース全面に刻まれた溝だ。
では、なぜトウ側まで溝が必要なのか。
ハイトウウェッジの狙いは、グリーン周りでさまざまなショットに対応しやすくすることにある。特にロフトの大きなウェッジでフェースを開くと、打点は自然とトウ側へ移りやすい。ならば、そこまで溝を伸ばしておくのは理にかなっている。
逆に、ロフトの少ないウェッジをスクエアに構えて打つことが多いなら、フルフェース溝やハイトウ形状のメリットはそれほど大きくないかもしれない。

5種類のグラインドからどう選ぶ?
ウェッジのグラインドは、選択肢が増えるほど「どれを選べばいいのか」と迷いやすくなる。
「Hi-Toe 5」には5種類が用意されているが、テーラーメイドはそれぞれの違いと適した使い方を比較的分かりやすく整理している。

ATSグラインド|迷ったらまず候補に
「ATS」は、「Hi-Toe 5」の中でも人気が高く、幅広いコンディションに対応するグラインドだ。
ややワイドなソールで、入射角が鋭くなりやすいゴルファーにも比較的やさしい。特定の打ち方やコースコンディションに偏らず使いやすいため、「5種類の中からどれを選べばいいか分からない」という人にとって、まず候補にしやすい。
すべてのロフトに用意されている。
ATVグラインド|フェースを開いて使いたい人に
「ATV」は、凹型のソールと非対称のバウンスが特徴だ。
フェースをスクエアに構えたときはハイバウンスのように使え、フェースを開くとローバウンスのように扱える。ひとつのウェッジでフェースの開き方を変えながら、さまざまなショットを打ち分けたい人に向いている。
58度と60度に設定される。
ATWグラインド|バンカーや軟らかいライが苦手な人に
「ATW」は、5種類の中でもっともバウンスが大きいグラインドだ。
バンカーや軟らかいコンディションでソールの助けを得やすく、テーラーメイドは5種類の中でも特にミスへの許容性を重視した設計としている。
フェースを大きく開いて操作するというより、スクエアに構えてシンプルに打ちたい人に向く。
56度と60度に設定される。
ATXグラインド|鋭角に打ち込むタイプに
「ATX」は、ワイドながらバウンスを中程度に抑えたソールに、役割の異なる3つの段差を設けている。
前方は、入射角が鋭くなったときにリーディングエッジが地面へ刺さるのを抑える設計。中央部はインパクト時の安定性を高め、後方を細くすることで芝や砂から抜けやすくしている。
ウェッジを鋭角に入れやすいものの、ワイドソールの安定感と抜けの良さを両立したい人に合いやすい。
58度と60度に設定される。
ATCグラインド|硬いライからフェースを操りたい人に
「ATC」は、5種類の中でもっともバウンスが小さく、細身のスプリットソールとヒール、トウ側の大きなリリーフが特徴だ。
硬い、あるいは芝の薄いライから打つことが多く、フェースを開いたり閉じたりしながらショットを作りたいゴルファーを想定している。入射角が浅いタイプとも相性がいい。
58度と60度が用意され、テーラーメイドのカスタムオーダー限定となる。

ハイトウウェッジは本当に必要?
では、ハイトウウェッジを何本もバッグに入れる必要があるのか。
おそらく、そこまでは必要ない。
ただし、もっともロフトが大きく、グリーン周りでよく使う1本をハイトウにするなら、十分に意味がある。
特にフェースを開いてフロップショット(ロブショット)やバンカーショットを打ったり、グリーンエッジからピンまでの距離が短い場面で球を上げたりする人だ。
こうしたショットでは打点がトウ側へ移りやすいため、フルフェース溝とトウ側に重量を持たせたハイトウ形状を生かしやすい。
さらにハイトウ形状は重心を高く、フェース中央寄りにする効果もある。これによって、より安定したスピン性能と、低めでコントロールしやすい弾道を狙っている。

一方、グリーン周りではフェースをスクエアに構え、シンプルなチップやピッチを打つことが多いなら、ハイトウにするメリットはそれほど大きくない。
ロフトが少なくなるほど、その傾向はさらに強くなる。
つまり「Hi-Toe 5」は、ウェッジをすべてハイトウでそろえるというより、フェースを開いて多彩なショットを打つための高ロフトウェッジとしてバッグに入れる。そんな使い方が、このクラブの特徴をもっとも生かしやすいだろう。

価格・発売日・スペック
日本では「Hi-Toe 5」が2026年9月3日に発売予定。価格は31,900円(税込)で、SELECTFIT STORE +PLUS限定モデルとなる。
ロフトは56度、58度、60度を用意。5種類のグラインドから選べるが、ロフトによって選択できるグラインドは異なる。また、「ATS」と「ATC」にはカスタム限定の設定がある。
標準シャフトは「Dynamic Gold HT(S200)」と「N.S.PRO 950GH NEO(S)」。レフトハンドの設定はない。




