テーラーメイド売却の注目点

・テーラーメイドが16億ドル(約1,746億円)で韓国系の未公開株式投資会社に売却

・「KPSフィナンシャル」は、2017年にアディダスからテーラーメイドを4億2,500万ドル(約464億円)で買収

・ゴルフ用品業界全体の第一四半期の売上が過去最高になったと報じられた中での売却


テーラーメイド売却の噂を耳にしたのは今朝(5/11)のことだったが、それが現実になった。本日付の韓国経済新聞海外版によると、テーラーメイドは韓国系の未公開株式投資会社「セントロイド・インベストメントパートナーズ」に16億ドル(約1,746億円)で売却されたという。

同紙によると、これはゴルフ業界最大の買収案件で7月中には完結するという。

16億ドル(約1,746億円)とは随分な額だ。ニューヨークを拠点とする未公開株式投資会社「KPSフィナンシャルLP」が4年前にテーラーメイド、アダムス、アシュワースを買収した時の買収額は4億2,500万ドル(約464億円)。

当時、同社はテーラーメイドを再建し、相当な利益が得られる状況での売却を視野に入れていると見られていた。当初の投資額の約4倍となる16億ドル(約1,746億円)という売却額は、まさにミッション達成と言えるだろう。


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テーラーメイド売却:KPS傘下の4年間

テーラーメイド売却という話が最初に表面化したのは2月のこと。「ニューヨーク・タイムズ」 によると、売却希望額は20億ドル(約2,179億円)程度と見られていたようだ。

2017年5月に「KPS」がテーラーメイドを買収した時、業界の元勝ち組は窮地にあり、だからこそ「KPS」が支払った価格が相対的に格安だったことの説明もつく。

テーラーメイドは、「KPS」傘下になり再生。「半年ごとに新ドライバーを乱発する」というイメージを完全に払拭してみせた。そしてフォージドの高性能アイアン「Pシリーズ」に「Mシリーズ」、さらには中級者向けアイアンとウッドの「SIMシリーズ」を展開し、その地位を確固たるものにしていた。

現在のテーラーメイドは4年前に比べ強固な財務基盤を築いている。中級者向けクラブとウッドシリーズの商品サイクルは一年、プレミアムアイアン、ウェッジ、ボールは2年をキープ。契約するツアープロは若干減ったが、それでもダスティン・ジョンソン、タイガー・ウッズ、ロリー・マキロイを抱えているのだ。


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新たなオーナー

韓国の経済紙によると、「セントロイド・インベストメントパートナーズ」は韓国ではそれほど知名度のない未公開株式投資会社の一つで、社名は明らかになっていないが他4つの候補者に打ち勝ちテーラーメイドを手にしたようだ。

そして「セントロイド・インベストメントパートナーズ」は設立からまだ6年しか経っておらず、アジアで繊維ビジネスを展開。昨年は、韓国の「サウス・スプリングス・カントリークラブ」を1億5,300万ドル(約166億円)で買収している。

なお今回のテーラーメイドの買収は、「フィラ韓国」が2011年にアクシネットを13億ドル(約1,416億円)で買収した以降では最高の買収額となっている。


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16億ドル?

一見すると、テーラーメイドの“16億ドル”という売却額はちょっとショッキングだ。10年前のアクシネットの売却金額は13億ドルだったが、同社はシューズとアパレルビジネスも盛んで、世界最大のボールメーカーでもある。一方、テーラーメイドはクラブ、ボール、アクセサリーのみの展開だからだ。

ところが、新型コロナウイルス感染症のおかげで、ゴルフはかつてない活況となっている。ゴルフ用品販売は3四半期連続で過去最高を記録。

ゴルフデータテック(欧米ゴルフ産業の有力調査機関)によると、2021年第一四半期の米国における小売販売は昨対比72%増。2019年の同四半期と比較しても49%増と驚異的な伸びとなっており、ゴルフデータテックの話では、今年の第一四半期の販売は過去最高になったという。

さらにNGF(ナショナル・ゴルフ・ファンデーション)によると、第一四半期の米国ラウンド数は24%増とのこと。


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また、業界トップのアクシネットとキャロウェイは、第一四半期に驚異的な売上を記録したと伝えられている。アクシネットの世界全体での売上は5億8,100万ドル(約633億円)で純利益は8,500万ドル(約92億6,000万円)。

キャロウェイの売上も過去最高の6億5,200万ドル(約710億円)で誌面上の純利益は2億7,200万ドル(約296億円)に及んだ。しかし、これらの大部分はトップゴルフとの統合に関連した会計上のお話。営業活動による実際の収益は、それでも7,600万ドル(約82億7,000万円)に達している。

韓国経済新聞によると、16億ドルという金額はテーラーメイドの1億3,900万ドル(約151億3,000万円)という推定EBITDA(償却前営業利益)の12倍相当だ。

一方、キャロウェイの2021年の推定EBITDAは2019年に到達した2億1,100万ドル(約229億8,000万円)を超えるとされているようだ。


テーラーメイド売却:何を意味するのか?

「KPS」がテーラーメイドの立て直しを達成したことは明らかだ。そして、同社が「鉄を熱いうちに打った」ということ。

「セントロイド・インベストメントパートナーズ」は最高額を支払っており、これはテーラーメイドが過去4年間で堅実に利益を挙げてきたことを示している。

また、16億ドルという金額は、セントロイドが世界のゴルフ市場に対して強気に出ていることも示唆。同社は、テーラメイドが北米だけでなく、急成長を見せるアジア市場でも拡大していくことを確信しているということだ。