タイトリストの718 APシリーズが発売されてからまもなく2年、多くのゴルファーが720シリーズの登場を楽しみにしていただろう。
しかし、APシリーズはここで終了(恐らく永遠に)。T-SERIESのアイアン3モデルに変わることとなった。
しかし、これは単なるネーミングの変更ではない。メーカーが、流行りの過ぎた商品の寿命を伸ばすためにマイナーチェンジに頼ることは珍しくはないが、今回は違う。
「単に商品名を変えるということでない。我々は方向転換することにしたのだ」と話すのは、同社のゴルフクラブ・マーケティング・バイスプレジデントを務めるジョシュ・タルゲ氏。
方向転換と言うからには、タイトリストの目玉商品となることもあるだろう。同社にとっては、なんと言っても約12年ぶりの新アイアンだからだ。
もちろん、ゴルフ用品業界の転換期というほどではないが、タイトリストによれば、今回の新アイアンを深掘りすると、これまでのモデルとは大きく異なるようだ。
タルゲ氏は「シリーズの名前についてはかなり社内で話し合った」と語る。
「大きさや形状、ちょっとした性能を変えておいて、『これはAP2だ』と言うことは難しいだろう。新製品を見れば、これ(T300)は明らかにAP1でないことは分かる。見た目がAP1と全然違うし、全く異なるものが搭載されている。確かにAP1の要素の一部でもあった易しさを備えたアイアンに分類されるが、それ以外は違うのだ」。
よく考えてみると、確かに全てが違うと思う。それぞれのアイアンを見れば、タルゲ氏の言っていることは正しい。
Tシリーズの長所は、APシリーズからの脱却だが、タイトリストは、新モデルと6世代12年に渡ったAPシリーズを含めた旧モデルとの間に明確な線引きをする必要があっただろう。
APシリーズはこれまでも進化を繰り返し、AP3の登場で少しは変化もあったが、著しく変わったということはなかった。
タイトリストがAPシリーズによってアイアン部門で存在を高めていったことは事実だが、そのゆったりとした戦略の結果、2010年にAPアイアンを試して以降、タイトリストアイアンからゴルファーが離れてしまうことにもなった。
だから今回のT-SERIESは、もう一度ゴルファーの興味を引くチャンスとなるだろう。
タルゲ氏は「APシリーズのおかげで、タイトリストが上級者のために難しいクラブを作っているだけのメーカーではないことが認知できたと思う」とコメント。
「ここからは、それをもっと浸透させたい」と続けた。タイトリストは、これを成し遂げるために、T-SERIESが新製品というだけでなく全く異なるアイアンであることを極めて明確にする必要がある。
ニューモデルには、新構造、新素材が採用され、ご想像の通りストロングロフトになっている。
そしてタイトリストでは、ストロングロフトの概念が払拭され、ロフト角が気にならなくなること願っている。
これは、ストロングロフト化が正しくないと言っているわけでもなく、ミスをした時に問題になるということでもなく、「3Dアイアン弾道」により、競合他社のストロングロフトアイアンにありがちな落とし穴に陥らないことを意味する。
3Dとは、Distance(キャリーの飛距離性能)、Dispersion(バラツキ=横弾道許容性)、Descent(縦弾道許容性)のこと。
タルゲ氏によれば「フィッティング視点で言えば、これら3つが相まった時、ゴルフが飛躍的に良くなる」そうだ。
この「3Dアイアン弾道」を取り入れたことで、ストロングロフトがパフォーマンスの低下に影響するわけではない。
しかしタルゲ氏は、弾道測定機で良い数値を出さないとアイアンが売れないことは嫌というほど分かっており、要するにロフトは立てた方が良いと言うことになる。
「ボールスピードで負けるわけにはいかないが、同時に飛距離が全てという先入観も変えていきたい」とタルゲ氏。「ゴルファーのニーズに答えるパフォーマンスを提供したいが、試打席でも仰天させるものにしたいと思う」。
タイトリストでは、見た目、フィーリング、飛距離の完璧さを望んでいるがしばらく実現していない。タイトリスト T100アイアン
タイトリスト T100アイアンの設計上のゴールは、ジョーダン・スピースのような世界のトッププレーヤのフィードバックから究極のツアーアイアンを創り出すという分かりやすいものだった。
それだけにT100アイアンは、世界中のツアーで広く使用されるようになることはほぼ間違いないだろうが、AP2アイアンからの移行クラブとして、(ボールをしっかりミートできるスキルにもよるが)シングルから二桁前半のハンディキャップのゴルファーでも十分に使いこなせる寛容性があることも特筆すべきところだ。
タルゲ氏によれば「(T100は)一般的なゴルファーでツアーアイアンを欲しい方でも使いこなせる」とのこと。「フィーリングも見た目もグレート。そして、安定感もある」。
正統派のツアーアイアンらしく、T100アイアンにはT200、T300に搭載されているテクノロジーはないが、細かい変更が重なったことで前作とは全く異なるものとなった。
T100アイアンと新620CBアイアンは、やや上級者向けと言える。T100とAP2を並べて比較すると、T100は明らかにコンパクトになっている。
ブレードの長さも短くなっており、トップラインも薄く、さらにオフセットも小さい。
ジョーダン・スピースからインスピレーションを受けたという幅狭のソールはリーディングエッジからの繋がりがよく、より丸みを帯びており、インパクト時に抜群の抜けを実現する。この辺の話は、この後にも出てくるだろう。
セットは革新的デザインで、短い番手になるにつれヘッドが小さくなっている。事前にセッティングされたコンボセットのようだが、これは全ての新アイアンで共通している。
T100アイアンのセットは、ヘッドサイズにおいてAP2の3番アイアンからCBアイアン同様のピッチングウェッジのような良い流れがある。
「ブレードが長いショートアイアンを求めているゴルファーはいない」と語るのはタイトリストゴルフクラブR&Dのアイアン開発部長であるマルニ・イネス氏。
コンパクトなスコアリングクラブだと、ボーケイや他のウェッジへの流れがスムーズというわけだ。
ウェッジといえば、ベン・ホーガンはどの番手にもソールにロフト角を刻印していたが(今では実施していない)、タイトリストではT-SERIESの全ピッチングウェッジにロフト角を刻印している。
ウェッジの番手間のギャップを気にしていないゴルファーもいるが、アイアンセットのウェッジにもロフト角を見せておけば、セットの中でどのロフトのウェッジを持てば良いか分かりやすくなるだろう。
AP2同様、T100は鍛造アイアンだ。(日本製バネ鋼の)SUP-10フェースを採用しており、飛ばしの要素を犠牲にすることなくボールスピードがアップ。
3番アイアン~7番アイアンには平均66グラムの高密度タングステンをトゥとヒール部に配し、低重心を実現するとともに安定性もアップしている。
タイトリストT100のスペック
※上記表の用語:LIE(ライ角) / LENGTH(長さ)
「多くのゴルファーが持て余しているロングアイアンとミドルアイアンを使えるものにすることは、常に我々のアイアン設計の哲学になっている。ロングアイアンのどこかで番手間ギャップが小さくなっているので、幅広いゴルファー層にとって、より使いやすいアイアンセットにしようと考えているのだ。だからロングアイアンとミドルアイアン、特にミドルアイアンではボールスピードが上がり、ギャップが大きくならないようなスピン量にした」-マルニ・イネス氏
標準シャフトはトゥルー・テンパーのAMT White(スチール)と番手ごとに重量がフローするMCA Tensei White AM2(カーボン)。
重量は番手ごとに2グラムずつ増える(94グラム-108グラム)。両シャフト共に低弾道、低スピンを実現する。
グリップはゴルフプライドのTour Velvet 360を装着。前作よりもより手にしっかりつき、耐久性もアップしている。
またこれまで同様、豊富なシャフトとグリップのオプションを無料で選択できる。
T100のメーカー希望小売価格はスチールシャフトが1本175ドル(8本セットで1,399ドル)、カーボンシャフトは1本187.5ドル(8本セットで1,499ドル)。
タイトリスト T200アイアン
先程述べた「3Dアイアン弾道」をより打ち出しているのが、T200アイアン。見た目、フィーリング、弾道、スピンを損なうことなく飛距離を追求している。
T200の見た目は、T300ほど極端ではないが、タイトリストとしては漸進的と言えるのではないだろうか?
これは、ラインナップを現代的にするという純粋なニーズもあるだろうが、4番~7番アイアンに搭載されたマックスインパクトテクノロジーによるところが大きいだろう。
タイトリストでは、トランポリンを引き合いに出し、マックスインパクトテクノロジーを物理的視点で説明している。
より高く飛ぶ(スピードアップ)ようにすることが目的だったら、何をすれば良いだろうか?トランポリンを引っ張って、引き締めるだろう。アイアンでは、フェースを薄くすることがこれに当たる。
タイトリストは、平均で1.9mmの薄さ(ソール方向により薄い)という軟鉄SUP10のLフェースを採用。ミズノと同様、混合構造だが軟鉄部分をフェースに採用している。
タイトリストによると、もっと弾ませたい(もっとスピードアップさせる)場合、これをダブルバウンスと呼ぶことにするが、あなたならどうするだろうか?
トランポリンの下にエクササイズボールを置くと良いそうだ。こうすると、トランポリン(フェース)による跳ね返りと、エクササイズボールが地面と設置していることで、弾んでいる上でさらに弾むという状態が得られるという。
やや複雑で、この物理的な話で伝わるとは思っていないが、これでマックスインパクトテクノロジーがどのように機能しているかが、少しでも理解してもらえればと思う。
T200のヘッドの背部にあるスクリューは、多くの皆さんの予想に反してスイングウェイトの調整用にあるわけではない。
これがマックスインパクトのアンカー役となっており、中身が見られない分、ビジュアルで必要な部分だけ表現されている。トランポリンの話でいうところの、これが地面に当たる。
エクササイズボールの部分は、今回のアイアンで言うとニューポリマーコアであり、フェース全体のスピードのバランスを取る役も担う。
プロV1のコアをクラブヘッドに挿入しているわけではないことははっきりさせておくが、タイトリストでは、復元力、緩和性、耐久性の適正なバランスを実現する素材を見つけることができるボールチームの経験を利用した。
鋭い方なら、マックスインパクトテクノロジーがややトゥ側に配置されている(番手が大きくなると、より顕著になる)ということに気がつくだろう。
これは設計によるもので、マックスインパクトは、スコアラインがある部分だけではなく、クラブフェース全体を均等にサポートしているのだ。
そのため、マックスインパクトはクラブフェース全体の中心部分に配置されており、ヒッティングエリアのセンターとは異なる。
クラブフェース全体の中心部分にあるということは、言い換えると、スコアラインがある部分の真ん中にマックスインパクトがあるよりも、ヒールとトゥの間のボールスピードのバランスが取れているということでもあるのだ。
ここで理解しなければならないことは、スイートスポットはヒッティングエリアのセンターにある一方、マックスインパクトはクラブフェース全体の中心部分に設定されているということなのだ。
見方によっては、マックスインパクトはスピード、一貫性、改良されたフィーリングという性能メリット全体にとって利点があり、タイトリストでもそのように考えているが、それはマックスインパクトの一要素に過ぎないようだ。
このニューポリマーコアが機能通りの働きをすれば、(適正な落下角度でグリーンオンし)スコアにも大きく影響する。
そして、この全てを実現すれば、タイトリストのアイアンの売り上げにも「マックスインパクト」をもたらすことは間違いないだろう。
AP3に代わるアイアン
T200アイアンは、タイトリストのラインナップの中ではAP3に代わるモデルとなる。AP2 710か712アイアンに近いヘッド形状をしているものの、飛び系アイアンに分類されるだろう。
またT100のように、前作モデルに比べシャープになった印象だ。AP3と比較するとブレードの長さが短くなり、トップラインも薄くなった他、オフセットも小さい。そしてソールも改良され、より抜けが良くなった。
どちらかと言うと、T200アイアンは飛び系アイアンというよりも、上級者向けアイアンと言えるだろう。AP3は大きく感じたが、T200アイアンはそうではないのだ。
そして、平均90グラムのタングステンにより低重心化を実現。ストロングロフトになっているもののスイートスポットが低くなり、ラフからフライヤーしにくくなっている。
また、マックスインパクトテクノロジーのポリマーコアにより、フェース全体でのスピードがアップするだけでなく、薄いフェースによる好ましくない打感を軽減している。
ジョシュ・タルゲ氏によれば、T200アイアンのデザインは高級時計からインスピレーションを得たという。
「(T200アイアンを)華美にしたり、派手にしたかったわけではない。性能を重視し、見た目が良いものにしたかった」。意見が色々あるように、見た目の好みは人それぞれだろう。
タイトリストT200のスペック
※上記表の用語:LIE(ライ角) / LENGTH(長さ)
ピッチングウェッジで43°など、ロフト角をAP3と同じ設定にしているようだが、タイトリストでは、T200を完全なるストロングロフトアイアンと認めているようだ。
タルゲ氏は「あなたのヘッドスピードや打ち出しでも、この3つのD(キャリーの飛距離性能、バラツキ=横弾道許容性、縦弾道許容性)があることで、ロフトが7番で30°でも、ウェッジで43°でも問題ない」とコメント。
そして、「このアイアンならボールスピードをアップさせ、更にフェース全体でのボールスピードも向上し、高打ち出しを達成する。搭載されたタングステンのお陰でよりピンを狙うことができ、弾道の最高到達点も高くなるのでボールの落下角度が鋭角になり、ターゲットでもっと止められることができるだろう」と話す。
またタイトリストのコーリー・ゲラード氏も「グリーンの奥に外して良い結果になることなんてない」と続けた。
こうしたことから、タイトリストでは、ゴルファーがソールに刻印された数字(番手)に惑わされなくなれば、と考えている。
T200アイアンは、ストロングロフトであっても、タングステンとマックスインパクトテクノロジーにより、ボールを高く打ち出すことができ、従来モデルのようにロフトがあるT100アイアンくらいソフトにボールを落下させることができるだろう。
ここで言えることは、とにかくT200があなたに合うか試してみようということだ。
T200アイアンの標準シャフトは、共に中弾道、中スピンをもたらすトゥルー・テンパーのAMT BlackとMCA Tensei Blue AMT(74-88グラム)。
グリップは、T100同様ゴルフプライドのTour Velvet 360だ。
T200のメーカー希望小売価格はスチールシャフトが1本175ドル(8本セットで1,399ドル)、カーボンシャフトは1本187.5ドル(8本セットで1,499ドル)。
タイトリスト T300アイアン
AP1に代わるアイアンとなるのがT300。数字が大きくなればヘッドも大きくなっていることにお気づきかと思うが、テクノロジーも詰まっている。
T300アイアンに搭載されているテクノロジーはT200と大部分で同じだが、中空構造のT200とは異なりT300では4番~7番までマックスインパクトテクノロジーを搭載したキャビティバック構造を採用していることは特筆すべきところ(マックスインパクトは、T200でもそうなのだが、大きなロフトのクラブではそこまでメリットがないので7番アイアンまでに採用されている)。
またT300は、AP1と違いロングアイアンも含めセットを通じてキャビティバッグ構造となっている。
ヘッドが大きくなったことで、マックスインパクトコアも大きくする必要があるが、それ以外のポリマー素材などは同じで、T200同様にフェースセンターを外れたところに配されている。
改めてお伝えすると、マックスインパクトが配置されているのは、クラブフェース全体の中心部分でヒッティングエリアの中心ではない。多くのゴルファーが、このテクノロジーの恩恵を受けることだろう。
T300にはT-SERIESのその他の要素も採用されている。抜けをさらに良くするために、ソールデザインも(より丸みを帯び、バウンスもあるように)改良。
ブレードの長さと(ロングアイアンで高弾道を実現しスコアリングクラブで直進性を出すため)重心位置もフローデザインを用いた。
タイトリストではT300をミッドサイズのキャビティアイアンとしているが、他モデルほどコンパクトでもない他、カッコ悪くもなければ、ヘッドが大き過ぎる初心者向けアイアンというわけでもないだろう。
T300の見た目が受け入れられるかということになると話は別だ。
T300の画像がリリースされる前のそれとは劣るUSGAの溝規制データベース用の画像は、評判が良くなかった。このアイアンに対する第一印象は微妙なもので、デモが始まった時に潮目が変わるかも不確かなのだ。
T300はデザイン的にタイトリスト史上最も「攻めた」アイアンではあるが、そんなネガティブな印象も時間とともになくなるだろう。
タイトリストからは予想外とも思えるアイアンだが、タルゲ氏は「(T300は)高く上がり、遠くまで飛ばせる。持っていて楽しくなる、素晴らしいアイアンだ」と断言している。
もしそれが本当なら、見た目など気にならないだろう。
タイトリストT300のスペック
※上記表の用語:LIE(ライ角) / LENGTH(長さ)
T300はT200よりも若干ストロングロフト設定だ。しかし試してみれば、ストロングロフトによる飛距離アップが、グリーンでボールを止めることや基本的な操作性を犠牲にした上で実現したものではないということが分かるだろう。
標準シャフトは、T-SERIESの中では最軽量モデルを採用しており、スチールシャフトではトゥルー・テンパーのAMTレッド、カーボンシャフトではTensei Red AM2 (54-68グラム)が装着されている。
ともに高弾道、中・高スピンが特徴だ。
標準グリップは、ゴルフプライドのTour Velvet 360。
豊富なシャフトとグリップの中から無料で選択することも可能だ。
T300のメーカー希望小売価格はスチールシャフトが1本125ドル(8本セットで999ドル)、カーボンシャフトは1本137.5ドル(8本セットで1,099ドル)。
発売時期
フィティングは8月8日からスタートし、店頭では8月30日から発売される。
Leave a Comment