80台が「当たり前」になるゴルファーと、いつも90台で足踏みしてしまうゴルファー──。

両者を分けているのは、飛距離でも、特別なショットでもない。

ショット・スコープの実測データが示しているのは、ごく小さな差の積み重ねだ。

ハンディキャップ10と20を比べると、決定的な違いはひとつもない。だが、その小さなズレが18ホールで重なり合い、結果として毎ラウンド8〜12打の差になっている。

言い換えれば、90台で安定してしまう原因は「才能不足」ではない。

改善できるポイントが分散して存在しているだけだ。

これから紹介するのは、ショット・スコープのデータが裏付ける80台と90台を分ける、5つの最大要因。

どれも派手さはないが、スコアには確実に直結する部分ばかりだ。──次の5項目を読み進めれば、「なぜ自分は90台を抜けられないのか」

そして、「どこから手をつけるべきか」が、はっきり見えてくるはずだ。


バンカーからクリーンにボールを打ち出す80台ゴルファーのショットシーン

1.ティーショットで約20ヤード前へ──セカンドが一気に楽になる

80台で回るゴルファーが優れているのは、「曲げないこと」ではない。

スタート地点が、常に前にあることだ。

ショット・スコープのデータを見ると、ハンディキャップ10は毎ホール、ティーショット後の位置が25〜30ヤード前にある。

たったそれだけ──だが、その差がラウンド全体を別物にしている。

平均で約24ヤード短いセカンドを打てることで、使うクラブは自然とロフトの大きいアイアンになる。

結果として、

• グリーンを狙える角度が広がる

• 無理な弾道を打たなくて済む

• ロングアイアンやハイブリッドという“スコアを壊しやすい番手”を避けられる

90台で停滞するゴルファーの多くは、「ティーショットが曲がるかどうか」に意識が向きがちだ。

だが本質はそこではない。

セカンドを何番で打っているか。この差が、80台と90台を静かに、しかし確実に分けている。

次に見るべきは、「フェアウェイキープ率」ではなく、“どこからグリーンを狙っているか”だ。


ティーショット指標 ハンディキャップ10 ハンディキャップ20
ドライバー平均飛距離 227ヤード 204ヤード +23ヤード
全クラブ平均飛距離 218ヤード 189ヤード +29ヤード
平均アプローチ距離 168ヤード 192ヤード 24ヤード短い

補足)「平均アプローチ距離」とは:ティーショット後、最初にグリーンを狙うショットの残り距離


2.パーオン率の差は「グリーンに乗るかどうか」以上の意味を持つ

スコアを80台でまとめられるか、それとも90台から抜け出せないか。

その分かれ道は、パーオン率(GIR)そのものよりも“どれだけ近くに乗せているか”にある。

80台ゴルファーは、グリーンをとらえる回数が多いだけでなく、外したとしてもピンに近い位置で止めている。

結果として、残るのは短いパット、もしくはやさしいアプローチ。無理な寄せを強いられる場面が少ない。

一方、90台ゴルファーはどうか。

グリーンを外す頻度が高いだけでなく、外したときの距離が長い。

50〜150フィート(約15〜45m)も残れば、アプローチは難しくなり、パットも「入れに行く」ではなく「寄せるだけ」になってしまう。


GIR指標 ハンディキャップ10 ハンディキャップ20
パーオン率(GIR %) 32% 19%
平均カップまでの距離 約31.7m 約49.7m

距離別パーオン率内訳:

100〜125ヤード:49% vs 34%

125〜150ヤード:36% vs 20%

150〜175ヤード:30% vs 17%


注目すべきは、100〜175ヤードという“実戦で最も多い距離帯”で、すでに大きな差が出ている点だ。

ここでグリーンに乗せられるか、近くまで運べるかどうかが、そのままスコアに直結する。

つまり──ウェッジやパターで帳尻を合わせる前に、セカンドショットの精度で勝負はほぼ決まっている。

グリーンに到達する前の数打で、80台ゴルファーはすでに「数打の貯金」を作っている、というわけだ。


3. 大叩きのホールが圧倒的に少ない(ダブルボギーが分かれ目)

80台で回るゴルファーも、90台で回るゴルファーも、ボギーは打つ。違いはそこではない。

決定的な差を生むのは、ダブルボギー以上をどれだけ打たないかだ。

データを見ると、ハンディキャップ10のゴルファーがダブルボギー以上を打つ割合は16%。

一方で、ハンディキャップ20では37%。

つまり、ラウンド中の3分の1以上のホールで、「一度崩れると止まらない展開」になっている。


スコア関連指標 ハンディキャップ10 ハンディキャップ20
ダブルボギー以上の割合 16% 37%

82と94の差は、「ボギーが2〜3個多い」ことでは生まれない。OB、池、バンカー、ミスの連鎖で一気に叩くホールがあるかどうか──そこが分かれ目だ。

80台ゴルファーは、完璧なショットを打っているわけではない。

ただ、ミスをしたあとにもう一度ミスを重ねない。

無理に距離を取り戻そうとせず、次の1打で状況をリセットする。

結果として、悪くてもボギー、崩れてもダブルまで。この「止血」ができるかどうかが、ラウンド全体の流れを大きく左右する。

スコアを縮めたいなら、ナイスショットを増やす前に、“大事故を起こさないゴルフ”を身につけること。

それが、80台への最短ルートだ。



4. 1ラウンドあたりの3パットが1回少ない

80台と90台を分けるのは、約3m以内の“決断力”。80台で回るゴルファーは、特別にパットが上手いわけではない。データが示しているのは、3パットを1回減らしているという、極めて現実的な違いだ。

注目したいのは、最初のパット距離。約5.2mと約5.5m──ほぼ同じ位置から打っている。

それでも、3パットの回数にははっきりと差が出る。

違いを生むのは、約0.9〜2.7mのパットだ。「約1.5mのパーパット」、「約2.5mのボギーパット」80台ゴルファーは、こうした距離をしっかり沈め、「3打目を打たずにホールアウトする」。

一方で、90台ゴルファーはここを外し、「寄せたのに3パット」という形でスコアを落としてしまう。

ロングパットの距離感が重要なのは確かだ。ただ、本当の差が表れるのは、次の1打を残さず、打ち切れるかどうかという部分にある。

1ラウンドで3パットを1回減らす。それだけで、スコアは確実に1打縮まる。


パッティング指標 ハンディキャップ10 ハンディキャップ20
3パット率 7% 13%
平均3パット数(1ラウンド) 1.5回 2.4回
ファーストパット距離 約5.2m 約5.5m

※ファーストパット距離はほぼ同じでも、3パット率と回数に大きな差があり、これがスコアに直結している。


注目すべきもうひとつの指標:パット成功率:

約0.9〜1.8m:65% vs 55%

約1.8〜2.7m:39% vs 33%


90台から80台へ──その入口にあるのは、ドライバーの飛距離でも、アイアンの精度でもない。

約3m以内を「入れる距離」として扱えるかどうか。

ここが、最も再現性の高い分かれ道だ。


5.ウェッジで生まれる「約1.5m」が、スコアを大きく変える

約46m以内のウェッジショット。多くのゴルファーにとって、「寄せたい」「チャンスを作りたい」と感じる距離だ。

だが、80台ゴルファーと90台ゴルファーの違いは、その一打で“どこまで近づけているか”にある。

差は、わずか約1.5m。しかしこの距離差が、パットの難易度を大きく変える。

「約4.6m残るアプローチ」、「約6.1m残るアプローチ」この違いで、ワンパットの確率は大きく下がり、タップインで終わるか、緊張感のあるパットを残すかが分かれる。

80台ゴルファーは、無理にピンを狙っているわけではない。次の1打を“簡単にする位置”へ運んでいるだけだ。

その積み重ねが、アップ&ダウン率の差となり、ダブルボギーを防ぎ、ボギーを最小限に抑え、結果として、「耐えるパー」ではなく「自然に取れるパー」を増やしている。

スコアを縮めたいなら、ウェッジで狙うべきは“ナイスショット”ではない。次のパットが楽になる距離に置くこと──それが、80台ゴルフの正体だ。


ショートゲーム指標 ハンディキャップ10 ハンディキャップ20
アップ&ダウン成功率 39% 31%
平均カップまでの距離(0–50yds) 約4.6m 約6.1m


最終まとめ

80台への近道は、「一気に変える」ことではない。その差を一瞬で埋める“魔法のショット”は存在しない。だが、これまで見てきたデータが示しているのは、スコアは、確実に「積み上げ」で縮まるという事実だ。

• ティーショットで少し前へ

• セカンドを少し楽に

• 大叩きをひとつ減らし

• 3パットを1回減らし

• ウェッジで次を簡単にする

この「少しずつの改善」が、気づけば1打、2打、そしてラウンド全体の流れを変えていく。

80台ゴルファーは、特別なことをしているわけではない。スコアを崩さない選択を、淡々と重ねているだけだ。

もし今回の内容から、「これならできそうだ」と思えるものがひとつでも見つかったなら、それだけで、次のラウンドは確実に変わり始める。

90台から80台へ──その入口は、すでにあなたのゴルフの中にある。


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