PGAツアー選手がリラックスした雰囲気でラウンドしている動画は、見逃せないコンテンツのひとつだ。
というのも、彼らはレッスンをしているつもりはなくても、何気ない会話の中でトッププレーヤーならではの考え方やコースマネジメントを自然と口にしている。その一言が、アマチュアにとっては驚くほど実践的なヒントになることが少なくない。
ジャスティン・トーマスが人気YouTubeチャンネル「Bob Does Sports」に出演したラウンド動画も、まさにそんな一本だった。
スムージーを飲み、クラブを放り投げ、冗談を言い合う。終始リラックスした空気の中でプレーは進んでいくが、その何気ない会話には、すぐにでもコースで試したくなる考え方がいくつも詰まっていた。
今回は、その中でも特に印象に残った3つのポイントを紹介したい。
すべてのアプローチで「落としどころ」を決める必要はない
アプローチで「まずは落としどころを決めよう」と教わったことがあるゴルファーは多いだろう。
実際、ボールをどこに落とし、どれくらい転がすかをイメージすることは、アプローチの基本のひとつだ。
だから、多くのアマチュアはグリーン周りに行くと、真っ先に「どこへ落とそう」と考える。
もちろん、それは間違いではない。
しかし、ジャスティン・トーマスは少し違う考え方をしている。
動画の中で彼は、「父はどんなアプローチでもランディングスポット(ボールを最初に着地させる地点)を決めて打つ。でも、自分はすべてのショットでそうするわけではない」と語っていた。
なぜなら、ショートゲームには”毎回同じ答え”がないからだ。
ライの状態、芝目、傾斜、ピン位置、使えるグリーンの広さ──。状況が変われば、打つべきショットも変わる。
ランディングスポットを決めることでシンプルに考えられる場面もある一方で、「そこへ落とさなければ」と考えすぎるあまり、本来選ぶべきショットを見失うこともある。
だからトーマスは、「どこへ落とすか」の前に、「この状況ではどんな球が必要なのか」を考える。
低く出して転がすのか、高く上げて止めるのか。それとも傾斜を使って寄せるのか。
ショットが決まれば、ランディングスポット(ボールを最初に着地させる地点)は自然と見えてくる。
アマチュアほど「落としどころ」ばかりに意識が向きがちだ。しかし、本当に考えるべきなのは、そのショットが何を求められているか。
その順番を少し変えるだけで、アプローチの景色は大きく変わるはずだ。
レイアップで考えるべきは「得意な距離」より「苦手な距離」
今回の動画の中で、最も印象に残ったのがこのコースマネジメントの考え方だった。
ジャスティン・トーマスは、「レイアップは狙った距離を残すためというより、自分が嫌な距離を避けるためにすることもある」と話している。
多くのゴルファーは、「100ヤードを残したい」「フルショットで打てる距離がいい」といったように、自分の得意な距離を基準にレイアップを考える。
もちろん、それもひとつの正解だ。
ただ、その一方で意外と見落としがちなのが、「自分が苦手な距離はどこなのか」という視点である。
例えば、50ヤード前後の中途半端な距離が苦手な人もいれば、70ヤード前後のハーフウェッジになると急に距離感が合わなくなる人もいる。
そんなタイプなら、無理に60ヤードを残すより、100ヤード前後まで下げて得意なフルショットを打ったほうが、結果的にピンへ寄る可能性は高くなる。
プロは「どこを残したいか」と同じくらい、「どこだけは残したくないか」を考えてクラブを選んでいる。
次にレイアップをするときは、「得意な距離はどこだろう」と考える前に、「自分が一番ミスしやすい距離はどこだろう」と考えてみてほしい。
その視点が加わるだけで、レイアップの考え方は大きく変わるはずだ。
アドレナリンで「振り急ぐ」ことも計算に入れる
ジャスティン・トーマスは動画の中で、アドレナリンがプレーに与える影響についても語っていた。
ライダーカップやメジャーの優勝争いを経験してきた選手だからこその話にも聞こえるが、この考え方はアマチュアにも十分当てはまる。
アドレナリンというと、「緊張して体が動かなくなる」と考えがちだ。しかし実際には、その逆のことも起こる。
それが、無意識のうちにスイングのテンポが速くなることだ。
ルーティンがいつもより短くなり、切り返しが慌ただしくなる。気付けば手先が動きすぎて、普段と同じスイングをしているつもりでも、飛距離や弾道が変わってしまう。
こうした変化は、プロだけの話ではない。
バーディーパットを沈めた直後。競技で「この一打が大事だ」と感じた場面。自己ベスト更新が見えてきた終盤。そんなときほど、テンポは自分が思う以上に速くなっている。
そんな何気ない場面でも、人は知らず知らずのうちにテンポが速くなる。
「いつも通り振ったつもりなのに、距離が合わなかった」。そんな経験があるなら、その原因は技術ではなく、テンポの変化だったのかもしれない。
だからこそ、ショットに入る前に一度、自分のリズムを確認したい。
ゆったり打つウェッジショットを選んだなら、スイングもゆったり振る。少し気持ちが前に出ていると感じたら、一呼吸置いてルーティンをやり直す。
アドレナリンそのものを抑えることはできない。しかし、自分のテンポをコントロールできれば、ショットの再現性は大きく変わってくる。

まとめ
今回の動画で印象的だったのは、ジャスティン・トーマスがレッスンをしていたわけではないことだ。
仲間とのラウンドを楽しみながら、普段どおりにプレーし、普段どおりに考えていることを口にしている。それだけなのに、その何気ない一言一言には、世界のトッププレーヤーがコースで何を見て、何を考え、どう判断しているのかが詰まっていた。
「落としどころ」より先にショットを考えること。「得意な距離」より「苦手な距離」を避けること。そして、アドレナリンによるテンポの変化までプレーの一部として受け入れること。
どれも特別な技術ではない。しかし、こうした思考の積み重ねこそが、トッププレーヤーとアマチュアの差なのかもしれない。
スイングだけでなく、「どう考えてプレーするか」という視点でラウンドを見てみる。そんな楽しみ方ができるのも、このような動画の魅力と言えるだろう。



