パットが入らないとき、「パターを替えたところで、結局は腕の問題」と考えたことはないだろうか。
ゴルフには昔から、こんな言葉がある。
「大事なのは矢ではなく、射手だ」
つまり、結果を左右するのは道具ではなく、それを使う人の技量だということだ。
確かに、パターを替えただけでストロークそのものが良くなるわけではない。だが、本当にパターは何を使っても同じなのだろうか。
MyGolfSpyの「Most Wanted」パターテストでは、実際のゴルファーによるデータから、使用するパターによって結果に違いが出ることが確認されている。
それでも「結局は腕」と思うなら、PGAツアーのトッププレーヤーはどうだろう。彼らなら、まさに「射手」の技量に不足はないはずだ。
今回登場するスコッティキャメロン「Phantom 9.5R」は、そんなトッププレーヤーたちのパター変更を通して、「自分に合うパターを選ぶことに、本当に意味はあるのか」を考えさせてくれるモデルだ。
パターを替えた直後に勝つプロはいる

プロゴルファーがパターを替え、その直後に優勝した――。そんな話を聞いたことがある人もいるだろう。
なかでも有名なのが、ジム・フューリックのエピソードだ。
フューリックはゴルフショップで39ドルのYes! Golf「Sophia」パターを購入。そのパターを手にツアー選手権を制し、最終的にはフェデックスカップ年間王者にも輝いた。しかも、この39ドルのパターは店主がさらに値引きしてくれたものだったという。
かなり極端な例だが、これは実際にあった話だ。
ただし、ツアープロのパター変更がいつもこれほど偶然に決まるわけではない。
そこで見てみたいのが、キャメロン・ヤングがスコッティキャメロン「Phantom 9.5R」を使うようになった経緯だ。
ヤングはスコッティキャメロンのツアーレップ、ブラッド・クロークとともに、自分のストロークと求める打感にどのパターが合うのかを検討した。
クロークは、ヤングが「Phantom 9.5R」へ移行した当初について、こう説明している。
「彼は以前から、パターに“フロー”を感じたいと考えていました。最初はフェースバランスのマレットから始め、そこから少しずつ調整していきました。そして、自分が求めるトゥの動きを感じながら、思い通りにパターをリリースできるところまでたどり着いたのです」
ここでいう「トゥの動き(トウフロー)」とは、ストローク中にパターヘッドのトウ側が開閉する動きのこと。ヤングは単に「マレットがいい」「スコッティキャメロンがいい」と選んだのではなく、自分が心地よくストロークできるフェースの動きを探していったということだ。
ヤングが「Phantom 9.5R」に替えたのは、2025年のRBCヘリテージだった。
そこから数カ月後、ウィンダム選手権でPGAツアー初優勝。ライダーカップではルーキーとして出場し、日曜日のシングルスマッチでも勝利を挙げた。
さらに2026年には、ザ・プレーヤーズ選手権とキャデラック選手権で優勝。メジャーでも2大会でトップ3に入っている。
もちろん、これらの結果をすべて「Phantom 9.5Rに替えたから」と考えるのは単純すぎる。
ヤングはもともと別のパターを使ってPGAツアーまでたどり着いた選手であり、パッティングの技術そのものが高いことに疑いはない。
それでも興味深いのは、自分のストロークや求めるヘッドの動きに合うパターを探し、「Phantom 9.5R」へ変更したあとに、ツアー初優勝を含む複数の勝利が続いたことだ。
「道具ではなく、使い手の腕」と言ってしまえばそれまでかもしれない。しかし、トッププロでさえ、自分に合うパターを探し続けている。
では、ヤングにとって「Phantom 9.5R」の何が合っていたのだろうか。
コイヴンは「9.5R」に替えた1週間後に優勝

ジャクソン・コイヴンのケースでは、結果が出るまでさらに早かった。
コイヴンはスコッティキャメロン「Phantom 9.5R」に替えたわずか1週間後、3Mオープンで優勝している。
もちろん、こちらもただ新しいパターを手に取ったわけではない。スコッティキャメロンのツアーレップ、ドリュー・ペイジとともに、自分に合うパターを探したうえでの変更だった。
コイヴンは大学時代に「Phantom 9R」を使っていたため、「9.5R」への変更は、パター全体の形状を大きく変えるものではなかった。
原文が注目しているのは、ヘッドではなくネックの変更だ。
そして「9.5R」に替えた翌週の優勝で手にした賞金は、158万4,000ドル。原文は、この金額を引き合いに出すほど、ネックの違いを大きなポイントとして捉えている。
ヤングとコイヴンの事例を見ると、パッティングは単純に「腕か、道具か」の二択ではなさそうだ。
重要なのは、“射手”と“矢”の組み合わせなのかもしれない。
「Phantom 9.5R」は9R、9.2Rと何が違う?

新しい「Phantom 9.5R」は、2026年のPhantomシリーズに共通する設計を多く採用している。
「9.5R」の「R」は、Phantom 9ヘッドをベースにした丸みのある「Rounded」形状を意味する。「9.5R」にはJetネックが採用されている。
ここで重要なのが、このネックの違いだ。
同じPhantom 9系でも、「9R」は最小限のトウフロー、「9.2R」はほどよいトウフロー、そして「9.5R」はJetネックによって、さらに大きなトウフローを持たせた設計になっている。
つまり、「9R」→「9.2R」→「9.5R」の順に、よりトウ側の動きを感じながらストロークしたいゴルファーに対応する選択肢になっている。
先ほどのキャメロン・ヤングが求めていたトウフローと、ここで話がつながる。「9.5R」のポイントは、単に新しいヘッド形状が追加されたことではなく、Jetネックによって異なるフェースの動きを選べるようになったことにある。
フェースには、フルフェースの「Studio Carbon Steel」インサートを採用。打感とボールの転がりの組み合わせは、スコッティキャメロンがこれまで手がけてきたものの中でも特に優れていると感じる。
また、「9.5R」にはヘッド後方まで伸びるフルレングスのサイトラインが採用されている。「9.2R」ではブレードパターに近い印象を持たせるため短いサイトラインになっているが、個人的には「9.5R」の長いサイトラインの方が好みだ。
なお、「Phantom 9.5R」は米国で正式に発表されているが、2026年8月29日時点でタイトリスト日本公式サイトには掲載されておらず、日本での発売については確認できていない。

「Phantom 9.5R」があなたにも合うとは限らない
ここまで「Phantom 9.5R」に替えたキャメロン・ヤングとジャクソン・コイヴンの例を見てきたが、ひとつ注意しておきたいことがある。
彼らに「9.5R」が合ったからといって、あなたにも同じように合うとは限らない。
重要なのは「9.5R」というモデルそのものではなく、ヤングやコイヴンが自分のストロークや求めるフィーリングに合うパターを選んだことだ。
スコッティキャメロンには多くのパターがあり、同じようなヘッド形状でもネックの違いによってフィッティングの選択肢が用意されている。「Phantom 9.5R」ではなく、別のPhantom、あるいは異なるネックを備えたPhantom 9系のモデルが、自分にとっての正解になる可能性もある。
では、自分に合うパターをどう探せばいいのか。
まず確認したいのが、普段のパッティングでどんなミスが出ているかだ。
距離感は合っているのに方向がずれるのか。それともショートやオーバーが多いのか。右や左など、外しやすい方向に傾向はあるだろうか。
大切なのは、ここで自分のストロークを決めつけることではない。普段どんな結果が出ているのかを把握したうえで、異なるタイプのパターを実際に打ち比べてみることだ。
今回の「Phantom 9R」「9.2R」「9.5R」のように、似たヘッド形状でもネックの違いによってフェースの動きは変わる。どのタイプが自分に合うのかは、見た目やプロの使用モデルだけでは判断できない。
だからこそ、試打では構えやすさや打感だけでなく、実際に打ったときの方向性や距離感にどんな違いが出るのかまで確かめたい。
結局のところ、「Phantom 9.5Rがいいパターか」ではなく、「Phantom 9.5Rが自分のストロークに合うパターか」が重要なのだ。

自分に合う1本を見つけるには
できれば、ゴルフショップなどで専門家にストロークを見てもらい、パターフィッティングを受けるのもひとつの方法だ。自分だけで買い替えを繰り返すより、試行錯誤にかかる時間や費用を減らせる可能性がある。
「大事なのは矢ではなく、射手だ」。
そう考えると、パッティングはどちらか一方ではないのだろう。
“射手”の技量と、自分に合った“矢”。その組み合わせが大切なのだ。




