クリーブランドから、新しいウェッジ「RTZ 2」が登場する。
前作「RTZ」が発売されたのは2025年1月。その前の「RTX 6 ZipCore」は2023年1月だった。モデル名だけを見れば「RTZ 2」は比較的早いタイミングでの更新にも感じられるが、クリーブランドは以前から、おおむねこのサイクルでウェッジを進化させてきた。
では、今回の「RTZ 2」は何が変わったのか。
注目したいのは、単なる新モデルへの切り替えではないことだ。グラインドの選択肢から内部設計まで、実際のウェッジ選びに関わる変更が加えられている。
さらに今回は、クリーブランドのウェッジを長く知るゴルファーなら気になる、多くの声が寄せられていた“名作”にまつわる復活もある。
新しい「RTZ 2」は、自分に合うウェッジを選ぶうえで何が変わったのか。ここから、知っておきたい5つのポイントを順番に見ていこう。

#1:名作「588」が復活
クリーブランドの創業者、ロジャー・クリーブランドが2025年3月に自身の名を冠したブランドへ復帰した際、読者から早くも寄せられていたのが「588はいつ復活するのか?」という声だった。
その期待は、その後さらに大きくなっていった。
そして2026年5月、限定コレクターズセットとして登場した「588」に続き、今回の「RTZ 2」で、ついに「588」が通常ラインアップに戻ってくる。
「私はこれまで、何世代にもわたってゴルファーから信頼されるウェッジを設計する機会に恵まれてきました」とロジャー・クリーブランドは語る。
「『RTZ 2』ウェッジには、これまで私たちが学んできたすべてが反映されています。クラシックなウェッジ設計の原則と、現代のパフォーマンスを融合させたものです」
ここで大切なのは、「588」という名前を復活させただけではないということだ。
「RTZ 2」で「588」がどのような形で受け継がれ、現在のウェッジとして何が加えられているのか。そこが今回のモデルを見るうえでひとつのポイントになる。

「588」は復刻モデルではなく、新たなグラインド
今回復活する「588」は、独立したウェッジではない。「RTZ 2」に用意された、新しいソールグラインドのひとつだ。
「588」グラインドは、トゥ側のバウンスを増やし、ヒール側のバウンスを抑えた設計。ミスへの強さを確保しながら、状況に応じてフェースを使いやすくすることを狙っている。
クリーブランドで人気の「Mid」グラインドに近い性格を持つが、「588」はより浅い入射角のスイングに合わせて設計されている。ソール全体には適度なバウンスがあり、トレーリングエッジには控えめなリリーフを設けているため、バンカーでも使いやすい。
スクエアに構えるフルショットやピッチショットとの相性が良い一方、ヒール側には十分なリリーフがあり、フェースを開いたショットにも対応できる。
さらに、アプローチでハンドファーストを強め、トゥ側を下げるように構えて打つゴルファーにとっては、トゥ側に持たせたバウンスも助けになる。
つまり「588」は、昔のモデルをそのまま復刻したものではない。現在の「RTZ 2」の設計をベースにしながら、初代「588」に可能な限り近づけたグラインドという位置づけだ。

#2:「588」の追加で5種類のグラインドに
クリーブランドは長らく、「Low」「Mid」「Full」という3種類のソールグラインドを中心に展開してきた。しかし、ウェッジに求められる使い方が多様になるなかで、グラインドの選択肢も広がっている。
「RTZ 2」では「588」が加わり、原文では5種類のグラインドが用意されている。
選択肢が増えると迷いやすくなるが、大切なのは「どれが一番優れているか」ではなく、自分の入射角やよく使う状況に合っているかだ。
まずは「フルバウンス」から見ていこう。
「フルバウンス(Full)」:入射角が鋭角でバンカーや深いラフでも使いたい人に
「フルバウンス(ハイバウンス)」は、クリーブランドの中で最もバウンスが大きいソールだ。
フルショットでの安定性を重視し、バンカーや深いラフでもソールが働きやすい。特に、クラブを鋭角に入れて打つタイプのゴルファーに向いている。
一方で、さまざまな打ち方に対応する操作性を重視したグラインドではない。フェースを細かく操作することよりも、スクエアに構えてしっかり打ちたい、ダフリへの強さを求めたいゴルファーにとって選びやすいグラインドだ。

「ミッドバウンス(Mid)」:迷ったら基準にしやすいオールラウンド型
「ミッドバウンス」は、さまざまな状況に対応しやすいオールラウンドなグラインドだ。
V字型のソールに、トレーリングエッジのリリーフを控えめに設け、操作性とミスへの寛容性のバランスを取っている。
どちらか一方に特化したタイプではないからこそ、「自分にどのグラインドが合うのか分からない」というゴルファーにとっても基準にしやすい。
極端な使い方を求めず、フルショットからグリーン周りまで幅広く使いたいなら、まず候補にしやすいグラインドだ。
「ローバウンス(Low)」:フェースを使ってアプローチを打ち分けたい人に
「ローバウンス」は、ロブウェッジ向けのグラインドだ。
ヒール、トゥ、トレーリングエッジにリリーフを設け、フェースを開くなど、グリーン周りでクラブを操作してさまざまなショットを打ちたいゴルファーを想定している。
硬いコンディションや、クラブを浅い入射角で入れるタイプとの相性が良く、操作性は5種類の中でも高い。
その一方で、ミスへの寛容性は最も低い。つまり、「やさしさ」よりも、自分でフェースを使って球を操りたい人向けと考えると分かりやすい。
「アダプト(ADAPT-FULL)」:ハイトウの機能と操作性を求める人に
「アダプト」は、ハイトウ形状とフルフェース溝を採用しながら、見た目の違和感を抑えたグラインドだ。
ヒール、ソール、トレーリングエッジにリリーフを設け、さらにリーディングエッジ側にもバウンスを持たせている。
こちらもミスへの寛容性を最優先したタイプではない。浅い入射角で、フェースを開くなどグリーン周りで積極的にクラブを操作したいゴルファーに向いている。
「ローバウンス」も操作性を重視したグラインドだが、「アダプト」はそこにハイトウ形状とフルフェース溝という特徴が加わる。グリーン周りで打ち方を変えながら使いたい人にとって、比較したい2つになる。

#3:『ZipCore』が『ZipCore IQ』へ進化
クリーブランドが近年のウェッジに採用してきた『ZipCore』が、「RTZ 2」では『ZipCore IQ』へと進化した。
『ZipCore』は2020年に登場した、クリーブランド独自の低密度コア素材だ。ホーゼルからヘッド中央〜ヒール側にかけて配置することで、その部分の重量を抑えている。
では、なぜウェッジの内部を軽くする必要があるのか。
ある部分で重量を減らせば、そのぶんを別の場所へ再配分できるからだ。
『ZipCore』では、この重量配分によってヘッドの質量をより中央方向へ移し、それに伴って重心位置も調整できる。
ウェッジはフェースの中央で毎回打てるとは限らない。だからこそ、限られたヘッド重量をどこに配置し、重心をどこへ持っていくかが設計上の重要なポイントになる。
「RTZ 2」では、この『ZipCore』が『ZipCore IQ』へどう進化したのか。次にその中身を見ていこう。

『ZipCore』には、高い融点と強度を持つアルミニウムシリケート系の素材が使われている。その周囲にウェッジ本体を鋳造でき、最大約16グラムの重量を削減できるという。
ウェッジにとって16グラムは小さくない。その重量を別の場所へ再配分することで、ブレード形状を保ちながら、ミスへの寛容性やスピン、打感の向上につなげるのが『ZipCore』の考え方だ。
そして「RTZ 2」の『ZipCore IQ』では、さらに一歩踏み込んでいる。
大きな違いは、すべてのウェッジに同じZipCoreを入れるのではなく、ロフトやソールグラインドごとにコアの形状や重量を最適化していることだ。
つまり、そのウェッジでどんなショットを打つことが多いのかまで考えて、重量配分を変えている。
たとえばロフトの大きいウェッジでは、より高い打点を想定した重量配分とし、コントロール性能とスピン性能を重視。一方、ロフトの小さいウェッジでは、フルショットやフェース中央付近でのインパクトを想定した設計になっている。

#4:「Tour Rack Raw」は、なぜ仕上げモデルより高い?
一見すると、少し不思議に思える。
「Tour Rack Raw」は表面にメッキ仕上げを施さない、いわゆるノーメッキ仕様だ。それなら、メッキ工程がないぶん安くなりそうだが、実際には仕上げを施したモデルより価格が高い。
理由は、「Tour Rack Raw」が単に仕上げを省いただけのモデルではないからだ。
クリーブランドによると、メッキ仕上げのモデルは、最終的にメッキを施した状態でUSGAの基準を満たすよう、あらかじめわずかに小さく成形されている。
一方、「Tour Rack Raw」はメッキを施さないため、最初から最終的なサイズで成形し、ミーリング(切削加工)後の状態でUSGAの基準を満たす必要がある。
そのため「Tour Rack Raw」には専用の金型や製造設備が必要となり、さらに通常の仕上げモデルと比べて生産数も少ない。
つまり価格が高いのは、「仕上げがないから」ではなく、ノーメッキ仕様として別の製造工程が必要になるからというわけだ。
一見すると分かりにくい価格差だが、単純に仕上げを省いたモデルではなく、専用の製造工程や少量生産といった背景がある。
#5:「RTZ」の“Z”には意味がある
「RTZ」の“Z”は、クリーブランドが独自に開発した素材『Z-Alloy(Zアロイ)』を意味している。
従来ウェッジに広く使われてきた8620スチールに代わる素材として開発されたもので、大きな特徴のひとつが低密度であることだ。
素材そのものを軽量化することで、設計に使える余剰重量を生み出せる。これを『ZipCore』と組み合わせることで、ウェッジの形状を大きく変えることなく、重心(CG)をよりフェース中央付近へ配置し、慣性モーメント(MOI)を高めることができるという。
つまり、ブレード形状のウェッジでありながら、ミスヒットへの寛容性を高めるための設計だ。

さらにクリーブランドによれば、『Z-Alloy』は8620スチールより約10%軟らかく、よりソフトな打感を実現するという。
興味深いのは、軟らかいだけではないことだ。クリーブランドは、8620スチールと比較して溝の摩耗を87%低減するとしており、耐久性の向上も特徴として挙げている。
そしてもうひとつ、『Z-Alloy』は錆びにくい素材でもある。そのため、メッキを施さない「Tour Rack」のようなノーメッキ仕様でも、錆を気にせず使いやすいというメリットがある。
まとめ:ロジャー・クリーブランドの復帰が「RTZ 2」に反映
クリーブランドゴルフにとって、この約1年半は大きな動きが続いた。創業者ロジャー・クリーブランドが復帰し、同社はウッドとアイアンから撤退して、ウェッジとパターに注力する方針を打ち出した。
5月には限定版「588 Tour Action」を発売。そして今回の「RTZ 2」では、588の名を冠したグラインドがラインナップに加わった。
ロジャー・クリーブランドの復帰は、単に象徴的なものではない。製品開発にも実際に携わっており、クリーブランドは「RTZ 2」のソールを「Roger Cleveland Signature Grinds」と呼んでいる。
発売日・価格・ラインナップ
日本では、クリーブランド「RTZ 2 ウェッジ」は2026年9月12日に発売予定。仕上げは「ツアーサテン」「ブラックサテン」に加え、特注のノーメッキ仕様「ツアーラック」の3種類が用意される。
メーカー希望小売価格は、ツアーサテンとブラックサテンが1本27,500円(税込)。ツアーラックは4,400円(税込)の追加料金となり、1本31,900円(税込)となる。
標準シャフトは「ダイナミックゴールド」「N.S.PRO 950GH neo」「N.S.PRO MODUS³ TOUR 115」の3種類。
ツアーサテンでは46度から64度までをラインナップし、グラインドは「Mid」、「Full」、「Low」、「ADAPT-FULL」、「588」の5種類。ただし、すべてのロフトですべてのグラインドを選べるわけではない。たとえば「588」は56度、58度、60度、「Low」は58度と60度、「ADAPT-FULL」は54度、56度、58度、60度、64度に設定されている。
※ブラックサテン、ツアーラックは、ツアーサテンとはロフト・グラインドの展開が異なる。

では、5種類のグラインドから何を選ぶ?
「RTZ 2」で悩ましいのは、性能そのものよりも、5種類あるグラインドからどれを選ぶかかもしれない。
スクエアに構えてフルショットすることが多いのか。フェースを開いてアプローチすることが多いのか。入射角は鋭角なのか、それとも浅いのか。よくプレーするコースは地面が硬いのか、軟らかいのか。ウェッジに求めるものによって、適したソールは変わってくる。
たとえば、寛容性を重視するなら「Full」、迷ったときのオールラウンドな選択肢なら「Mid」。硬いライからフェースを開いて使いたいなら「Low」、さらに操作性を求めるなら「ADAPT-FULL」が候補になる。
そして今回加わった「588」は、単に名器の名前を復活させただけではない。比較的浅い入射角のゴルファーを想定しながら、スクエアに構えたショットでの安定感と、フェースを開いたときの使いやすさを両立させる選択肢として加わっている。
つまり、「RTZ 2」を選ぶときに見るべきなのは、どのグラインドが一番優れているかではなく、自分がウェッジでどんなショットを打つことが多いかだ。
「588が復活したから」という理由だけで選ぶのも面白い。
しかし、せっかく5種類まで選択肢が広がったのなら、自分の入射角、よく遭遇するライ、フェースの使い方まで考えてソールを選ぶ。そこに今回の「RTZ 2」の本当の面白さがあるのではないだろうか。



