・キャロウェイから「プレシジョン・テクノロジー」搭載の「Chrome Soft(クロムソフト)」3モデルが発売

・「クロムソフト」、「クロムソフト X」、「クロムソフト X LS」のすべてが一新された

・価格は、1箱49.99ドル


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精密技術を駆使して製造されたキャロウェイ「クロムソフト」シリーズ。

MyGolfSpyの愛読者なら、キャロウェイの「クロムソフト」と聞いて思い浮かぶ言葉や内容ではないかもしれないが、キャロウェイは自信を持って「一貫性の高い(欠陥のない)」ゴルフボール製造技術の向上に取り組んでいると言っている。

その証拠に、2022 年「クロムソフト」、「クロムソフト X」、「クロムソフト X LS」すべてのボール箱に「Precision Technology(精密技術)」のロゴが印刷されている。


逆転劇

キャロウェイは、CEOであるチップ・ブリューワー氏の下、逆転劇を演出した。その逆転劇とは、モンゴルに古くから伝わる事柄で言う「逆転の発想」。つまり今回のことを例えて言うならば、「弱さを強さに変える」そして「競合他社を打ち負かす」ということ。

蒸し返すつもりはないが、品質管理の不備により、その話題の多くが同心性の問題で持ちきりだったキャロウェイが、今「CO(オフセンターコア)」また「同心性」を数値化しようと懸命の努力をしている。

正直に言おう。全くの予想外だった。


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同心性の問題

私たちがロボットによるボールテストを開始して以来、すべてのゴルフボールが品質的な一貫性を持って生産されているわけではないことを常々お伝えしてきた。

『Ball Lab(ボールラボ:「品質」と「一貫性」の調査)』では「品質の一貫性」の定量化は可能だということを証明しており、今回キャロウェイは実際のパフォーマンスへの影響を数値化することに協力してくれた。

それでは、キャロウェイから共有されたデータから説明しよう。

キャロウェイは、6箇所の異なるインパクトポイントで「同心性の問題」が見られたボールをテストしたところ、7番アイアンでボール初速が1.2m/sも異なることがわかった。

これはまだ序章に過ぎない。

さらに、打ち出し角は2.1度、スピン量は1,200 rpm、サイドアングル(打ち出し方向)は2.6度、サイドスピン量は1,204rpmと大きく異なる。

このキャロウェイのデータによると、コアが中心から外れている、またはレイヤー(層)に欠陥があり一貫性のない場合、1つの箱に6種類のゴルフボールが入っているようなものだ。

ウェッジは多様性を必要とするが、ボールはというと…多様性はそれほど必要ない。

その結果、キャリーが約5ヤード伸び、左右のばらつきは17ヤード以上にもなる。キャロウェイによると、「グリーンを捉えるかそうでないかの差」に匹敵するというが、間違いなくこれは大きな問題だ。また、ドライバーを使ったロボットテストでは、フェアウェイの真ん中と「白杭を超える(OBになる)」ほどの差が見られた。

まるでリサイクルボールのようだ。


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オフセンター(コアが中心から外れた)ボール好きには、打数が増えて良いかもしれないが…、それは冗談として。

ここにはいくつかのニュアンスの違いがある。実際「同心性のズレ」の影響は、いくつかの要因が関係する。どれだけの重量がどの程度の距離をシフトしたか、またボールのどの位置でシフトしたか(中心付近と周囲方向)など。

つまり、中心から外れたコア、同心性のズレなど名称は何であれ非常に重要な問題であり、もはやこの問題を提起しているのは私たちだけではない。

繰り返すが、これらのデータは「キャロウェイ」から提供されたものだ。

同社はまた、私たちが伝えたようとした過去の問題を認めている。ゴルフはさまざまな要素が絡み合うスポーツであることからも、レイヤー(層)の問題から引き起こされるパフォーマンスの影響に気付かない可能性は大いにあり、おそらく、その時に起きたミスショットをボールのせいにすることもないだろう。

それは起こる、起こらないの問題ではなく、ボールの一貫性は問われなければならない。


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フルスロットル

キャロウェイが2022年「クロムソフト」ラインナップの発売に向けて、5,000万ドルを費やして改良した工場がついに日の目をみた。コアを製造する機械はどれも数年以上前の古いものはなく、更に「3D X線」などの技術が加わわり、最新のゴルフボール工場を手にした。

改善の“コア(中心)”は『3D X線技術』を導入した。このテクノロジーを導入したことにより、製造中のすべてのボール内部(コアの位置やサイズ、中間層やカバーの厚み等)をチェックすることが可能になり、コアが中心から外れた規格通りでないボールを事前にはじくことができるという(もちろん、機械の精度も向上し、より正確に中心にコアを配置できるようになった)。

新世代「クロムソフト」では、コア以外にも「X線検査」を拡張した。これですべてのレイヤー(層)の同心度をデジタル高解像度で確認(および測定)することが可能になった。

完璧な製造環境の下では、不良ボールが製造されることはない。次は不良ボールがゴルフバッグに入らないようにすること。キャロウェイのX線技術は、出荷前のチェック機能として役立つのはもちろん、より厳しい精度や製造能力の向上により、製造上の欠陥数を大幅に減少させることに成功した。


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キャロウェイが他の領域(重量、直径、コンプレッションの一貫性)での品質管理にどの程度取り組んでいるかは分からないが、すべての分野で改良に努めていると述べているため、これに関わるいくつかの点に触れておこう。

まず、同心性の問題は重量やコンプレッション(硬度)などの不一致よりも、少なくともショットごとのパフォーマンスに大きな影響を与える。

第二に、ゴルフボールの品質は単体で問題になることはない。通常、品質のある側面が向上すると、結果として他の側面も向上する。それに関しては今年の初めに『Ball Lab』で整理しようと思うが、キャロウェイは大手メーカーとして品質問題に対して正しく取り組んでいるように見えるし、そう述べている。

繰り返すが、これは予想外の展開だった。


PGAツアーでの活躍

確かに、キャロウェイのボール部門は絶好調だ。ザンダー・シャウフェレがオリンピックの金メダルを獲得し、ジョン・ラームがテーラーメイドから「クロムソフト X」に移して全米オープンで優勝し、フィル・ミケルソンが全米プロゴルフ選手権で優勝した。

このように、同社はボール部門で史上最高のシェアを獲得。業界全体のサプライチェーンの問題を考えると指摘する点はあるかもしれないが、キャロウェイのボール部門は前世代とは一線を画す新たなラインナップを武器に2022年に向けて勢いを増すと言っても過言ではない。


2022年キャロウェイ「Chrome Soft(クロムソフト)」

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2022年モデルは、標準「クロムソフト」が3ピース構造になる(最後の2世代は4ピースだった)。同社によると、新ボールはよりボール初速が向上した(そして飛距離が伸びた)が、初速向上のためにコンプレッション(硬度)を上げる必要はなかったという。

キャロウェイによると、ボール初速の向上は新しい「超弾性ソフトファーストコア」によるものだという。柔らかい素材を使って初速をアップさせることは可能だが、ゴルフボールの世界では「ソフト」と「初速」は真逆に位置する。

「ソフトボール」の話は既にご存知だろうが、通常コアが大きいほど初速が出るため、新作「クロムソフト」ではマントル層を1つ削除することでコアの拡大を図った。

「クロムソフト」はその名前の通り柔らかいが、今回の新モデルはさらに柔らかくなっている。私たちの測定では、2020年モデルのコンプレッション(硬度)は平均75だったが、2022 年版「クロムソフト」の予備測定では、コンプレッションは約 70と計測された。

これらの数字から見て、「クロムソフト」が中ヘッドスピードのプレーヤーに最適(楽しんでプレーできる)だと言える。ただし、高ヘッドスピードプレーヤーはボールを過度に潰して初速を失うリスクがある。標準「クロムソフト」のPGAツアーでの使用率が事実上ゼロであるのはそのためだ。


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その他の改良ポイントを挙げるとすれば、前作「クロムソフト」と比較してフルショット時の低スピン化(〜150 rpm)と、より貫通力のあるボールの飛びを可能にする空気抵抗の少ないディンプルデザインである『ヘックス・エアロネットワーク パターン』が採用されたこと。

これらは完全にゴルファーのタイプに依存するが、「貫通力の高さ」が低弾道鍵となるならば、低スピンボールに低スピンを組合せることで「飛距離」のために「操作性」を犠牲にする可能性がある。

パフォーマンス評価の一環として、キャロウェイは「パー4メトリック」を使用している。これは、一般的なパー4でドライバーとアプローチショットで得られる距離を出すやり方。新作「クロムソフト」を使うと、これら2つのショットで5ヤード強の飛距離が伸びるという。

驚くほどの距離ではないが、飛距離の限界に直面している現在では、ドライバーとアプローチ合わせて飛距離が5ヤード伸びたことは決して過小評価できない。

私が「クロムソフト」のファンではないことは周知の事実だが、「クロムソフト」の愛用者なら新しいボールをきっと気に入るはずだ。


2022年キャロウェイ「Chrome Soft X(クロムソフトX)」

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「クロムソフト X」は、ツアーで最も使われるキャロウェイのボールだが、それにもかかわらず、小売業界ではそれに見合ったシェアではないため、今回の新ボールでその流れを変えたいとキャロウェイは望んでいる。

「クロムソフト」との比較基準として、標準モデルが大幅に改良されたとすれば、「クロムソフト X」は微調整といったところ。ツアープレイヤーが使用する場合、これは珍しいことではない。言わば「改善はするが、改変はしない」という意味だ。

そのため、新作でも変わらず「4ピース構造」が採用されている。同社によれば、新しいコアの配合により、スピン量を保ちながら、0.31m/sのボール初速を上げることに成功したという。

また、新作「クロムソフト X」の方がわずかではあるが柔らかくなったことを考えると、これは注目に値する。それ以外はツアープロが望んだように前モデルとほぼ同じだ。

さらに2点付け加えたい。まず、「クロムソフト X」は「ソフトボール(柔らかいボール)」ではない。コンプレッションが90半ばあるため、タイトリスト「ProV1x」に似ており「硬い」部類に入る。

2つ目のポイントは、同社がスピン量を中程度だと謳っている点。確かに、カークランド「Performance Plus(パフォーマンスプラス)」やミズノ「RB Tour」シリーズのようなかなりの高スピンボールも存在する。しかし、実際にツアーでプレーされるボールに関しては、スピン量は高めだ。

そのため、中スピンボールを探しているゴルファーは、「クロムソフト X LS」の方が適しているかもしれない。


2022年キャロウェイ「Chrome Soft X LS(クロムソフトX LS)」

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ということで「クロムソフト X LS」に移ろう。

「クロムソフト X LS」は 昨年ラインナップに追加された。初代モデルの販売期間は1年未満だったが、新モデルにも同じテクノロジーを搭載しているため特に問題はない。

「クロムソフトX LS」は4ピース構造で、低スピンボールに分類されているが(標準「クロムソフトX」よりも明らかに低スピン)、テスト結果では初代「X LS」の方が確実に中スピンの特徴が出ていた。繰り返しになるが、それは悪いことではない。単に、ボールに期待する特性を知ってもらいたいだけだ。

新バージョンでは、いくつかの微調整(これまでとは異なるウレタンをカバーの素材を採用)が行われより魅力あるボールに仕上がっている。まず、2022 年「クロムソフト X LS」は前作より「柔らかい(ソフト)」。独自の測定では、初代モデルのコンプレッション(硬度)は100辺り。

一方の新モデルは、「クロムソフト X(コンプレッション94-96)」にはるかに近くなった。また、他の新作「クロムソフト」と同様に、新しいコアデザインにより初速の向上が望める。キャロウェイによると、ボール初速が0.36m/sアップしたという。


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「クロムソフト X LS」は、元々市場で最速のボールの1つだった。その上でさらに柔らかくボール初速が向上というなら、スピンをカットし、飛距離が欲しい人にとって興味深い選択肢になることだろう。

標準「クロムソフト」と同様に、「クロムソフト X LS」のスピン量はクラブ次第で約120〜130rpm減少する。個人的には「クロムソフト」でのスピン量の削減はあまり好きではないが、「X LS」ではアリだ。これにより、「クロムソフト X LS」の特性は、真の低スピンスペックに近づくはずだ。

さらに「ソフトカバー」が一新されたことは非常に興味深い。グリーン周りでより多くのスピン量が期待できる。一方で低スピン愛好家には最大の不満になるかもしれない。タイトリスト「Left Dash(レフトダッシュ)」の愛用者からは、グリーン周りで思うほどスピン量が出ないという声を聞く。

その一環として、テーラーメイドは「TP5x」を部分的に柔らかくして、グリーン周りでのスピン量を加えた。キャロウェイも同じ意図があったと思うが、初速を犠牲にすることなくグリーン周りのスピン量を改善できたら特別な強みになる可能性がある。


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今後の予測

標準「クロムソフト」は小売店で引き続き好調を極め、低コンプレッションウレタン市場をリードすると、私は予測する。

「クロムソフト X」と「クロムソフト X LS」については何とも言えない。

これまで「クロムソフト X」に惹きつけられたプロはさほど多くない。商品名から「ソフト」を取らなかったことは致命的だったかもしれない。私は「クロムソフトツアー」自体は好きだが、コンプレッション(硬度)が90半ばのボールで「ソフト」と明示するのはおかしいし、誤解を招いてもおかしくないと思っている。

とはいえ、キャロウェイがツアーで勝利を獲得し続ければ、小売業の運命が変わることもあり得る。精密なゴルフボール製造技術を持つ業界のリーダーとしての地位を確立するかもしれないが、私の経験では、ゴルファーの記憶は簡単に消えるものではなく、過去の過ち(品質問題)は常に付きまとうだろう。


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そして、これは私個人の考えになるが、彼らはフィッティング(ボールもクラブも)の現実を理解しており、ボールラインナップの選択肢がまだ限定的であることを考えるとキャロウェイにはまだタイトリスト「Pro V1」に対抗するだけのボールを持っていない。

新作「クロムソフト」のコンセプトや理念をわかりやすく伝えると「Better for the Best、Better for Everyone(より良いものを、より良くすべての人に)」の言葉通り、このボールは一般のゴルファーをターゲットにしているのだろう。

それでも、キャロウェイのボール工場の改善は真実であり、製品の改善は着実に形となって現れるはずだ。

同社が今シーズンタイトリストの売上を上回ることはないだろうが、「品質」と「精度」に重点を置くことで、ゴルファーや競合他社の注目を集めることができるかもしれない。

2022年キャロウェイの新作「クロムソフト」は、ホワイト、ホワイト/レッドの「Truvis(トゥルービス)」、イエロー/ブラックの「Truvis」、ホワイトとイエロー「トリプルトラック」で販売される。「クロムソフト X」と「クロムソフト X LS」は、ホワイト、ホワイトとイエローの「トリプルトラック」で展開。

2022年「Chrome Soft(クロムソフト)」シリーズの価格は、一箱49.99ドル。1月28日に発売される。(アメリカ)

日本発売は、2月18日(予定)