スリクソン「ZXシリーズ」の「ZX5」と「ZX7」ドライバーと「ZX Mk II」ドライバーは何が違うのか?またどの程度の性能差があるのかデータを比較し検証してみよう。

「ZX Mk II」シリーズはスリクソン曰く、「ZX」シリーズの改良版「Mark II」の略称で第2世代に当たり、「ZX5 Mk II LS」という新顔も登場した。このLSモデルについても後程詳しく見ていこう。

では、まずこの2つのシリーズの共通テクノロジーから。


共通テクノロジー

『リバウンドフレーム(REBOUND FRAME)』


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『リバウンドフレーム』は、スリクソンが「ZXシリーズ」ドライバーで「ボール初速世界No.1」を最大の目標にしたテクノロジーだ。

剛性の高いエリアと低いエリアを交互に配置した4層構造によって、ボールをとらえたフェースは大きくたわみ、反発性能を大幅にアップさせるという。

スリクソンでは、このたわみを「トランポリン」に例え、「柔らかい部分と硬い部分のコンビネーションにより、全体がトランポリンのようになる」とR&Dバイス・プレジデントであるジェフ・ブランスキー氏は説明している。

この『リバウンドフレーム』は視認できるテクノロジーではないが、「ZX Mk II」ドライバーでの新「リバウンドフレーム」構造でかなり高度な技術が投入れているという。


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その結果、前作に比べて「高CORエリア(COR値が少なくとも0.80以上あるエリア)」が10%も拡大しているとのこと。この数字は最低でも0.894m/sの初速アップに変換される。

次に各モデルの特徴を見てみよう。


各モデルの特徴

「ZX5」ドライバーは、高弾道でより「寛容性」を重視したタイプ(スリクソンによるとMOI(慣性モーメント)は5,000 g/cm以上)。また、『アジャスタブルホーゼル』と(「Z585」とは異なり)重心を低く深く設定する『リアウエイト』を搭載している。

一方、「ZX7」ドライバーは、低弾道で「方向性」を重視する上級者向け。シングル手前のハンディキャッププレーヤーに対しても十分な寛容性がある。

またこの両モデル(「ZX5」「ZX7」)ともに、低・深重心を達成するために、「Z85」シリーズよりカーボンクラウンを15%大きくしたのが特徴だ。


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そして、「ZX」シリーズの改良版「ZX Mk II」ドライバーの「ZX5 Mk II」と「ZX7 Mk II」は、長年に渡る特徴を踏襲しており、「ZX5 Mk II」が高弾道でより「寛容性」があるモデル、「ZX7 Mk II」は低弾道で上級者向け。そして新たに登場した「ZX5 Mk II LS」は低スピンが特徴。


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「ZX5 Mk II」ドライバーは、より「寛容性」が高いモデルでややドローバイアスという設定。低・深重心で8gのシングルウエイトを後方部に配置。また、必要に応じてウエイトを交換することで、バランスを変更することも可能となっている。

一方、「ZX7 Mk II」ドライバーは、見た目がよりコンパクトで、ヒールとトゥの『ソールウエイト』が交換可能。真っ直ぐからややフェードの弾道になる低スピン・中弾道ドライバーとして位置付けられている。

この両モデル(「ZX5 Mk II」「ZX7 Mk II」)とも調整可能な『アジャスタブルホーゼル』を搭載。ロフト角、ライ角、フェースアングルを徹底的に調整できるのは良いが、ちゃんと調整できるかは正直微妙だ…。


そして新顔の「LS」モデルに話を移すが…


「『ZX5』と『ZX7』は、ツアープロが求めるものに沿っておらず、飛距離を追求していなかった」とブランスキー氏。「そこで、このモデル(「LS」)では重心を前側にシフトさせ、できるだけスピン量が減るようにした」。

「ZX5 Mk II LS」はウエイト配置以外、標準の「ZX5」と全く同じヘッドになっている。「ZX5」ではウエイトポートが後方にあるが、この「LS」モデルはウエイトポートと8gのウエイトがフェースの真後ろに配置されており、重めのシャフトが装着されている。

「スピン量が減ればサイドスピンも減り真っ直ぐ飛ぶようになる。今では我々のフィッティングの多くは、『LS』モデルから始まる」。(ブランスキー氏)

一般的には、ヘッドスピードが速ければ速いほど、この「LS」ドライバーのメリットを受けられるようになるだろうが、どのみちヘッドスピードが速いということは、ボール初速も速くなるということになり、普通はよりスピン量も多くなってしまう。

「プロくらいのボール初速になると、ボールを上げるためにそこまでスピン量はいらなくなる。だからと言って、低スピンドライバーのメリットを得るためにブルックス・ケプカや松山英樹にならなければいけないというわけではない。もし使っているクラブのシャフト硬度がSなら、『LS』ヘッドも頭に浮かべてよいだろう」。(ブランスキー氏)


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我々とのインタビュー中、ブランスキー氏は、スリクソンの“改善”に対する重要性も語ってくれた。

「我々はパフォーマンスを高めて革新を継続させている。とはいえ、目の前にあるものを追求したり、他と差別化するためだけに“突飛なもの”を追い求めているわけではない。我々は“市場でトップではない”し、単に“新しくて違うもの”を創りたいがために、そのようなものを生み出しているわけでもないのだ」と。

では、スリクソンがどのようなものを生み出してきたのか、また「ZXシリーズ」から「ZX Mk IIシリーズ」へとどのような進化を遂げているのか?データを比較してみよう。

まずは、2020年モデルのスリクソン「ZX5」と「ZX7」のデータがこちら。

スリクソン「ZX5」&「ZX7」ドライバーデータ

モデル名ボール初速
(m/s)
打ち出し角
(度)
スピン量
(RPM)
高さ
(m)
落下角度
(度)
キャリー
(ヤード)
トータル飛距離
(ヤード)
Srixon「ZX5」62.8014.202,6559.6639.0231.50238.60
Srixon「ZX7」62.0414.502,6839.6639.1228.00241.70

そして、「ZX」シリーズの改良版2022年モデル「ZX Mk II」シリーズの各モデルのデータがこちら。

スリクソン「ZX Mk II」ドライバー各データ

モデル名ボール初速
(m/s)
打ち出し角
(度)
スピン量
(RPM)
高さ
(m)
落下角度
(度)
キャリー
(ヤード)
トータル飛距離
(ヤード)
Srixon「ZX5 Mk II」63.7013.552,4928.6336.58236.27249.48
Srixon「ZX7 Mk II」63.5413.602,3628.3036.58238.53253.21
Srixon「ZX5 Mk II LS」63.5813.362,1957.8433.95241.20255.40

このデータを(LSモデルを除き)比較して見ると、「ボール初速」においては「0.9~1.5m/s」のアップ、それに伴い、「キャリー」は「4.77~10.53ヤード」、「トータル飛距離」は「10.88~11.51ヤード」伸びていることがわかる。

ではこの結果を踏まえて、各モデルを他社と比較して、どの程度に位置しているのかを見てみよう。


「飛距離「寛容性」「正確性」「総合」と4つのカテゴリーを比較した結果がこちら。

スリクソン「ZX5」&「ZX7」ドライバー各順位

モデル名飛距離寛容性正確性総合
Srixon「ZX5」22位37位17位26位
Srixon「ZX7」24位14位27位20位

※(「2022年ドライバー製品テスト」38モデルを比較した順位)


スリクソン「ZX Mk II」ドライバー各順位

モデル名飛距離寛容性正確性総合
Srixon「ZX5 Mk II」17位20位27位26位
Srixon「ZX7 Mk II」9位11位11位10位
Srixon「ZX5 Mk II LS」3位9位14位5位

※(「2023年ドライバー製品テスト」30モデルを比較した順位)


この結果を見て、みなさんはどう思っただろうか?


ではここで、スリクソンのブランスキー氏が述べていたことを振り返ってみる。

「『ZX5』と『ZX7』では、「飛距離」を追求していなかった」(ブランスキー氏)、確かに結果は平均以下。ゴルファーがクラブを購入する時の一番の決め手となる飛距離がこの結果では納得がいかない。

さらに「寛容性」においては、「寛容性」を重視したという「ZX5」が37位に対し「方向性」を重視する上級者向けの「ZX7」が14位と「ZX7」の方が「寛容性」が高いという結果に。

「ZX5」と「ZX7」モデルを総合的にみると、平均をやや上回る~平均を下回るという結果だった。ということは、スリクソンがアピールする「驚愕な飛距離と易しさ」は厳しく言えばこの程度のレベルだということだ。


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しかし、ブランスキー氏のスリクソンの“改善”に対する重要性で述べた言葉は、「我々はパフォーマンスを高めて革新を継続。新しくて違うもの”を創りたいがために、また他と差別化するためだけに“突飛なもの”を追い求めて生み出しているわけでもない。」というものだった。

さらに、「我々は市場でトップではない」と言っている。ブランスキー氏が述べたことは、我々は、“我々のやり方で勝負している”のだと言わんばかり。

確かに、その「パフォーマンスを高めた革新的技術の継続」は、「ZX Mk II」シリーズにおいて驚くほどの変化はないものの、しっかりと結果を出していると言えるだろう。

では、この2シリーズはいったい何が違うのかを見てみよう。


スリクソン「ZX Mk II」の3モデルと「ZX5」「ZX7」モデルとの大きな違い

「ZX Mk II」シリーズ3モデルと「ZX5」「ZX7」モデルとの大きな違いは、「新チタンクラウン」と「カーボンクラウン」にある。


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驚くべきことに、各メーカーが「チタン」から「カーボン」へと移行する中、スリクソンは「チタンクラウン」を採用した。

カーボンと言えばテーラーメイド「ステルス」、それに続き、キャロウェイ「パラダイム」もクラウンのみならずボディーまでの360°にカーボンを採用、そして保守的なPINGですら、「G430 LST」でカーボンクラウンを採用している。

そんな中、なぜスリクソンは「チタンクラウン」を採用したのだろうか?各メーカーが「カーボン」素材を採用し結果に繋げていることを考えると、スリクソンが後退したかのように思えてしまう。

遡ること、スリクソンが「チタンクラウン」から初めて「カーボンクラウン」を採用したのは、2018年のこと。それまでボディー/クラウンに採用していた「8AL-2Vチタン」から「CFRPコンポジット」へと素材を変更し、2018年モデルの「Z585」「Z785」ドライバーで『ライトウェイトカーボンクラウン』テクノロジーを搭載している。

以降同社はこの素材を採用してきたが、2022年モデル「ZX Mk II」シリーズで「Ti-811Plus」素材を採用したのだ。


なぜ「チタン」へと回帰したのか?

これについて、ブランスキー氏は、「新チタンクラウン」は、フェースをたわませてボール初速を向上させるスリクソンの第3世代『リバウンドフレーム』において重要な役割を果たすという。

「我々が優先すべきはボール初速だ。あらゆる分析とテストで分かったことは、剛性プロファイルを見るとインパクト時にクラブヘッドのどこが硬くなり、どこが撓むのかということであり、チタンを採用した方がやや初速がアップするということだった」と述べた。

ドライバーヘッドの設計では「ウエイト」は重要な課題であり、「カーボン」は常に「チタン」より軽量なので、この決断は驚くべきことだ。

一方で、スリクソンの開発陣は、XXIO(ゼクシオ)の『スターフレーム構造』を採用し、チタンクラウンを可能な限り薄くしている。

「『スターフレーム』は必要な強度を保ちながらも、クラウンを可能な限り薄く軽くする独自の手法」だとブランスキー氏。「これを採用したところで、その差はたったの1、2グラム。これだと(カーボンの採用は)ボール初速と引き換えにしたくなるほどの十分な軽量化にはならない」。

確かに、「ZX Mk II」シリーズにおいて「ボール初速」「キャリー」「飛距離」は確実に進化を遂げていることがわかる。

「ZX5 Mk II」ドライバーに関してはそれほど感じないものの、「ZX7 Mk II」に関しては、飛躍的に進化を遂げている。


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そして、やはり注目は「ZX5 Mk II LS」ドライバーだろう。「正確性」以外は素晴らしいパフォーマンスを見せている。

だが、このモデルは当然のことながら誰しもが合うわけではない。ブランスキー氏が述べたのは、このモデルの対象はヘッドスピードが速ければ速いほど、メリットを受けられるだろうということだった。

ドライバー市場において、“上座”の枠は限られている。その枠は「テーラーメイド」、「キャロウェイ」、「タイトリスト」、「PING」、そして規模は小さいが「コブラ」で、ほぼ埋まってしまっている状況で、他社にとって残された“イス”は希少だ。

挑戦者という立ち位置のブランドにとって、ここに変化を起こすことは不可能ではないが非常に困難。そして、このことは特にスリクソンにも当てはまる。

確かにシリーズに低スピンドライバー(LSモデル)を追加したことは素晴らしいが、『リバウンドフレーム』の改良、新形状、高CORエリアの拡大では、大きな注目を集めることにはならない。

さらに、「ZX5 Mk II LS」が「ゲームチェンジャー(流れを一気にかえる存在)」にならない限り、スリクソンが表舞台に立てるのかはなはだ疑問だ。


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「日本のメーカー、そしてリスク回避型企業として、誇大なアピールはしない」とブランスキー氏。「しかし、今回のドライバーは、マスターズでも全英オープンでも勝っているし、LPGAのメジャーでも3勝した。ツアーでは十分に実証済みだろ?」。

2022年ブルックス・ケプカはツアー限定の「ZX7」低スピンモデルを使用していたが、2023年 「マスターズ」では、スリクソン「ZX5 Mk II LS」 ドライバー(10.5度)、シャフトはディアマナ D-LIMITED(重さ70g台、硬さTX)を使用。トップのジョン・ラームとの差は4打で、見事2位を獲得している。

そしてクラブにうるさい松山英樹は、「ZX5」を気に入ったようだが、コースに応じて「ZX5 Mk II」ドライバーを使用するなど、その都度変更を行いながら使用しているようで、同じく2023年 「マスターズ」では16位に終えている。

スリクソンの「リスク回避型企業として、誇大なアピールはしない」というのは、ある意味ではPINGと似ているように思う。現状ツアーでは十分な実績を残しているとしても、ドライバー市場のトップは盤石で入り込む余地はほとんどない。

今後、スリクソンのドライバーが表舞台に立てるとは現段階では思えないが、2022年に「LS」モデルが誕生したように、スリクソンは新製品発表のサプライズが上手いメーカーでもある。

「ZXシリーズ」から「ZX Mk IIシリーズ」へと確実に進化していることから、スリクソンならではのやり方で、また今後の松山英樹の活躍にも期待が膨らむ。


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