スリクソン「ZX Mk II」ドライバーの注目ポイント

・低スピンモデルを含め3モデルが登場

・新しいフィッティングプログラム「QuickFit(クイックフィット)」がスタート

・メーカー希望小売価格は499.99ドル(約66,000円)で発売は1月20日


スリクソン「ZX Mk II」ドライバーは、色んな意味でスリクソンそのものを完璧に反映している。

今回の話は、革新的なテクノロジーやフェースの新素材、そして魅力的なキャンペーンなどの話ではない。確かなパフォーマンスや、実際に違いをもたらしてくれる段階的なテクノロジーの進化について、そして驚くほどのコストパフォーマンスについて興味があるゴルファーは、是非とも読み進めて欲しい。

今回の新作は、ドライバーテクノロジーの変化もさることながら、“新顔”も登場する。

とはいえ、驚くほどの変化はない。それはスリクソンのやり方ではないからね。その理由については後程説明する。では、どのモデルがあなたの目に留まるか?なかなか難しい質問だ。答えを探している暇はないので早速各モデルを見ていこう。


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スリクソン「ZX Mk II」ドライバー

スリクソンが2021年に「ZX」シリーズをリリースしたのは、旧「Z」シリーズ登場の10年後のこと。「ZX Mk II」はスリクソン曰く、「ZX」シリーズ改良版(Mark II)の略称で第2世代に当たる。そのままだよね。

新ドライバーシリーズは、お馴染みの2モデルと異端な1モデルで構成されている。「ZX5」と「ZX7」は長年に渡る特徴を踏襲しており、「ZX5」が高弾道でより「寛容性」があるモデル、「ZX7」は低弾道で上級者向け。そして新たに登場した「ZX5 LS」は低スピンが特徴だ。

何々、スリクソンさん、気になるじゃないの。


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「『LS』はツアー主体のモデルだ」と我々に語ってくれたのはスリクソンのR&Dバイス・プレジデントであるジェフ・ブランスキー氏。我々のツアープロの一部は、ドライバーに可能な限りの低スピンを求めている。彼らの打ち出し条件において、低スピンは“さらなる飛距離への道筋”なのだ」。

ここでブルックス・ケプカが頭に浮かんだなら、それは半分正しい。ケプカは昨年の全米オープン直前にスリクソンのドライバーとボールを変更。

スリクソンによれば、現在のケプカはツアー限定の「ZX7」低スピンモデルを使っているようだが、クラブにうるさい松山英樹は新しい「ZX5 LS」を気に入ったようで試合に投入しているようだ。


カーボンよ、何処へ行ったのか?

スリクソンが、業界のもう一つの流れに抗ったのは評価したい。新しい「ZX Mk II」ドライバーシリーズには「カーボン」が全く採用されていないのだ。これは一見するとテクノロジー的には“後退”しているように見えるので、驚くべき(勇気ある)転換と言える。

「期待通りの“うるさ過ぎない”ツアーサウンドに回帰する必要があった」とブランスキー氏。「打音に影響するだろうし、軽量化にも、そして全体的な剛性にも影響するだろうからね」。

スリクソンドライバーの直近2世代は、「カーボンクラウン」を特徴としていた。我々の2022年『Most Wantedテスト』において、スリクソンドライバーは信頼感があり平均以上のパフォーマンスを見せたが、テスターたちはその打音と打感に困惑。一方、今回の新モデルは、非常に控えめな音になっている。


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また、ブランスキー氏によると、「新チタンクラウン」は、フェースをたわませてボール初速を向上させるスリクソンの第3世代『リバウンドフレーム(Rebound Frame)』において重要な役割を果たすという。

「我々が優先すべきはボール初速だ」とブランスキー氏。「あらゆる分析とテストで分かったことは、剛性プロファイルを見るとインパクト時にクラブヘッドのどこが硬くなり、撓むのかということであり、チタンを採用した方がやや初速アップするということだった」。

ドライバーヘッドの設計では「ウエイト」は重要な課題であり、「カーボン」は常にチタンより軽量なので、この決断は驚くべきことだ。一方で、スリクソンの開発陣は、XXIO(ゼクシオ)の『スターフレーム構造』を採用し、チタンクラウンを可能な限り薄くしている。

「『スターフレーム』は必要な強度を保ちながらも、クラウンを可能な限り薄く軽くする独自の手法」とブランスキー氏。「これを採用したところで、その差はたったの1、2グラム。これだと(カーボンの採用は)ボール初速と引き換えにしたくなるほどの十分な軽量化にはならない」。


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「リバウンドフレーム(Rebound Frame)」と小ぶりなフェース

上述した通り、新しいスリクソン「ZX Mk II」ドライバー(また残りのウッドシリーズ)は第3世代の『リバウンドフレーム(Rebound Frame)構造』が特徴だ。視認できるテクノロジーではないが、ブランスキー氏によると、この新デザインにはかなり高度な技術が投入れているという。

「今回のフェースはやや小ぶりで、上級者をターゲットにしている。また我々は、クラウンからソールに移行するフェース周囲の丸みの変化に連動するフェース全体の厚みに関してもいくつか変更を加えた。実際、このフェースの半径は全体の構造と『リバウンドフレーム』のたわみの剛性に大きく影響している」。


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お伝えしたように、『リバウンドフレーム』は、スリクソン独自のフェースをたわませるテクノロジーだ。簡単に言うと、薄くてたわむフェース(軟)がはまった剛性が高いフェース周辺ゾーン(剛)が、柔らかいリング状のゾーン(軟)に連なり、後方の剛性の高いボディ(剛)が支える構造で、つまり“ダブルトランポリン”と考えてもらえば良いだろう。

また、スリクソンによると、新『リバウンドフレーム構造』は、前作に比べて高CORエリア(COR値が少なくとも0.80以上あるエリア)が10%も拡大しているとのこと。この数字は最低でも0.894m/sの初速アップに変換されるという。


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スリクソン「ZX5」と「ZX7」

スリクソン「ZX7 Mk II」は、これまでのシリーズを踏襲している。(全3モデルともヘッド体積は460ccだが)見た目がよりコンパクトで、ヒールとトゥのソールウエイトが交換可能。スリクソンでは、この「ZX7 Mk II」を真っ直ぐからややフェードの弾道になる低スピン・中弾道ドライバーと位置付けている。

出荷時のウエイトセッティングは、真っ直ぐからややドローの弾道になるように、ヒールに8g、トゥに4gという設定。ウエイトを交換することでフェードバイアスになる。またオプションのウエイトは2gから14gまでが用意されている。


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一方、スリクソン「ZX5 Mk II」ドライバーは、より「寛容性」が高いモデルでややドローバイアスという設定。低・深重心で8gのシングルウエイトが後方部に配置されている。また、必要に応じてウエイトを交換することで、バランスを変更することも可能だ。

両モデルともスリクソンの複雑で直感的とはいえない調整可能な『アジャスタブルホーゼル』を搭載。ロフト角、ライ角、フェースアングルを徹底的に調整できるのは良いが、ちゃんと調整できるかは微妙だ。

「それは仰る通りだ」とブランスキー氏。「基本はニュートラル、ニュートラルフェースでフラット、クローズフェース(左向き)、オープンフェース(右向き)と4つの設定だが、その間にも様々なバリエーションがある。明確で直感的にすることと、フィッターに多くの選択肢を与えることは、常にトレードオフの関係にあるのだ」。


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次に、「LS」モデルに話を移すが…

スリクソンは、いつも新製品発表のサプライズが上手い。2年前は「ZX4」の中級者向けアイアン、そして今年はこの「ZX5 Mk II LS」ドライバーだ。

「『ZX5』と『ZX7』は、ツアープロが求めるものに沿っておらず、飛距離を追求していなかった」とブランスキー氏。「そこで、このモデルでは重心を前側にシフトさせ、できるだけスピン量が減るようにした」。

「ZX5 Mk II LS」はウエイト配置以外、標準の「ZX5」と全く同じヘッドになっている。「ZX5」ではウエイトポートが後方にあるが、この「LS」バージョンはウエイトポートと8gのウエイトがフェースの真後ろに配置されており、重めのシャフトが装着されている。


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「スピンは、いずれにしてもスピンだ」とブランスキー氏。「スピン量が減ればサイドスピンも減り真っ直ぐ飛ぶようになる。今では我々のフィッティングの多くは、『LS』モデルから始まる」。

一般的には、ヘッドスピードが速ければ速いほど、この「LS」ドライバーのメリットを受けられるようになるだろうが、どのみちヘッドスピードが速いということは、ボール初速も速くなるということになり、普通はよりスピン量も多くなってしまう。

「プロくらいのボール初速になると、ボールを上げるためにそこまでスピン量はいらなくなる」とブランスキー氏。「だからと言って、低スピンドライバーのメリットを得るためにブルックス・ケプカや松山英樹にならなければいけないというわけじゃない。もし使っているクラブのシャフト硬度がSなら、『LS』ヘッドも頭に浮かべてよいだろう」。


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スリクソンはゴルフ界で一番リスクを嫌うブランドなのか?

ドライバー市場において、“上座”の枠は限られている。その枠はテーラーメイド、キャロウェイ、タイトリスト、PING、そして規模は小さいがコブラで、ほぼ埋まってしまっている状況で、他社にとって残された“イス”は希少だ。

挑戦者という立ち位置のブランドにとって、ここに変化を起こすことは不可能ではないが非常に困難。そして、このことは特にスリクソンにも当てはまる。確かにシリーズに低スピンドライバーを追加したことは素晴らしいが、『リバウンドフレーム』の改良、新形状、高CORエリアの拡大では、大きな注目を集めることにはならない。

「日本のメーカー、そしてリスク回避型企業として、適当なアピールはしない」とブランスキー氏。「しかし、今回のドライバーは、マスターズでも全英オープンでも勝っているし、LPGAのメジャーでも3勝した。ツアーでは十分に実証済みだ」。


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我々とのインタビュー中、ブランスキー氏が語ってくれたのは、スリクソンの“改善”に対する重要性だ。“改善”とは、全ての機能、そして経営者から工場の従業員に至る全てのスタッフにおける継続的な改良を重視する日本の経営概念を指す。そのまま言うなら「より良い方向に変化する」ということになる。

「我々はパフォーマンスを高めて革新を継続させている」とブランスキー氏。「とはいえ、目の前にあるものを追求したり、他と差別化するためだけに突飛なものを追い求めているわけではない。我々は市場でトップではないし、単に新しくて違うものを創りたいがために、そのようなものを生み出しているわけでもないのだ」。

WITB(バッグの中身を見せて)の調査によると、昨年のスリクソン-クリーブランド-XXIOを合わせた販売数は、ミズノとほぼ同等だった。徐々に進化した(視認できない)技術力の改良により、良いドライバーは生まれるのだろう。

しかし、新しい「ZX5 Mk II LS」が「ゲームチェンジャー(流れを一気にかえる存在)」(初期の“非公式テスト”の結果がはいつも通り非常にポジティブ)にならない限り、スリクソンが表舞台に立てるのか疑問と言える。

せいぜい、良くても次点程度だ。


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スリクソン「ZX MK II」ドライバーのスペック・価格・発売時期…そして「QuickFit(クイックフィット)」について

ドライバーを選ぶ基準がコストフォーマンス(1ドル当たりどのくらい飛ばせるか)なら、新しいスリクソン「ZX Mk II」ドライバーで満足できるかも知れない。

全3モデルとも価格は499.99ドル(約66,000円)。PXGやSub70のレベルではない。しかし、ビッグ5のブランドがドライバーの価格を最低550ドル(約72,000円)に設定していることを考えると、無視はできないだろう。

「ZX7」はロフト設定が9.5度と10.5度のアジャスタブルヘッドで、純正シャフトはトゥルーテンパー「プロジェクトX HZRDUS Black(ハザーダス・ブラック)」、純正グリップはゴルフプライド「Tour Velvet(ツアーベルベット)」が装着されている。

一方、「ZX5」は、ロフト角は同じだが、シャフトは軽量の「HZRDUS Smoke Red RDX(ハザーダス・スモークレッドRDX」が装着されている。

また、両モデルとも右打ち用、左打ち用がラインナップしている。


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「ZX5 LS」はロフト設定が8.5度、9.5度、10.5度のアジャスタブルヘッドを採用。純正シャフトは重めの「HZRDUS Black」。このモデルは右打ち用のみとなっている。

またスリクソンでは、「Quick Fit(クイックフィット)」という新たな小売向けのフィッティングシステムもスタートしている。

スリクソンのフィッターは、「ZX Mk II」ドライバーのヘッド6個とシャフト12モデルで、60通りのコンビネーションが提供可能。カスタムのヘッドとシャフトの組み合わせが決まると、その場でフィッターがディスプレーから新しいヘッドとシャフトを取り出し組み立てくれる。

カスタムオーダーしなくても、カスタムドライバーが手に入るというわけだ。

市場がザワつくほどではないが、ユニークなアイデアだ。

新しいスリクソン「ZX Mk II」ドライバーの発売日は1月20日。詳細はスリクソンのホームページから。