スリクソンはドライバーでも存在感を示せるか?
スリクソンとミズノには、どこか似たところがある。
どちらもアイアンでは高い評価を集め、多くのゴルファーから支持されているブランドだ。
ところが、ドライバーとなると少し事情が違う。
アイアンでの評価とは対照的に、ドライバー市場では両ブランドとも、まだ主要ブランドの一角に食い込めていない。
もちろん、努力や技術力が足りないわけではない。
ミズノは新たな『Nanoalloy Face Technology(ナノアロイ・フェース・テクノロジー)』を投入。初年度にはいくつかのつまずきもあったが、私たちはこの技術には可能性があると考えている。
そしてスリクソンもまた、フェーステクノロジーに新しいアプローチを持ち込んできた。

そこで今回のテーマはこれだ。
新しいスリクソン「ZXi RKT」、そして新たな『RKT FACE(ロケット フェース)』は、スリクソンを「次のドライバー候補」として本格的に名前が挙がる存在へ押し上げられるのだろうか?
私たちの初期テストを見る限り、その問いを投げかけてみる価値はありそうだ。
スリクソン「ZXi RKT」ドライバー、何が変わった?
これは以前にも書いたことだが、スリクソン、クリーブランド、ゼクシオを展開するダンロップは、新製品に関する情報の伝え方がとてもうまい。
詳細な製品マニュアルを用意し、新しいテクノロジーについても深く掘り下げながら、私たちメディアにも理解しやすい言葉で説明してくれる。
今回のスリクソン「ZXi RKT」の製品資料も、ゴルファーの心をくすぐるこんな言葉から始まる。
「Raw Power, Pure Sound.(圧倒的なパワー、研ぎ澄まされたサウンド)」
うん、悪くない。
「Power you can feel and hear.(感じて、聞いてわかるパワー)」
こっちは、さらにいい。

これまでのスリクソンドライバーも、ボール初速という点では十分な性能を見せてきた。もっと速いモデルはほかにもあったが、少なくともボール初速に大きな不満があるわけではなかった。
ただし、以前から気になっていたことがひとつある。
打音だ。
金属的で甲高く、どこか乾いた感じ。表現はいろいろあるが、少なくとも「いい音」と言いたくなるものではなかった。
NIKE「SasQuatch」ほど強烈ではなかったにせよ、その打音を気にしなくなるほど圧倒的なパフォーマンスがあったわけでもない。
その点について言えば、スリクソンは今回、ほぼ答えを出してきた。
「ZXi RKT」シリーズは、少なくともここ10年でスリクソンが発売したドライバーの中では、最も打音と打感がいい。
さらに私たちの初期テストを見る限り、新しい『RKT FACE』と独自のフェース素材によって、ボール初速についても次の段階へ進んだ可能性がある。
チタンに……シリコン?
スリクソン、クリーブランド、ゼクシオほど、社内の金属材料に関する専門知識をうまく活用しているメーカーは、ほかにないかもしれない。
ここ2年だけでも、新しいウェッジ素材『Z-Alloy』、そして新たな鍛造技術『i-Forging(アイ・フォージング)』が登場した。どちらも、実際の性能向上につながっている。
そして今回のスリクソン「ZXi RKT」ドライバーには、さらに新しい独自合金『VR-チタン(VR-TITANIUM)』が採用された。
スリクソンによれば、『VR-TITANIUM』はシリコンを加えることで、ドライバーのフェースとボディの強度とたわみを高めた素材だという。
その特性を生かすことで、AIを活用して設計された可変肉厚フェース構造『i-FLEX(アイフレックス)』を、従来より大幅に薄くすることが可能になった。

MyGolfSpyの読者ならご存じのとおり、AIによって設計されたフェースは、薄くすることでより広いエリアでボール初速を引き出せる。
理論上は、これによってMyGolfSpyの中・高ヘッドスピード帯のテストで見られた、スリクソンと上位モデルとのボール初速差を縮められるはずだ。
「『RKT FACE』は、まさにその課題に応えるために開発しました」と、スリクソンのツアー・エンジニアリング・マネージャー、パトリック・リップは話す。
「複数のテクノロジーをひとつの性能システムとして組み合わせることで、優れたボール初速を生み出すだけでなく、より幅広い打点で安定してその性能を発揮できるフェースを実現しています」
新しい「ZXi RKT」シリーズの開発では、PGAツアーの契約選手からのフィードバックも積極的に取り入れた。
「ZXi RKT MAX」、スタンダードの「ZXi RKT」、そして「ZXi RKT LS」の3モデルはいずれもフェースを深くし、ヘッドの高さを増すことで、フェース上部の打撃エリアを広げている。
スリクソンが以前、こうした方向性に挑んだときに生まれたのが、あの独特な形状で知られる「HiBore XL(ハイボア XL)」だった。

それだけに今回、同じようにフェースの高さを確保しながら、よりクリーンでコンパクトな、プレーヤーが構えやすいヘッド形状にまとめてきたことは注目に値する。
スリクソン「ZXi RKT」ドライバー、3モデルをチェック
新しいスリクソン「ZXi RKT」シリーズには、性格の異なる3つのドライバーが用意されている。
スタンダードモデルの「ZXi RKT」、よりコンパクトで低スピン設計の「ZXi RKT LS」、そして高MOIモデルの「ZXi RKT MAX」だ。
スタンダードの「ZXi RKT」は、2025年モデルよりヘッドの前後長を短くし、フェースを明らかに深くしている。
ソールのヒール側とトゥ側には交換可能なウェイトを搭載。ヒール側に10グラム、トゥ側に4グラムを配置すると、わずかにドローバイアスになる。これを入れ替えれば、わずかにフェードバイアスへ変化する。
さらにスリクソンは複数のソールウェイトを用意しており、組み合わせによって最大15ヤードの左右方向の調整が可能だという。
これだけでも、フィッターにとってはかなり面白いドライバーになりそうだ。

スリクソン「ZXi RKT」は、ヒールとトゥのウェイトを入れ替えることで、ドロー/フェード方向の弾道調整が可能。
「ZXi RKT LS」には、前方と後方に交換可能なウェイトを搭載している。
こちらも2025年モデルより前後長を短くしながら、フェースを深くした。ほかの「ZXi RKT」よりも洋ナシ型に近い形状で、アドレスするとフェースはほんのわずかにオープンに見える。
標準では前方に10グラム、後方に4グラムを配置。ボール初速を重視したセッティングで、ヘッドスピードの速いゴルファーに向けた、低スピンで強い弾道を狙っている。
前後のウェイトを入れ替えると、スピン量は約180rpm増加し、打ち出し角も高くなる。ヘッドスピード110mph(約49.2m/s)に届かないゴルファーにとっては、こちらのセッティングがパフォーマンス向上につながる可能性もある。
私たちもテストでは、このウェイト調整をいろいろ試してみた。

スリクソン「ZXi RKT LS」は、前後のウェイトを入れ替えることでスピン量や寛容性が変化し、幅広いセッティングが可能になる。
そして3モデルの中で、最も興味深い存在になるかもしれないのが「ZXi RKT MAX」だ。
スリクソンによれば、同社がこれまで開発した中で最もMOIの高いドライバーだという。
いわゆる「10K MOI」には届かない。それでも、かなり近いところまで来ている。
「ZXi RKT MAX」も2025年モデルよりフェースが深くなっているが、こちらはスタンダードやLSとは異なり、ヘッドの前後長を長くしている。
わずかなドローバイアスを持たせ、後方には交換可能なウェイトを搭載。このウェイトは、バランスとMOI(慣性モーメント)を調整するためのものだ。

スリクソンによれば、「ZXi RKT MAX」は同社史上最高のMOIを実現したドライバーだという。
静かに、でも確実に変わった打音
ここまで触れてきたように、打音と打感はこれまでのスリクソンドライバーの強みとは言いにくかった。
スリクソンのアイアンが打音や打感で高く評価されていることを考えると、少し不思議なくらいだ。
もちろん、スリクソン自身もその課題を認識していたのだろう。そこで新たに採用されたのが、『ACOUSTICORE(アコースティコア)』だ。
『ACOUSTICORE』では、カーボンクラウンやソール内部にAIによって最適化されたリブ構造を配置し、モデルごとに打音を調整している。スリクソンによれば、高度なシミュレーションとモーダル解析を活用することで、より心地よい打音を追求したという。
私たちが屋内外で行った限られたテストの範囲では、その狙いはほぼ成功していると言っていい。
「ZXi RKT」シリーズは、決して市場で最も静かなドライバーではない。それでも、気になるような打音ではなくなった。
私なら「クリスプ」、つまり引き締まった打音と表現する。そこから少し「ソリッド」寄り、といったところだろう。
これ以上金属的になれば、また以前のような音に近づいてしまう。そのギリギリ手前に収まっている。

AI設計の内部リブ構造により、スリクソン「ZXi RKT」は課題だった打音を改善。
打音とは直接関係しないが、3モデルすべてにスリクソン独自の『REBOUND FRAME(リバウンド フレーム)』も採用されている。
『REBOUND FRAME』は、ヘッド内部に剛性の高い部分とたわみやすい部分を交互に配置する構造だ。
簡単に言えば、ドライバーのトランポリンのような反発効果を引き出すためのもの。薄くなった『RKT FACE』のたわみを、ヘッド側からさらにサポートする役割を担っている。
さらにスリクソンは、『VARIABLE ROLL DESIGN(バリアブル ロール デザイン)』と呼ばれるフェース設計も採用している。
これはフェースの曲率を調整することで、芯を外したときの方向性を高めることを狙ったものだ。
特にハイトゥに当たったとき、ボールが大きく左へ曲がってしまうミスを抑えることを狙っている。
「それって『Twist Face(ツイストフェース)』に似ていないか?」と思ったなら、その感覚は間違っていない。

スリクソンによれば、『REBOUND FRAME』がボール初速を、『VARIABLE ROLL DESIGN』が方向性を高めるという。
スリクソン「ZXi RKT」ドライバー、気になる初期テスト結果
まず断っておくと、これはMyGolfSpyの正式なテストではなく、あくまで初期段階での試打結果だ。
それでも、新しいスリクソン「ZXi RKT」ドライバーは、これまでのスリクソンに対するイメージを少し変えるかもしれない。
まず、明らかに変化を感じたのがボール初速だ。
私のヘッドスピード91mph(約40.7m/s)に対し、3モデルすべてでボール初速133〜136mph(約59.5〜60.8m/s)を安定して記録した。
さらに『VARIABLE ROLL DESIGN(バリアブル ロール デザイン)』にも、何かありそうだ。シミュレーター上では、普段より安定してフェアウェイを捉えることができた。
もちろん、これだけでその効果を断定するつもりはない。ただ、気になる結果ではある。
スタンダードの「ZXi RKT」も悪くなかったが、より興味深かったのは「ZXi RKT LS」と「ZXi RKT MAX」だ。
「ZXi RKT LS」は、重いウェイトを前方に配置した状態では、私の場合、十分なスピン量を確保するために少なくとも10.5度のロフトが必要だった。
ところが、重いウェイトを後方に移し、ロフトを10度に調整すると一変。
安定して飛ばせるドライバーになった。

そして、最も興味深かったのは「ZXi RKT MAX」かもしれない。
スリクソンによれば、このモデルは高打ち出し・中スピン設計だという。
標準の9度では、私には弾道が高くなりすぎた。
ところが、ロフトを思い切って7.5度まで立てると、こちらも一変した。
強い弾道で飛ばせるドライバーになった。
その弾道と安定感は、私が長年気に入っているクリーブランド「HiBore XL」をかなり思い出させるものだった。
クリーブランドが「HiBore」を開発した際に掲げた設計目標は、460ccというヘッド体積の中で、できるだけ深いフェースを採用し、最大限の寛容性を引き出すことだった。
その結果として生まれたのが、あの独特な三角形状のヘッドだ。
そして時を経て登場したスリクソン「ZXi RKT MAX」は、「HiBore XL」に近いサイズの深いフェースを持ち、その寛容性を受け継いでいるように感じられる。
大きく違うのは、今回の初期テストではボール初速が明らかに向上していること。そして、あの独特な三角形状ではないことだ。
スリクソン「ZXi RKT」ドライバー:最後に
スリクソンがドライバー市場でまだ主要ブランドの一角に食い込めていないとしても、それが努力不足ではないことは確かだ。
スリクソンによれば、今回の「ZXi RKT」シリーズの研究開発では、従来の設計を土台から見直し、ツアー契約選手からのフィードバックも積極的に取り入れながら、新たなスタートを切ったという。
その新しいアプローチを、すでに実戦へ持ち込んでいる選手もいる。
シェーン・ローリーは「ZXi RKT LS+」を使用してアイリッシュオープンに出場し、通算23アンダー、2位に11打差をつけて優勝した。
※ローリーが使用した「ZXi RKT LS+」はツアーで確認されている仕様で、日本で展開される「ZXi RKT LS」とは表記が異なる。
DPワールドツアーのデータによれば、大会を通じてティーショットで1ラウンドあたり約0.5打を稼いでおり、最終日は1番ホールで349ヤードのドライブを放って「63」のラウンドをスタートさせている。

もちろん、ツアーでの1勝だけで「ZXi RKT」の性能を結論づけることはできない。
そして、ドライバー市場で大手ブランドが築いてきた牙城に、チャレンジャーが食い込むのも簡単なことではない。
それでも今回の「ZXi RKT」は、新しいフェース素材、改善された打音、3モデルそれぞれの調整機能、そして私たちの初期段階での試打結果まで含めて、これまでのスリクソンドライバーとは少し違う期待を抱かせる。
スリクソンは「次のドライバー候補」として、本格的に名前が挙がる存在になれるのか。
その答えは、これからの正式なテストで確かめることになる。
スリクソン「ZXi RKT」ドライバー:スペック・価格
日本仕様のスリクソン「ZXi RKT」ドライバーには、12通りのポジションから弾道を調整できる「QTSスリーブ」を採用。さらにモデルごとに配置されたチューニングウェイトによって、求める弾道やスピン量に合わせた調整が可能だ。
日本では、スタンダードの「ZXi RKT」に加え、低スピンモデルの「ZXi RKT LS」、450cm³の小ぶりなヘッドを採用した「ZXi RKT TR」、シリーズ最大MOIの「ZXi RKT MAX」の4モデルを展開している。
「ZXi RKT」は9度と10.5度をラインナップし、レフトハンドモデルも用意。「ZXi RKT LS」は9度と10.5度を展開し、レフトハンドモデルは9度をラインナップする。「ZXi RKT TR」は9度と10.5度、「ZXi RKT MAX」は9度と10.5度を展開し、MAXには10.5度のレフトハンドモデルも用意されている。
標準シャフトにはモデルに応じて「Diamana ZXi-II 50」や「VENTUS TR ZXi-II 6」を採用。メーカー希望小売価格は89,100円(税込)となっている。

『i-FLEX』は、スリクソン独自の可変肉厚フェース設計。



