タイトリストが19年秋に新アイアンを「たった」5モデルだけリリースした時に、別の新アイアンの話を今くらいの時期にすると思っていた。

そして、その時がやってきたが、まさかT100Sとは微塵も思ってなかった。

一年に一度のエディターズ・チョイス・アワードの中でタイトリストブランドの進化、特にクラブラインナップの見直しがまさに印象的という話をした。

それはタイトリストが今までの殻を破って前に進み、実際にこれまでと違う施策を打ったこと、あえて言えば興味深いことを成し遂げたように見えるということ。

恐らく今のところ、より印象的なのは、どのように彼らがアイデンティティの維持と自身の再改革を両立しようとしているのかということだ。

典型的な例として、一年前ならT100Sはタイトリストとは思えないアイアンだっただろうが、新しい(そして改良された)ラインナップをチェックしていれば、完全に筋が通っていると思う。

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これまでで一番シンプルなアイアンの説明

もし複雑なテクノロジーの話を聞きたいなら、あなたは今回の記事に興味はないだろう。今回はとっても簡単な話なので、サラっと行くことにする。

T100Sは、2度ストロングロフトなことを除けばほぼT100だ。SはストロングのSを指す。

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私は時としてテクノロジーの話が多すぎると言われているので、読者が減っていないのか確かめたいのだ。

みなさん、いかがだろうか?

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それだけなのか?

ここからは、みなさんが考えているであろうことについて話そう。

そりゃそうだ、タイトリストがT100を2度ストロングにして「S」をつけて、それで終わりなんてことはしない。

ロフトを変えればバウンスも変わる。上級者向けクラブでは、ロフトだけ変えるとソールの抜けが問題として挙がるはずだ。

飛距離を伸ばすためにロフトを立てて、そしてグリーンオンさせようというなら、ヘッド内周辺にあるウェイトも動かす必要がある。

ここで言いたいことは、T100SはT100と見た目とフィーリングは同じ、つまり同系統だが、内部のタングステンウェイトを再配置している。

少ないロフトでも適正な打ち出しが得られるように重心位置を低く設定するためだ。

そして、ソールのバウンス角もT100と一貫性があるように微調整されている。

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なぜか?

なぜ、上級者向けなのにロフトを立てているのか?(きっとあなたならそう聞いてくるだろう)

ここ数年、「プレーヤーズ ディスタンス」(飛び系)部門が伸びているのは事実だ。

ほぼ全メーカーがこのカテゴリーのアイアンを(複数モデルではなくても)取り揃えているが、タイトリストでは何かが足りないと考えている。

その「何か」とは、シングルピースのスッキリとした鍛造アイアンだ。

タイトリストのゴルフクラブマーケティング部門のバイスプレジデント、ジョシュ・タルゲ氏は「プレーヤー目線に立った飛び系アイアンと考えて欲しい」と話す。

もしあなたが、飛び系アイアンには‟プレーヤー目線″がないと感じているなら、タイトリストのこの回答には大喜びのはずだ。

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タルゲ氏によれば、T100SのアイデアはオリジナルのAP2の背景にあったものとそれほど変わらないと言う。

今思えば、AP2が現在の飛び系アイアンだったのだろうが、ツアーで人気となったためAP2の飛距離について多くは語られなくなっていたのだ。

T100Sはコンパクトなボディでソール幅は狭く、トップラインも薄いのが特徴。

T100は現代のプレーヤーズアイアンを体現する打音が特徴だが、今回は「S」がついているだけにこれに飛距離アップが実現している。

要するに、見た目はT100(ここもポイントだ)でパフォーマンスが違うということだ。

もしT100Sが合わないと思っても、T100、T200、T300620CB、620MB、もしかするとその他にも合うクラブがあるはずなのでご安心を。

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ストロングロフトについてもう一言

何度も言っていることだが、ここで性懲りもなくまた伝えることにする。

ストロングロフトのクラブが多いが、そろそろ静的ロフト(スペック表に掲載されているロフト角)でパフォーマンスが分かるわけではないということをユーザーは受け入れた方が良い。

単にロフト角の比較だけでは打ち出し角やスピン量、最高到達点、落下角、あるいはグリーンでボールが止まるかということは分からないのだ。

この辺りの性能は、ヘッド形状や重心位置などにかなり依存する。

ストロングロフトのアイアン全てが宣伝通りのパフォーマンスを発揮するわけではないし、どれもが発揮しないというわけでもない。

タイトリストにロフト角8.5度のドライバーを勧められたからと言って、自分が10.5度のドライバーを手にしたいきさつを怒り、こうしたストロングロフトドライバーに嫌気がさして怒鳴ることはないだろう。

その昔、ドライバーは木製でボールにはフェザーが詰まっていたが、今は違う。

誰もロフトが立ったドライバーに不満を言ったりしないが、それは誰しもがロフトは根本的にフィッティング次第ということを知っているためだ。

そして同様に、他のクラブでもロフトは根本的にフィッティング次第。適正なロフトは人それぞれだ。

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新基準

もう一つ考えるべきことは、PGAツアーに参入してきている、ロフトが立ったクラブ以外は使ったことがない新世代のゴルファー。

“黄金世代“と言われるジョーダン・スピースが、まるでふくらはぎを鍛えていないフィル・ミケルソン(20年6月に50歳を迎えるフィル・ミケルソンは、フィジカルトレーニングにより、高い肉体的パフォーマンスを維持。特に、アメフト選手並みに鍛えられたふくらはぎがSNSで話題となっている。)のようなベテランに見えてしまうほどの若手有望株、スーパールーキーのヴィクトル・ホブランドやマシュー・ウルフが、これまでずっと使ってきたものからロフトが少ないアイアンに移行して成功を狙っている。

「確かにそうだ。ロフトが立ち気味のアイアンは(ウェッジとの)ギャップが生まれ、セッティングの見直しやさらなるウェッジが必要になることもある。それを包み隠すつもりはない」とタルゲ氏。「我々のウェッジビジネスは強固だ」。

これは恐ろしい話に聞こえるかもしれないが、現在の番手間ギャップについて根本的に欠陥がある可能性があるという調査結果もある。

T100Sがあなたに合うかは分からない。分かっていることは、飛び系アイアンを求めるゴルファーが増えているということ。

その点において、タイトリストは、「飛び系」が十分に「プレーヤー目線」にはなっていないと感じるゴルファーにリーチしつつ、違った層を取り込むことを狙っているのだろう。

それはあなたかも知れない。

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T100Sアイアンの価格はスチールシャフトで1本175ドル(8本セットで1,399ドル)、カーボンだと1本187.5ドル、セットなら1,499ドルだ。標準シャフトはProject X LZだが、追加料金なしで様々なシャフトが選べる。

プレセールは3月12日、一般販売は3月27日からだ。


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