ミズノが、2025年モデルとしてミズノプロ「S3」と「JPX 925フォージド」アイアンに加え、ショートゲーム用の新たなギアを投入するようだ。
「ミズノプロ T-1」と「ミズノプロ T-3」ウェッジは、ミズノがこの分野で一貫して追求してきた、優れた打感、高いスピンコントロール性能、そしてアドレス時に美しく見えるデザイン(見た目の良さ)という特徴を備えている。
しかし、同じシリーズに2種類のウェッジを展開するのはなぜだろうか?どうやら、ミズノはこれまでの戦略を変えてきたようだ。
では、「ミズノプロ T-1」と「ミズノプロ T-3」について深掘りする前に、まずはその背景にあるミズノの変化について整理しておこう。

変化の時
ミズノには「ミズノプロ」と「JPX」という2つの異なるアイアンシリーズが存在するため、これまでは「Tシリーズ」ウェッジと「Sシリーズ」キャビティバックウェッジを交互に展開してきた。
しかし、その戦略は終わりを迎えている。
今後、ミズノのウェッジは2年ごとの製品サイクルに統一され、全て「ミズノプロ」シリーズに集約するようだ。

ウェッジカテゴリーのラインナップリーを整理することで、ミズノはこれまで混乱を招いていた状況を解消しようとしている。
特に、ゴルファーやフィッター、そして販売店にとって最大の課題だったパフォーマンスの重複がクリアになる点は大きなメリットだ。これまでの問題は、「どのウェッジが自分のプレースタイルに合っているか」ではなく、「どれが最適なのか」、そして「その理由が何か」という点だった。
さらに混乱を招いていたのが、「Tシリーズ」と「Sシリーズ」の両方に共通するテクノロジーの存在だった。
つまり、タイミング的にも、戦略的な観点から見ても、これはミズノにとって賢明な判断だと言える。
特許取得の「グレインフローフォージド製法」
MyGolfSpyはもちろん、どんな記事でもミズノのアイアンやウェッジを語る際には、「グレインフローフォージド製法」という言葉が必ずと言っていいほど登場する。
1998年に特許を取得したこの製法は、ミズノのアイアンとウェッジを象徴する技術であり、「打感」、「打音」、そして「性能」を生み出す基盤となっている。
では、念のためにこの「グレインフローフォージド製法」についておさらいしておこう。
「グレインフローフォージド製法」は、広島の工場で行われている複数の工程を経た鍛造製法だ。
ミズノは、この技術を用いて「S25CM(1025E)カーボンスチール」の一本の丸棒から、ヘッドを精密に成形し、金属の自然な組織(グレインフロー)を活かすことで、「一貫性」、「耐久性」、そして「安定性」を高めている。この一体成形は、6mのスチールロッドを1,200℃に熱することから始まり溶接なしで行われるため、ヘッドとネックに連続した粒界結晶を作り出す。
この高密度で耐久性がある粒状構造こそ、ミズノをミズノたらしめているのだ。
「ミズノプロ T-1」

「ミズノプロ T-1」は、あらゆる面で“ブレード”と呼ぶにふさわしいウェッジだ。
このモデルのコンパクトヘッドには、以下の特徴がある。
・グレインフローフォージド製法
・銅メッキの高品質S25CM(1025E)カーボンスチール
・コンパクトヘッド形状
また前作「T-24」シリーズからの主要変更点がいくつかある。
「T-1」のヘッド形状はクラシカルなティアドロップ型を継承しつつ、トゥの丸みをやや抑えたデザインに進化している。
また、リーディングエッジを真っ直ぐなラインにすることで芝の抜けを向上させ、さらにトップエッジもストレートに仕上げることで、構えた際の見た目をより洗練されたものにしている。

ソール形状
「ミズノプロ T-1」は、ソール形状のバリエーションを6種類(S、M、P、C、V、X)に拡充した。
これにより、プレーヤーのショートゲームのスタイルやコースコンディションに合わせた選択肢がさらに広がる。
いくつか注目すべき点がある。「Mソール(ミッドバウンス)」は、従来の「T24」の「Dグラインド」に変わるもので、さらに新しく追加された「Pソール(プラスバウンス)」は「Dプロファイル」をベースにしているものの、バウンスを強化することで汎用性を高めている。
「Xソール」は、60度のモデルでソールをさらに削ったもので、より多彩なショットに対応しており実効バウンスも小さくなっている。
なお「T-1」のロフト角とバウンス角の組み合わせは16種類だ。
スピンコントロール

スピン性能に関して、ミズノは、あらゆる状況下での一貫性を追求している。特に、朝露や湿った環境など、スピン量が低下しやすい条件下でも安定したスピン性能を発揮できるよう設計されている。
『クワッドカット+グルーブ』と『ハイドロフロー・マイクログルーブ』の組み合わせが、安定したスピン性能を生み出す。
「T24」ウェッジで初めて採用された『クワッドカット+グルーブ』は、溝の入り口部分のキャンバーと溝形状の傾斜を調整したもの。これにより、ミズノのR&Dチームは、ウェッジの溝をより密接に配置できるようになった。

溝の配置をより密接にすることで、スピン量を最大化しつつ、『ハイドロフロー』テクノロジーが水分を溝から排出することで、濡れた状況でも安定したスピン性能を発揮する。
そして、「T-1」シリーズでは、ロフトが立った番手でスピンの安定性を重視し、一方でロフトが大きいモデルでは、グリーン周りでのスピンコントロールを最大化する設計となっている。
仕上げ

「ミズノプロ T-1」ウェッジには3つの仕上げがある。
「ミズノプロ T-1」ウェッジの右打ち用の仕上げは以下の3つ。
・ブルーイオン
・ブラックイオン
・ソフトホワイトサテン
残念ながら左打ち用には選択肢がなく、ソフトホワイトサテンのみだ。

シャフト/グリップ
「ミズノプロ T-1」ウェッジ(ホワイトサテンブラッシュ仕上げ)
シャフト:「Dynamic Gold HT スチールシャフト」
グリップ:「ゴルフプライドM31 360ラバーグリップ」
価格:¥25,300 (税込)、発売:2025年3月7日
「ミズノプロ T-1」ウェッジ(ブラックIP仕上げ)
シャフト:「Dynamic Gold HT スチールシャフト」
グリップ:「ゴルフプライドM31 360ラバーグリップ」
価格:¥27,500(税込)、発売:2025年3月7日
※下記はアメリカのスペック
ミズノは「ミズノプロ T-1」のシャフト選択をやや変えてきている。
ホワイトサテンとブルーイオンでは、純正シャフトとしてトゥルーテンパー「Dynamic Gold Tour Issue S400」を装着。
一方、ブラックPVD加工のブラックイオン仕上げでは、KBS「KBS HI-REV115」シャフトをラインナップし、ゴルフプライドのブラック/グレー「MCC TEAMS」グリップを装着することでオールブラックの仕様にしている。
このブラックは「T-1」モデル全てで純正となっている。
「ミズノプロ T-3」

ローハンディキャップのゴルファーはここで興味をなくすかも知れないが、ショートゲームの安定性に悩んでいるなら、もう少し読み進めてほしい。
分かってるって。「キャビティバックじゃないか」って言いたいんでしょ?ヘッドが大きくて、ワイドソールでオフセットも強く、見た目が微妙ってことでしょ?
でも、「ミズノプロ T-3」は違う。
あえて言わせてもらうと、これは「上級者向けキャビティバックウェッジ」だ。

「ミズノプロ T-3」のヘッドは、コンパクトな「T-1」よりやや大きい程度。ミズノによるとフェース面積はボーケイ「SM10」と同等で、同じ素材とパフォーマンス特性を備えている。
・グレインフローフォージドHD
・銅メッキの高品質S25CM(1025E)カーボンスチール
・あらゆる状況で優れたスピン性能を発揮する『クワッドカット+グルーブ』と『ハイドロフロー・マイクログルーブ』
最大の違いは、「T-3」が、ゆるやかなテーパー形状のキャビティバックデザインになっている点だろう。
このデザインによりヘッドがわずかに長くなっており、オフセンターヒット時の寛容性が向上している一方で、インパクト時の安定性も高められている。
ソール形状

「ミズノプロ T-3」にはやや幅広のソール形状(S、M、C)がラインナップしている。
ここで見逃せないのが改良された「Mソール」だ。
前作「S23」の「D」に変わるもので、フルスイング時、バンカーショット、グリーン周りの繊細なショットなど様々なショットで理想的と言えるグラインドが「T-3」シリーズにラインナップすることになった。

仕上げ
「T-3」では右打ち用、左打ち用ともにソフトホワイトサテン仕上げのみとなっている。
シャフト/グリップ
「ミズノプロ T-3」ウェッジ(ホワイトサテンブラッシュ仕上げ)
シャフト:「N.S.PRO 950 GH neo スチールシャフト」
グリップ:「ゴルフプライドM31 360ラバーグリップ」
価格:¥25,300(税込)、発売:2025年3月7日
※下記はアメリカのスペック
「T-3」ウェッジは全て、純正シャフトがクロム仕上げのKBS「KBS HI-REV 2.0」でゴルフプライドのブラック/グレー「MCC TEAMS」グリップが装着されている。

価格と発売時期
「ミズノプロ T-1」と「ミズノプロ T-3」の価格は1本180ドル。
先行販売は2月6日で正規販売店での発売は2月20日から。
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