テーラーメイドは、スパイダーパターのデザインを一新し、「スパイダーGT」を創り上げた。

このような設計上の逸脱はテーラーメイドにとって特段珍しいことではない。近年我々はテーラーメイドのデザイナーが、スパイダーに関するデザイン計画をひっくり返すのを何度も目の当たりにしてきた。「スパイダーFCG」の前重心設計がいい例だ。

しかし「スパイダーFCG」はクラシックなスパイダーの重心設計から逸脱したとはいえ、その全体的な設計理念は変わらなかった。「スパイダーマレット」や「スパイダーブレード」「ダディロングレッグス」「スパイダーミニ」も同様。その形状に様々なバリエーションはあったが、スパイダーの全体的な設計プランから外れるものはほとんどなかった。


ところが新しいテーラーメイド「スパイダーGT」では、これまで設計上のスタンダードをお払い箱にしたのだ。

しかし、この急激な設計変更自体は大した驚きではない。ここ数回の新作リリースを細心の注意を払って見ていたなら、変化が訪れるであろうことは察していたはずだ。テーラーメイド「スパイダーS」は2020年の発売時には“異端児”だったが、今思えば「スパイダーGT」の前触れだったということがわかる。

では何が変わったのだろうか?


スパイダーシリーズは長い間、革新的であり続けようとしてきた。そしてより高い「安定性」から、世界中のツアーで数え切れないほどの勝利を収めてきたスパイダーパターは、いずれも純粋なる性能を提供するために設計されてきた。「スパイダーGT」では、これまでの「安定性」の高いスパイダーパターと同様、より現代的に改良された「ウイング構造」を用いて、これまでで最も角度があり、最も安定性の高いスパイダーを創り上げた。「スパイダーGT」の中心部から重量を取り除くことで、あらゆる点でより高い「MOI(慣性モーメント)」とより高い「安定性」を実現した。

(パター・ウェッジ商品開発シニアディレクター ビル・プライス氏)


消えたワイヤーフレーム

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スパイダーが何世代にもわたって採用し続けた「メタルフレーム」は、すべてのスパイダーの主要素として搭載されている。初期のスパイダーにも最新の「スパイダーEX」にも、ヘッド周辺部には「タングステンリング」が搭載されていた。しかし「スパイダーGT」に、この「タングステンリング」は見当たらない。

「スパイダーGT」は、スパイダーの設計を「リング状」から「ウイング形状」に移行した。いったいこれほどまでの変化をもたらすに至った動機は何なのか?それは多くのパター設計と同様、すべては重量配分に繋がる。


大量のタングステン

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新しい『オープンフレームマルチマテリアルデザイン』では、「スパイダーGT」のヘッド総重量の82%をパターの左右の外周部に配分することで、「MOI(慣性モーメント)」と「安定性」が大きく向上した。「金属分布」も重量配分に大きな役割を果たしている。

「スパイダーGT」のトッププレートにある“パッド“は「軽量アルミニウム」で、より重いウイング形状の「スチールウエイト」とさらに重い「タングステンウエイト」がそれぞれヘッドの両サイドと後方に配置されている。

新しいヘッド形状は重量面にも関係する。消えた「タングステンリング」に話を戻そう。「スパイダーGT」と『GTスプリットバック設計』では、これまで後部エッジ(端)のウイングを繋げていた「タングステンクロスバー」がなくなったことも、両サイドの加重設計に一役買っている。通常パターの中央部にある金属が消えたということだ。


『PURE ROLL™2』インサートおよび『フルーテッドシャフト』

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新しい「スパイダーGT」の設計についてさらに深く掘り下げる前に、前モデルと変わらないものを見てみよう。

ヘッドのデザインは大きく変わったものの、「スパイダーGT」パターには昨年「スパイダーEX」で採用された『PURE ROLL™2(ピュアロール)』インサートと「フルーテッドシャフト™」が採用されている。

これは、ツアープレーヤーとパター使用者の両方から好評を得ていることを考えると理にかなっている。グリップは「SuperStroke 1.0 GT(スーパーストローク1.0 GT)」が標準装備となる。

また、「スパイダーGT」では引き続きストロークタイプに合わせてネック形状を選択することができる。パッティングストロークがまっすぐならばおそらく、「スパッドネック/シングルベントシャフト」形状を選ぶことになるだろう。もう少しアーク(フェースの開閉)が欲しいなら、新しい「スラントネック」がしっくりくるはずだ。

この新しいスラントネックは、トゥフロー(トゥ側の開閉)の度合いを高め、アドレス時の見え方がよくなるように調整されている。

さて、古いニュース特集はこれでおしまい。ここからは「スパイダーGT」シリーズの各モデルについて詳しく見ていこう。


テーラーメイド「スパイダーGT」

「スパイダーGT」の名前がついているからには、歴代のスパイダーモデルとじっくり比較すべきだろう。明らかにいくつかの重大な違いがあり、もちろん類似点もある。「スパイダーGT」のボディ設計はよりオープンになっているが、旧モデルと同様、ソール後方には「タングステンウエイト」が配置されている。

全体的なヘッド形状もスクエア(長方形)なままだ。アングル(角度)やカーブは確かに新しくなったものの、全体的な形状は未だ「箱型マレット」然としている。

しかしここから設計は異なってくる。「スパイダーGT」のトッププレートの形状は、まるで“亀の甲羅”のように見える。裏返すと、エッジ(端)にウエイトがあるのがわかる。また、中央部が軽量化のために中空構造になっていることもわかる。だがこの形状を見る限り、名前に持ってくる“生き物”の種類を変更すべきではと思ってしまう。

しかし、残念ながらテーラーメイド「タートルGT」ではしっくりきそうにない。そこで、GTは「ジャイアントタートル」の略であると言い張ろうかと思っている。という冗談はさて置き、本題に戻ろう。(※実際の「GT」=「グランドツアー」)


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甲羅状のアルミニウム製トップは、重量をより周辺部に配置できるほか、重心位置にも影響する。「スパイダーGT」は低重心で、「スパイダーEX」、「スパイダーX」、「スパイダーTOUR」よりも前重心となる。パター後方の素材を無くしたことは、当然のことながら重心位置にも関係する。

「スパイダーGT」が興味深いのは、仕上げが3種類あることだ。 「マットブラック」、「レッド/ブラック」、「ホワイト/ブルー」から選べる。他の選択肢とは印象がかなり異なるため、ホワイト/ブルーのオプションには少々面食らった。

厳密にはそのホワイト/ブルーのオプションは33インチの女性用だが、スカートを穿いていないと買えないわけではない。自分が望む色を手に入れればいい。そしてもちろん「MySpiderGTプログラム」もある。


テーラーメイド「スパイダーGTスプリットバック」

「スパイダーGTスプリットバック」は、前述の「スパイダーS」と「スパイダーSR」を進化させたモデルで、今回「ウイング形状」が最も顕著なパターだといえる。そして中央に金属があまり見当たらないということは、すべての重量がエッジ(端)にあるということになる。

「スパイダーGTスプリットバック」は、スパイダーのDNAを継承し、「牙(ファング)」の後方・下部に「タングステンウエイト」を配置した。また、牙の間にあるボール幅のアライメント(方向性の補助)は、視覚的効果によりターゲットを正確に狙うことができる『True Path(トゥルーパス)アライメントデザイン』も搭載している。


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「スパイダーGTスプリットバック」は、他の「スパイダーGT」モデルとは「打音」が異なる。他のモデルはインパクト時に音が吸収されるが、「スプリットバック」は少し響く。他のモデルに比べ、音叉のように見えることを考えれば特に驚くことではない。おそらくこのシリーズの初期モデルでは、もっと音が響いたと思われる。

なぜ私がそう思うのか?ウイングの下に『Feel Foamインサート』が見られるからだ。これらの「ウレタンフォーム」には減音効果がある。打音はパター設計の重要な部分だが、ゴルファーはあまり考えていない部分でもある。少なくとも、不快に響くパターに当たるまでは。


テーラーメイド「スパイダーGTロールバック」

「スパイダーGTロールバック」が全然スパイダーっぽくないと言われても訂正する気はない。その通りだからだ。 ただし、テーラーメイドは以前にもスパイダー形状ではないパターにスパイダーという名前を付けている。思い出の小道を歩いて、「スパイダーブレード」と「スパイダーマレット」をグーグルで検索すれば言っている意味がわかるはずだ。

「スパイダーGTロールバック」の形状は“スパイダー”ではないかもしれないが、重量配置は“スパイダー”だといえる。 「スパイダーGTロールバック」は、フェースに「TPU」と「アルミニウムの複合素材」の『Pure Roll™2(ピュアロール™2)インサート』とソール前方のトゥ・ヒールには「タングステンウエイト」を搭載。

「スパイダーGT」ほど重量はエッジ(端)に集中していないが、素材と配置によってパターの「MOI(慣性モーメント)」はやはり高められている。


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「スパイダーGTロールバック」について、かなり気に入っている2つの特徴は、「トライソール(三平面ソール)」デザインと「アライメントシステム」だ。なだらかな傾斜をつけた3つの平面を設けることで、あらゆるライでの据わり良さを生むこの「トライソール」のおかげで、パターを迷わず構えられるようになるはずだ。

当然のことながら、ソールを芝生の上で引きずることは望ましくないが、アドレス時に快適な静止位置を確保することで、パッティング中に体の角度を一定に保つことができる。

「スパイダーGTロールバック」には2つのバージョンがあり、「シルバー」と、もう1つは「シルバー/ブラック」。どちらも中央に長いアライメントラインを備えており、これは素晴らしいことだが、どちらかと言うと「シルバー/ブラック」の黒いアライメント便利な機能であり、非常に狙いやすいだろう。

個人的にはピンの「Ketsch(ケッチ)」のような雰囲気があり、これはかなりの褒め言葉だと思ってもらって構わない。


テーラーメイド「スパイダーGTノッチバック」

「スパイダーGTノッチバック」という名前にはちょっとばかりいちゃもんをつけたくなる。背面にノッチ(切り欠き)はないし、見た目も全然スパイダーではない。しかし、繰り返しになるがこのモデルは“スパイダーっぽい”MOI(慣性モーメント)を持っている。

「ノッチバック」は、ヒール側とトウ側の後方両サイドにかなりの量のタングステンを備えている。だが、高MOIはこのヘッド形状の典型的な特徴ではない。


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写真では分かりにくいかもしれないが「ノッチバック」は中型マレットだ。クラシックなラウンドマレット設計でありながら、一般的なサイズの約1.5倍もある。

他の「スパイダーGT」マレットよりは小さいが、似たような形状の例えばミズノ「M-Craft#5(M-クラフト#5)」よりも大きい。全長は約0.5インチ、全幅は1/4インチ長くなっている。ヘッドカバーを外したとき、その大きさに驚いた。

オンラインで注文する前に、「ノッチバック」を実際に見て確認することを勧める。サイズは個人的な好みに応じて評価が分かれるところだからだ。ボールの転がりは良いが、小ぶりなマレットを探しているならば要注意だ。


テーラーメイド「スパイダーGT」パター‐近日発売予定

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「スパイダーGT」モデルは2月14日より予約受付開始。バレンタインデーのプレゼントに最適だろう。3月4日からは近くのショップで新しいテーラーメイド「スパイダーGT」パターを入手できるはずだ。「スパイダーGT」の価格は349.99ドル、他3モデルは299.99ドル。

前述の通り、テーラーメイドは3月上旬に「MySpiderGTカスタムプラットフォーム」も開始する。以前の「MySpider」および「MyTPパターデザイナー」の大ファンとして、カスタマイズに利用できるオプションを見るのが待ちきれない。“We Tried It”の記事を指折り数えて待つことにしよう。

新しいスパイダーのデザインはお気に召しただろうか?またテーラーメイドのウイング形状への移行は心に響いただろうか?それとももうすでに前の形状が恋しい?この4つのモデルの中で、あなたのお気に入りはあるだろうか?

私は「スパイダーGTロールバック」に気持ちが傾いていて「スパイダーGT」でボールを転がしたい衝動とも闘っている。