「トルク」とは一体、何なのか?気にするべきなのか?

前者は簡単。ところが、後者はちょっと複雑だ。

正確な文言はさまざまだが、ゴルフシャフトの領域では、「トルク」とは所定の力でどの程度シャフトが捩れるかを表した数値(測定値)を指す。

トルクの数値が低ければ、抵抗が大きいということ。その逆も然りだ。例えば、鉄筋のトルクは非常に小さいが、組紐ならその数字はかなり高くなる。


トルクの基本

シャフトが持つトルクの大きさは重要ではない。あるいは、もっと正確に言うならトルクは万能ではないということだ。トルクが小さければ良いということでもなく、トルクが大きければ悪いというものでもない。カロリー計算のようにはいかないのだ。

それはさておき、スイング中のパワーが大きいヘッドスピードが速いゴルファーは、トルクが小さいシャフトの方が有利であるという従来の考え方にはメリットがあるが、一概にそうとも言えない。

その逆に、ヘッドスピードが遅いゴルファーには常にトルクが大きいシャフトが必要かといえば、それも完全に正しいとは言えないのだ。

では、何が正解なのか? お気づきかと思うが、それは人それぞれというわけだ。

ほぼ全てのゴルフ用品には、ロフト角やライ角、フェース角、ウエイト、バランスポイントなど、測定可能な特性がある。

それだけに、明確さと曖昧さが同居する。大半の特性は統一化された測定システムが用いられ、例えば、ロフト角は「何度」という単位で測定される。ウエイトは「グラム」で記録され、ほとんどの人が同じシステムを受け入れている。

しかし、トルクは違う。


厄介なこと

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皆さんは、どこかで低トルクのシャフトの方が、「正確性が高い」という話を聞いたことがあるのではないだろうか。あるいは、そうしたシャフトはスイング中の力に抵抗するということも聞いたことがあるはず。

この手の業界用語は、ゴルファーを「少ない方が優れている」という結論に結びつけている。つまり、低トルクの方が大きいトルクよりも好ましいということ。そして、これは単純に言うと真実ではない。

最終的な目的は、ゴルファーが理想とするスペックをそのゴルファーに適切にマッチングさせることなのだから。

物事をさらに複雑にしているのは、メーカーがシャフトのトルク計測で同じプロトコル(規定)を採用していないこと。シャフトのどの部分を測定し、どの程度の力を加えるべきかを定義する業界のスタンダードが一つもないというわけだ。

ほとんどのメーカーは、シャフトの先端部を基準にトルクを測定している。しかし、一貫した基準がなければ、ユーザーがブランド同士、あるいは同ブランドのシャフトでさえもしっかりと比較することはできない。

さらに言うと、「ロートルク」や「ミッドトルク」といった用語も、せいぜい一般的な目安にしかならない。

結果として、メーカーは彼らの都合の良いように結果をあれこれする。例えば、トルク3.5のシャフトを生み出すことがゴールとする。この場合、メーカーはあらかじめ設定した結果を達成するために、先端部の選ばれた箇所に望ましい力を加える。

つまり、トルクは、潜在的に有意義な測定値ではなく、作為的な数字になる可能性があるのだ。これって、18ホールのスコアを1番のティーグラウンドで書いてからラウンドするようなものだろう。

私は、全てのシャフトメーカーは共謀しているとか、トルクの数字を偽ってゴルファーを騙していると言っているわけではない。しかし、実際にはそうなっている。そしてこのことにより、なぜ共通用語が、一部のゴルファーに重要視されない場合があるのかを説明することはできる。





アプリ



現在のシャフト業界において、最も興味深くトルクを活用しているのは、フジクラの『バリアブルトルク』に関する研究だろう。

何かを変える前に、まずはそれを測定するのは当たり前のことだ。そこでフジクラでは、独自開発した測定器を使用し2つのトルクを算出している。一つは「混合合計トルク」で、その数値が4.2度だとする。

この測定器は、シャフトの各部位(手元部、中間部、先端部)が合計値にどのくらい寄与しているのかを開発陣が判断するのに役立つ。明確にしておくが、シャフトのトルクは均一ではない。逆に言うと、先端部のトルク測定値は、手元部や中間部のそれとは同じではないということだ。

この考え方を応用し、フジクラでは特定のパフォーマンス目標を実現するために、シャフト各部のトルク特性を変化させている。「Speeder NX」は、同社初の『バリアブル・トルクコア・テクノロジー』を採用したシャフトで、先端部とグリップ・手元部分のトルクを固くすることに重点が置かれている。

同社独自の3次元モーションキャプチャースシテム「ENSO」によるプレーヤーテストでは、「Speeder NX」により、ダイナミックロフトとフェースが閉じる率のコントロール性が向上するようだ。

さらに、最近発売された「Ventus TR(ヴェンタスTR)」では、似てはいるがこれまでにない施策がとられている。具体的には、非常に軽い『Spread Tow』カーボン繊維を採用し、手元部分の捩れ剛性をアップさせているのだ。

フジクラは、これを革新的とは思っていない。シャフトデザインにおけるトルクとその役割は、決して新しいものではないからだ。とはいえ、現在のテクノロジーを使ってシャフトの先端から手元まで全体のトルクを数値化することは大きな意味がある。

フジクラはさらに一歩進み、こうした情報を活用することで、幅広く多くのゴルファーの独自のスイング特性にさらに対応できるシャフトの幅広いコレクションを提供しているのだ。

ゴルファーのスイングが千差万別だということに異論がないなら、シャフトの分析データが多彩な方が、良いことずくめと考えるのは当然。でしょ?

トルクに関する質問やシャフトに関して疑問があれば、聞かせて欲しい。