前作と何が違うのか?新製品が毎年発売される度に、各メーカーの謳い文句は決まって純粋なゴルファーの気持ちを揺さぶる。
特にフィッティングをせずに購入してしまったゴルファーは、後に悩むことになる可能性が高い。そのため、我々は必ずフィッティングを受けることを奨めている。
フィッティングをしたからといって、断りづらいなどと思うことはなく、フィッティングをした時にスコアアップに繋がるクラブなのか?をイメージできることが何よりも大切。イメージができなかったり、もしくは、今使用しているクラブよりも良いクラブが見つからない限り、その場で購入する必要はない。後々後悔しないためにも、納得のいくまで検討しよう!

「MYGOLFSPY JAPAN」は何のためにあるのか?誰のためにあるのか?
初めて「MYGOLFSPY」を見るという方には、正直ちょっとわかりづらいかもしれない。なぜならアメリカ主体の情報が多いからだ。
しかしながら、各ゴルフメーカーのクラブ開発担当者の声や大手ゴルフメーカー数社の開発担当者に依頼し、共同でテストを行っているため、どこよりも大規模かつ唯一無二の100%独自データをお伝えすることができる。
共同テストは、各メーカーに試打クラブの提供を依頼するにあたり、テスト状況や結果をメーカーに伝えることは当然のこと。
ゴルフ業界の大半が大手メーカーの意向にコントロールされる一方で、我々は“絶対的に公平・独立した立場”を貫いている。(もちろん試打クラブは提供してもらうが、その見返りは“忖度”ではなく“ありのままのテストデータ”である)
そのため、100%独自のデータをビジネス上の関係に左右されることなく“ありのまま伝える”ことができるのだ。
我々のテストを行う施設には、毎年多くのゴルフ用品で溢れ返っている。その大切な製品を1つ1つ、ゴルフをこよなく愛するゴルフオタクたちが、時にはクラブを真っ二つにして製品テストを行っている。

故に、この構造やデータを公開して欲しくないというメーカーもあり、実際「MYGOLFSPY」の製品テストで明らかになった欠陥をメーカーが認めるという事態もあった。その大手メーカーはゴルファーの信頼を取り戻すべく、製造工場に多額の資金を投入し一貫した製品を作り上げることに注力し続け、今も尚人気の商品となっている。
さらに、あるメーカーのホームページには、「MYGOLFSPYに選ばれたクラブ」だと掲載しているほどアメリカの「MYGOLFSPY」が行うテストは厳格なのだ。
一部のゴルファーからは、「MYGOLFSPY」はマニア向けだと言われているが、我々は「ゴルフが好きで楽しみたい」というゴルファーの為にもこの情報サイトを役立つものにしたいと考えている。
すべてのゴルファーに役に立つ情報を提供することだけを考え、“真実のみ”を伝える。
スコアアップに繋がらず悩んでいるゴルファーはもちろん、皆さんが知りたい情報などがあれば、是非とも下記コメントに寄せていただきたい。
では、前置きが長くなって申し訳ない。早速本題に入ろう!
打ち比べた製品:テーラーメイド「ステルス」と「ステルス2」ドライバー

今回は、昨年(22年)最も注目を集めたクラブであり、最も売れたクラブでもあるテーラーメイドのカーボンウッド「ステルス」と今年発売された(23年)モデル「ステルス2」の打ち比べた結果を、製品テストデータを含めわかりやすくお伝えしていく。
前作と何が違うのか?本当に性能は良くなっているのか?皆さんも気になるところだろう。
そこで、我々が独自に行った「性能テスト」および各モデルの「データ」を比較し検証してみよう。是非ともドライバーの購入を考えているゴルファーや、「ステルス」が自分に合ったモデルなのかを見極める参考にしていただきたい。
また、「ステルス」だけでなく、市場のクラブで我々がテストしたモデルの比較を『Most Wanted』とは別のシリーズとして順次発表していく。
今回はその第一回目となる。
では、始めよう!
なぜ「チタン」ではなく「カーボン」なのか?
テーラーメイドが掲げる「カーボンウッド」とは『カーボンフェース』を搭載したドライバーのこと。テーラーメイドにとって「カーボンウッド」はメタルウッドの進化形だ。
従来のチタンフェースドライバーは、時代遅れであるというテーラーメイドの意志を表しているが、「チタン」が使われていないのか?というとそうではない。
確かにこの「ステルス」ドライバーの中にもたくさんの「チタン」が使われている。だが、テーラーメイドと他社との大きな違いは、フェースに『60xカーボンフェース』を採用していることだ。

では、なぜ「チタン」ではなく『カーボンフェース』を搭載したのか?
それは、テーラーメイドは「カーボンファイバー」は「チタン」よりも“強く、軽く、速い”と考えているからだ。また、カスタマイズしやすいという点もある。
同社によると、「カーボン」を導入したことでフェースとボディの関係性は変化し、インパクト時にフェースがよりたわむ一方で、それを支える「チタン構造」は“硬くて”それほどたわまないということになる。ボディの相対的な“硬さ”により、より多くのエネルギーがボールに伝わるという。
テーラーメイドは「ボール初速」をアピールしているが、実際どのくらい初速がアップしているのか?
同社の法務部門によると、「SIM2」よりも0.49m/s速いというのが公開できる数字だという。ただこれはヘッドスピードが「46.9 m/s」 のゴルファーにとっての話で、距離にすると「2.5ヤード」から「3ヤード」程度の飛距離アップとなる。
たったの「3ヤード」?と思うだろう。確かに、この“大股2歩分”に高いお金を支払う価値があるのかは別の話だが、この「SIM2」から「ステルス」における初速アップは、「M5」から初代「SIM」の13倍にも及ぶということだ。
これはあくまでテーラーメイドの主張だが、1.34〜2.23m/s以上の初速アップを果たしたプレーヤーもいるという。
そこで、実際に比較したデータがこちら。
2021年「シム2」、2022年「ステルス」と2023年「ステルス2」ドライバーの比較

(左から「シム2」、「ステルス」、「ステルス2」ドライバー)
<2021年「シム2」ドライバー3モデルのデータ>
モデル名 | ボール初速 (m/s) | 打ち出し角 (度) | スピン量 ( RPM ) | キャリー (ヤード) | トータル飛距離 (ヤード) |
---|---|---|---|---|---|
SIM2 | 62.48 | 13.58 | 2,,399 | 226.96 | 241.29 |
SIM2 MAX | 62.06 | 14.03 | 2,590 | 226.29 | 241.47 |
SIM2 MAXD | 61.55 | 13.69 | 2,480 | 225.52 | 239.01 |
<2022年「ステルス」ドライバー3モデルのデータ>
モデル名 | ボール初速 (m/s) | 打ち出し角 (度) | スピン量 ( RPM ) | キャリー (ヤード) | トータル飛距離 (ヤード) |
---|---|---|---|---|---|
ステルス | 62.80 | 13.4 | 2,668 | 239.9 | 239.9 |
ステルスプラス | 62.98 | 13.6 | 2,435 | 233.8 | 252.8 |
ステルスHD | 63.11 | 13.7 | 2,673 | 232.2 | 244.6 |
<2023年「ステルス2」ドライバー3モデルのデータ>
モデル名 | ボール初速 (m/s) | 打ち出し角 (度) | スピン量 ( RPM ) | キャリー (ヤード) | トータル飛距離 (ヤード) |
---|---|---|---|---|---|
ステルス2 | 64.13 | 13.60 | 2,348 | 241.06 | 255.45 |
ステルス2プラス | 64.11 | 13.35 | 2,307 | 241.50 | 256.36 |
ステルス2HD | 63.73 | 13.41 | 2,618 | 235.51 | 247.48 |
ちなみにこの結果は、2021~2023年の『MOST WANTEDデータ』から一部のデータを取り出して比較している。
各『MOST WANTEDデータ』はこちら
「宣伝」と「現実」にどの程度の乖離があるのかはまだ分からないが、これが、あらゆるヘッドスピードのテスターたちによる何万回にもおよぶショットの結果だ。
クラブを購入する際はこのような「飛距離」に関連するデータだけではなく、「寛容性」、「正確性」など、ゴルファー各々で購入する際の決めてとなるカテゴリーがあるだろう。
確かに、「ステルス」シリーズにおいて「ボール初速」はアップしている。では、他社と比較してテーラーメイドの「飛距離」はどの程度に位置しているのだろうか?
では、その点「ステルス」、「ステルス2」はどうだったのか?を見てみよう!
<「ステルス」と「ステルス2」の3つのカテゴリーを比較>

(左から「ステルス」、「ステルス2」ドライバー)
<2022年「ステルス」ドライバー38モデル中の順位>
モデル名 | 飛距離 | 寛容性 | 正確性 |
---|---|---|---|
ステルス | 21位 | 35位 | 8位 |
ステルスプラス | 1位 | 19位 | 10位 |
ステルスHD | 5位 | 8位 | 12位 |
<2023年「ステルス2」ドライバー30モデル中の順位>
モデル名 | 飛距離 | 寛容性 | 正確性 |
---|---|---|---|
ステルス2 | 5位 | 24位 | 16位 |
ステルス2プラス | 2位 | 17位 | 2位 |
ステルス2HD | 24位 | 5位 | 13位 |
まず、この比較から気になる「ステルス2HD」の「飛距離」について見ていこう。
「ステルス2HD」の「飛距離」について
「ステルス2」シリーズの中で初代と一番異なるのがこの「ステルス2 HD」。

テーラーメイドの「HD(ハイドロー)」モデルはこれまで圧倒的に「寛容性」が高いわけでもなく、「超ドローバイアス」でもなかった。
※ドローバイアスとは、ドロー(左に曲がるボール)が出やすいように調整したもの。スライス(右に曲がるボール)を抑止する効果がある。
我々のテストによると、ドローバイアスは“ほどほど”という程度。故に「ステルス2 HD」は「高い打ち出し角」と「ある程度のスライス軽減」を求めるゴルファーに最適で、「スライスを矯正したい」ゴルフファーには必ずしも適してはいなかった。
しかし、今回テーラーメイドは、スタンダードの「ステルス2」と「ステルス2 HD」をより差別化しようと考えたようで、「HD」の「MOI(慣性モーメント)」を向上させ、「ドローバイアス」を高めつつ「スピン量」も200rpm程度アップさせている。
この「ステルス2 HD」の「MOI」は5,000台前半から半ばで、テーラーメイドの基準では「非常に寛容性の高い」モデルとなっている。
業界には、ドローバイアスのドライバーの「寛容性」をより高める傾向があるようで、30gのリアウエイトでスタンダードモデル以上のMOIを実現する「ステルス2 HD」は、まさにそのトレンドに当てはまる。
さらに、「ステルス2 HD」ドライバーの純正シャフトの長さは、「ステルス2プラス」とスタンダードの「ステルス2」よりも短くなっている。シャフトが短ければ、よりフェースセンターに当たりやすいということになる。
メーカーは「飛距離」を二の次にすることに消極的であることが多いが、これに対して、テーラーメイドはシャフトを短くすることで“1、2ヤードを放棄”していることを自ら認めている。
つまり、なぜ「飛距離部門」のランキングが下位だったのか?の理由については、より「寛容性」を高めるためであり、「飛距離」をスタメンから外したということ。
次に、気になる「ステルス2」の「寛容性」について見ていこう。
「ステルス2」の「寛容性」について

スタンダードの「ステルス」は、「ステルス」シリーズの主力ということもあり、「ステルス」と「ステルス2」でそれほど変わっていない。
故に「ステルス2」の「寛容性部門」ランキングは「ステルス」同様下位に位置している。毎度のことだが、テーラーメイドが高MOIの最高クラスに入ることはない。なぜなら、同社は伝統的に何よりも「初速」を重要視しているからだ。
「ステルス」を試打したゴルファーからよく耳にするのは、「ステルスは決して“やさしいモデル”ではない」ということ。
確かに、今回のテーラーメイド「ステルス2」ドライバーにおけるキャッチコピーである、“どこまでも遠くへ”には当てはまるかもしれないが、“どこまでもやさしく”とまではいかないようだ。
『カーボンフェース』には一貫性がある
テーラーメイドによると、フェースの製造過程において、個体ごとのバラつきは「チタン」よりも少なくできるという。
つまり、カーボンフェースには「一貫性」があるということ。「ステルス」には『ツイストフェース』や『インバーテッドコーン』といったテーラーメイドお馴染みのテクノロジーに加え、「バルジ&ロール」の成型にも「カーボン」を積み重ねる工程が組み込まれている。
たとえ「MOI(慣性モーメント)」(「寛容性」の指標)を引き上げなくても、独自の『カーボンフェース』によりフェース全体で一貫して「ボール初速」が向上することで、どんな競合モデルとも対抗できると考えているようだ。
「ステルス」の『カーボンフェース』は「チタン」に比べ40%も軽量。基本的には、こうした「軽量化」により、重量が低部、深部、そして高部に再配置され、高打ち出しや寛容性の向上、その他あれこれを実現できるわけだ。

カーボンとチタンのフェースの比較
個々のカーボンシートの層の向きを変えることで、「素材の強度」が増し「パフォーマンスを最適化」させている。この構造の強度を実現する層に加えて、“雪の結晶”のようなレイヤーが採用されており、同社独自のスイートエリアを拡大させる『インバーテッドコーン・テクノロジー』が確実に強化されている。
「ステルス」シリーズの3モデルの「正確性」を見てみると、悪くもなくそれほど良くもなくの他メーカーと比較すると「中間」に位置している。
唯一飛び抜けているのが、「ステルス2プラス」だろう。
では、この「ステルス2プラス」を見てみよう!
「ステルス2プラス」の「正確性」について

「ステルス2プラス」は「ステルス2」シリーズで最も低スピンを実現するドライバーとなっている。
従って一番「寛容性」が少ないとも言える。テーラーメイドは具体的にはしていなかったが、シリーズ全体を通じてMOI(慣性モーメント)が7〜9%ほどアップしたとしても、5,000MOIを大きく下回りそうだ。
つまり、“やさしいモデル”ではない。いわば「上級者向け」。
「ステルス2プラス」はツアープレーヤーのフィードバックを受け、アドレスで「ツイストフェース」を見えにくくするために、トップラインを真っ直ぐにしてトゥが下がっている。
さらに、これまで説明した改良により、トラックウエイトにはさらに5gを追加(これで15g)。これにより、前方に配置されたヒール・トゥの前後に調整可能な『スライディングウェイト』の弾道調整の度合いが大きくなるようだ。
注目すべきは、今回テーラーメイドが「ステルス2」ドライバーでライ角を2度フラットに設定したことだ。これでパフォーマンスという点で、自然とややフェードがかかりやすくなるはず。テーラーメイドのアダプターにフラットのセッティングがないことを考えると、この変更は理にかなっていると言える。
「ステルス2プラス」では、事実上フラットなライ角がデフォルトで、必要に応じてアップライトになるアダプターが用意されている。
2023年の『ドライバーランキング』において、「ステルス2プラス」は、テスター全員に「飛距離」と「正確性」をもたらした。各カテゴリーで2位になったことが、総合トップになった要因。
唯一「ステルス2プラス」の欠点としては、「寛容性」が最低限の基準をかろうじて満たしている程度であるということ。キャリー(ヤード)の安定性とバラツキが、上位陣ほどではなかったということだろう。
「ステルス」シリーズの「打感」

我々スタッフ全員は、『カーボンフェース』の最初のスイングで何かしらの難癖をつけようと考えていたからなのか?打ち始めに多少の違和感があった。ただ、何か欠点を見つけ出そうとする、そうであって欲しいと思っただけなのかも知れない。
スイングをし続ける度に、我々は『カーボンフェース』に「心地よい打感」が得られた。それは、我々だけでなく、今回『ドライバーランキング』に参加したテスターたちからも高評価を得ている。
特に「ステルス2プラス」は、「打音」と「打感」がトップクラス。さらに「見た目」では平均以上の評価を得ている。故にこの「ステルス2プラス」に関しては、上級者向けということもあり「寛容性」には欠けるが、それ以外は申し分のないモデルだということだ。
まとめ
先程の「打感」で述べたように、2023年『ドライバーランキング』の勝者でもあり、総合評価として「ステルス2プラス」は申し分のないモデルだ。
まだこのモデルを試していないという特に上級者ゴルファーは、是非とも試してほしい。
そして、「初心者」や「初級者」あるいは「スコア改善を必要とする」ゴルファーが、最も人気のあるテーラーメイドというメーカーを購入する率は限りなく高いように思う。
しかし、データから見る限り、唯一「寛容性」の高いモデル「ステルス2HD」ですらそのスコアは「90」とトップ5にランクインしているものの、トップとの差がある為、必ず試打をしてから自分に合うべきなのかを見極めるべきだということ。
その際、「ステルス2HD」を選ぶということは、「飛距離」は置いておくということを頭に入れておくことだ。もしあなたが最新モデルに拘らず、「寛容性」と「飛距離」の両立を選ぶというなら、3つのカテゴリーで最も安定している前作の「ステルスHD」を選ぶと良いだろう。
その年の話題の商品を購入するということに異議を唱えるつもりはないが、話題や傾向に流されることなく、自分のプレースタイルに合うもの選ぶこと。それが後々の結果に繋がるということを忘れないでほしい。
今回「MYGOLFSPY」のデータ結果としては、「ステルス」に比べ「ステルス2」は確かに「初速アップ」はしているものの、「初速アップ」以外はそれほど変わっていないという結果だった。
「ステルス」および「ステルス2」に関して、更に詳しく知りたいという方はこちらを参考にしてほしい。
・『チタンフェース』ドライバーは“時代遅れ”!?テーラーメイド「STEALTH(ステルス)」ドライバー『カーボンフェース』搭載で新登場!
・テーラーメイド「ステルス2」ドライバーシリーズいよいよ登場!どこまでも遠くへどこまでもやさしく
また、「ステルス」の「中古」を検討してみようという方は、こちらを参考に金額を見てみると良いだろう。
「ステルス」ドライバーの中古価格サイト
年々ドライバーの価格が高騰している。「新品」であれ「中古品」であれ予算と自分のプレースタイルに合ったクラブが見つかることを願っている。
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