ゴルフ用品の世界には、必ずしも『Most Wanted』や『バイヤーズ・ガイド』にランクインしないまでもイケてるギアはたくさんある。みなさんも、その性能を知りたいところだろう。この「やってみた」シリーズでは、そうしたギアをテストし、それが謳い文句通りかをお届けする。


「やってみた」こと

タイトリスト・パフォーマンス研究所


製品・エキスパート

みなさん、こんにちは。私の名前はクリス。ゴルフに夢中な、この「MyGolfSpy」チームメンバーの1人だ。私はビジネス開発のディレクターとして、他社とのパイプ役を務めている。また、ゴルフ用品やその他のゴルフネタなどをまとめることにかなりの時間を費やしている。

そして、多くの方と同様、新しいサービスや用品には目がない。


TPIとは?

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「TPI」は、「タイトリスト・パフォーマンス研究所(Titleist Performance Institute)」の略称だ。

「T」=ちょっと、「P」=ピリッとする、「I」=痛み、とでもした方が良いのかも知れない。ガッチガチにかたい身体で前屈したりバックスイングすることが大変な場合は。

私のようにね。それについてはまた後ほど。

「TPI」の前提はシンプルだ。それは、ゴルフスイングに関連する「人体の機能」を検証し、ゴルファーと業界関係者に気づきを与え続けること。

言い換えると、「TPI」はゴルファーの「身体能力を評価」し、それがスイング中の特定の動きを「制限しているのか」、あるいは「促進させているのか」を判断する。

多くのゴルファーは、タイガー・ウッズやアダム・スコットのようなスイングをしたいと思っているが、そうはならない。というか、そのようなスイングをするための、運動学的に連続した動きが物理的にできないのだ。

なのに、インストラクターが、生徒に対して特定の体勢をさせたり、その人の身体能力では不可能な動きをするように求めることが良くある。私の経験では、無茶苦茶多い。

「TPI」の概念はシンプルだ。それは、ダイエットと同じことで、実行するには根性や熱心さ、そして運動という人的要因が関わってくる。「TPI」は、ゴルフスイングにおける万能薬ではない。そうではなく、それぞれのゴルファーができること、そしてもっと重要なのは、できないことを中心に構築された道しるべなのだ。


成り立ち

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「TPIプログラム」は、2003年に創設者のグレッグ・ローズ博士とデーブ・フィリップス氏によって誕生した。今では「ゴルフフィットネス」という概念は主流となっているが、2003年当時は全く目立たない存在。取るに足らなかった。

2003年といったら、手にしていたのはガラケーで、当時の人気ヒップホップのアルバムを手にするために地元のCD屋に連絡していた頃だろうか。

当時を今の状況と重ね合わせて見てほしい。家庭用スマートジムとアプリを使ったワークアウト(「練習」「トレーニング」「運動」)は、薄型TVくらい一般的。つまり、当たり前と思っていたことも、当たり前ではあり続けないということを忘れないでいて欲しい。

「TPI」によると、これまでに「TPI」のインストラクターは63カ国で19000人以上に及ぶという。そして、本社と主要なR&D施設は、カリフォルニア州オーシャンサイドにあるタイトリストのテスト施設内にある。


ステップNo.1:アセスメント(評価)

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フィリップス氏と「TPI」について簡単に話をした後、私は身体能力をよりよく理解するために16ものタスクをすることになった。各エクササイズは、赤(不合格)、緑(合格)、黄色(部分的に合格)と色分けされ、それらを元に「My TPI」アプリがゴルフフィットネスのハンディキャップをはじきだす。

私は6つの課題で不合格、合格は8個、残る2つが部分的に合格(楽観的に見れば合格)という結果だった。

私のスコアは24だった。ぶっちゃけ、もっと酷いと思っていた。競技ゴルファーとして、この数字(フィットネスHC-プレーイングHC)は異常なのかフィリップス氏に聞いてみたが、当然そうとのこと。

だからこそ、今の自分があるのだろう。ちなみにフィリップス氏によると、過去20年間で、全てのエクササイズに一発合格したのはほんのひと握りらしい。その中の一人がアダム・スコット。そりゃそうだ。

このアセスメント(評価)で最も優れている点といえば、各タスクや容赦ない赤裸々な(あるいは惨酷な)結果とは全く関係がないこと。私が三本足の椅子のように15分間も悪戦苦闘しているのを見た結果、フィリップス氏は私のスイングがどのようなものなのかを話してくれた。

それはなんとなくということではなく、私のスイングそのもの。私のショットを見たことがなかったのにだ。


結果と傾向

ゴルファーとは、どのくらい3パットしたのか忘れてしまう一方で、どのくらい飛ばせるか過大評価することにより心地よさを覚える傾向にある。

しかしこの手のテストは、誤魔化すことは不可能だ。我々の尊敬すべき『ボールラボ』の専門家で用品編集をしているトニー・コヴィーと私も、このプロセスを体験。なぜこれを伝えるかと言うと、トニーがタスクのやり直しをお願いしてきたからだ。

フィリップス氏はこれを受け入れず、可能な限りの方法で何度やっても何も変わらないと示唆してくれた。

そして、私のテスト結果を振り返ると、2つのテーマが浮かび上がってきた。セットアップの「姿勢」と「下半身の動き」が、ボールを安定して打つ上で大きな障害になっているとのこと。結果として、身体の中でよく動く部分(「体幹の回転」、「頚椎の回転」、「前腕/手首の屈曲と伸展」)でそれらを補っているらしい。





スイング査定


フィリップス氏は、私の「身体能力チェック」を元に、私のスイングを制限する根本原因をしっかりと把握していた。基本的に、私はバックスイングのトップの位置で「振ってしまいやすい体勢」になっているようだ。

私の上半身が動き出すのはこの時。両手が動き出し、インパクトでフェースがスクエアになる(しようとする)ために、両腕と上半身に頼りすぎているらしい。

一方、腰のターンが止まることで「アーリー・エクステンション」(後方からスイングを見たときに、アドレス時のおしりのポジションがスイング中に前方へシフトして上体の前傾角度が保てなくなる状態)になってしまっている。

以前、動画で自分のスイングを観たことがあるので、こうした課題は分かっていた。私のこうした傾向は数年前から変わっていない。

とはいえ、スイング診断の本来の目的は、スクリーニングした運動とスイングの具体的動作を結びつけることだ。例えば、私は前屈が苦手なことが分かっている。しかし、それがセットアップの姿勢にどう影響するのかは理解していなかった。

これまでインパクトで腰が開いたプロゴルファーの画像(腰のポケットが両方見える)を数多見てきたが、なぜ私が同じようなことができないのかも分からなかった。

フィリップス氏によれば、それぞれの「制限」に対しては、選択肢が2つあるとのこと。これを2つの道筋がある分岐点と考えてみよう。

まず、「動きを変える努力をする」こと。多くの場合、これらは個別のトレーニングプログラムの結果として数週間、あるいは数ヶ月かけてゆっくり変わってくる。完璧さとは進歩の敵ではないということを覚えておくことも大切だ。

私のスイングは、小さく、そしてフラット(レイドオフ)になりがち。ダスティン・ジョンソンのように見えることはないだろうが、スイングがより大きく、よりアップライト目になる特別なエクササイズがある。

もう一つの選択肢は、特定の「制限」に対応するために「スイングを修正する」ことだ。ゴルファーの中には、単に時間や意欲がない人もいれば、選択肢がない人もいる。良い例がジョン・ラームだ。PGAツアーNo.1の彼は生まれつき内反足で、結果として多くのプロにくらべてスイングが大変小さい。

そのため、52.75m/s以上のヘッドスピードを生み出すため、特別なテクニックを使っている。

分かりやすく言うと、もし体幹を効果的にローテーションできないのであれば、a:胸椎の可動域を増やすか、b:リードする踵を上げたり、両足を開きより完璧なターン/バックスイングを促す ようにすれば良いのだ。


アクションプラン

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改善とは一連の行為を指す。そして、寄り道することもある。進歩が遅いこともあるだろう。そんなことは全て分かっていたが、これ以上、私が柔軟性を持てるとも思っていなかった。

フィリップス氏は、私のフィットネス・スクリーニングとスイングビデオを評価した上で、2つのトレーニング手順を作成してくれた。一つ目は、10〜12種類の20〜25分かかる「ダイナミックストレッチ・エクササイズ」で、週3回行うもの。もう一つは、「ソリッドなインパクト」がどのようなフィーリングなのかを身体に意識させる数種類のスイングドリルだ。

現在の目標は、このルーティンを5、6週間継続して再評価すること。今は第4週目なので、この後はまたどうなることやら。

最初の評価が終わった後、必要な全ての情報は「My TPI」アプリに保存される。そして、このアプリは、個別のトレーニングプログラム、スクリーニングの結果、担当コーチとのコミュニケーションポータルとしても機能することも伝えておこう。


最後に

今回の経験を通じて浮かび上がった教訓が2つある。一つ目は恐らくほとんどの人が知っていること。主にゴルフ上達のほとんどは縦割りだということだ。クラブフィッティングとレッスンは別の場所で行う。フィトネスや健康に気を使っていれば、さらに他の場所に行くこともあるだろう。

そして、多くのケースでこれは理にかなっている。多くの人は一つの分野に特化しているからだ。大抵のインストラクターは、クラブフィッティングの専門家ではない。必要なバイオメカニクスとフィットネスの知識を持つ人がいたとしても、シャフトの剛性分布について語れることなどないはずだ。

もう一つの教訓は、全てのゴルファーには、それぞれの体質にうまく機能する最適で効果的なスイングがあるということ。自分の身体ができることを明確に理解していない限り、全く理にかなっていないことをしてしまうのだということ。

そう考えると、身体能力とスイングを一体として改善するというアプローチ方法は、みなさんが時間と労力を惜しまないかどうかということにかかってくる。個人的には、短時間で体系的なワークアウト(「練習」「トレーニング」「運動」)をする方が一番効果的。

今回のケースだと1日20〜30分の週4、5日を「MyTPI」エクササイズかスピードトレーニング(スタックシステム)に充てている。もっとやってはどうかって?確かにそうだろう。

でも私は60〜90分のトレーニングのために週5回もジムに通うような人間ではないし、アイスクリームや「リバーベアー」のプレミアムベーコンを諦めたりもしない。好きにさせて欲しいわけだ。

とはいえ、自分が割く時間で最大限の成果を生み出せるのかは知りたい。

そこで問題となるのか「ドライバーで飛距離アップさせるための3つの動作」のようなあまりにも当たり前のアドバイスだ。こうした動作は、たまたま 1:現在やっていない 2:やる能力はある 3:比較的早くモノにできる、という類の動作なのかもしれない。

あるいは、グループレッスンの敷居が低いのものそれが理由なのかも知れない。必ずしも害にはならないが、長期的なメリットも期待できないからだ。

最後になるが、ほとんどの基本エクササイズは家にあるものだけで対応可能だ。とは言え、どんなプログラムでもそこから最大限の結果を求めるのなら、どんなに初歩的なものであっても、基本的な器具に投資する価値はある。以下は、私がスタートするために購入したリストだ。


基本用具リスト:

メディシンボール

ダンベル/ケトルベル

家具スライダー

ヨガボール

抵抗バンド

いつものように感想を聞かせてほしい。